「更年期×睡眠」経産省採択研究発表 働く更年期世代女性の約7割が不眠の症状を有する可能性 本プログラム参加者の93%はセルフケアにより更年期・睡眠の不調が改善
~更年期の基礎知識や症状チェック、セルフケアがわかる「更年期Handbook」を制作~
<調査サマリー>
1.働く更年期世代女性の約7割が不眠の症状を有する可能性(アンケート調査結果)
2.更年期症状が重い人は不眠症状も重い(アンケート調査結果)
3.セルフケアを取り入れている人と取り入れていない人では理解度のみに差があり、自覚症状による更年期症状や不眠症状の重さには差がなかった。
4.自身へのより深い認知と適切なセルフケアを促す本プログラムによるセルフマネジメント力の向上は、睡眠と更年期の不調の主観的な改善につながる可能性がある。
<調査概要>
・調査期間:2023年7月28日〜2024年1月31日
・調査対象:
①働く40-59歳の女性200名
②更年期症状や不眠に関して軽〜中程度の症状がある働く40-59歳の女性 30名
・調査方法:アンケート調査
調査対象②の30名をA群(動画による更年期についての学習+睡眠計測とB群(動画による更年期についての学習+睡眠計測+カウンセリング+セルフケア用品提供)の2群に分け、2群間でセルフマネジメント力(認知行動)、および更年期の不調や睡眠の改善の程度の違いを比較した。更年期症状・不眠・心理・認知行動に関する主観アンケートとシート型の睡眠計測センサーによる客観データを用いて、対策開始前1か月から開始後1か月の変化を評価した。
調査内容詳細は以下に記載
研究背景
近年の調査によると、日本の働く女性およそ3,000万人の中で、45歳から54歳の「更年期世代」がおよそ4分の1を占め、推定約750万人に上ります。
この更年期世代の中で、更年期症状が原因で仕事に何らかのマイナスの影響が生じた人は、専門家の推計によれば100万人を超えており、俗に「更年期ロス」と呼ばれています。特に「更年期離職」による経済損失は女性で年間およそ4,200億円に上るとのデータが示されており、これは様々な調査データに裏打ちされています。他方、経済損失の計算式では浮かび上がってこない更年期の不調状態も多くあることも想定されます。
また近年の調査により「更年期障害を抱える女性が不眠に悩んでいる」といった傾向が浮かび上がっています。しかし、女性の更年期症状と睡眠の関係性については未だデータとして不明瞭なことも多い現状があります。今後、更年期に働く女性が増えていくことが見通される中、より健やかに働くことができる組織・社会への一助となるべく、更なる実態を明らかにする必要性を感じました。
今回の調査では「女性の更年期と睡眠」に焦点を当て、より具体的なデータを提示することで、個人の努力による改善のみではなく、社会・組織による包括的かつ有益な支援策の構築に寄与することを目指します。
<調査内容詳細>
1.働く更年期世代女性の約7割が不眠の症状を有する可能性(アンケート調査)
働く40-59歳の女性200名にアテネ不眠尺度*を用いて不眠度を調査したところ、[4〜5点],[6点以上]を合わせて、約7割が不眠症の可能性があるということがわかりました。
また、アテネ不眠尺度の個別質問項目の回答では、全体の約8割が「睡眠時間が足りていない」「睡眠の質に不満がある」「日中の眠気があった」と答えました。
*アテネ不眠尺度:世界保健機関(WHO)が2000 年に作成した世界共通の睡眠評価法。6 点以上は不眠の可能性が高い(24 点満点)。質問は以下の8項目。
①寝床についてから実際に寝るまで、時間がかかりましたか?
②夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?
③希望する起床時間より早く目覚めて、それ以降眠れないことはありましたか?
④夜の眠りや昼寝も合わせて、睡眠時間は足りていましたか?
⑤全体的な睡眠の質について、どう感じていますか?
⑥日中の気分はいかがでしたか?
⑦日中の身体的および精神的な活動の状態はいかがでしたか?
⑧日中の眠気はありましたか?
