ドローンを活用した高高度飛行によるCO2濃度測定の実証報告と今後について
各大学等の専門家と株式会社東北ドローンによる高高度飛行CO2観測実証実験報告

株式会社東北ドローンは、合同会社ソラビジョンからの依頼により、東京大学 大気海洋研究所の今須良一教授を中心に東京都立大学、秋田県立大学、東北大学、矢野法務事務所などの専門家チームと連携し、ドローンを利用した東京都内、夜間、目視外、高高度と多くの許可・承認申請の対象条件を整え日の出前後に空中の二酸化炭素(CO2)濃度を測定する実験飛行を実施しました。

・実験概要
実施期間:3月17日、18日
場所:東京都内
使用機材:DJI Matrice 300 RTK

本実験では、ドローンに秋田県立大学生物資源科学部生物環境科学科 井上誠准教授が開発したドローン用の温室効果ガス測定システムを搭載し、最高到達点の700mから100mごとに30秒間ホバリングを行い100m以降は50m、25m、2m、離着陸地点のCO₂濃度データの計測を実施しました。

井上准教授によると今回利用した温室効果ガス測定システムでは地上500mを超える上空を観測したのはドローンでは初めての経験とのこと。

今回各所への夜間、目視外、高高度飛行の申請を担当した矢野法務事務所 矢野耕太代表によると地上1,000mレベルになると近隣の基地等からの要望で飛行時間を限定されたり、調整済みの許された飛行時間帯でも、飛行の実施・中止の都度連絡を要請され、初めてのことが多く、調整が困難を極めたとのこと。
また、弊社では測定装置をドローンに搭載するための測定装置マウントを3Dプリンターで設計、作成し
測定装置や付属品等の重量を鑑みドローンのペイロードを超えないようセンサーに干渉しないかつ、脚部の強度を保ちつつ軽量化を図り実現しました。

今回の検証や今後の展望について関係者からのコメント
東京大学 大気海洋研究所 気候モデリング研究部門 部門長 今須 良一教授
2025年度に打ち上げられる日本の温室効果ガス観測衛星GOSAT-GWやCO2観測用レーザレーダによる測定結果をより直接的な方法で検証できるようになり、今回の実験でこれらの手法の確立が一層進んだと考えております。
ドローン観測の弱点の一つは、測定の同時性であり、時間的に変化する気象要素などの空間的な広がりを捉えるためには、可能な限り短時間で測定を完了する必要があります。そのため、同時に多数の機体を飛ばすなどの方法が有効ですが、搭載するセンサーが高額の場合、費用がかさむことから、安価で高精度なセンサーの開発も同時に求められると考えております。
秋田県立大学 生物資源科学部 生物環境科学科 井上 誠准教授
まず、CO2を観測するための装置として、精度が高くかつ比較的軽量でドローンに搭載しやすい構造の装置を選択し、外気を吸引するために市販のダイアフラム式ポンプを採用、データロガーやバッテリーには小型の汎用品を用いることで、システム全体の軽量化を実現しました。
また今回、株式会社東北ドローン様に取り外し可能なマウントを設計していただいたおかげで、観測装置を機体から分離でき、標準ガスの吸入などの作業が楽になりました。
今回の観測と過去に秋田県内で実施してきたドローン観測の結果を比較すると、東京都内では人間活動による二酸化炭素濃度の増加・減少が顕著であるように感じ、地表から700mまでの観測ができたことで、地表面付近における高濃度の空気が、日の出とともに上昇していくことが示唆されました。
今後は上空1000mまでの到達を目指すために、さらなる軽量化を検討するとともに、ホバリング時間を短縮するなどの工夫をしていきたいと思います。さらに、都市域と森林地域でドローン観測を行い、二酸化炭素濃度の違いとその要因を解明することで、今後の温暖化対策につなげたいと考えています。
合同会社ソラビジョン代表 兼
京都大学 東南アジア地域研究研究所 連携准教授 渡辺 一生代表
東北ドローン様とは、ドローン元年と呼ばれた2016年以来のお付き合いになります。常に最先端を追い求め、最新機材の導入や困難な案件へのチャレンジなどを積極的に行い事業展開されています。
今回、ドローンを活用した都内におけるCO2観測のご相談をクライアント様からいただきプロジェクトチームの構成を考えるにあたり、真っ先に浮かんだのが東北ドローン様でした。すぐにご相談したところ、飛行許可申請、観測機器の治具開発そして現場対応などを快く引き受けていただきました。
弊社は、これまでの数多くのドローン運用経験および科学・学術的知見をベースとし、全国の業務提携パートナー様と共にクライアント様の実現したいアイディアを形にしてまいりました。
今回、都内・目視外・夜間・高高度という非常に困難な条件下においてドローンを安全に運航でき、学術的にも貴重な観測データが得られるという成果を東北ドローン様と共に得られたことを、非常にうれしく感じております。
株式会社東北ドローン 代表 桐生 俊輔

今回の実験では飛行前の準備に多くの時間を要し、特に使用機体であるM300のペイロード内に収まりつつ上空での突風にも耐えられる構造を持つCO2計測機搭載用の部材設計と強度確保が大きな課題となりましたが、優秀な技術スタッフの尽力により強度と軽量性を両立した部材の開発に成功しました。
当初は地上1000メートルまでの飛行を想定していたが機材の仕様上、垂直方向の電波伝搬効率が低く
都市部という環境も相まって外乱による伝送距離の低下が発生し、
結果として安全にドローンを運用できたのはおおよそ740メートル程度であったため今後はより長い
伝送距離を確保するために水平距離を確保できる場所の選定や電波伝搬効率を高める工夫が必要です。
東北ドローンは今後も、大学や研究機関をはじめとする多様なパートナーとの連携を積極的に推進し、ドローン技術による観測や計測を通じて、科学的知見の蓄積と社会的課題の解決に寄与する取り組みを継続してまいります。

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