女性起業家の52%が性的ハラスメントを経験 - 日本のスタートアップ・エコシステムの構造的課題と解決の方向性:予備調査

投資家/VCからのハラスメントが最多、事業停止に追い込まれたケースもある一方、報告は14.8%にとどまる -アイリーニ・マネジメント・スクール柏野尊徳による調査-

認識から行動へ:日本のスタートアップ・エコシステムにおけるセクシュアル・ハラスメント予備調査(2024年7月)

アイリーニ・マネジメント・スクール(東京都港区)は本日、同スクール ソーシャル・インパクト・センター ディレクターの柏野尊徳による調査結果を発表しました。本予備調査は、日本のスタートアップ・エコシステムにおけるセクシュアル・ハラスメントの実態に光を当て、解決の方向性を提案しています。

[調査レポート全文] https://ems.eireneuniversity.org/school-information/centers-institutes/sic/startup-ecosystem-sexual-harassment-2024/

【調査サマリー】

近年、日本政府はスタートアップ支援を成長戦略の柱として掲げていますが、スタートアップ・エコシステムにおける性別による機会の不平等は依然として大きな課題となっています。特に、セクシュアル・ハラスメントの実態に関する明示的な調査はほとんどありませんでした。197名の起業家および関係者を対象とした調査結果は、スタートアップ・エコシステムにおけるセクシュアル・ハラスメントの構造的要因を提示し、今後のさらなる調査研究の必要性を示唆しています。

【主な調査結果】

  • 女性起業家の52.4%が過去1年間でハラスメントを経験

図1: 過去1年間のセクハラ被害経験(女性起業家 n=105)
  • 主な加害者は、投資家やベンチャーキャピタリスト(44.4%)顧客/クライアント(33.3%)メンター/アドバイザー(24.7%)(複数回答可)

図2: セクハラ加害者の属性(複数回答可, n=81)
  • 内容は多岐にわたり、不適切な発言(59.3%)身体的接触(30.9%)望まない関係の要求(28.4%)など(複数回答可)

図3: セクハラの内容(複数回答可, n=81)
  • 被害の影響は精神的苦痛(63.0%)起業家/専門家としての自信低下(32.1%)経済的損失(事業の一時停止や撤退を含む:14.8%)など(複数回答可)

図4: セクハラ被害の影響(複数回答可, n=81)
  • 被害をすべて報告した人は14.8%、「相談・報告しても状況は改善されない」「報復が怖い」などの理由から、多くの被害が潜在化

図5: セクハラ被害の影響(複数回答可, n=67)

【浮かび上がる重大な3つの問題】

調査結果から、日本のスタートアップ・エコシステムにおける深刻な課題が明らかになりました。これらの問題は、個々の起業家だけでなく、日本の経済成長と革新性にも影響を与える可能性があります。

図6: スタートアップ・エコシステムにおけるセクハラがもたらす3つの重大な問題

1. 権力乱用による経済的損失

  • 投資家やVCによるハラスメントが多発: 調査では、加害者のうち44.4%が投資家やVCとなっており、特に女性起業家が脆弱な立場に置かれています。

  • 経済的損害の深刻さ: ハラスメントにより14.8%の起業家が経済的損害を受け、成長機会の喪失や事業停止が起こっています。

2. スタートアップ・エコシステムに対する信頼性の低下

  • スタートアップ・エコシステム全体への不信感: ハラスメント被害により、45.7%が加害者の職業や所属組織に対する印象悪化、28.4%がスタートアップ・エコシステム全体に対する印象の悪化を経験しています。

  • 起業家としての自信喪失: 被害者の32.1%が、起業家や専門家としての自信を失っており、27.2%は仕事への意欲低下、24.7%が人間関係の悪化と、長期的な影響が懸念されます。

