ニューバーガー・バーマン 大和冷機工業の株主総会に先立ち、議決権行使の方針を開示

2022年3月17日(東京)– グローバルにビジネスを展開する独立系資産運用会社であるニューバーガー・バーマン(以下、「当社」)は、グローバルで議決権行使の論理的根拠とその方針を事前に開示する取り組みを進めています。このたび、当社日本株式運用部が運用する「日本株式ESGエンゲージメント戦略」の投資先の一社である大和冷機工業株式会社(証券コード:6459)が2022年3月30日に開催する第61期定時株主総会の第2号議案および第3号議案について、議決権の反対行使を開示することにいたしました。反対行使に至った背景および論理的根拠をご紹介いたします。
大和冷機工業株式会社 第61期定時株主総会

第2号議案:取締役9名選任の件のうち、尾﨑敦史氏(候補者番号1)、添田千夏氏(候補者番号7)の選任‐反対

大和冷機工業株式会社(以下、「大和冷機工業」)は、業務用冷凍・冷蔵庫をはじめ、ショーケースや製氷機を製造・販売する冷熱機器総合メーカーであり、当社は大和冷機工業のビジネスモデルを高く評価しています。しかしながら、大和冷機工業の経営トップである取締役選任に反対する理由は、同社の資本効率の低下とその政策に関する不十分な開示です。

大和冷機工業は、外食産業や和洋菓子店、物流業界等に向けて業界トップクラスの耐久性、省エネ性を誇る冷凍・冷蔵関連製品を展開し、その定期的な保守・点検サービスを提供することにより安定した収益を確保しています。一方で、企業の持続的な成長の原動力となる資本効率と資本を活用する政策に係わる開示については改善の余地があると考えています。2021年12月期時点で同社は620億円を超えるネットキャッシュ(現金および預金、有価証券、長期預金)を保有しており、その金額は同社の時価総額(2022年3月14日時点)を上回り、売上の1.4年分の額に相当します。結果として、ネットキャッシュの拡大による資本効率の低下と新型コロナウイルス感染症拡大の影響による業績の悪化により、同社の自己資本利益率(ROE)は2017年12月期の6.4%から5.3%へと低下しています。

 当社は、企業の長期的かつ持続的な成長には効率的な資本の活用と企業経営における資本政策に関する開示が必要であると考えています。コーポレートガバナンス・コードもこの点を重視しており、「経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人的資本への投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。」(原則5-2)という資本政策を含む経営戦略や経営計画の策定・公表に関する開示についての方針を掲げています。

当社は、大和冷機工業とこの課題について長年エンゲージメントを重ね、同社の長期的かつ持続的な成長を実現するために、株主資本が成長投資および研究開発にどのように活用され、剰余資金を今後どのように配分していくかに関する明確な説明を求めてきました。その際、同社の資本効率が低位に推移していることを問題提起に留めず、ROEのデュポン分析(収益性、資産の効率性、財政状態)結果を同業他社と比較し、当社のような長期投資家が求める財務戦略や資本政策に関する具体的な開示の在り方について、開示のベストプラクティスを交えながら詳細に説明しました。さらに、長期的な企業価値の向上の観点から、事業ファンダメンタルズと成長戦略に連動した重要性の高い環境や社会の課題(マテリアリティ)への適切な対応と開示に関しては、「マテリアリティ・マトリックス」をはじめ、米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)におけるESGや気候変動リスク開示の方法を国内外のベストプラクティスを交えながら改善を求めました。しかし、現時点において同社から開示の改善に向けた具体的な取り組みが見受けられません。

なお、当社は、2021年3月に開催された第60期定時株主総会において、本件と同様に不透明な資本政策を理由に、取締役最高顧問の尾﨑茂氏(当時)および代表取締役社長の尾﨑敦史氏の経営トップ2名の選任議案に対して反対の議決権を行使しました。今回においても、同社の不透明な資本政策を黙認してきた代表取締役尾﨑敦史氏の選任に対して、反対を表明いたします。

さらに、同社の社外取締役として添田千夏氏の選任に反対する理由は、少数株主を含むステークホルダーの代弁者である社外取締役に求められる関連する職務経験や知識(例:コーポレートファイナンス、コーポレートガバナンス等)を有していないと判断したためです。同社の株主総会招集通知には、同氏の選任理由として、「生命保険業界での実務経験や南米市場を中心とする音楽業界でのマネジメント経験及び不動産会社の役員[…]」と記載されているものの、生命保険業界と不動産業界の経験は他の取締役候補者の職務経験や知識と重複しており、音楽業界における経験は業務用冷凍・冷蔵庫をはじめとした製品の製造、販売する機器メーカーと関連性が低いと考えています。前述の通り、同社は過剰資本による資本効率の低下が企業価値の毀損の要因の一つであることから、取締役会における資本効率の改善に向けた活発な議論には、他企業において財務戦略や資本政策の立案・実行を含むコーポレートファイナンスをはじめ、少数株主を含むステークホルダーの視点で資本政策に助言するコーポレートガバナンスに関連した職務経験や知識が必要と考えています。なお、同氏は女性候補者であることから、同氏の選任は取締役会のジェンダー多様性の向上が期待できるものの、社内外の取締役選任に求められている適切な職務経験や知識の有無は性別を問わない前提条件であると、当社は考えています。
 
