急性肝性ポルフィリン症(AHP)の治療におけるgivosiranの安全性、有効性およびQOL改善効果に関する人道的見地から実施された治験(拡大治験)結果を発表

- Givosiranの日本でのデータを収集・分析した初の論文-

Alnylam Japan株式会社

Alnylam Japan 株式会社 (本社:東京都千代田区、代表取締役社長 岡田 裕、以下「アルナイラム」) は、scientific reports誌において、論文「Efficacy and safety of givosiran in Japanese patients with acute hepatic porphyria: clinical findings from an expanded access study (急性肝性ポルフィリン症 (AHP) の治療におけるgivosiranの安全性、有効性およびQOL改善効果 ―givosiran拡大治験から得られた知見―)」が公表されたことをお知らせします。

 

遺伝性希少疾患のAHPは、便秘や嘔吐を伴う激しい腹痛発作を主症状とし、その多くは10 代後半から40代前半の女性に発症します1), 2) 。発作の程度によっては、医療機関での救急処置や長期の入院及びリハビリテーションを要し、発作と発作の間にも何らかの症状がみられることから、生活の質 (QOL) 及び身体機能に悪影響を及ぼすことが知られています3)。これまで、急性発作に対しては、ヘミン投与などの対症療法がありましたが、アミノレブリン酸合成酵素1 (ALAS1) を標的とする RNAi 治療薬である「ギブラーリ®皮下注 189 ㎎」 (一般名:ギボシランナトリウム、以下「ギブラーリ」) が発売されるまでは、治療薬はありませんでした。

 

本試験は、日本において人道的見地から実施される治験としてAHPに対する治療薬ギブラーリが使用されました。人道的見地から実施される治験とは、拡大治験とも呼ばれ、生命に重大な影響がある疾患であって、既存の治療法に有効なものが存在しない疾患の治療のために、これらの患者への未承認薬等のアクセスを確保するために、治験の枠組みで未承認薬等が提供されるものです4)。

 

試験デザインは、非盲検多施設共同単群試験とし、AHP治療の選択肢が限られ、ギブラーリにより得られる利益が危険性を上回る患者への投与を可能にすることを目的として実施されました。試験参加者には本剤2.5 mg/kgを月1回投与し、探索的目的として、本剤の有効性、安全性およびQOL改善度を評価されました。

 

今回の試験では、第Ⅲ相臨床試験 (ENVISION) からの継続患者3例、及び本試験からの新規導入患者7例の計10例にギブラーリが投与され、いずれの患者においても尿中アミノレブリン酸 (ALA) 濃度および尿中ポルフォビリノーゲン (PBG) 濃度は低値を維持しました。ポルフィリン症発作は、10例中2例で発現しましたが、いずれも軽度でありヘミンの使用または入院治療はありませんでした。投与患者が経験に関する質問票 (GPEQ) において10例中8例の患者が、症状が改善したと回答しました。有害事象は10例中8例で発現し、うち5例では治療薬との因果関係が疑われましたが、有害事象はすべて非重篤で死亡は無く、1例が軽度の脱毛症により投与中止となりました。

 

本論文の筆頭著者である日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第一病院 副院長 検査部長の尾﨑 信暁先生は、「この度、AHPに対する初めての日本人集団での拡大治験結果を論文として発表できたことを大変嬉しく思います。AHPを含む希少疾患に関する臨床データは非常に限られており、その理解を深めるためには、論文を通じて臨床知見を共有することが重要です。これまで治療薬が限られていたAHPに対して、新たな治療薬が利用可能になったことは、患者さんにとって大きな希望となるでしょう」と述べています。

 

 Alnylam Japan 株式会社 インターナショナル希少疾患ユニット メディカルアフェアーズ部長 シャーロット・エクスターゲンは、「AHPに対するギボシランの安全性、有効性ならびにQOL改善効果の可能性を示す日本人集団での臨床的知見が、初めて論文として発表されたことを非常に喜ばしく思います。本試験にご協力いただいた患者さんやそのご家族の皆様、医療従事者の先生方、並びに、関係者の皆様に心より感謝を申し上げます。

遺伝性希少疾患であるAHPは、急性の重度の腹痛を特徴とし、その症状が非特異的であるため、診断までに平均15年かかるとも報告されており5)、AHPに対する臨床的な認識の向上が必要であることが示されています。アルナイラムは、引き続き、あらゆる関係者と協力し、AHPによる症状に苦しむ患者さんへの理解の向上、治療へのアクセスの改善ならびに早期診断の支援に取り組んでまいります」と述べています。

 

なお、本研究は、Alnylam Pharmaceuticals (米国) ならびにAlnylam Japan 株式会社 (日本) からの資金提供を受けて実施されました。

本論文の詳細はこちらをご覧ください。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40312531/

 

AHPについて

急性肝性ポルフィリン症 (AHP) は、生命を脅かしうる激しい急性の腹痛発作が主にみられる遺伝性の希少疾患です。AHP には、急性間欠性ポルフィリン症 (AIP: acute intermittent porphyria)、遺伝性コプロポルフィリン症 (HCP: hereditary coproporphyria)、異型ポルフィリン症 (VP: variegate porphyria)、および ALA 脱水酵素欠損性ポルフィリン症 (ADP: ALA dehydratase deficiency porphyria) の 4 病型があり、いずれの病型も、遺伝子変異により肝臓内のヘム産生に必要な特定の酵素が欠損することで生じます。

