開催レポート ロコモサミット2025 -Locomo Challenge to our Future-
新たなチャレンジ!「ロコモで2025年問題を解いていく」ために
ロコモ チャレンジ!推進協議会(所在地:東京都文京区、委員長:大江隆史、以下「本会」)は、2025年3月2日、「ロコモサミット2025」(以下「本サミット」)を開催いたしました。
本会では2010年の設立以来、日本国民の健康寿命延伸への貢献を目指し、様々なロコモティブシンドローム※1(以下「ロコモ」)啓発施策を行っております。ロコモは高齢者だけでなく子供や中高年の健康にも関わる全年齢的な課題であり、その原因や背景も様々であることから、予防や対策には多職種が連携し取り組んでいく必要があります。本会では整形外科専門医のみならず、運動器のがん診療や産業衛生、理学療法、栄養学の専門家もワーキンググループ(以下「WG」)に参画し、それぞれの専門性を活かしたロコモ啓発活動を企画運営しています※2。また、様々な組織・団体との連携や協働も行っています。
本サミットは、医療介護課題の一つの節目とされる2025年のタイミングで、「ロコモ啓発のこれから」に向けて、ロコモ対策に携わる関係者が最新の知見や活動の現状、新たな課題等について共有し、交流を深めることを目的としました。WGを含む本会委員、関係機関・団体、ロコモ啓発プロジェクトに取り組む高校・大学生ら約70名が参加し、発表や意見交換を行いました。
本会は、本サミットを契機にロコモ啓発活動ならびに対策を加速させるとともに、これらに取り組む関係者の連携強化、共創の場づくりにも寄与してまいります。

<ロコモサミット2025 概要>
【日時】2025年3月2日(日) 10:00~16:45
【会場】UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC) 東京都港区赤坂5丁目3-1 赤坂Bizタワー 23F
【参加者】本会・WG委員、日本整形外科学会、厚生労働省、保険者機能を推進する会、大宮シティクリニック、inochi Gakusei Innovators' Program(i-GIP)ほか 67名
<開催レポート>

本サミットは、年齢やジェンダー、国籍、職業、専門性などの垣根を超え、楽しみながら議論を深めていただくことを目指し、“WE ARE ALL BORN CREATIVE”をスローガンに掲げ、様々な研究・教育・プロジェクトを実施するUNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)にて開催いたしました。
プログラムは、“ハダシの越領域の対話の場”として設計された「MANDALA(マンダラ)」を主な会場とし、全員が靴を脱ぎ車座となって進行しました。
■ウェルカムノート 『ロコモティブシンドロームをめぐる、日本整形外科学会とロコモ チャレンジ!推進協議会のこれまでと今』

はじめに本会委員長 大江隆史が、約17年にわたるロコモの歴史を、印象深い思い出や苦労したエピソードなども交えながら振り返りました。
本会は、2007年12月に「ロコモティブシンドローム」が提唱されたことを受け、その予防啓発に関わるステークホルダーが相乗りできる持続的なプラットフォーム機能を担うため、2010年8月、日本整形外科学会の下部組織(任意団体)として発足しました。それ以来、日本整形外科学会とも連動し、ロコモ度テストの開発や臨床判断値の発表、1万人対面調査による国民の実態把握、「ロコモ年齢」の開発、直近では大規模インターネット調査から明らかとなったロコモの兆候「ロコモサイン」を示すなど、様々な啓発活動を行っています。これらの取り組みはメディアに多数取り上げられているほか、フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言の発出(2022年)や、国民の健康目標である健康日本21(第三次)に「ロコモティブシンドロームの減少」が掲げられるなど、ロコモ対策の重要性は着実に社会に認識されてきています。
近年では、高齢者を含む勤労層に対する「長く働き続けるためのロコモ対策」にも力を入れ始めていることを“現在地”としてお伝えし、新たな切り口でさらなる啓発の輪を広げていきたいとの抱負で締めくくりました。
■キーノート 『ロコモ体験1年生の立場から』