コーポレートガバナンス・コードもこの点を重視しており、「上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待されることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。(ⅰ)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと、(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと、(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること、(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、総数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること」(原則4-7)という独立社外取締役に求められる役割・責務について方針を掲げています。また、コーポレートガバナンス・コードは取締役会、監査役会の実効性確保のための前提条件としてスキル・マトリックスをはじめとした開示を掲げているものの(補充原則4-11①)、同社は開示には至っていません。

上述の理由から、当社は、大和冷機工業の取締役候補である尾﨑敦史氏および添田千夏氏の選任に対して、反対の議決権を行使する判断を決定しました。

第3号議案:退任取締役及び退任監査役に対し退職慰労金贈呈の件 ‐反対
 
大和冷機工業の退職慰労金贈呈に反対する理由は、その支給額が開示されておらず、対象者に社外監査役が含まれている点です。当社は、投資先企業に対して長期的な企業価値を向上させる動機付けとなるような、実情に即した報酬方針の策定を期待しています。退職慰労金に関しては、その導入には原則として反対票を投じているものの、当社は日本の終身雇用とその報酬制度に関する独特の伝統を認識していることから、支給額が開示され、支給者が社内役員に限定される既存制度の場合のみ賛成票を投じています。しかし、同社の株主招集通知によると、支給額は取締役会および監査役会に一任するため開示されておらず、対象者には監査役も含まれているため、本制度の透明性と適確性の観点から疑義が生じています。なお、同社の役員報酬には、上場企業で導入が進められている中期的な経営目標に連動した業績連動報酬や長期的な「ありたい姿」の実現を促し、株主との目線を一致させる株式報酬も導入されていません。

コーポレートガバナンス・コードもこの点を重視しており、「取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に伴い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである」(補充原則4-2①)という報酬制度の透明性と適確性の必要性を掲げています。

上述の理由から、当社は、大和冷機工業の退任取締役及び退任監査役に対して、反対の議決権を行使する判断を決定しました。

ニューバーガー・バーマンは、今後も大和冷機工業の長期的な企業価値向上に資する開示の改善を促すため、同社との対話を継続してまいります。

ニューバーガー・バーマンについて
ニューバーガー・バーマンは、1939年に創業された従業員が自社株式を保有するプライベート経営の独立系資産運用会社です。株式、債券、プライベート・エクイティ、ヘッジファンド投資等の多岐にわたる資産クラスについて、世界中の機関投資家およびアドバイザー等に運用サービスを提供しています。世界25カ国においてビジネスを展開し、2,400名を超える従業員を擁しています。また、9年連続でPensions & Investmentsによる1,000名以上の従業員を対象とした調査で「働きやすい資産運用会社」の1位、若しくは2位に選出されました。ESG投資の取り組みは1940年初頭に開始し、約80年にわたる豊富な経験と実績を有しています。全資産クラスの運用プロセスにESGを組み入れるとともに、PRIが実施する最新のアセスメント・レポート(評価報告書)にて、全資産クラスで最高評価A +を獲得しています。さらには、2020年にPRIのリーダーズ・グループに選出されました。これは、PRIが環境、社会、ガバナンス(ESG)の実践における卓越した実績をあげている署名機関を選定するもので、選出される機関はPRI 署名機関全体の1%未満です。2021年12月31日時点における運用資産残高は4,600億ドルです。詳細は、当社のウェブサイトをご覧ください。 https://www.nb.com/japan

<本件に関するお問い合わせ>
ニューバーガー・バーマン株式会社 : 代表電話: 03-5218-1930  メール: info.japan@nb.com

※当資料は、共同して株主としての議決権その他の権利を行使すること等を呼び掛けるものではございません。

PRIリーダーズ・グループの選定について、従来はアセットオーナー(資産保有機関)のみが対象でしたが、2020年から資産運用会社も対象となりました。現在、PRIに署名している資産運用会社は2,100社超にのぼりますが、PRIリーダーズ・グループに選出されたのは、わずか20社となります。リーダーズ・グループは、責任投資において最先端の取り組みを進めている署名機関を紹介し、その署名機関の活動の動向に焦点を当てるものです。PRIは、毎年一つのテーマを定め、署名機関から提出されたレポートへの回答とアセスメント・データに基づいて、組織全体で責任投資における卓越した実績をあげている署名機関を選定しています。2020年のテーマは、気候変動報告でした。PRIリーダーズ・グループに関する全ての情報の出所はPRIです。当社グループはその情報に基づいて、いかなる表明および保証、また意見を述べるものではありません。当資料は、情報提供を目的として作成されたものであり、法的、税・会計上または投資のご提案のためのものではなく、また個別の有価証券等の勧誘等を目的とするものでもありません。当資料は、作成時点において信頼できると思われる情報に基づき作成されていますが、その正確性並びに完全性を保証するものではなく、また、当資料の受領者又は最終投資家が当資料に含まれるいかなる情報に基づきとった行動にも、当社グループは責任を負いません。当資料に含まれる情報は作成時点のものであり、今後予告なく変更されることがあります。本資料に記載される見通しや意見等は必ずしも弊社グループとしての統一見解ではない場合があることにご注意ください。本資料で記載される特定の金融商品は過去のパフォーマンスは将来の実績を何ら示唆するものではありません。

ニューバーガー・バーマン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2094号
加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会

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会社概要

URL
https://www.nb.com/ja/jp/institutions
業種
金融・保険業
本社所在地
東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング12階
電話番号
03-5218-1930
代表者名
大平亮
上場
未上場
資本金
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設立
2008年10月