3. 複合要因による被害の常態化

  • ハラスメントの軽視: 49.3%が「深刻ではない」と考え、47.8%が「報告しても改善されない」と諦めており、問題が表面化しにくい状況です。

  • 二次被害や報復への恐れ: 25.4%が二次被害を、16.4%が報復を恐れており、被害報告を躊躇する要因となっています。

【解決に向けた提言】

今回の予備調査では「組み込まれた差別」「構造的な搾取」「保護策の欠如」という3つの要因が複雑に絡み合い、スタートアップ・エコシステムにおけるセクシュアル・ハラスメントを永続化させていると分析しています。

図7: セクハラ問題の根本要因:3つの構造的課題の相互作用

これらの構造的な課題に対処するため、以下のような対策を提言しています。

  1. 無意識の偏見・差別への対策

  • 偏見を自覚し修正するトレーニング: 性別や属性による先入観を減らし、公平な判断ができる機会を広く提供します。

  • 投資等の選考・判断基準の明確化と公開: 性別ではなく事業の将来性で判断されるよう、投資基準やプログラム選考基準を透明化します。

2. いびつなパワーバランスの是正

  • 第三者監視機関の設立: 投資活動や起業支援プログラムを定期的に監査し、不正や偏見を早期に発見・改善します。

  • 業界全体での行動規範の策定: 適切な行動の基準を明確にし、違反者には制裁を設けます。

3. 予防と保護の強化

  • 24時間対応の匿名相談窓口の設置: 被害者が安心して相談できる環境を整備します。

  • 関係者による評価プラットフォームの構築: 起業家が投資家やメンター、起業支援団体を5段階で匿名評価できるオンライン・プラットフォームを設け、不適切な行動を抑制します。

【調査の意義】

本研究は、日本のスタートアップ・エコシステムが直面する重要な課題と問題のメカニズムを分析し、政策立案者や業界関係者に向けた具体的な提言を行っています。これらの知見は、より公平で包括的な起業環境の構築に貢献することが期待されます。

【研究者プロフィール: 柏野尊徳 

  • アイリーニ・マネジメント・スクール創設者、ソーシャル・インパクト・センター ディレクター

  • 研究領域:スタートアップ・エコシステム (Entrepreneurial Ecosystems)、起業家教育

  • ケンブリッジ大学イノベーション・戦略・組織学修士号(MPhil)取得、シカゴ大学公共政策修士号(MA)取得、慶應義塾大学総合政策学部中退。

    【調査概要】

・調査方法:オンライン・サーベイ(Google Forms)

・調査期間:2024年6月1日(土) ~ 6月15日(土)

・回答方法:選択式、自由記述式

・有効回答:197名(女性起業家105名、男性起業家20名、その他メンターや投資家など関係者71名)

・調査内容:性別・年代などの基本属性、過去1年間のセクハラ被害経験、加害者属性、影響、報告行動、セクハラ発生の要因

【調査レポート】

調査レポート全文は、アイリーニ・マネジメント・スクールのウェブサイトからダウンロードいただけます。
https://ems.eireneuniversity.org/school-information/centers-institutes/sic/startup-ecosystem-sexual-harassment-2024/

【アイリーニ・マネジメント・スクールについて】

アイリーニ・マネジメント・スクールは、個人・組織・社会に有益な知識を提供する研究・教育機関です。持続可能な社会の実現に向け、ビジネスと社会的価値を両立する次世代リーダーの育成に取り組んでいます。附属機関のデザイン思考研究所はイノベーション促進のための知識・技法を提供し、ソーシャル・インパクト・センターは社会課題解決の研究と実践を通じてポジティブな社会変革を目指しています。

名称:アイリーニ・マネジメント・スクール 

代表:柏野尊徳 

所在地:東京都港区 

設立:2018年 

事業内容:研究教育

URL:https://ems.eireneuniversity.org/

【本リリースに関するお問い合わせ】

アイリーニ・マネジメント・スクール 
担当:柏野尊徳
メールアドレス:kashino@eireneuniversity.org

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会社概要

株式会社Eirene University

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業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都港区浜松町2-2-15-2F
電話番号
-
代表者名
柏野尊徳
上場
未上場
資本金
-
設立
2013年07月