社会保障の観点から2025年問題やロコモに関する課題への理解を深めるため、厚生労働省 保険局 医療介護連携政策課 保険データ企画室長補佐 菊地博史様から、医療保険制度や医療費の現状、健康保険組合の財政構造などについてご解説いただきました。加えて、ご自身のロコモに関する経験談と、ロコモ啓発に対する思いもお話しいただきました。
社会保障の仕組みや高齢者の医療費課題に関しては、報道などを通じ目や耳にすることは多いものの、十分に認識・理解している方は多いとは言えないかも知れません。参加者の多くにとっても貴重なインプットの機会となり、「意外と知らないことに気付かされた」「今後は、社会保障の視点も活かしたロコモ対策を考えていきたい」といったコメントが挙がりました。
■ワーキンググループからのインプット
本会の4つのWGの代表者が、ロコモに関する最新のトピックスや取り組み内容などについて発表しました。
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がんロコモWG
『がんロコモ診療は生命予後も改善する?』

篠田裕介委員(埼玉医科大学病院 リハビリテーション科・緩和医療科/埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーション科 教授)より、がんロコモの概論と、実際の症例を交えたがんロコモ診療の実際とその意義についてお話ししました。
『がんを乗り越える運動の力~「がんエクササイズプログラム」の開発と活用~』

五木田茶舞委員(埼玉県立がんセンター 整形外科/希少がん・サルコーマセンター 科長兼診療部長/副センター長)からは、がん患者さんおよびがん予防における運動の効果やエビデンス、がん患者さんでも安全に行えるがんエクササイズの普及の取り組みをご紹介しました。
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理学療法WG
『ロコモ度テストの開発とその展開-立ち上がりテストと2ステップテスト-』

村永信吾委員(亀田メディカルセンター リハビリテーション事業管理部 部長)より、ロコモ度テスト開発の経緯や意義が解説されました。
『ロコモティブシンドロームに対する理学療法士の取り組み』

藤田博曉委員(帝京科学大学医療科学部 東京理学療法学科 教授)からは、現WGメンバーの具体的な研究内容や取り組み事例についてご紹介しました。
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栄養WG
『入院患者の栄養問題』

若林秀隆委員(東京女子医科大学病院 教授/基幹分野長)から、高齢入院患者さんにおける低栄養・サルコペニアの実態や、栄養からみたロコモの課題と栄養管理の実際、「サルコペニア・フレイルの予防に関するヘルスケアサービスのためのガイドライン」のポイントなどを解説しました。
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勤労者ロコモWG
『勤労者ロコモWG報告』

中村英一郎委員(産業医科大学病院 脊椎脊髄センター 部長・准教授)より、勤労層、特に高齢労働者のロコモに取り組むべき背景と実態および転倒リスク等の勤労者ロコモに関する調査研究結果の解説、WGの今後の展開についてお話ししました。
■関係団体様のお取組み紹介
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保険者機能を推進する会
『健康保険組合におけるロコモ予防のとりくみについて』

若林国弘様より、現状の健康診断と保健指導における課題や、ロコモ・フレイル対策を含む新たな健康課題への取り組みの必要性をお話しいただきました。
安本文様からは、実践例としてパナソニック健康保険組合の転倒・ロコモ予防対策についてご紹介いただきました。

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医療法人大宮シティクリニック
『ロコモ度テストがアップデートする日本の健康 ~人間ドック3.0へ向けて~』

中川良理事長から、健診クリニックでのロコモ度テスト運用の先進事例としての自院での取り組みについての報告がありました。2016年からの継続する人間ドック全例に行われたロコモ度テストのビッグデータをもとに、中年層からのロコモの成り立ちとメタボリックシンドロームの関係が示されました。そして、予防医療にとってのロコモ度テストの重要性とそれを広めるための提案が成されました。
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inochi Gakusei Innovators' Program 「ポツンと四国。」
『若い時からのロコモ対策で生涯歩き続けられる体を』

大学生をメンターとした中高生2~4名がヘルスケア課題の解決を目指す教育プログラム inochi Gakusei Innovators' Program(i-GIP)に参画された浜田智也さん(徳島県立城之内中等教育学校 5年、2025年3月時点)から、ロコモ認知度の低い若年層に対する啓発アイデアと、社会実装に向けた取り組みについて発表していただきました。
i-GIPの2024年度のテーマは「ロコモティブシンドローム対策で、生涯自由な生き方を。」であり、本会はその全国大会であるinochi WAKAZO Forum 2024に協賛しました。浜田さんらは上記大会の優勝チームです。詳しくは、以下をご参照ください。
■質疑応答/全体ディスカッション
各スピーカーに対し多くの質問が挙がり、「ロコモ度テストのさらなる普及のためにはどのような働きかけが必要か?」や「生活習慣病としてロコモを捉えることについて」などのディスカッションも活発に行われました。


