【大学不登校になると8割が退学する?AIで中退予防ができる?】大学不登校の実情、データサイエンスとAIを用いた研究、中退予防の進むべき道とは。
大学不登校シンポジウム報告(認定NPO法人ニュースタート事務局主催)
認定NPO法人ニュースタート事務局(事務所:千葉県市川市、理事:二神能基)は、シンポジウム【コロナ禍の大学不登校 実態と解決法】(2022年8月29日、東京都)を開催しました。ゲストにはデータサイエンスとAIを使った大学中退予防の研究をされている、嘉悦大学教授の白鳥成彦先生をお迎えしました。大学不登校の現状、白鳥先生の研究成果、大学が今後考えていくべきこと、意外な結論など、シンポジウムで語られた内容をお伝えします。
シンポジウム登壇者(左より)二神能基(ニュースタート事務局理事)、白鳥成彦(嘉悦大学教授)、久世芽亜里(ニュースタート事務局スタッフ)
- <大学不登校から復帰できる人は、わずか14%>
1年生前期に不登校などの「退学予備状態」になったところから、後期に「通常状態」に戻って普通に通学できた学生は、たった14%しかいませんでした。
嘉悦大学教授の白鳥成彦先生が調査した数字です。
10%は退学し、残りの86%は「退学予備状態」が継続します。
その後は2年生前期などから復帰できる人も一部いますが、結局4年間のどこかで退学する人が大半です。
- <大学中退率は3%、予備軍の割合は不明>
「ひらく日本の大学」という朝日新聞と河合塾の合同調査では、2018年の結果は国立の中退率が3 .0%、私立が8.0%、平均で7%でした。
読売新聞による「大学の実力 2019」でも、国立が2.9%、私立が8.0%と似たような数字です。
不登校など中退のリスクが高い学生の割合は不明ですが、それ以上の数字になるはずです。
- <大学不登校は20年前から変わらない>
当時は大学不登校の出現率が3%と言われていました。
今は中退が3%ですから、不登校生の割合が上がっているのは間違いありません。
また「一度不登校になって卒業ができる割合は2割未満」という、20年以上前の香川大学の調査結果もあります。
不登校の割合が増え、大半が復帰できない状況は変わっていません。
大学不登校の問題は、20年以上変わっていないどころか、むしろ大きくなっているのです。
- <大学内、大学間でも、組織的な対応ができていない実情>
3%という数字は、「例外」と扱われてしまいます。
3%の人のために大学が組織を挙げて対策を講じるというのは難しいのが現実です。
また中退や不登校といったネガティブな情報は大学側がなかなか出さないため、大学間の共有もされにくくなります。
大学の中でも、そして大学間でも情報共有が進まず、多くのケースを知る機会もないため、教職員や相談員が個々の知見だけで対応しているのが実情と言えるでしょう。
- <中退予防に有効なのは早期発見と介入>
特にアメリカでは50年以上の研究の蓄積の中で、アラン・サイドマンによる中退防止の結論も発表されています。
それは、「早期発見(Early Identification)」と「介入(intervention)」です。
介入は、「迅速で(Early)、集中的で(Intensive)、継続的な(Continuous)介入」であることが必要です。
中退しそうな学生を早期に発見し、このような介入をするのが中退防止になる、というのが一つの結論です。
- <データサイエンスとAIで早期発見できる>
白鳥成彦先生は現在、データサイエンスとAIを使って、大学中退を予防する研究をされています。
高校のタイプと高校での欠席日数、大学1年前期の取得単位数と成績から、中退する可能性の高い学生を予測するのです。
現在は学生一人一人について、「この学生の中退確率は〇〇%」と出すことができます。
実際に検証した大学では、7割以上の中退した学生を予測できていました。
データサイエンスとAIが、中退リスクの高い学生を割り出してくれます。
「早期発見」とそれに伴う「迅速な介入」は、データサイエンス・AIによってほぼ可能となっているのです。
- <具体的な介入方法はデータサイエンス・AIでは分からない>
「集中的な介入」「継続的な介入」とは、具体的にどんな行動なのかが分かっていないのです。
そこには中退理由が複合的であることが挙げられます。
中退の理由には、学業の不振・学校生活への不適応・就職・経済面・病気など様々なものがありますが、1つだけというケースはめったになく、複数の理由が絡み合っています。
