脱・年功序列に待った!?「年功序列をはじめとする人事評価制度に関する意識調査」アンケート結果①
総合人事コンサルティング会社のフォー・ノーツ(所在地:東京都港区)は、全国のオフィスワーカー400名を対象に「年功序列をはじめとする人事評価制度に関する意識調査」を実施しました。
本レポートでは、調査対象者を「年功序列である」グループと「やや年功序列である」グループ、「年功序列ではない」グループに分け、得られたアンケート結果を分析し、年功序列をはじめとする人事評価制度の実態及び、それらの抱える課題点と解決策について考察しました。
本レポートでは、調査対象者を「年功序列である」グループと「やや年功序列である」グループ、「年功序列ではない」グループに分け、得られたアンケート結果を分析し、年功序列をはじめとする人事評価制度の実態及び、それらの抱える課題点と解決策について考察しました。
- 結果分析のポイント
6割以上の会社が「成果評価」・「行動評価」を評価項目として採用していた。
人事評価で、最も重視されているポイントは、「成果・業績など、仕事の結果」が43.3%で最多となった。
一方、自身の勤める会社が「年功序列である」「やや年功序列である」と回答した人は7割以上を占め、多くの企業で、表向きの評価制度とは別に年功序列の要素が併存している様子が伺えた。→Q1~3参照
●社内環境が最も良好なのは「やや年功序列である」グループ。最も悪いのは「年功序列である」グループ。
心身共に健康に働ける環境が「ある」と答えた割合が最も高かったのは、「やや年功序列である」と回答したグループであり、約9割がポジティブな回答をした。一方、「年功序列である」と回答したグループは健康に働ける環境が「ある」と答えた割合が最も低かった。
その他ほぼすべての質問で、「やや年功序列である」グループが最もポジティブ、「年功序列である」グループが最もネガティブな結果となった。→Q5ほか参照
●やりがいを、最も感じていないのは「年功序列である」グループ。その理由として、「適切な目標設定がされない」「社内のキャリアステップが明示されていない」という回答が相対的に多く挙げられた。
「年功序列である」と回答したグループは、やりがいを持って働ける環境が「ない」と答えた割合が最も高く、他のグループと比較して20ポイント以上の差がついた。「年功序列である」と回答したグループでは、やりがいを持って働ける環境が「ない」理由として、「適切な目標設定がされない」、「社内のキャリアステップが明示されていない」を挙げる割合が、他グループに比べ著しく高かった。→Q6・7参照
●キャリアビジョンを描けず、新しいスキルや知識を身につけるための行動をしていない割合が、最も高いのも「年功序列である」グループ。
将来のキャリアビジョンを「描けていない」と答えた割合が最も高かったのは、「年功序列である」と回答したグループだった。また、新しいスキルや知識を身につけるための行動を「していない」と答えた割合が最も高かったのも、「年功序列である」と回答したグループであり、他のグループと10ポイント以上の差がついた。→Q8・9参照
●現在勤めている会社に、最も将来性を感じていないのは「年功序列である」グループ。その理由として、「新しいことにチャレンジする風土がない」という回答が相対的に多く挙げられた。
年功序列であると回答したグループが会社に対して将来性を「感じない」と答えた割合が最も高く、他のグループと15~20ポイント近く差がついた。また、「年功序列である」と回答したグループはその理由として、「新しいことにチャレンジする風土がない」を挙げる割合が、他グループに比べ著しく高かった。→Q10・11参照
- 調査概要
対象者:現在勤めている会社に人事評価制度が「ある」と答えた日本国内のオフィスワーカー
※正社員もしくは契約社員に限る。派遣社員、パート、アルバイトは除く。
対象地域:全国
男女比 :男性69.5% 女性30.5%
調査方法:インターネット調査
調査期間: 2022年6月28日~6月29日
回答数 :20代・30代・40代・50代以上 各100名ずつ 計400名
- Q.1 あなたの会社の評価制度で、採用されている評価項目はなんですか。(複数回答可)
勤務先の評価制度で採用されている評価項目を聞いたところ(複数回答可)、「成果評価(成果目標の達成度)」が最も多く、7割近くの会社が評価項目として採用していた。
次いで「行動評価(目標達成に向けたプロセス・行動)」(60.5%)、「能力評価(知識やスキル)」(50.5%)となった。