2. 更年期症状が重い人は、不眠症状も重い(アンケート調査結果)
簡略更年期指数*を用いて更年期症状について調査したところ、医師の診察が推奨される51点以上が19%(38人)という結果でした。
*簡略更年期指数:日本人の更年期女性特有の症状の有無や程度を把握する指数(100 満点)。質問は以下の10項目。
①顔がほてる
②汗をかきやすい
③腰や手足が冷えやすい
④息切れ、動悸がする
⑤寝つきが悪い、又は眠りが浅い
⑥怒りやすく、すぐイライラする
⑦くよくよしたり、憂うつになることがある
⑧頭痛、めまい、吐き気がよくある
⑨疲れやすい
⑩肩こり、腰痛、手足の痛みがある
また、上記質問のうち全員が「寝つきが悪い、または眠りが浅い」「疲れやすい」を選択しました。
このように、更年期症状が重い人全員が睡眠の悩みを抱えていたため、統計的に睡眠と更年期症状の間に相関関係があるか分析したところ、正の相関が見られました(相関係数:0.69)。
これにより、「更年期症状が重い人は、不眠の症状も重い」ということがわかりました。
3.セルフケアを取り入れている人と取り入れていない人では理解度のみに差があり、自覚症状による更年期症状や不眠症状の重さには差がなかった。
働く40-59歳の女性への調査で「ご自身が何らかの症状を抱えている場合、ご自身にあったセルフケアを継続的に(1カ月以上)取り入れていますか。」という質問をしたところ、「症状を抱えていない」と回答した人を除いた99名の中で、セルフケアを「取り入れている」人と「取り入れていない」人の違いは、アテネ不眠尺度、簡略更年期指数、GSM、ストレス、家事などの負担では見られず、「更年期症状や不眠症状に関する理解度」だけに統計的な有意差が見られました。
つまり、セルフケアを実施している人は理解度が高いが、必ずしも更年期症状や不眠症状が軽いわけではないことが分かりました。そのために、自身の状態についてのより深い認知と適切なセルフケアの実施を後押しできるようなプログラムを開発する必要があることが分かりました。
※働く40-59歳の女性への調査で「ご自身が何らかの症状を抱えている場合、ご自身にあったセルフケアを継続的に(1カ月以上)取り入れていますか。」に対して、「症状を抱えていない」と回答した人を除く99名
*GSM:GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)における主な症状に関する主観的評価で点数化。(27点満点)
*ストレスの原因因子:参照「厚生労働省「3分でできる職場のストレスセルフチェック」」。28点以上は要注意と判定。(0~36 点)
*ストレスによる心身反応:参照「厚生労働省「3分でできる職場のストレスセルフチェック」」。26点以上は要注意と判定。(0~33 点)
*家事・育児・介護・家計の負担:以下、3個の質問に対する回答を数値化し、家事・育児・介護・家計の負担度合いを数値化
①「就労と両立して行っているものがあれば教えてください。」
その他労働はない:0、育児・介護など各要素2,ただし「家事は中心が誰か」の次の質問で採点
②「家事の中心は誰ですか。」自分:2、半々:1、他人:0
③ 家計の中心:自分:2、半々:1、他人:0
*「理解度」は以下3個の質問に対する回答を最大9点で数値化。
・更年期の生物学的女性の身体の仕組みを理解していますか
・更年期の症状が現れた際の対処法を理解していますか
・更年期の症状が仕事にも影響を及ぼし得ることを理解していますか
4. 自身へのより深い認知と適切なセルフケアを促す本プログラムによるセルフマネジメント力の向上は、睡眠と更年期の不調の主観的な改善につながる可能性がある。
知識を身につけ(理解度向上)、自分の心身の状態を知り、適切なセルフケアに取り組む「セルフマネジメント力*」は、睡眠と更年期の不調にどのような改善効果をもたらすのか。40 〜59 歳で更年期症状や不眠に関して軽〜中程度の症状がある働く女性30名を対象に、約1ヶ月間の「更年期の不調改善プログラム」を実施しました。
*セルフマネジメント力:更年期に関する知識・状況に対する認知・それに対する行動(セルフケアの実施)を主観的評価で点数化(32 点満点)。
参加者30名を半数に分けて、A 群には「❶基礎知識のための動画視聴」と「❷睡眠計測」を、B 群には❶、❷に加えて「❸専門家のカウンセリング※」、「❹自分にあったセルフケアの実施」を実施し、プログラム実施前後にアンケート調査を行い、セルフマネジメントが女性の心身にもたらす効果を測定しました。
(※メノポーズカウンセラーによる更年期に関するカウンセリングと睡眠改善企業NTT PARAVITA睡眠改善アドバイザーによる睡眠カウンセリングを実施。メノポーズカウンセラーは、更年期やエイジングの最新の医療を学び、知識と技能を高めることで、ヘルスケアの質の向上に貢献することが目的の「更年期と加齢のヘルスケア学会」が認定する資格。 エイジング(加齢)に関する的確な情報を紹介し、事前に何を準備すべきか、日頃の生活で取り組める手だてを伝える役割を担っている。)
実施後のアンケート調査の結果から、B群の93%*(14人)が更年期の不調について「改善効果があった」と認められました。
*以下4つの質問いずれかにおいて、ややあてはまる/あてはまるへの回答が1つ以上あった人の割合。回答を数値化。
・使用された方はアロマは睡眠改善や更年期症状の改善に効果があったと感じましたか。
・使用された方はウォッシュやオイルは睡眠改善や更年期症状の改善に効果があったと感じましたか
・更年期カウンセリングは睡眠改善や更年期症状の改善に効果があったと感じましたか
