血液に潜むTARC(タルク)と皮膚の赤みの関係を解明 ~ポーラ化成、世界的に権威ある化粧品技術者学会にて発表~
皮膚はなぜ赤くなるのかに着目
論文タイトル
『アトピー性皮膚炎ではない健常人における「皮膚の赤み」と「胸腺活性化制御ケモカイン(TARC※1)」の関係、およびTARCを介した皮膚の赤み改善への提案』
英文タイトル:“Relationship between skin redness and thymus and activation-regulated chemokine (TARC) in healthy people without atopic dermatitis, and suggestions for improving skin redness via TARC”
※1 白血球走化作用を持つケモカインの一種。炎症反応を惹起すると考えられる。
発表者: 多田明弘、服部祐子、津田絢斗、宮﨑博隆 株式会社ポーラ POLAイノベーションセンター
発表内容概要
アトピー性皮膚炎とTARCに関する研究はこれまでに多く行われてきていますが、健常人におけるTARCと皮膚の赤みとの関係性については、いまだ明らかにはなっていません。そこで、皮膚の赤みとTARCの関係性が明らかになれば、TARCを介した皮膚の赤み改善を提案できるのではないかと考え研究を行いました。
【研究で分かったこと】
血液を介して体中をめぐるTARCに着目し、皮膚の赤みとの関係を検証すると、次の3点が明らかになりました。
健常人においても、血清中TARC量が多いと、皮膚の赤みが強いことが判明(図1)。また、赤みが強いと明るさが低い傾向にあることから(図2)、皮膚の明るさについてもTARC量との関係を調べると、実際にTARC量が多いと明るさが失われる傾向が捉えられた(図3)。
アーティチョーク(Cynara scolymus)の葉から抽出したエキスに、TARC産生を抑制する作用がある(補足資料1)
アーティチョーク葉エキスを配合した飲料を摂取することで、血清中TARC量が抑えられ、肌が明るくなる (補足資料2)
【展望】
この研究により、健常者における皮膚の赤みの一因が解き明かされました。TARCに着目したケアを取り入れることで、皮膚の赤みを防ぎ、明るい肌を手に入れることが期待されます。
本研究では、血液中の成分に視野を広げることで「健常人の皮膚の赤みの一因が血液にある」ということを発見しました。ポーラでは、化粧品との相乗効果を実現すべく、今後もさまざまな側面から研究を積み重ねていきます。
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【補足資料1】アーティチョーク葉エキスの TARC産生抑制効果
ヒトの血液に含まれるヒト末梢血単核球※2を使ってアーティチョーク葉エキスのTARC産生抑制効果を評価しました。ヒト末梢血単核球に刺激因子であるインターロイキン(IL)-13を添加するとTARC産生量が増加します(379.44±22.43 pg/mL)。一方、IL-13と同時にアーティチョーク葉エキスを添加するとTARC産生量は146.10±9.62 pg/mLとなり、1/2以下にまで抑制されました。(図4)。
※2 ヒトの末梢血から分離された単球やリンパ球を含む単核球(単核細胞)
【補足資料2】アーティチョーク葉エキス含有飲料の効果
28~39歳の日本人女性(30名,平均年齢32.80±3.01歳)に、アーティチョーク葉エキス含有飲料(1本30 mL、アーティチョーク葉エキスは0.15 mg/mL含有)を1日1本10日間摂取してもらいました。摂取前と摂取後に、血清中のTARC量と背中の肌の明るさを測定しました。血清中TARC量は、飲料摂取前では268.6±121.07 pg/mL、摂取後は243.2±112.50 pg/mLであり、有意に減少しました(図5)。背中の肌の明るさ(L*値)は、摂取前66.80±3.24、摂取後67.32±3.19と、見た目に差が感じられる程度に、有意に増加しました (図6)。
【補足資料3】POLAイノベーションセンターについて
株式会社ポーラは2022年7月より本社内に「POLAイノベーションセンター」を発足しました。サイエンス&テクノロジーを武器にオープンイノベーションを推進し、新たな価値の創出を実現していきます。
【補足資料4】IFSCCについて
IFSCC世界大会は、世界中の化粧品技術者・研究者にとって最も権威のある学会で、最先端の化粧品技術が披露されます。応募論文はIFSCC の厳正な審査を受け、選ばれたものだけに発表が許されます。今回は口頭で78件、ポスターはそれを大きく上回る多数の発表が予定されています。
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