- Q.2 あなたの会社の人事評価で、最も重視されているポイントはなんですか。(単数回答)
勤務先の人事評価で、最も重視されているポイントを聞いたところ(単数回答)、「成果・業績など、仕事の結果」が43.3%となり、他項目と大きく差をつけ、最多となった。
「経験・勤続年数・年齢など」を最も重視されているポイントとした回答者は、11.3%にとどまった。
- Q.3 あなたの会社は年功序列ですか。(単数回答)
勤務先の会社が年功序列かどうかという質問(単数回答)に対しては、「年功序列である」・「やや年功序列である」と答えた回答者があわせて70%以上を占め、評価ポイントとしては成果を重視する(Q1、Q2)としながらも、多くの企業では、年功序列の要素も併存している実態が明らかとなった。
- Q.4 あなたの会社の、社内の人間関係は良好だと思いますか。(単数回答)
社内の人間関係について聞いた質問(単数回答)で、社内の人間関係が「良好ではないと思う」と答えた割合が最も高かったのは、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループで、26.8%が「良好ではないと思う」(あまり良好ではないと思う(18.3%)、まったく良好ではないと思う(8.5%))と答えた。
もっとも「良好だと思う」割合が高かったのは、Q3で「年功序列ではない」と答えた回答者グループで、78.8%が「良好だと思う」(まあ良好だと思う(67.3%)、すごく良好だと思う(11.5%))と答えた。
「すごく良好だと思う」と「まったく良好ではないと思う」の割合が最も低かったのは、「やや年功序列である」と答えた回答者グループで、「やや年功序列である」と答えたグループは、社内の人間関係に関して、大きく満足はしていないが、大きな不満もなく、ほどほどに満足している様子が伺えた。
- Q.5 あなたの会社には、心身共に健康に働ける環境がありますか。(単数回答)
「心身共に健康に働ける環境がありますか。(単数回答)」との質問では、「健康に働ける環境が「ない」」と答えた割合が最も高かったのは、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループで、35.2%が「健康に働ける環境が「ない」」(あまり健康に働ける環境がない(22.5%)、まったく健康に働ける環境がない(12.7%))と答えた。
「健康に働ける環境が「ある」」と答えた割合がもっとも高かったのは、Q3で「やや年功序列である」と答えた回答者グループで、89.2%が「健康に働ける環境が「ある」」(十分に健康に働ける環境がある(13.4%)、まあまあ健康に働ける環境がある(75.8%))と答え、Q3で「年功序列ではない」と答えた回答者グループを上回った。
- Q.6 あなたの会社には、やりがいを持って働ける環境があると思いますか。(単数回答)
「やりがいを持って働ける環境があると思いますか(単数回答)」との質問では、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループのみが、「やりがいを持って働ける環境が「ない」」と答えた割合が著しく高かった。(「あまりないと思う」(42.3%)「まったくないと思う」(21.1%))
「やりがいを持って働ける環境が「ある」」と答えた割合がもっとも高かったのは、Q3で「やや年功序列である」と答えた回答者グループで、60.2%が「やりがいを持って働ける環境が「ある」」(すごくあると思う(3.7%)、まああると思う(56.5%))と回答したが、「年功序列ではない」回答者グループとの差は、2.6%にとどまった。
- Q.7 その理由を教えてください。(複数回答可)
Q6で「やりがいを持って働ける環境が「ない」」(あまりないと思う、まったくないと思う)と回答した人のみにその理由を聞いたところ(複数回答可)、全体では、「仕事の結果やプロセスを校正に評価されない」(46.4%)、「自身の成長の実感できない」(43.6%)、「社内のキャリアステップが明示されていない」(38.0%)ことが、多く理由として挙げられた。
一方、Q3で「年功序列である」と回答したグループの特徴として、「やりがいを持って働ける環境が「ない」」理由として、「適切な目標設定がされない」(37.8%)、「社内のキャリアステップが明示されていない」(46.7%)を挙げる割合が、他グループに比べ著しく高く、「年功序列である」グループ特有の問題が明らかになった。
- Q.8 あなたは、現在勤めている会社で将来のキャリアビジョンを描けていますか。(単数回答)