・睡眠改善カウンセリングは睡眠改善や更年期症状の改善に効果があったと感じましたか
また、「セルフマネジメント力」、「簡略更年期指数」、「アテネ不眠尺度」をA群・B群ともにプログラムの実施前後で比較したところ、B 群にセルフマネジメント力の向上、簡略更年期指数の改善傾向、アテネ不眠尺度の改善が見られました。
特に、アテネ不眠尺度については、「6点以上:不眠症の可能性が高い」から「3点以下:睡眠が取れています」まで大幅な改善が見られました。これは、対面によるカウンセラーとの会話により不要な不安が取り除かれたり、改善したいという意欲がより高まったりしたことが要因の一つとして考えられます。なお、アテネ不眠尺度がA群でも改善された要因としては、睡眠計測により自分の睡眠と生活パターンの関連を意識するようになったことが影響した可能性が考えられます。
更年期を含む女性の心身にまつわる知識を身につけ、不調の原因を認知し、認知した原因に応じたセルフケアを日々の暮らしに取り入れるセルフマネジメント力の向上は、睡眠と更年期の不調の主観的な改善につながる可能性があるとわかりました。
<個別の客観データについて>
睡眠計測データ全体では統計的な有意差は出なかったものの、数名「カウンセリング実施後に中途覚醒や起床が減少し、睡眠状態が大きく改善した」という結果がでました。全体で有意差が出なかった理由としては、自分の睡眠に対する認知が変わったことで客観データは変わらなくとも睡眠感に変化が起こったり、体動による睡眠計測センサーでは正確に計測できないような睡眠の深さに変化があったりしたモニターがいた可能性が考えられます。他方、睡眠データで効果が見られた数名については、睡眠習慣をしっかり改善できたことが要因と考えられます。客観データで改善された下記の例では、離床回数が1回減少、中途覚醒が30分以上減少、就床時間に対する睡眠時間が増えたことにより、睡眠効率*が上がりました。
*睡眠効率:就床時間のうち実際に眠っている時間の割合
【参考】今回実施したオリジナルセルフケアプログラム内のセルフケア例について
参加者の症状や特性に応じて、カウンセラーと相談したセルフケアを実施しました。
以下は、その一例です。
・アロマディフューザーとピローミストの使用〈全員共通〉
・デリケートゾーン専用ソープと専用オイルの使用〈全員共通〉
・骨盤底トレーニングの実施
・ストレッチ など
研究を通した考察
令和の時代において、人口減少や女性の活躍推進がクローズアップされる中、企業や組織における管理職やマネージメント職に就く40代~50代の女性が直面する「更年期における健康課題」は、関係者や社会に適切な知識が行き渡っておらず、また社会的な注目も乏しい状況です。
今回の研究結果により、不眠の辛さが更年期症状の深刻さと連動していることや、睡眠計測やカウンセリングを通して「自分と対話し、自分の症状を知り、行動(ケア)する、セルフケア」が睡眠と更年期の不調の主観的な改善につながること可能性があることがわかったことは、重要な進展であると感じています。
一方で、多くの女性が「セルフケアする時間や余裕が不足している」という課題もヒアリング等から浮かび上がっています。これらの課題を解決し、女性の更年期不調に対処していくためには、当事者のセルフケアと同時に、企業、自治体また国による支援や発信など社会全体で「環境づくりに取り組む」ことが必要であると考えています。
今回の実証研究では、これらの課題解決の一翼を担うべく、女性個人だけでなく社会全体に理解を促すため、『更年期Handbook』を制作・発行します。しかしながら、これに留まらず、女性が更年期を健康に過ごし、社会がより豊かになるようなアクションを今後も継続していきたいと考えています。
本実証事業 協力関係者からのコメント
・総合医療監修:広尾レディース 院長・医学博士 宗田 聡先生
40〜50代の女性は誰もが、女性ホルモンが急激に減少していくことで、心身の様々な不調を経験します。多くの方は、運動や食事の工夫、サプリメントなどでひどくならずに過ごすことができますが、人によっては仕事や日常生活に支障がでる「更年期障害」となって、婦人科を受診し治療しています。今回の実証をみると、睡眠など自分自身の身体について正しい知識を得て、きちんとセルフケアすることで、更年期の症状の多くが改善されることがわかりました。日々の生活にしっかりセルフケアを取り入れて心身のメンテナンスをすることにより、更年期を健やかに過ごすことができ、仕事や生活のパフォーマンスを維持することができます。もちろん、症状が改善せず辛い時は、できるだけ早めに専門家(婦人科)に相談して、適切な治療を受けることも大切なことです。
・更年期と加齢のヘルスケア学会認定 メノポーズカウンセラー:吉川 千明さん
カウンセリングを通じて、多くの女性が想像以上に体調を崩しており、上司や会社はその現実や危険性を知らないと痛感しました。また、更年期に関する知識が不足していることや、大きな病気でなくても日常の肌荒れや陰部のかゆみなども日々のQOLに大きく影響していることもわかりました。今回の研究では、カウンセリングを通じて参加者お一人お一人のお話をよく聞き、不調の状態と原因を理解することで、更年期の知識をインプットしながら適切なセルフケアのアドバイスができました。そして、これによって、症状が改善する傾向になることも明らかになりました。今後は、当事者である女性だけでなく、会社や上司も更年期を含む女性の健康課題の知識を深める必要があると考えています。今回のような研究を継続することによって、一人一人の従業員の能力が最大限発揮できる会社が増えるための一歩になることを願っています。
「更年期Handbook」とは?
