「2024年 第45回本田賞」 ジェームス・G・フジモト博士が受賞

〜光干渉断層撮影(OCT)の開発と普及に貢献〜

公益財団法人 本田財団

 公益財団法人 本田財団(設立者:本田宗一郎・弁二郎兄弟、理事長:石田寛人)は、「人間性あふれる文明の創造」に寄与する研究成果に対し表彰を行う、日本初の科学技術分野における国際褒賞である「本田賞」を1980年に創設しました。
 45回目となる今年度の本田賞は、光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography、以下OCT)の開発と、眼科、心臓病学、生物医学研究におけるOCTの商業化および臨床応用に貢献したジェームス・G・フジモト博士(米国 マサチューセッツ工科大学 電子工学研究所 電気工学・コンピュータ学科エリフ・トムソン冠教授)への贈呈を決定しました。

 OCTは、超音波に類似したイメージング技術であり、光干渉を利用して反射光の位置と強度を測定し、顕微鏡と同等の解像度で生体組織や物質の表面下構造をリアルタイムに画像化します。この技術は、複数の医療分野だけでなく、基礎研究や製造にも応用されており、ファイバースコープや内視鏡、腹腔鏡と組み合わせることで、体内の撮影が可能です。従来の切除生検のように組織片採取を必要とせず、リアルタイムで画像化する「光生検」を実現します。

 フジモト博士は、OCTの技術開発を進めるにあたり、基礎研究、工学、臨床医学、産業をまたぐ学際的な共同研究チームを結成しました。1980年代後半、こうした取り組みは珍しく、医工連携による研究開発の先駆けと言える画期的なものでした。


 フジモト博士たちは、まず眼科医療へのOCT活用を目指しました。フジモト博士の研究グループに所属していたMD-PhD学生のデイビッド・ファンが、衛星光通信の専門家であるエリック・スワンソン博士、網膜および緑内障の専門家であるカルメン・プリアフィト博士およびジョエル・シューマン博士と緊密に協力して、OCT検査装置を発明しました。今では世界中の眼科医療において標準的に使われており、世界中で年間2,000万~3,000万件実施されています。加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、緑内障などの早期発見を可能にし、患者が不可逆的な視力低下を経験する前に治療ができます。

 また、冠動脈内の様子を詳細に評価できる血管内OCTは、MD-PhDの心臓専門医であった客員研究者マーク・ブレジンスキー博士が先駆けました。そして、眼科および心臓病学におけるOCTの商業化には、スワンソン博士が率いるスタートアップ企業と、医療機器会社からの産業投資が重要な役割を果たしました。現在、OCTの臨床応用を行うため、100を超える学術研究グループと企業が活動しています。

OCTは多くの医療専門分野において様々に応用されているOCTは多くの医療専門分野において様々に応用されている

 OCT装置による検査は、所用時間がわずか数秒で済むため、診断確定までの時間を大幅に短縮し、医療コストの削減にもつながるなど、現代の医療現場では欠かせない診断手法となっています。将来的には、眼鏡店、薬局、地域の診療所などで、糖尿病や神経系疾患、その他の全身疾患のスクリーニングにOCT装置が使用される可能性もあります。また心臓病学の分野においても、血管内OCTが心筋梗塞の治療で動脈にステントを挿入する際のガイドに用いる技術として普及しはじめており、近年の臨床研究では、治療後の合併症を減少させることが示されています。

 このように、OCT研究チームを率いて、OCTの提案から開発・普及まで一貫して貢献したフジモト博士の業績は、科学技術と人間性の調和および、人間環境と自然環境両方を大切にする技術「エコテクノロジー*」の重要性を財団設立時から長年標榜し主張してきた本田財団の設立基本方針に一致し、本田賞にふさわしい成果であると認め、同賞を博士へ贈呈することとなりました。

 本田賞の贈呈式は2024年11月18日に東京都の帝国ホテルで開催され、メダル・賞状とともに副賞として総額1,000万円が博士に贈呈されます。


* エコテクノロジー(Ecotechnology):エコロジーから想起される「地球にやさしい」という

限定的な意味合いを超え、社会における諸問題を解決するための手法として、常に“人間”を大切にし

「自然環境」と「人間環境」の両方との調和を目指す科学技術哲学


【本田財団について】

本田財団は、本田技研工業株式会社の創業者本田宗一郎とその弟・弁二郎の寄附金によって、1977年12月に設立されました。当財団では、「自然環境」と「人間環境」の両方を大切にする技術を「エコテクノロジー」と呼び、その発展と拡大を目指して、3つの活動に取り組んでいます。


①エコテクノロジーの概念に即して顕著な成果を達成した研究成果を表彰する国際褒賞「本田賞」

②現代社会が抱える種々の問題について解決のアイデアを議論し創出する「国際シンポジウム・懇談会」

③次世代を担う若い技術者・科学者リーダーを発掘育成する「Y-E-Sプログラム」


これらの活動を通じて、「人間性あふれる文明の創造に寄与する」ことを目指しています。


ご参考) 本田財団Web内「業績解説」をご覧ください。

https://www.hondafoundation.jp/commemoration/index/285/year:2024

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本社所在地
東京都中央区八重洲2丁目6-20 ホンダ八重洲ビル
電話番号
03-3274-5125
代表者名
石田寛人
上場
未上場
資本金
-
設立
1977年12月