東京サステナブル・シーフードサミット2021閉幕 SDGs達成年 2030年へのロード・マップを描いた白熱の3日間
10月11-13日の間、東京サステナブル・シーフードサミットをオンラインにて開催しました。26セッション、国内外のフロントランナー77人の方に登壇いただき白熱した議論を展開。盛会のうちに閉会しました。
SDGs達成年である2030年に向けて、いかにサステナブル・シーフードの推進も含めたブルー・エコノミー(海洋経済)を推進していくか、特にそのカギとなる「DXとESG投資」に焦点を置きながら議論を展開しました。
今回は昨年に続き、2回目のオンライン開催となりました。シンポジウム(発表会)からサミット(山頂)にステージを変え、7回目にして初の有料開催となりましたが、水産や金融、IT、NGO等幅広い業界から500人以上の方に参加いただき、3日間合計の英日のべ視聴者数は約2390人となりました。また、オンライン上で多数の質問をいただくなど、活発に議論を行うことができました。
イベント詳細:https://sustainableseafoodnow.com/2021/
国内外のフロントランナーが頂上=サミットをめざす、最先端の議論を展開
1日目のテーマは、2030ビジョン、DX(デジタルトランスフォーメーション)。
国際連合事務総長海洋特使のピーター・トムソン大使は「健全な海なくしては健全な地球なし」と語り、海の健全性を確保していくことが、水産業を含むブルーエコノミーの繁栄の基盤となることを強調し、来年、リスボンで開催される国連海洋会議に向けて、日本の水産企業から積極的なコミットメントが出されることへの期待を語りました。
また、スタンフォード大学のジム・リープ氏は、現在の食糧生産システムは環境負荷が高い上、栄養不足を生み出しており、持続不可能な状態にあると指摘。その上で環境負荷が少なく、上質なタンパク源を提供する水生生物性食品「ブルーフード」を食糧政策の中心にしていくべきだ、と主張しました。
さらに、水産庁長官の神谷崇氏からは、資源管理をすすめることで水産業を成長産業化させる具体策として、新たな資源管理の推進に向けたロードマップが示され、資源管理情報の公開・共有、DXの導入、制度の簡素化などが紹介されました
DXをテーマとしたセッションでは、まず、発足したばかりのデジタル庁の上田翔氏から「デジタル化は生活を豊かにするもの」とした上で、職人技の金型づくりにDXを導入した事例などを引き合いに出しながら現場の状況に合わせてDXを導入することの重要性を強調しました。
その後、国内屈指の遠洋マグロ延縄漁業会社であり、デジタル・トレーサビリティ・システムを導入する株式会社臼福本店の臼井壯太朗氏からは、日本では、DXに取り組んでも市場で評価されないという実態に対する問題提起がなされた他、公立はこだて未来大学の和田雅昭氏からは、生産者を応援し、美味しさにつながる情報を届けるという意味でのDX活用の可能性について示唆されました。
また、水産資源管理先進地域でのDX事例のセッションでは、DXの導入が資源管理や混獲の防止だけではなく、法令遵守などの証明やトレーサビリティの向上に役立ち、ビジネスメリットにつながっている事例が多数紹介されました。
2日目のテーマは、連携プラットフォーム、海と金融。
連携プラットフォームのセッションでは、世界のトップ水産企業10社が科学者と協働でサステナビリティに取り組むプラットフォーム組織、SeaBOSが壇上に登り、参画する、極洋、セルマック(三菱商事傘下)、日本水産、マルハニチロが、資源管理や気候変動、プラスチック問題などへの取り組みを紹介しました。SeaBOS加盟日本企業全4社から、1社だけでは得られない国際的な視点や情報をSeaBOSから得ることによって自社の取り組みを発展させることができている、など非競争連携の意義と効果について聞かれました。
海と金融のセッションでは、自然関連財務情報開示タスクフォース、TNFDが発足したことを契機に、金融業界による生物多様性の取り組みが急速に進展しつつあることが示唆されました。たとえば、UNEP FIからは金融機関とともに、SDGs14を達成するために持続可能なブルー・エコノミー金融原則を策定したことが紹介された他、世界的なアセットマネージャーであるロベコからは、ネイチャーポジティブを実現するために生物多様性に積極的にコミットしていくという発言もありました。
