ALEとJAXA、宇宙デブリ拡散防止装置の事業化に向けたJ-SPARC事業共同実証を開始
株式会社ALE(東京都港区、代表取締役社長/CEO:岡島礼奈、以下ALE)と宇宙航空研究開発機構(本社:東京都調布市、理事長:山川宏、以下JAXA)は、JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)において、宇宙デブリ対策(※1)のうち「人工衛星のミッション終了後に速やかに軌道離脱させる方法による宇宙デブリ拡散防止装置の事業化」に取り組んでいます。これまで実施してきたコンセプト共創を経て、この度、事業共同実証へ移行します。この事業共同実証では、ALEとJAXAが共同して、2021年度内に宇宙デブリ拡散防止装置を超小型衛星へ搭載し、宇宙空間での実証を行います。さらに、ALEは本実証後に装置の製造・販売の事業化を目指します。
この「宇宙デブリ拡散防止装置」は、カーボンナノチューブ(以下、CNT)電子源と導電性テザー(以下、EDT)を用いた世界初の装置(※2)です。この装置は、打ち上げ前の人工衛星に搭載され、人工衛星のミッション終了後に、長い紐を宇宙空間で展開し、地球磁場を使って人工衛星の軌道を変更するものです。人工衛星の軌道高度をより短期間で降下させることにより、人工衛星を地球大気に再突入・焼却廃棄することができます。
本事業共同実証では、これまでのコンセプト共創を踏まえ、ALEはCNT電子源を含めたEDT装置の開発・実証(※3)と当該実証用装置を搭載する超小型人工衛星の開発・打上・運用(※4)、及び販売事業に向けた準備を実施します。また、JAXAはEDTおよびCNT電子源の地上モデル製作とEDT軌道解析及びCNT電子源軌道上運用評価を実施します。
本事業共同実証で開発される装置を小型衛星に組み込むことで、今後急速な増加が予測される地球低軌道上に残存するミッション終了後の人工衛星を減らし、宇宙デブリとの衝突による危険な大量の破片デブリ発生を防止することが可能となります。ALEとJAXAは、宇宙デブリ問題への一つの取り組みとして本事業共同実証を進め、サステイナブルな宇宙開発への貢献を目指します。
【代表者コメント】
(株)ALE 代表取締役社長/CEO 岡島礼奈
ALEは世界初の人工衛星による人工流れ星に挑戦しているスタートアップ企業です。2019年には人工流れ星用衛星2機の打上げに成功し、現在軌道上で運用しています。人類の持続的な発展に貢献することを目指し、本装置を通じサステイナブルな宇宙環境作りに取り組んでまいります。豊富な研究開発実績を有するJAXAとの J-SPARC でのパートナーシップにより、開発のスピードを上げると共に、事業の早期実現が可能になると期待しております。
JAXA 新事業促進部 部長 岩本裕之
宇宙デブリ拡散防止装置は、ミッション終了後の宇宙機がデブリにならないよう、宇宙機自ら軌道を変更するための装置であり、この事業化は宇宙デブリ対策の大変意義深い取り組みの一つになると思います。J-SPARCとして初の事業共同実証案件でもあり、JAXAの技術研究成果が、民間宇宙事業に生かされ、持続可能な宇宙活動の実現に寄与することを期待しています。
(※1)宇宙デブリ対策をとりまく国際的な環境
宇宙デブリ対策の手段には、すでに軌道上にある宇宙デブリを取り除く方法(ADR:Active Debris Removal)(注1)や、人工衛星のミッション終了後に速やかに軌道離脱させる方法 (PMD:Post Mission Disposal)などが検討されています。ALEが開発している本装置は、PMDにあたります。世界各国及び国際機関では運用する宇宙機がデブリを低減するための方策を事業者に法令等で義務化する動きも出ており、その中でPMDへの期待も高まっています。
(注1)JAXAでは、総合的な宇宙デブリ対策に取り組んでおり、ADRの実現へ向けては、商業デブリ除去実証(CRD2:Commercial Removal of Debris Demonstration)を進めています。
商業デブリ除去実証: http://www.kenkai.jaxa.jp/research/debris/crd2/crd2.html
(※2)カーボンナノチューブ(CNT)電子源と導電性テザー(EDT)装置:
EDT装置は、長い紐(テザー)を宇宙空間で展開し、地球の磁場を使って人工衛星の軌道を変更する軽量な推進装置です。CNT電子源は、カーボンナノチューブを電界放出エミッタとして用いた電子放出デバイスであり、EDTとの組み合わせにより、効果的に軌道離脱ができ、高度低下に要する期間を大きく短縮できます。CNT電子源とEDTを組み合わせたPMD装置は世界初となります。
(※3)EDT装置の開発・実証:
ALEは、本装置開発・実証にあたり、EDT展開挙動の解析評価に知見を有する神奈川工科大学と連携し、軌道上におけるEDT展開時および軌道降下中における長尺物体の力学的挙動解析を共同研究します。
(※4)超小型人工衛星の開発・打上・運用:
ALEは、小型人工衛星システムの開発・運用の知見を有し、既に共同での人工衛星運用実績のある国立大学法人東北大学と連携し、本装置を搭載する超小型人工衛星の開発・運用を共同研究します。
*コンセプト共創活動着手に関するALEのプレスリリース(2019年2月)
http://star-ale.com/news/2019/02/28/000063.html
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