- Q.9 あなたは、新しいスキルや知識を身につけるための行動をしていますか。(単数回答)
「現在勤めている会社で将来のキャリアビジョンを描けていますか。(単数回答)」との質問(Q8)では、「将来のキャリアビジョンを「描けていない」」と答えた割合が最も高かったのは、Q3で「年功序列である」と回答したグループで、57.8%が「将来のキャリアビジョンを「描けていない」」(はっきりとは描けていない(38.0%)、まったく描けていない(19.8%))と答えた。
「新しいスキルや知識を身につけるための行動をしていますか。(単数回答)」との質問(Q9)でも、「新しいスキルや知識を身につけるための行動を「していない」」と答えた割合が最も高かったのは、Q3で「年功序列である」と回答したグループで、53.5%が「新しいスキルや知識を身につけるための行動を「していない」」(あまりしていない(32.4%)、まったくしていない(21.1%))と答えた。
Q6・Q7で、「年功序列である」回答者グループは、「適切な目標設定がされない」「社内のキャリアステップが明示されていない」ために、「やりがいを持って働ける環境が「ない」」と感じているという特徴が明らかとなったが、Q8・Q9でも、その結果を推察させる結果となった。
- Q.10 あなたは、現在勤めている会社に将来性を感じますか。(単数回答)
「現在勤めている会社に将来性を感じますか。(単数回答)」との質問では、「将来性を「感じない」」と答えた割合が最も高かったのは、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループで、64.8%が「将来性を「感じない」」(あまり将来性を感じない(43.7%)、まったく将来性を感じない(21.1%))と答えた。
「将来性を「感じる」」と答えた割合がもっとも高かったのは、Q3で「やや年功序列である」と答えた回答者グループで、55.0.%が「将来性を「感じる」」(すごく将来性を感じる(6.9%)、すこし将来性を感じる(48.1%))と答え、Q3で「年功序列ではない」と答えた回答者グループ(すごく将来性を感じる(10.6%)、すこし将来性を感じる(38.9%))を上回ったが、「すごく将来性を感じる」という回答だけに限ると、「年功序列ではない」回答者グループのほうが、3.7%上回った。
- Q.11 その理由を教えてください。(複数回答可)
Q10で「将来性を「感じない」」(あまり将来性を感じない、まったく将来性を感じない)と答えた回答者のみにその理由を聞いたところ(複数回答可)、全体では、「会社を支える次世代が育っていないから」(48.5%)、「会社や事業の成長を感じられないから」(46.5%)が、多く理由として挙げられた。
一方、Q3で「年功序列である」と答えた回答者グループのみの特徴として、「将来性を「感じない」」理由として、「新しいことにチャレンジする風土がない」(50.0%)を挙げる割合が、他グループに比べ著しく高く、「年功序列である」グループ特有の問題が、明らかになった。
- Q.12 あなたは人事評価において、何を最も重視してほしいですか。(単数回答)
「人事評価において、何を最も重視してほしいですか」という質問では、全体では「成果・業績など、仕事の結果」(35.5%)と「行動・能力など、仕事のプロセス」(29.5%)が多数を占めた。
Q2で得られた、現在勤務している会社が重視している人事評価ポイントごとに、回答者グループを分け集計したところ、ほとんどのグループで、現在勤務する会社が重視している人事評価ポイントを、全体での割合より多く望んでいることが分かった。
しかし、現在勤務する会社が「経験・勤続年数・年齢など」を重視していると答えた回答者グループでは、「経験・勤続年数・年齢など」を望む割合が全体での割合を下回り、「経験・勤続年数・年齢など」を重視して評価することは、それを重視している会社に勤務している社員からも望まれていないという状況が伺える結果となった。
- 総評
ただし社員の成長志向を高める「適切な評価制度」と「適切な目標設定」が必須条件
これまで「年功序列」と言えば、時代に合わない仕組みとしてその問題点が取り沙汰されており、日本企業は直ぐにでも脱・年功序列を果たさなければならないと言われてきた。
しかし、今回の調査により、多くの企業で成果評価や行動評価をはじめとする様々な人事評価制度が導入されているものの、未だに大半の企業では年功序列的な要素が残っているという実態が明らかとなった。さらに、適度な年功序列が組織にとって様々な良い影響をもたらすという可能性が示唆された。