■クロージングスピーチ

最後に、公益社団法人日本整形外科学会 中島康晴理事長が本サミットの総括を行いました。
「ロコモをとことん語り尽した一日で、また、多くの新たな切り口も見せていただいた」とし、「本サミットを機に関係者皆がより強く連携し、持ち帰った内容を次のロコモ対策につなげていっていただきたい。ロコモがさらに社会に浸透し、健康寿命延伸に寄与することを祈念する」との激励で締めくくりました。
■「さあ、にぎやかにいただく」お弁当と栄養WGの取り組みについて
本サミットの昼食には、フードカルチャー誌『RiCE』(https://www.rice.press/)プロデュース、料理家 まき あやこさん考案の「さあ、にぎやかにいただく」お弁当をご提供し、ロコモ対策として多様な食品群を摂取することの重要性を、参加者の皆様においしく“味わって”いただきました。

「さあにぎやかにいただく」は10の食品群の頭文字をとったもので、本会が考案した合言葉です。10の食品群の摂取頻度から「食品摂取の多様性スコア(Dietary Variety Score、以下「DVS」)」(10点満点)が求められ※3、ロコモ予防にはDVS 7点以上が推奨されます。栄養WGにはDVSを開発した東京都健康長寿医療センター研究所(当時)の新開省二委員、成田美紀委員らも参画しており、2013年の設立以来、日本栄養改善学会での合同シンポジウム(日本整形外科学会、日本骨粗鬆症学会、日本栄養改善学会の共催)やメディア等を通じて、ロコモに関する栄養学的なエビデンスや栄養改善の啓発を進めています。
当日は、石橋英明副委員長が栄養WGのあゆみを紹介し、ロコモにおける栄養の重要性を改めて解説するとともに、「「さあにぎやかにいただく」は本会会議に出席するための電車移動中に考案したものだった」という合言葉の誕生秘話も明かしました。
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「さあ、にぎやかにいただく」お弁当


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お献立
さ(さかな):鮭の自家製レモン麹グリル
あ(あぶら):揚げ物のおかず 桜えびとブロッコリーのチーズコロッケ
に(にく):鶏のつくね/鶏ももの自家製味噌グリル
ぎ(ぎゅうにゅう):牛乳と牛蒡のスープ 抹茶とオレンジのオイル
や(やさい):小松菜とひじきの和物
か(かいそう):同上
い(いも):揚げ物のおかずに含む(じゃがいも)
た(たまご):塩水たまご
だ(だいず):金柑の白和(豆腐)
く(くだもの):同上
実山椒ごはん/トマトハリッサの白滝炒め/花豆のスパイス煮
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まき あやこさん プロフィール

料理家
Food coordinator / stylist / Food producer / Catering team Perch 主宰
多彩なメンバーでお弁当とケータリングを中心に活動
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まき あやこさん コメント
「さあにぎやかにいただく」を日々の食事に取り入れることを重視し、ごちそうではなく敢えてカジュアルな献立としました。食材も身近で気軽に買えるものですが、少し面白い組み合わせにしているのがポイントです。また、ビタミンKを補うためにスープに抹茶オイルをあしらうことを考案したのですが、こうした味も栄養も補える“ちょい足し”のアイデアも、食事の豊かさを考えるうえで大切にできたらと思います。今回のお献立を作り上げていく中で、「栄養素のバランスの良さはおいしさにもつながる」という発見がありました。私たちの今作っているお弁当もこの視点で振り返ってみたくなりました。
■ロコトレ、ストレッチの実践について
休憩時間には理学療法WGの新井智之委員、松本浩実委員の指導の下、参加者全員でロコトレ※4(スクワット、ヒールレイズ)や座ってできるストレッチ運動を行いました。長時間の座位による運動器への負担を解消し、心身ともにリフレッシュするだけでなく、2人1組で取り組むプログラムでは新たな会話も生まれていました。


