新型コロナで3大がんの症例減が加速
「第2波」で医療現場の混乱が最高水準に
病院経営のコンサルティングなどを行う株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC ※1=本社・東京都新宿区、代表取締役社長・渡辺幸子)は8月26日、新型コロナウイルス感染症が病院経営に与えた影響の調査結果を発表しました。
これによると、調査に協力した全国544の重症患者を受け入れる大病院のうち、6月時点のデータからは全般的に患者減が回復基調にあるものの、急ぎ治療が必要ながん患者の入院減が目立ちました。胃がん、肺がん、大腸がんの3大がんの減少幅がいずれも前月よりも拡大しています。また、8月に入ってから実施したアンケート結果からは、新型コロナ感染拡大の「第2波」の影響を受けて、医療現場の混乱状況が最高水準に達していることも明らかになりました。
これによると、調査に協力した全国544の重症患者を受け入れる大病院のうち、6月時点のデータからは全般的に患者減が回復基調にあるものの、急ぎ治療が必要ながん患者の入院減が目立ちました。胃がん、肺がん、大腸がんの3大がんの減少幅がいずれも前月よりも拡大しています。また、8月に入ってから実施したアンケート結果からは、新型コロナ感染拡大の「第2波」の影響を受けて、医療現場の混乱状況が最高水準に達していることも明らかになりました。
外来、入院症例の減少幅が回復
調査した急性期病院は、全国に1757ある「DPC対象病院」(※2)と呼ばれ、全国の病床の約半数を所有しています。今回の調査では、このうち3割以上が対象になっています。
調査ではDPC対象病院の診療行為を記録した「DPCデータ」を活用。これまでに3~5月のデータを分析してきた結果、対前年同月比で月を追うごとに患者の減少幅が拡大する傾向を示してきました。
ところがこのほど実施した6月のデータ分析では、外来診療で緊急事態宣言の前の3月のレベルに、入院診療でも4月のレベルに戻りつつあります。
全国的に患者数が多い症例別の状況を見ると、急ぎ治療が必要ながん症例の減少幅が拡大した一方、そのほかの症例はいずれも減少幅が回復していました。
一方、緊急性のない「予定入院」で最も患者数が多い白内障等は、同32.0%減で減少幅は同18.8ポイント縮小。次いで患者数が多い狭心症等は、同29.9%減で減少幅は15.6ポイント縮小しています。救急車などで搬送される「緊急入院」で最も患者数が多い肺炎は、51.7%減で減少幅は2.5ポイント縮小。前月の減少幅が大きかった下痢や嘔吐などの症状を伴うウイルス性腸炎は、同54.9%で減少幅は17.6ポイントの縮小で、かぜなどの急性気管支炎等も、同86.5%で減少幅は1.5ポイント縮小で、回復あるいは底を打った感があります。
新型コロナの影響による患者数の減少要因は、供給側である病院と需要側の患者の大きく2つあると考えられます。
供給側の理由は、コロナ患者治療に医療資源を集中させるため、受診抑制や病棟閉鎖、白内障など「待てる」予定手術・検査の延期などです。需要側の要因は、(1)手洗い、うがい、マスク着用などによる衛生要因(2)外出自粛や休業・休校の要請に伴う罹患減などの環境要因(3)コロナ感染リスクを懸念して不要不急の受診を控える「受診行動の変化」――の大きく3つが考えられます。
緊急入院をみると、休校が解除され小児に多いウイルス性腸炎の受診率は少し戻りつつあるものの、肺炎や急性気管支炎は前年同月比の減少率は維持しています。予定入院では、4~5月の緊急事態宣言が解除されたことにより、上記の供給・需要側双方の要因が薄まり、がん以外の予定入院症例の減少幅は6月に回復基調したと考えられます。
一方、がん症例、特に3大がんはこの逆で、減少幅が拡大し続けています。これについて今回のデータ分析を担当したGHC創業者で国際医療経済学者のアキよしかわは、「手術や検診、検査の延期が影響し、数か月遅れでがん症例数の減少に繋がっている可能性が考えられます。その場合、7月以降もがん症例数の減少幅は継続して拡大すると考えられるため、今後もデータの推移を注視する必要があるでしょう」と指摘しています。
半数以上の大病院が混乱状況
また、当社は8月時点の病院アンケート調査を実施し、その結果を公表しました。アンケート調査は、8月5日から24日までの19日間実施。105のDPC対象病院から有効回答を得ました。
これによると、8月に入ってからの新型コロナ感染者拡大に伴ってか、医療現場の混乱状況が急激に高まっています。具体的には、「新型コロナの影響は落ち着いたか」との質問に対して、「少し混乱している」「かなり混乱している」との回答が全体の24.7%だった前回調査に対して、8月は50.9%と倍増。半数以上が混乱状況にあることが明らかになりました。
また、マスクや防護服などの消耗品の調達についても、アルコール以外のすべての項目で前回調査よりも調達状況が悪化している傾向が見られました。
(※1)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」という理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。URL:https://www.ghc-j.com/
(※2)DPC対象病院
