世界遺産運河の護岸改修に続きオランダ政府が推進する大規模治水対策事業「デルタプログラム」に採択
欧州初・鋼矢板と鋼管杭の複合壁体で河川堤防を補強
株式会社技研製作所(本社:高知市、代表取締役社長 CEO:大平厚)の「インプラント工法™」が、オランダが国を挙げて取り組む治水対策事業「デルタプログラム」の河川堤防工事に採択されました。同国では、2022年から先行してスタートした世界遺産「アムステルダムの環状運河地域」の護岸改修プロジェクトに続く大規模案件となり、圧入技術が欧州で着実に広がりつつあります。
デルタプログラムは、今後数十年間にわたってオランダが直面する気候変動による洪水等の水循環に関する課題に対し、持続可能な洪水対策と安定的な淡水供給を達成するための大規模な国家プロジェクトです。2050年までにオランダ全土で約1400㎞の堤防と400の水門・ポンプ場の強化が計画されています。今回採択が決まった区間は「KIJK project(カイクプロジェクト)」と呼ばれ、鋼管杭回転切削圧入機「ジャイロパイラー™」と油圧式杭圧入引抜機「サイレントパイラー™」を用いて、鋼管杭とZ形鋼矢板による複合壁体で既存の河川堤防を補強する欧州初の工事となります。工事開始は9月で総延長は約10㎞に及びます。
グループ企業の技研ヨーロッパ(Giken Europe B.V./本社:オランダ、社長:福丸茂樹)は、元請けのJVに対して入札段階から技術提案や工事計画策定で協力してきました。同社はすでに現地企業に「サイレントパイラー™」2台を販売しており、今後は「ジャイロパイラー™」のレンタル、鋼管杭の先端に取り付ける切削爪(リングビット)の販売、長期間の工事に伴う機械の補修やメンテナンスに加え、継続的に技術支援を行います。
オランダのデルタプログラムは欧州における気候変動に対応する水管理の模範例とされています。今回採択された工事の成果をもとに、当社技術と製品の有効性、優位性をアピールすることで気候変動リスクを抱える欧州をはじめ世界各国での工法普及拡大に向け、積極的な技術提案を進めます。

■デルタプログラム
高潮、洪水から国土を守るため、オランダ政府が進めている治水対策事業であり、大規模なインフラ整備が含まれています。干拓により国土を形成してきたオランダは防潮堤や堤防などの治水施設で守られており、人口の7割が海面より低い地域に居住しています。同国では気候変動に伴う海水面の上昇、洪水流量の増加が予想されており、2012年に洪水防御、水供給、気候変動適応を目的とするデルタ法を制定。デルタプログラムのすべての対策は、中央政府予算の別項目であるデルタ基金から資金が提供されます。デルタ基金には、2032 年まで毎年平均 12.5 億ユーロ(約2000億円)が割り当てられています。
■工事区間(KIJK)の概要
今回の施工区間は、デルタプログラムの堤防工事の中でも施工スペースが狭く、搬入路の確保が難しい地理的制約のある区間です。現場となるユトレヒト州にあるHollandse IJssel (ホランセ・アイセル)川沿線には住宅地が広がっており、20万人以上の命と生活を洪水被害から守ることを目的としています。既存の堤防は土を盛って造られた「土堤」であり、鋼管杭とZ形鋼矢板による複合壁体を圧入機で土堤内に構築する欧州初、日本でも例のない工事となります。


■採用の経緯
入札は総合評価方式によるもので、提案内容にはイノベーションが含まれることが求められました。このため、オランダの建設会社Van Hattum en Blankevoort (ファン ハットゥン エン ブランクフォート社)とBoskalis Nederland(ボスカリス ネダランド社)によるJV「KIGO」と、施工業者のVolker Staal en Funderingen(VSF社)、Gebr. De Koning B.V. (デ・コーニング社)は、技研ヨーロッパと協力関係を築きつつ、工事計画を策定しました。
当社の製品と工法が可能にした、周辺環境への振動・騒音の最小化および堤防上の道路交通を確保しつつ、経済性を考慮した複合壁体による堤防の補強と嵩上げを行う提案がイノベーションとして高く評価されました。
本件関係者は2023年に高知県香南市にある圧入技術情報発信基地「RED HILL 1967」を訪問しており、実物を見ることで工法への理解を深めたことも採用を後押ししました。



■「bauma2025」でプロジェクトの協定を締結
4月7日~13日にドイツ・ミュンヘンで開かれた世界最大の建設機械見本市「bauma2025」の当社ブースにおいて、関係者間で本プロジェクトの協定を締結しました。
本展示会では「サイレントパイラー™」「GRBシステム™」をはじめとする実機の展示に加え、遠隔操作のデモンストレーションなども実施。プロジェクトに関して活発な意見交換も行い、あらためて圧入技術の優位性、将来性を理解していただくとともに、プロジェクト成功に向けての機運が一層高まりました。


■工事概要

工事名 |
KIJK(Dijkversterking Krachtige IJsseldijken Krimpenerwaard ) (カイクプロジェクト) |
工事場所 |
Krimpenerwaard between Krimpen aan den IJssel and Gouderak |
発注者 |
Hoogheemraadschap van Schieland en de Krimpenerwaard (シーラント・クリンプネルヴァール水委員会) |
元請業者 |
KIGO(Van Hattum en Blankevoort and Boskalis Nederland) (ファン ハットゥン エン ブランクフォート社とボスカリス ネダランド社のJV) |
下請業者 |
Volker Staal en Funderingen(VSF社) Gebr. De Koning B.V. (デ・コーニング社) |
使用機材 |
【鋼管杭施工】 ジャイロパイラー™ F401-G1200、スキップロックアタッチメント クランプクレーン™ CB4-2 【鋼矢板施工】 サイレントパイラー™ F401-1400、クランプクレーン™ CB3-6 |
杭材型式・寸法 |
鋼管杭約2500本(直径1016㎜、長さ14~27 m) Z形鋼矢板約4500ペア(1400㎜幅(AZ24-700の2枚1セット)、長さ10 m) |
圧入工工期 |
2025年9月~ |
■技研グループ概要
「圧入原理」を世界に先駆け実用化した杭圧入引抜機「サイレントパイラー™」を製造販売し、その優位性を生かしたソリューションを提案・実践しています。無振動・無騒音、省スペース・仮設レス、地震や津波、洪水に耐える粘り強いインフラの急速構築――。圧入技術が提供するオンリーワンの価値は、世界の建設課題の解決や国土防災に貢献しており、採用実績は40以上の国と地域に広がっています。
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