長崎県松浦市から、宇宙へ!JAXAの月探査機「SLIM」に約1mm以下の薄肉のふっ素樹脂製「ダイヤフラム」が搭載!
開発から10年。ノウハウを生かした加工方法確立が実る
中興化成工業株式会社(本社:東京都港区 代表取締役:庄野直之)が製造する、ふっ素樹脂製の「ダイアフラム」が2024年1月20日(日本時間)に月面着陸した、JAXAの月探査機「SLIM」に搭載されています。
■ふっ素樹脂製品「ダイヤフラム」とは
「ダイヤフラム」とは、ポンプの機械部分と送る液体を隔てる弾性の「膜(まく)」になります。
一般的には金属やゴム製のものですが、今回当社が製造したダイヤフラムはふっ素樹脂(PTFE) 100%で約1mm以下の薄肉の加工品です。
■使用された部分と活用について
当社のダイヤフラムは月探査機「SLIM」の主構造である燃料・酸化剤を貯蔵するタンクの中の酸化剤を貯蔵する部分に使用されています。
「SLIM」は月周回軌道に投入され軌道調整時や月面着陸時に逆噴射して燃焼させますが、噴射させるためにはダイヤフラムを凹ませる動作が必要になります。
従来はチタン製のダイヤフラムでしたが、「金属だと凹みの動きが硬い・重たい」という課題がありました。
そのため、「柔軟性と軽量性」がある樹脂製という条件に加え、酸化剤などの薬液が触れても劣化しにくい「耐薬品性」の特徴をもつ「ふっ素樹脂」が選定されました。
ふっ素樹脂は、汎用樹脂とは異なり、耐薬品性・耐熱性・耐候性・滑り性など様々な特性を併せ持つ高機能プラスチックです。なお、当社製品が製造した他のふっ素樹脂製品は滑り性の特徴を生かして、JAXAのH2ロケットやH3ロケットのエンジン摺動部材にも採用されています。
■ふっ素樹脂製品「ダイヤフラム」が開発されるまで
2014年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から直接、「SLIM」探査機の開発に向けて「ふっ素樹脂製のダイヤフラム」の開発のご相談をいただき、開発がスタートしました。
開発の過程で課題となったのは「ふっ素樹脂を薄くに加工する難しさ」です。ダイヤフラムの軽量化=樹脂の薄肉化(厚さを薄くする)が求められます。ふっ素樹脂は変形しやすい樹脂のため、高精度の切削加工が難しいことに加え、薄さが変わることでダイヤフラムの動きにも影響が出るため、要求される動きや加工精度を具現化するのに苦労しました。
しかし、これまで培った加工技術を応用し、加工時の固定方法を工夫することで、約1mm以下の薄肉化に成功。また、ダイヤフラムを取り付けるタンク本体を開発する三菱重工業の開発拠点が同じ長崎県内にあるため迅速な試験、試作を繰り返すことができ、完成に至りました。
■中興化成工業株式会社について
1963年創業。創業時からふっ素樹脂製品を製造しています。他にもシリコーン樹脂やポリイミドなどスーパーエンプラをよばれる樹脂の加工を得意としています。東京ドームや高輪ゲートウェイ駅の屋根膜材などに採用されているふっ素樹脂屋根膜材分野で国内唯一の製造メーカーで、世界では3社しかいない企業のひとつです。また、1985年からは時代に先駆けて生分解性プラスチック樹脂製品の開発にも着手。樹脂の加工製造はあくまでも手段であり、お客さまの抱える問題を解決することが私たちの事業の目的です。近年では中国やタイに現地法人や工場を設立し、アジアや欧米にも市場を拡大しています。
【会社概要】
会社名:中興化成工業株式会社
所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂2-11-7 ATT新館10階
代表者:庄野直之
創立:1963年(昭和38年) 3月29日
売上高:163億円※2023年3月期連結実績
従業員数:530名 ※グループ会社・計 2023年4月時点
【本リリースに関するお問い合わせ】
中興化成工業株式会社 マーケティング部 広報担当宛て
電話:03-6230-4415
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