また、ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)からは国際大手水産関連企業のSDGs14への貢献度合い等を評価した改訂版シーフード・ステュワードシップ・インデックスが発表されました。残念ながら日本の水産企業はトップ10入りしていませんでしたが、WBAのヘレン・パッカー氏は「今後の取り組みや投資の判断材料として活用していってほしい」と期待感を語りました。
3日目のテーマは、流通と生産、水産現場の挑戦。
日本の小売企業大手のイオントップバリュ、7&iホールディングス、日本生活協同組合連合会、ホスピタリティ業界大手のヒルトンが一堂に会し、それぞれの取り組みや水産物の持続可能な調達に関する時間軸と目標数値が明確なコミットメントを発表しました。調達目標を基盤とし、社内での意識共有や、取引先企業、消費者などステークホルダーと連携して取り組みを進めていく気概を感じるセッションとなりました。
一方、生産現場では漁業や養殖業がどのように成長できるかが議論されました。漁業においては、漁業法改正を機に資源管理が強化され、生産現場での合意形成、サプライチェーンや消費者とのコミュニケーションが重要であること、養殖業については、陸上養殖も含め、持続可能な飼料製造、養殖を行いつつ、生産から販売までを垂直統合し収益性のある姿を目指すべきだとしました。
また、水産業界で起きている労働・人権問題が紹介され、MSC、FishChoice、世界の小売・流通業界が集まるCGFが、社会的責任を果たすための基準や取り組みを紹介しました。さらに、労働・人権問題の温床にもなっているIUU(違法・無報告・無規制)漁業水産物を日本国内で流通させないために制定された「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」が今後施行され、実際の業務に反映させるには「DXは避けて通れない」と水産物卸売大手、中央魚類の伊藤晴彦氏が強調しました。
SDGs達成のために残された時間は10年を切りました。海の状況は決して望ましい状況ではありませんが、将来世代のために、現世代である私たちが何ができるのか。最新かつ多くの知見が共有され、また、セクターを超えて積極的にリードする様子が見られました。まさにイベントの名称通り、頂上=サミットをめざして、登壇者・参加者が議論を重ねた3日間となりました。
来年のサミットでは、サステナブル・シーフードのさらなる推進をめざして新たな知見を皆様と共有、議論できますことを楽しみにいたしております。
最後に、ご参加並びにご登壇くださった皆様に心よりお礼申し上げます。
<東京サステナブルシーフード・サミットとは>
東京サステナブルシーフード・サミットは2015年から日経ESG、株式会社シーフードレガシーとで共催してきた「東京サステナブルシーフード・シンポジウム」の後継イベントです。サステナブル・シーフードのムーブメントを日本で起こし、進めることを目的として開催され、2019年には国内外から108人が登壇し、57カ国・地域から約3,800人が視聴しました。(2019年は初オンライン・無料開催)
2020年は、サステナブル・シーフードを推進するムーブメントの裾野を加速度的に広げ、「シンポジウム」から、より先進的な取り組み「サミット(山頂,Summit)」を目指して行動を起こしていくフェーズをめざすべく、Tokyo Sustainable Seafood Summit としてバージョンアップさせて開催しました。
<開催概要>
開催日:2021年10月11日(月)、12日(火)、13日(水)9:30-17:00
開催方法:オンライン(申込みいただいた方に限り12月までアーカイブ視聴可能)
参加費:3日間通しで1人 5,500円(税込)/ウェブサイトにて受付(受付は終了)
主 催:株式会社シーフードレガシー、日経ESG
共 催:ウォルトンファミリー財団、デビッド・アンド・ルシール・パッカード財団
後 援:デジタル庁
詳 細:https://sustainableseafoodnow.com/2021/
イオン株式会社様、マルハニチロ様にはTSSSに対しご協賛いただきました。
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