マッサージルーム導入企業ストーリー <ベイン・アンド・カンパニー>
ウェルビーイング向上とDEIを融合 注目の「ヘルスキーパー」とは?
ヘルスキーパーとは、視覚障がい者であり、あん摩マッサージ指圧師、鍼師及び灸師などの資格を持ち、企業内でマッサージや鍼の施術を行う専門家のことを指します。ベインでは、ヘルスキーパーを迎え入れることによって、社員のウェルビーイング向上はもちろん、多様性を尊重し、個々の能力を引き出す職場のダイバーシティとインクルージョンに前進をもたらしています。
新設されたマッサージルームは、執務室に続くフロアの一角に位置しています。施術用の個室は2つ。部屋には穏やかなBGMが流れ、柔らかな照明に包まれたリラックス空間が広がります。ここはクライアントの成功に情熱を注ぎ、全力を尽くす社員がリフレッシュを図る大切な場所。
よくあるパーテーションで区切られた簡易なマッサージルームではなく、施術する側の働きやすさに加えて、施術を受ける方が快適に過ごすための様々な工夫が施されています。
オフィス内とは思えない、くつろぎのマッサージルーム
そんな、こだわりの詰まったマッサージルームで、施術にあたっているのが2人のヘルスキーパーです。
2人はともに、あん摩マッサージ指圧や鍼灸の資格を持つベテランのヘルスキーパーであり、長年の経験と専門知識を活かして施術を行っています。マッサージルームは開設直後から評判を呼び、1か月も経たない間に予想を大幅に上回る方々に利用いただき、1日の利用枠がいっぱいになる日が出るほどの人気ぶりです。
施術者としての長年の試行錯誤から、「ヘルスキーパーは、体をほぐすことが仕事なのではありません」と語る一人は、施術を通じて、体のケアの重要性に気付いてもらうことを信条としています。「マッサージルームを訪れた人にボディケアをするだけでなく、『自分の体をケアしよう』と思うきっかけを提供する存在として、一緒に働く皆さんの役に立ちたいと考えています」と語ります。
様々な手技を駆使して施術を行っていく
もうひとりのヘルスキーパーも20年以上、人々の健康や体のケアをサポートしてきたベテランです。仕事以外でもパワーリフティングの競技者として、世界大会にも出場するなどスポーツの分野でもご活躍されており、ベインでの仕事について次のように語っています。
「外国の方に日本で行われるマッサージが受け入れられるか不安でしたが、皆さんに喜んで施術を受けていただけるのでやりがいを感じています」
社員のために作ったマッサージルーム
実は以前からベインは、社員のウェルビーイング向上に積極的に取り組んできました。フリーカウンセリングの実施や睡眠アプリ、マインドフルネスの導入などグローバル共通で様々な施策を展開しています。さらに日本独自にも取り組みたいと検討する中で候補に挙がったのが、高い社員満足度が期待できるマッサージルームの設置でした。
そうした中、オフィスの移転が決まり、新しいオフィスにマッサージルームを設けることが正式に決定。ちょうどそのタイミングで、社内のDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)チームとの連携がスタートしました。
「その頃は、視覚にハンディキャップを抱えた方は社内にいなかったため、この機会に視覚障がいを持つヘルスキーパーさんを採用しようということなったのです」と人事部長の清水聡子さんは振り返ります。
マッサージルーム開設をリードした清水さん(中央)
この10年間で、全国に900万人以上いると言われる障がい者の就労機会は増え、社会参加は着実に進展を遂げてきました。しかし依然として、重度の視覚障がいを抱える人たちの就労機会は限られており、取り残されている現状があります。今回の取り組みは、その状況を改善する一歩と言えるものです。
「視覚障がいを持つヘルスキーパーを迎え入れることは、社員の気づきや人間としての成長のきっかけにつながるものです。会社として心配は一切ありませんでしたし、多様性を尊重する環境作りは、新しいアイデアやイノベーションを創出し競争力を高める上でも欠かせないものです」
DEIチームからマッサージルーム開設のプロジェクトに参画したパーキンス薫さんは、そのように強調します。