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1757病院(2020年4月時点)。
調査した急性期病院は、全国に1757ある「DPC対象病院」(※2)と呼ばれ、全国の病床の約半数を所有しています。今回の調査では、このうち3割以上が対象になっています。
調査ではDPC対象病院の診療行為を記録した「DPCデータ」を活用。これまでに3~5月のデータを分析してきた結果、対前年同月比で月を追うごとに患者の減少幅が拡大する傾向を示してきました。
ところがこのほど実施した6月のデータ分析では、外来診療で緊急事態宣言の前の3月のレベルに、入院診療でも4月のレベルに戻りつつあります。
具体的には、5月にマイナス22~24%の病院が最多だった外来の症例数(症例数はすべて延べ患者数)減は、6月にはマイナス2~4%の症例減の病院が最多になっています(調査対象は380病院)。外来ほどの回復は見られませんでしたが、入院についても5月の入院症例減が全体平均で21.7%だったのに対して、6月は14.0%と明らかな回復基調を示しています(同544病院)。
がん症例減、検診延期が影響か
全国的に患者数が多い症例別の状況を見ると、急ぎ治療が必要ながん症例の減少幅が拡大した一方、そのほかの症例はいずれも減少幅が回復していました。
3大がんで最も症例数が多い肺がんは、対前年同月比8.2%減で減少幅は前月比1.4ポイント拡大。次いで胃がんは同19.6%減で減少幅は同8.0ポイントの拡大、大腸がん(虫垂含む結腸がん)は同9.8%で減少幅は4.1ポイント拡大でした。
一方、緊急性のない「予定入院」で最も患者数が多い白内障等は、同32.0%減で減少幅は同18.8ポイント縮小。次いで患者数が多い狭心症等は、同29.9%減で減少幅は15.6ポイント縮小しています。救急車などで搬送される「緊急入院」で最も患者数が多い肺炎は、51.7%減で減少幅は2.5ポイント縮小。前月の減少幅が大きかった下痢や嘔吐などの症状を伴うウイルス性腸炎は、同54.9%で減少幅は17.6ポイントの縮小で、かぜなどの急性気管支炎等も、同86.5%で減少幅は1.5ポイント縮小で、回復あるいは底を打った感があります。
新型コロナの影響による患者数の減少要因は、供給側である病院と需要側の患者の大きく2つあると考えられます。
供給側の理由は、コロナ患者治療に医療資源を集中させるため、受診抑制や病棟閉鎖、白内障など「待てる」予定手術・検査の延期などです。需要側の要因は、(1)手洗い、うがい、マスク着用などによる衛生要因(2)外出自粛や休業・休校の要請に伴う罹患減などの環境要因(3)コロナ感染リスクを懸念して不要不急の受診を控える「受診行動の変化」――の大きく3つが考えられます。
緊急入院をみると、休校が解除され小児に多いウイルス性腸炎の受診率は少し戻りつつあるものの、肺炎や急性気管支炎は前年同月比の減少率は維持しています。予定入院では、4~5月の緊急事態宣言が解除されたことにより、上記の供給・需要側双方の要因が薄まり、がん以外の予定入院症例の減少幅は6月に回復基調したと考えられます。
一方、がん症例、特に3大がんはこの逆で、減少幅が拡大し続けています。これについて今回のデータ分析を担当したGHC創業者で国際医療経済学者のアキよしかわは、「手術や検診、検査の延期が影響し、数か月遅れでがん症例数の減少に繋がっている可能性が考えられます。その場合、7月以降もがん症例数の減少幅は継続して拡大すると考えられるため、今後もデータの推移を注視する必要があるでしょう」と指摘しています。
半数以上の大病院が混乱状況
また、当社は8月時点の病院アンケート調査を実施し、その結果を公表しました。アンケート調査は、8月5日から24日までの19日間実施。105のDPC対象病院から有効回答を得ました。
これによると、8月に入ってからの新型コロナ感染者拡大に伴ってか、医療現場の混乱状況が急激に高まっています。具体的には、「新型コロナの影響は落ち着いたか」との質問に対して、「少し混乱している」「かなり混乱している」との回答が全体の24.7%だった前回調査に対して、8月は50.9%と倍増。半数以上が混乱状況にあることが明らかになりました。
こうした状況を受けて、前回調査で約6割だった「原則、面会は禁止(主治医が許可した場合や手続きの場合のみ許可)」が約9割の85.5%になりました。
また、マスクや防護服などの消耗品の調達についても、アルコール以外のすべての項目で前回調査よりも調達状況が悪化している傾向が見られました。
当社では今後も毎月のデータ分析およびアンケート調査の結果について公表させていただきます。
(※1)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」という理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。URL:https://www.ghc-j.com/
(※2)DPC対象病院
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1757病院(2020年4月時点)。
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