理由が複雑であるため、どういった施策が有効なのかの判断が難しいのです。
また大学への復帰率が2割を切っていることもあります。
この数字では「この対応で中退を回避できた」と言えるものは、ないも同然です。
データサイエンス・AIに必要な「ある程度の数の成功データ」がほぼ存在していません。
ここは人間がやっていかなければならない部分です。
- <レンタルお姉さんで自立はできるが大学復帰は……>
ニュースタート事務局は20年以上、「レンタルお姉さん・お兄さん」という呼称で引きこもりの方などの訪問支援を行っています。
訪問ののち寮生活も経てというケースも含めると、近年は訪問をした8割弱の方が最終的に就労できています。
大学不登校の方の支援実績もあり、やはりほとんどの方が就労し、自立していきます。
ですが自立できるほど働ける、元気な状態になっても、大学に復帰できる人はかなり稀です。
何とか復帰を果たしても、またすぐに不登校になってしまうケースもよくあります。
元気にする方法、自立につなぐ方法はあるのですが、やはりここでも大学に復帰する方法は見つかっていません。
- <問題を抱え込まないこと、情報の共有が大切>
大学不登校も、一人の教員や大学内で抱え込んでしまう傾向が長くありました。
今後は大学間の情報共有が大きなポイントになります。
中退者は学生のたった3%ですから、1つの大学の中ではデータの蓄積も進みません。
他大学の施策も参考になるでしょうし、大学以外の機関との連携も考えていく必要があります。
2年前に朝日新聞社が、オンライン・コミュニティ「朝日中退予防ネットワーク」を立ち上げました。
全大学を通して中退予防のメソッドをまとめる場所を目指し、白鳥成彦先生もファシリテーターを務められています。
今後活発に大学間の情報共有がなされていくことを期待します。
- <そもそも大学中退は予防しなくていい!?>
このような多様な時代の中では、3%と言わずむしろ3割くらいが大学を中退する方が、健全なのかも知れません。
現状では何とか退学せずにすんだ人たちも、大学で苦しい時間を過ごしていた可能性が否めません。
転学や、途中で働く、出産をはさんで復学するなど、様々な学び方あってもいいはずです。
4年ではなく、10年以上かけて卒業するのもいいでしょう。
そんな多様性を大学側が提供していくべきです。
大学の学び方を一つの形に決めてしまっているから、そこから外れる人が減るように、中退率を下げなければという考えになるのです。
どんな学びをどんな風に提供したいのか、それぞれの大学が考えて打ち出すことが、大学のアピールポイントにもなっていくはずです。
不登校や中退を気にしなくてもいい、学生一人一人に多様な選択肢がある社会になればと思います。
- シンポジウムの動画を視聴できます
より詳しい白鳥先生の研究内容や、ニュースタート事務局の訪問事例などもご覧いただけます。
https://youtu.be/hRew0J6FjqA
- 引きこもり・ニート講演会講演会【親には意外!?な自立への道】を10月8日より開催
10月8~30日の各土日に、【親には意外!?な自立への道】と題して、引きこもりから自立した2人の事例をご紹介する講演会を開催します。
引きこもっていたご本人やご両親の実際の言葉から、自立のヒントをお伝えします。
※当事者のインタビュー映像あり
開催場所:名古屋・船橋・土浦・宇都宮・さいたま・横浜・渋谷・八王子の8会場
対象:引きこもりでお悩みの親御さん、支援者など
ご参加:無料、要予約
詳細:https://www.newstart-jimu.com/archives/hikikomori_seminar_2022autumn/
- 認定NPO法人ニュースタート事務局について
これまでに1,600名を超える支援実績があります。
全国を対象とした訪問支援(レンタルお姉さん®️)、共同生活寮(現在20代~40代の30名在籍)、新しい生き方・働き方を考える「ニート祭り」の開催など、幅広く活動しています。
名称:認定NPO法人ニュースタート事務局
所在地:千葉県市川市宝2-10-18
電話:047-307-3676(10:00~17:30、水・日・祝祭日休み)
サイト:https://www.newstart-jimu.com/
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