AHP は主に思春期から閉経前の女性にみられ、その症状は様々です。最もよくみられる症状は激しい腹痛であり、随伴症状として、四肢痛、背部痛、胸痛、悪心、嘔吐、錯乱、不安、痙攣、四肢脱力、便秘、下痢、暗色尿あるいは赤色尿等がみられることがあります。AHP は発作中に麻痺や呼吸停止が起こる可能性もあることから、生命を脅かす危険もあります。また、患者さんによっては日常生活の機能や生活の質に悪影響を及ぼします。

AHPはその症状が非特異的であるため、婦人科疾患、ウイルス性胃腸炎、過敏性腸症候群(IBS)、虫垂炎などの他の疾患と診断されることもあり6)、世界的には、症状が現れてから診断がつくまでに平均 15 年に及ぶことが報告されています5)。また、AHP の長期合併症には、高血圧、慢性腎不全、肝細胞癌を含む慢性の肝疾患があります。

 

ギブラーリ® (ギボシランナトリウム) について

ギブラーリは急性肝性ポルフィリン症 (AHP) を治療するためのアミノレブリン酸合成酵素 1 (ALAS1) を標的とする RNAi 治療薬です。薬剤の有効性と持続性を強化するために製剤の安定化を促進した ESC GalNAc コンジュゲート技術に基づく薬剤です。

ギボシランは、ALAS1のメッセンジャーRNA (mRNA) を特異的に低下させることで、AHP の急性発作やその他の症状の発現に関連する神経毒性を減少させます。第 III相 ENVISION試験において、ギボシランはプラセボと比較して、入院、緊急診療、自宅における静脈内ヘミン投与を要するポルフィリン症の発作率を有意に低下さ せることが示されました。ENVISION 試験の結果は、2020 年 6 月 11 日付の The New England Journal of Medicine 誌で発表されています。

日本では、2020 年 6 月に希少疾病用医薬品に指定され、優先審査の対象となりました。AHP の患者さんを対象としてギブラーリの有効性と安全性を評価した ENVISION 試験の結果に基づき、2020 年 9 月に新薬承認申請を提出し、2021 年 6 月に製造販売承認を取得しました。 海外では、「GIVLAARI@」の製品名で、2019 年 11 月、成人の AHP 治療薬として米国食品医薬品局  (FDA) の承認を取得しました。FDA では、ブレークスルー・セラピー、希少疾病用医薬品および、優先審査に指定されました。また欧州においても、 欧州医薬品庁 (EMA) より希少疾病用医薬品及び Priority Medicines (PRIME) scheme の指定を受け、2020 年 3 月に成人 (18 歳以上) 及び青年期 (12 歳以上 18 歳未満) の AHP 治療薬として承認されています。現在までに、10ヵ国以上の国/地域で承認されています。

 

Alnylam Japan株式会社について

Alnylam Japan 株式会社  (https://www.alnylam.jp/)  は、次世代医薬品として注目される核酸医薬の一つである RNAi 治療薬を日本の患者さんに届けるため、2018 年 7 月に設立されました。RNAi 治療薬は、従来はターゲットにできなかったmRNAに選択的に作用することで、これまで治療が困難であった疾患の新たな治療選択肢となる可能性があります。RNAi 技術を応用して開発された世界初の siRNA 製剤オンパットロ®点滴静注2mg/mL (一般名:パチシランナトリウム、適応症:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー) は、当社が日本国内で 2019 年に販売した最初の製品です。2021 年には、2 剤目となる siRNA 製剤ギブラーリ®皮下注189mg (一般名:ギボシランナトリウム、適応症:急性肝性ポルフィリン症)、2022年11月には3剤目となるsiRNA 製剤アムヴトラ®皮下注25mgシリンジ (一般名:ブトリシランナトリウム、適応症:トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー) を販売しています。当社は、医療の未来を切り拓く可能性のある新しい治療薬の開発に取り組み、アンメットニーズの解消に貢献することを目指しています。

 

参考文献

1)     Bissell DM et al. : Porphyria. N Engl J Med. 377 (9):862–872, 2017

2)     Bissell DM, Wang B: Acute Hepatic Porphyria. J Clin Transl Hepatol. 3(1): 17-26, 2015

3)     Pischik E, Kauppinen R: An update of clinical management of acute intermittent porphyria. Appl Clin Genet 8(8): 201-14, 2015

4)     独立行政法人 医薬品医療機器総合機構. 人道的見地から実施される治験について.
https://www.pmda.go.jp/review-services/trials/0016.html (2025/5/9 access)

5)     Bonkovsky et al.: Acute porphyrias in the USA: features of 108 subjects from porphyrias consortium. Am J Med 127:1233–41, 2014

6)     近藤 雅雄,他. 日本の遺伝性ポルフィリン症 : 1920年(第1例報告)から91年間(2010年)の集計.ALA-Porphyrin science 2:73-82, 2012

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AS1-JPN-00476 | May 2025

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会社概要

Alnylam Japan株式会社

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URL
https://www.alnylam.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内11階
電話番号
03-6629-6200
代表者名
岡田裕
上場
未上場
資本金
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設立
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