DEI推進を担当するパーキンスさん
パーキンスさんは、クライアントへのコンサルティングを行う傍ら、社内のDEI推進についても3年前から担当しています。
同社ではDEIが、特別なこととしてではなく、ごく自然な考え方として受け入れられています。「仮に、2人が働く上で何か課題が生じたとしても皆で解決できる自信がありました」と清水さんも話します。
想いの共有がパートナーシップの決め手に
実際にマッサージルームを開設するにあたっては、障がい者雇用を支援するKindAgentのサポートを受けながら採用や施設の準備を進めていきました。KindAgentを選んだ理由は、専門家としての知見が豊富なだけでなく、取り組みに対する “想い” を共有できたのが決め手となったと言います。
「採用するヘルスキーパーさんには、本人の健康に配慮しつつも長く働いてもらいたい、会社の一員として参画してもらいたいという想いがありました。その想いを理解し、一緒に素晴らしい成果を生み出せると確信を持てたのがKindAgentさんでした」(清水さん)
マッサージルームの設計は、照明スイッチから床材の素材までKindAgentのきめ細やかなフォローのもとに具体化していきました。また、採用が決まる前からアイメイト※1のための待機スペースも用意し、保健所への開設手続きや採用全般に関してもアドバイスをもらいながら準備を進めました。
※1 アイメイト・・・視覚障がい者の歩行を助ける訓練犬。「目(EYE)」 「私( I )」 「愛」の3つの意味からなる「アイ」と、英語で仲間という意味を持つ「メイト」を組み合わせた呼称。
視覚障がい者への理解を深める社員研修を実施
それだけではありません。ベインは、これから二人のヘルスキーパーと同僚として一緒に働くにあたり、あらかじめどういったチャレンジがあるのか知る必要があると考え、外部の講師を招いた社員向けの研修を企画。1回目は、視覚障がい者の日常生活や、適切な声かけ・サポートの方法などを学ぶ内容としました。そして2回目は、ヘルスキーパーの一人がアイメイトユーザーだったこともあり、アイメイト協会から講師を招き、アイメイトやそのオーナーへの接し方についての研修を行いました。
マッサージルーム内にはアイメイト専用の場所を作った
研修に参加した社員からは想像していた以上に反響があったと清水さんは振り返ります。
「研修で学んだことを応用し、たまたま地下鉄で遭遇した視覚障がいの方に席を譲ったところ、周囲の方も気づき一緒に席を譲ってくれたという心温まるエピソードを報告してくれた社員もいます。視覚障がい者に対するサポート方法に自信を持てるようになるきっかけとして、社員にとっても研修は非常によい機会になりました」
一方、アイメイトユーザーのヘルスキーパーは、「アイメイトや自分のことをこんなに理解してくれようとしているんだ」と、感激したと言います。
「わざわざアイメイト協会から講師を呼んで研修したと聞いた時は、これまでになかったことだったので、その熱意に驚きました。最初のうちはオフィス近くの大きな広場で方向を見失うことが度々あったのですが、そういった時にも、社員の方に何度も助けてもらい、本当にありがたく思っています。ここでは皆さんが気さくに話しかけてくれるのでとても過ごしやすいです」
採用した2人には活躍のサポートを提供
社員に対する研修だけでなく、入社する2人にも時間をかけて丁寧にサポートを行っていきました。マッサージルームの開設決定後、導入にあたっての準備を進めた人事部コーディネーターの片山幸子さんは、「入社いただくにあたっては、会社に慣れていただくためのオンボーディング(準備)期間を長めに設け、徐々に慣れてもらうことを意識しました」と話します。
人事部コーディネーターの片山幸子さん
目の不自由な視覚障がい者にとって、オフィスまでの道のりに馴れることは極めて大事なことです。そこで入社する前から、白杖を用いて移動するヘルスキーパーの一人に、支援機関が中心となり歩行訓練を実施し、出社のための準備を進めていきました。
さらに入社後も片山さんを中心に移動のサポートを実施。移動にあたっては、凹凸のある3Dの地図も用意しました。また、社内のコミュニケーションはオンライン上で行うことも多く、読み上げソフトを利用することにしました。
