第5回「アトリエ・イグアナアイ」を開催
「原始の目で、現代を見つめ直す。」イグアナアイのワークショップ
デザインとは「メンタル・プラン」 - 心の方角なのでは?
この度のワークショップ開催に当たり、「原始の目で、現代を見つめ直す。」というイグアナアイとの共通点を見つけてもらえたら、と冒頭、葛西氏より『デザインになにができるか』(著:粟津 潔、田畑書店、1969年)が紹介されました。
室蘭出身で、文京区の印刷会社に勤めながらデザイナーになりたいと思っていた頃の葛西氏が出会ったという本。「尊敬する大先輩のデザイナー」だった粟津氏と詩人の谷川俊太郎さんとの対談ページに、「デザインというのは、英語の辞書によれば、メンタル・プランだっていうわけですね。・・・ともかく心の中の『計画』であると、いう語源的な意味がデザインにはあるわけなんですよね。」と書かれていた。50年近くを経た今、デザインというのは表層的なものに思われているが、「心の方角みたいなものを表すことになっているのではないか」と会場に投げかける。ワークショップのテーマにこのタイトルを選んだ理由も、ここにある。元々、エンジニアになりたかったという葛西氏。デザインとは「計画」だという言葉に出会った時、「(デザイナーとは)良い職業だな」と思ったそうです。デザイナーはどうしても表現の方に気持ちが行きがちだが、「表現以前に表記の問題がある」「良かれと思ってやったデザイナーのデザインを見る時、複雑な気持ちになってしまう時がある」デザイナーという職業とは何なのだろう。
自分なりの解釈でマークを作ってみる
デザイナーという職業になってから、子供の頃に作っていたKKのマークをリファインした。自分の名前(Kaoru Kasai)のイニシャルをKKと点対称に並べてクラレンドンという書体を使ってみると、葛西 薫という女の子っぽい名前が、「力強い筋骨隆々とした」に印象が変わった。
育った室蘭は、新日本製鉄の街。「港があって鉄鉱石がいつも運ばれているような、公害でいっぱいの街」「色の記憶がない」という子供心の葛西氏の印象だったが、湾の外側には太平洋に面した素晴らしい風景があった。「まるでフランスのノルマンディー海岸のよう」(齋藤)。そんな田舎とオーバーラップする出来事が、やってくる。葛西氏が初めて広告を手掛けた日産CIMAのコマーシャルの撮影場所が、1996年のアイルランドだった。当時、車は「ガンガン走れ」という時代に、このCFで「初老の紳士がある日一人旅に出て、風景を楽しみながらジェントルにゆっくりと旅を楽しむという」ストーリーで演出した。3週間かけてアイルランドのあちこちを旅しながら撮っていた時に出会った風景が、田舎くさいと思っていた室蘭の風景とオーバーラップするアイルランドの風景に重なった。CIMAという車に、優雅さと優しさを演出。商品は少ししか出てこなくても、「綺麗な景色が出てきて、贅沢になる。」(齋藤)車の性能や烏龍茶の美味しさはコマーシャルでは伝えられない。だから「その車に乗った時の気分や、ウーロン茶を口にした時に浮かんで欲しい風景」を映像として作って、その映像を見た人によってそれぞれの想像を膨ませてもらう。
見た人の気持ちに置き換わってみる
何かをデザインする時、「あまり説明しすぎないようにしている」という葛西氏。最近のコマーシャルは、想像力に任せるものがほとんどなく、「全てかっちりとプログラムされていて・・・(中略)100作れるかもしれないが、100止まり・・・ここにあるものによって、ここにないものを感じて欲しい」「行間を伝えたい」「見てもらう人にはなるべく自由であって欲しい」と熱弁を振るう葛西氏。齋藤曰く、「風景をデザインするとか時をデザインするとか、そういうレベルのデザイン」が葛西氏のデザインの魅力。そんな葛西氏のルーツである室蘭市のマークのデザインは、子供心に「ショック」だった。しかしその“ダジャレ”が「残念だけど助かった」、デザインとはそういうものなのではないか?見ている内に愛着も沸く。
原点は、タイポグラフィー
デザイナーを目指す人であれば、絶対に勉強するというタイポグラフィーの世界。「言葉ができて、言葉が並んでくると文章ができ、物語が作れる。」その頃手掛けたのが、虎屋のロゴ。ロゴタイプの細部を調整し、「躍動する虎」を尻上がりに。「虎が自由で、少し空気が通る感じ」にしたショッピングバッグの変更作業において大事だったのは、「著しく変えるのではなく、ちょっとずつ回転していくことで、いつもの虎屋なのだと思ってもらうこと」だった。虎屋のショッピングバッグ(紙)にとって何が嬉しいのかを考える。モノの気持ちを想像することが、デザイナーという仕事にとって重要。六本木であれば、「6本の木」が頭に浮かび、六本木には並木がないなと発想。そこから「六本木は並木道」という言葉が浮かび、新しいロゴタイプによって、六本木に並木道が生まれたようになればいいなと思う。そして、「六本木に並木道があるといいですね」とプレゼンする。初めての競合で、ROPPONGI ROPPONGIが生まれた。六本木交差点にあるネオンは、そんな思考と頭の中の「風景」の変遷を経てできたロゴであるゆえ、見る度に「止まってしまう」という葛西氏。