■参加者の声
事後アンケートによる参加者の満足度は100%(「大変満足」「やや満足」計)となり、多くのコメントもいただきました。以下に一部をご紹介いたします。
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本会に関わる多様な関係者の皆様と情報交換、交流できる貴重な機会でした。今後も定期的に開催いただけると良いと思いました。
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ロコモが提唱された歴史から現状の取り組みまでが端的に述べられており、ロコモへの理解が進んだと思います。学術的な側面はもとより、各講師の経験談や感性などの想いを共有、共感できたことがこれからの取り組みへのモチベーションになりました。
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車座形式でのセッションで、参加者が非常に和気あいあいとして一体感があったと思います。ロコモという課題に対して全員が同じ方向を見て解決の方策を探っている様子は、学術・課題解決の場のあるべき姿として大変感銘を受けました。
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熱い先生方のお話はとても面白く、もっともっと聞きたい!と思う内容でした。
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色々な分野の人が一同に集い、膝をつき合わせて話を聞き、新たなものを作り上げていくための交流を持つにはぴったりの今っぽい会場で感動しました。
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発表された方たちの活動の様子を伺っていて、私たちの活動がまたまだ不足していることに気づきました。このような多職種の交流は、自分たちの活動を高めるのに非常に有益なものとなりました。
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健康日本21が挙げるロコモに関する数値目標を達成するために、我々ができることを具体的にしていきたいと思います。
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ロコモの取り組みの全体感が見えてきたことで、自分たちの取り組みの位置づけが理解できたように思いました。またロコモは多職種で取り組める共通の概念だなということをあらためて感じることができました。これらの取り組みを多省庁の方々も交えた取り組みの輪へと広げることができれば、更なるロコモ啓発に繋がると感じました。
※1:ロコモティブシンドローム(運動器症候群)。運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態。進行すると介護が必要になるリスクが高まります。
※2:協議会ならびに各ワーキンググループメンバーについて https://locomo-joa.jp/about
※3:熊谷ら, 日本公衆衛生雑誌 2003
※4:https://locomo-joa.jp/check/locotre
参考資料
<運動器図解>

左の図は運動器を図解したものです。運動器とは身体活動を担う筋・骨格・神経系の総称であり、筋肉、腱、靭帯、骨、関節、神経(運動・感覚)、脈管系などの身体運動に関わるいろいろな組織・器官によって構成されており、その機能的連合が運動器です。筋・骨格・神経系の組織・器官にはそれぞれに独自な作用・機能がありますが、それらが密接に連動・連携して運動器としての役割を発揮しています。
<公益社団法人日本整形外科学会について>
日本整形外科学会は1926年(大正15年)、「整形外科学に関する研究発表、連絡、提携および研究の促進を図り、整形外科学の進歩普及に貢献し、もって学術文化の発展に寄与すること」を目的に設立されました。平成23年4月1日に公益社団法人日本整形外科学会となりました。その目的は「整形外科学及び運動器学について調査、研究を行い、整形外科学及び運動器学の進歩普及に貢献し、もって国民の健康、疾病の予防、スポーツ医学等を通じた国民の心身の健全な発達、障害者の支援、高齢者の福祉の増進及び公衆衛生の向上に寄与すること」です。目的を達成するために行う事業として、研究の奨励及び調査の実施、専門医及び研修施設の認定、医療保険制度・介護保険制度・障害者(児童)福祉制度に関する調査・研究及び提言、一般市民向けの広報などがあります。学会がめざすところは、運動器の機能の維持・改善を支援することです。そして、このために必要な診断能力をもち、適切な医療を提供することができる専門医を育成することです。適切な医療には運動療法や薬物治療などの保存的治療、そして手術治療を含みます。日本整形外科学会は、公益社団法人として今後一層、整形外科学、運動器学の発展に寄与してまいります。
<ロコモ チャレンジ!推進協議会について>
ロコモティブシンドロームを、医療・企業・行政の枠を超えて社会的に取り組むテーマであると考え、広くロコモを啓発し、ロコモに負けない社会をつくるため、日本整形外科学会と株式会社博報堂が立ち上げた任意団体です。(委員長:大江隆史、所在地:東京都文京区本郷2-40-8)。「ロコモ チャレンジ!推進協議会」では、ロコモティブシンドロームに関する正しい知識の普及と予防意識の啓発を行います。協議会では、会員企業・団体を募り、連携のうえロコモ予防を社会運動化していきます。
■活動内容:
―ロコモティブシンドロームの予防・啓発のための広報活動
―「ロコモ チャレンジ!」のワード、ロゴマーク使用の認証管理
―「ロコモ チャレンジ!」公式WEBサイト、ロコモONLINE(http://locomo-joa.jp)の運営・管理
―会員企業・団体と連携した広報活動 等
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