吉野彰博士が、未来を創り出す若き発明家を激励!「令和6年度パテントコンテスト/デザインパテントコンテスト表彰式が開催されました」
未来を担う学生の皆さんが自ら考えたアイデアやデザインに注目!~ひらめきは、特許権に。デザインは、意匠権に。~

文部科学省・特許庁等が主催する「パテントコンテスト/デザインパテントコンテスト」は、全国の高校生や大学生等が創造した発明及びデザイン(意匠)のうち優秀なものを表彰し、特許・意匠登録への出願を支援することで若い世代の知的財産権制度への理解を深めることを目的としたコンテストです。
3月7日(金)に、東京・八重洲の会場にてコンテストの表彰式が開催されました。
今年度は、全国よりパテント部門に645作品、デザインパテント部門に791作品の応募があり、その中からパテント部門30件、デザインパテント部門では27件が学識経験者と主催者で構成された委員会により優秀賞に選ばれました。
表彰式では、優秀賞受賞作品の中から、パテントコンテスト、デザインパテントコンテストそれぞれ、
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選考委員長特別賞
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特許庁長官賞
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日本弁理士会会長賞
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文部科学省科学技術・学術政策局長賞
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独立行政法人工業所有権情報・研修館理事長賞
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WIPO(世界知的所有権機関)賞
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時代を映す鏡賞
上記7賞14作品への特別賞授与および受賞者によるプレゼンテーションが行われ、さらに優秀賞57作品の表彰が行われました。


1:選考委員長特別賞 / パテントコンテスト
臼井翔哉さん、野村龍騎さん、上村龍生さん(岐阜県立岐南工業高等学校)「バナナスタンド」

■受賞コメント
私たちが発明した「バナナスタンド」について説明します。バナナは置いておくとあっという間に皮が黒く変色してしまいます。私たちは、日々バナナの研究をしている過程で、この点が改善しなければいけない課題だと思いました。
そこで目を付けたのが、熟成を遅らせて日持ちをよくする「バナナスタンド」です。機能性にこだわるなら外見にもこだわろうと思って試作を重ねました。実際に制作した作品を見ていただきますと、バナナの茎の部分を上の固定部品に差し込んで置くだけで、長期保存を可能としています。実験のスライドの画像でおわかりいただけるとおり、買ってから撮影時まで11日ほど経過したバナナが全然黒くなっていません。それほど効果のある発明となっています。ローラーとばねでバナナのネック部分を固定して密閉する内部構造によって、ネック部分から出る果物の追熟を促すエチレンガスを抑制し、長期保存を可能としました。さらに、バナナが接触する部分にゴム素材を使うことによってバナナへのストレスをゼロとし、取り外しもしやすいデザインにしました。
今後の展望としましては、岐阜県にバナナを作っていらっしゃる農家の方がいますので、一緒にいろいろな事業を展開していきたいと思っております。
2:選考委員長特別賞 / デザインパテントコンテスト
今井若津さん(佐賀県立有田工業高等学校)「立体透明時計」

■受賞コメント
今回私が考えたデザイン(意匠)は、「立体透明時計」です。
日常で目にする時計は似通ったシンプルなデザインが多く、時計といえばこの形という固定概念があるのではないかと思いました。そこで、今までにない形と時間の見方ができる時計を作ろうと思ったのがデザインのきっかけです。
また、教室や部屋で時計を見るとき、端の方にいる人や時計の下にいる人には時間が見えにくかったり針が目盛りとずれて見えることがある点も、今ある時計の課題だと感じました。
これらの課題解決にあたり、私はデジタルではなく、あえてアナログ時計で挑戦してみました。まず、目盛りと針のずれを少なくするために、針の厚みを薄くして目盛りとの距離を短くしました。
また、思い切って今までにない透明な球体の形にして奥の針も見えるようにし、全方向から時間を確認できるようにしました。2つの半球の時計がつながった構造で、三本の針は球の形に沿って曲がっています。針と目盛りのずれを減らしたほか、同じ長さでも太さと形と色を変えることで、長針・短針・秒針をわかりやすくしました。球体のため壁には掛けられませんが、台の上に置いたり天井からぶら下げて使います。
実際に時間を確認するとなると慣れとコツが必要になるのが今後の課題です。
今までにない形と使い方、時間の見方ができる時計をデザインできて、とても満足しています。
ありがとうございました。
3:吉野彰(旭化成株式会社名誉フェロー)選考委員長講評