その中でも特に、社員が健康に働ける環境を整えるという面では、ちょうどよい塩梅の年功序列が組織にポジティブに作用する可能性が高い。ここでいう「ちょうどよい塩梅」とは、会社として成果や行動など、勤続・年功以外を評価する制度を備え、基本的には制度に則って評価が運用されている上で、年功序列が程よく残っている状態と考える。そもそも年功序列という仕組み自体が、生活の基盤を安定させたいと考える社員に安心感を与えるため、今回の結果は、社員の心理的な安心感が心身共に健康に働くことに繋がっているものと思われる。また、社内のよりよい人間関係や仕事に対するやりがいなども適度な安心感に起因するのであろう。
ここで面白いのは、年功序列の色が濃くなり過ぎると様々な面で組織にネガティブに働くという点である。心身共に健康に働ける環境をはじめ、仕事へのやりがいや会社への将来性などについては、自社は「年功序列である」とはっきり回答したグループでは、他のグループと比べて明らかに悪い結果となっている。これらはまさに従来から言われている年功序列の弊害を表しており、過度な年功序列は組織を蝕んでいく可能性が高いといえるだろう。ちなみに、社員の成長志向(新しいスキルや知識を身につけるために行動をしているか)に関する設問では、年功序列の濃淡によらずネガティブな結果となっている。これは年功序列により生まれる安心感が、社内のぬるさや現状維持志向に繋がり、社員の成長意欲を削いでしまうものと考えられる。
これらの結果を踏まえると一概に年功序列という仕組み自体が悪という訳ではなく、年功序列的な要素を「ちょうどよい塩梅で」取り入れることで、社員が安心して高いパフォーマンスを発揮できる組織をつくることができるかも知れない。ただし、社員が成長志向を持たないことは組織にとって大きなリスクであるため、企業は社員に対して適度な危機感を持ってもらう仕組みを併せて考える必要がある。本来であれば、会社が求めるものと社員の現状とのギャップを明らかにし、社員を育成することが人事評価制度の目的であるため、しっかりとした人事評価制度を構築し運用できていれば、社員の成長志向に関する問題は解決できるはずである。
今回の調査結果を参考に、是非一度自社の状態を見直してみてはいかがだろうか?人事評価制度が形骸化していないか、年功序列が色濃く残っていないか、社員の成長を促す制度の運用ができているかなどを見直し、改善していくことで多くの企業により良い組織づくりを行って頂ければ幸いである
(フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長 西尾 太)
- 西尾 太(にしお・ふとし)プロフィール
人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエーター・エージェンシー業務を行うクリーク・アンド・リバー社にて、人事・
総務部長を歴任。これまで1万人超の採用・昇格面接、管理職研修、階層別研修、人事担当者教育を行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用される
キャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立し、多数の企業で展開されている。
「年収の多寡は影響力に比例する」という論は好評を博している。著書に「人事の超プロが明かす評価
基準」(三笠書房)、「超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない」(日経BP)などがある。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。
<メディアの皆様へ>
西尾 太へのインタビュー・寄稿・コメント等のご依頼は、以下までご連絡ください
フォー・ノーツ 広報事務局 PR会社アネティ 担当:波多野・真壁
Tel: 03-6421-7397 e-mail: hatano@anety.biz
- フォー・ノーツ 代表取締役社長 西尾太の主な著書
- 会社概要
[社名]フォー・ノーツ株式会社
[代表者]代表取締役社長 西尾 太(にしお ふとし)
[創 立]2008年4月
[所在地]〒107-0052 東京都港区赤坂8-5-40 ペガサス青山310
[TEL]03-6447-1321(代表)
[URL]https://www.fournotes.co.jp/
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