デザインすることにおいて国籍や言語は関係ない
六本木プロジェクトの縁で、ユナイテッドアローズの仕事に繋がった。ファッションの広告に、「ファッションに習熟していない人」を起用した同社の広告では、イタリア人の絵を会話させた作品。デザインする過程においては、通訳を通して進めたが、何かを表現したい時、国籍や言語は関係なく、「共通の言語」があったという。
広島の平和を訴えるポスターデザインでは、(北海道出身ゆえに)「眩しかった夏の太陽」が頭に浮かんだという。対峙したのは自分。「『我に帰ればいいんだ、我に帰ればいいんだ』と言い聞かせるとむしろ職業がいつも生きてくる、という風に思わされた、一番最近の大きな出来事」と語る葛西氏。「自分の表現で説得というと、すごく力強く人を打ち付けてしまうみたいに考えがちだが、サントリーとか日産(のCF)もそうだが、人の気持ちの中でそこに何かひょろっと、こう一つものを入れてみるというところで成り立っている。」(齋藤)デザインにできることは、「個人を出すことかもしれない。本来は、物事を伝えるためにもっとクールに考えてやるべき」と思っていたが、いつの日か「責任を持つということはむしろ個人を出して、僕の経験から表現する方が嘘ではないことは確か。」そんな思いがあれば、「普遍的なものに近付ける」(葛西氏)。「世の中は、多くのデザインで埋め尽くされており、溺れそうになっている。作った人の責任みたいなものがない人が多いのではないか」(齋藤)。(近著で)「今までは生きてなかったような気がして」と語る齋藤に対して「本当に生きるということは自分のためより、自分のやったことによって何かが改装されるのか、喜ばれのか、それが逆に生きることになる」「『原始の目で、現代を見つめ直す。』に近づけるなら。(葛西氏)
デザインは、目立つ目立たないで判断してはいけない
日本は確かにデザイン王国の一つ。デザインをする人の出身はそれぞれだが、「個人的な知恵か、知恵まで行かなくても染み付いている何かを表しあっている・・・大げさに言うと、そういう世の中になってほしいなということをイメージする。(デザインする時は)別れ道の連続だが、目立つ目立たないで判断していくと、だんだん余計なところに行ってしまう。」受け取る側は、自らの生活を「参考にすることしかない」(齋藤)冒頭デザインとは、「心の計画」と確認したが、「生きている中で、自然に進行しているのかもしれない・・・いつも過程にいるような感じ。」(葛西氏)自分に偽りなく生きていればこそ、と齋藤。
昨今の情報化時代は、「自分で大事なことが見えなくなっている。工夫の余地がないくらい物事が表現され過ぎている。パリでは自宅で暖炉をつけるが、日本では暖炉の代わりにテレビをつけている」。“原点”を見つめることから、生きるヒントを見いだせるのではないか?(齋藤)「デザインに何ができるか」をテーマに行なわれた第5回「アトリエ・イグアナアイ」では、“原点に立ち返る”ことで、日々の生活、仕事、人間関係においてどのように価値を見いだすか、へのヒントを得る場となりました。
【アトリエ・イグアナアイとは】
イグアナアイの事業目的は、画期的な商品の提案を通して社会に問題提起を行い、そのより良い発展に寄与することです。ブランドフィロソフィーは、「原始の目で、現代を見つめ直す。」ことで、現代の都市環境や現代人の暮らし方を見直し、ひとりひとりがより自然な形で、自分らしく生きるためのヒントを提供したいと考えています。その一環として、イグアナアイでは定期的にテーマ別に各分野のエキスパートを迎え、「アトリエ・イグアナアイ」を開催しています。
※次回は2017年3月の開催を予定しています。詳細は、イグアナアイのフェイスブックにてご覧ください。
https://www.facebook.com/IguaneyeJapan/
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イグアナアイ青山本店
〒107-0062 東京都港区南青山5-6-14
Tel: 03-6427-2703 Fax: 03-6701-7619
http://www.iguaneye.jp/
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