選考委員長特別賞の受賞おめでとうございます。講評をコメントさせていただきます。
まずパテント部門「バナナスタンド」です。バナナが黒くなる原因がエチレンガスである点に目をつけ、なおかつそのエチレンガスがバナナの茎の辺りからたくさん出ている自然現象を元にそれを遮断する工夫をして、ずっと置いておいても美味しく食べられる作品の発明につながりました。
エチレンガスは、一般的には複雑な化合物であるホルモン物質でありながら極めてシンプルな構造で、生理活性も持っていません。なぜ果物を熟成させるのに重要な役割を持つのか、いまだ解明されていないと思います。その不思議な性質をうまく理解されて、このように実用的な製品の形で応募されたという点で非常に私の印象に残り、選考委員長特別賞にさせていただきました。
2件目のパテントデザイン部門は「立体透明時計」です。時計産業というのは元々日本が非常に得意な分野ですが、ここにきて結構大きな共通課題があります。それは若者が時計を着けなくなったということです。会場の皆さん、スマートフォンで時間はちゃんと見ているでしょうが、たぶん腕時計を着けていませんね。
時計というのは我々の人間生活で重要なものであるので、特に若い方々に新しい価値観を抱かせるようなアプローチが必要だと以前から感じておりました。そういった中で、今回のデザイン性・インテリア的な要素を盛り込んだ三次元的時計が新しい価値観を生み出すきっかけになるのではないかと感じ、選考委員長特別賞に選考させていただきました。
4:吉野彰選考委員長「若い世代へのメッセージ」

私の経験を踏まえて、発明に至る思考パターンをお伝えします。
まずは、頭をひねって10年後20年後に必ず必要とされるアイデアをまとめ、研究をスタートします。次に、考えていた通りになるかを実験で確かめます。すぐに上手くはいきませんが1~2年で基礎研究の成果が生まれ、パテントあるいはデザインに出願する作業が始まります。
続いて、先行技術調査が必要になります。研究者は誰もが自分の考えは世界で唯一だと自負していますが、調べていくと当然第三者から似たような技術や考え方が既に出願されています。本当にいい発明は必ず誰かが思いついていて、なかったらあまり意味がないことになります。
ここでめげてはいけません。先行の文献をよく見ますと、まだ実用化には問題点を抱えているなと欠点が見えてきます。その欠点を改良し、さらに別の要件を加えることで、今度は自分が先頭に立つことができ、パテント・デザインを出願できるわけです。
この先実用化に進むとさらに制約条件が付き、実際ものになるのはほんの一握りです。その本当の1点を見つけるために研究開発を進めて、これなら世の中に出しても恥ずかしくないというところに辿り着いたら、次はヒットするかどうかの問題です。自然淘汰を経て、ごく一部が最終的に世の中で広く使われたら、そのアイデアは世界を大きく変えたことになります。これが、ちょっとしたひらめきから最終的な製品に至るまでの一連の流れです。
今日お越しの皆さんはこの中のパテント・デザインの出願までのステップで、いろいろご苦労なさったかと思います。この経験は将来間違いなく役に立ちます。パテント・デザインに限らず、社会に出て新しいことをしようとしたときに必ず先程の思考パターンで物事を考えていく必要が出てきます。その時に、ぜひ今回の経験を生かしていただきたいと思います。

■パテントコンテスト/デザインパテントコンテストとは
日本の未来を担う若手クリエイターの発想力を競う本コンテスト。受賞特典として、特許庁への出願から特許権・意匠権取得までの手続きを無償でサポートされる点が大きな特徴です。若い世代の創造力を育むとともに、「パテント=特許」「デザインパテント=意匠登録」の在り方の理解促進などを目的に、平成14年度よりパテントコンテストが、同20年度よりデザインパテントコンテストが毎年実施されています。
■令和6年度パテントコンテスト/デザインパテントコンテスト表彰式概要
【主催】文部科学省、特許庁、日本弁理士会、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)
【後援】世界知的所有権機関(WIPO)
【選考委員長】吉野彰博士(旭化成株式会社名誉フェロー)
【応募資格】 高校生、高等専門学校生、大学生、専修学校生、大学校生
【応募作品数】1436件 (パテント部門645件/デザイン部門791件)
【参加学校数】152校 (パテント部門97校/デザイン部門55校)
【表彰式】令和7年3月7日(金) 13:30 開催/東京ミッドタウン八重洲カンファレンス
【専用HP】 https://www.inpit.go.jp/patecon/index.html
※当日の式の模様は上記専用HPで、後日お知らせいたします
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