年金分割制度は離婚率を上げ、離婚後の女性の消費量も上昇させる
~関西外国語大学研究論集(121号、3月30日発行)に論文掲載~
関西外国語大学(大阪府枚方市)の南村圭哉(みなみむら・けいや)外国語学部准教授(マクロ経済学)が、3月30日に発行する研究論集第121号に論文「年金分割制度が離婚率と家計の経済活動に与える影響について」を発表しました。南村准教授は、シミュレーション分析を行い、その結果、年金分割制度が離婚率を上昇させ、貯蓄率の低下を招くことや、離婚後の女性の消費量が増加することなどがわかったとしています。

年金分割制度には、分割割合が50%を上限に当事者間で決められる「合意分割」(2007年施行)と、2分の1ずつ分割する第3号被保険者を対象にした「3号分割」(2008年施行)があります。
南村准教授は今回の研究で男性のみが働くケースに焦点を当て、先行研究を基に協議離婚のもとで年金分割制度が貯蓄や離婚の意思決定に与える影響を分析(モデル分析)。さらに、このモデルについて、離婚率、貯蓄率、離婚後の男女の消費量に与える影響をシミュレーション分析しました。
その結果、年金分割制度は①離婚率を上昇させる②離婚後の女性の消費量は増加している③男性の消費量は低下する、ことなどがわかったとしています。
南村准教授は、年金分割制度開始以前は、女性、とくに専業主婦は離婚後に受け取れるのは国民年金だけで、経済的問題から離婚を選択する際の障壁となっていたが、制度開始により、男女間の離婚後の経済格差が縮小され、特に女性に有利に働く一方、男性にとっては離婚がしやすくなる可能性があると指摘しています。

厚生労働省の調査によると、2022年度の離婚件数は18万583組だったのに対し、年金分割を使ったのは1万1034件と6組に1組にとどまっています。
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