「馴れていないソフトだったので最初は苦労したと思いますが、お二人ともとても前向きで、メールを読み、返信するという一連の業務をひとつずつクリアしていきました」(片山さん)
社員の健康をサポートする存在としてさらなる活躍を
入社から2か月が経ち、仕事にも慣れて自信を持って働く姿を見て、清水さんはさらなる活躍の場を広げていくことを期待しています。
「今後お二人には、社員の健康やウェルビーイング向上の中心的な役割を果たしてもらえたら嬉しいですね。それぞれの得意領域を活かし、身体メンテナンスに関する情報発信や、お二人が主導するプロジェクトを立ち上げるなどの活躍を期待しています。鍛錬して高度な技術を習得し継続的に学び続けているプロから、ボディケアやセルフメンテナンスのアドバイスをもらえるのは、社員にとって非常に有益なことです。施術だけでなく、そのようなシナジーを築き上げていきたいと考えています」
「施術中にアドバイスを一言もらえるのも嬉しいですよね」と清水さん
さらに、パーキンスさんも続けます。
「ベインには、ウーマンアットベインやプライドアットベインといった、マイノリティのアイデンティティを持つ社員がお互いにサポートしあうグループがあります。ちょうどこれから、 “ダイバースアビリティーズアットベイン” という視覚障がいのような外からもわかる障がいだけでなく、一見だけでは気づかれることのないメンタルの障がいや、障がいのある家族を持つ社員などが集うグループを立ち上げる予定です。2人には、そのグループを引っ張るリーダーになってもらえたら嬉しいですね」
現在、全国には30万人を超える視覚障がい者が生活しています※2。障がいの原因はさまざまであり、その種類によって症状も異なります。先天的な原因も、後天的な原因もあります。後天的な原因の場合、徐々に見えなくなっていくという困難さを経て、自己受容をし、新たな歩みを進めていくと言われています。その中で、3〜5年という期間をかけてあん摩鍼灸の免許を取得し、ヘルスキーパーとして他の人々の健康をサポートすることは、まさに奇跡的なことです。
そんなヘルスキーパーを仲間に迎え入れ、ベインは社員のウェルビーイング向上とDEIの推進の一歩を確実に歩んでいます。一人ひとりが自分らしく、そして最高のパフォーマンスを発揮できる職場とするために、これからも挑戦は続きます。
※2 視覚障がい者の現状と音声案内のニーズ - 総務省
https://www.soumu.go.jp/soutsu/hokuriku/resarch/houkoku/1.1.pdf
(2023.06.28アクセス)
▼企業情報
ベイン・アンド・カンパニー
企業概要:ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65拠点のネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。ベインのクライアントの株価は市場平均に対し約4倍のパフォーマンスを達成しており、私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。
所在地: 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階
URL : https://www.bain.co.jp
▼KindAgent株式会社について
<会社概要>
会社名:KindAgent株式会社
所在地:東京都千代田区麹町2丁目10−3 エキスパートオフィス麹町
代表者:茅原 亮輔
モットー:「情熱とアイディアで障害者雇用の新しい価値を創造する」
事業内容:障害のある学生向けインターンシッププログラムの提供
障害者や働く事に工夫が必要な方に特化した人材エージェントサービス
各種障害者雇用に関するコンサルティングサービス
<お問い合わせ先>
KindAgent株式会社 広報担当
TEL:03‐4405‐3233
e-mail:info@kind-agent.co.jp
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