今回、女性のデリケートゾーントータルケアブランド『明日 わたしは柿の木にのぼる』を企画・運営する株式会社陽と人と、パラマウントベッド株式会社は、令和5年度 経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の採択事業として、「すべての女性が、生き生きと輝ける社会」を目指し、更年期の基礎知識や症状チェックから、更年期の睡眠や個々のセルフケアがわかる冊子『更年期Handbook ~わたしのこころとからだを整える眠りとセルフケア~』を2024年2月1日に発行いたします。
「女性ホルモン」とともにある女性は、思うように体が動かず気持ちがイライラしてしまうなど、“ゆらぎ”の中にいます。特に、40〜50代の更年期の女性は、女性ホルモンが急激に減少していく時期のため心身に様々な不調が生じることが多いです。
『更年期Handbook』では、女性ホルモンの働き、更年期症状と更年期障害の違い、よい眠りを手に入れるための睡眠の話、セルフマネジメント力の効果、更年期のデリケートゾーンケアなど、更年期カウンセラーや医師の監修のもとに、自分のこころとからだにまつわる「知恵」を詰め込みました。
このHandbookによって「更年期」やそれに関連する「女性特有の身体のしくみ」を正しく知り、恐れることなくこれからのキャリアや日常の過ごし方を、もっと安心しながら生き生きとしたものに出来る女性が増えたらと願っています。
「更年期Handbook」配布情報
今回発行する「更年期Handbook」は一部イベントにて無料配布を予定しております。
詳しくは、下記のサイトから順次お知らせ致します。
・陽と人HP:https://ashita-kaki.com/news/
本実証事業 メンバー
小林 味愛 株式会社陽と人代表取締役
真鍋 麻美 株式会社陽と人 「明日 わたしは柿の木にのぼる」
阿部 成美 株式会社陽と人 「明日 わたしは柿の木にのぼる」
大槻 朋子 パラマウントベッド株式会社 経営企画本部事業戦略部マネージャー
塩貝 有里 パラマウントベッド株式会社 睡眠研究所
岩井 文 パラマウントベッド株式会社 技術開発本部デザイン部
▼本実証事業 協力団体・メンバー
宗田 聡 総合医療監修:広尾レディース 院長・医学博士
吉川 千明 更年期と加齢のヘルスケア学会認定メノポーズカウンセラー
以上
▼パラマウントベッド株式会社
▼株式会社陽と人(ひとびと)とは
「しあわせ・笑顔・豊かさの循環」をビジョンに、「地域と都市でしあわせが循環する社会」を目指し、地域に眠る「もったいない地域資源」を需要に即したカタチで価値化し、求められる場所へ届けていく、”仕組み”を創出していく会社です。
2020年1月には、福島県国見町の特産品である「あんぽ柿」の製造過程でこれまで廃棄されていた柿の皮を使用した、女性のデリケートゾーン専用のオーガニックスキンケアブランド『明日 わたしは柿の木にのぼる』をスタート。「持続的に農家さんを応援する仕組み」と、「すべての女性が、生き生きと輝ける社会」の実装を行っています。
▼株式会社陽と人 会社概要
社 名:株式会社陽と人
設 立:2017年8月9日
本社所在地:福島県伊達郡国見町大字塚野目字三本木11番1
事 業:福島県国見町の地域資源を生かした事業展開
代表取締役:小林味愛(こばやし・みあい)
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