東京慈恵会医科大学とVeritas In Silico、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に向けた新たな核酸医薬品に関する特許公開のお知らせ

東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 再生医学研究部(東京都港区、教授 岡野ジェイムス洋尚)と株式会社Veritas In Silico(本社:東京都品川区、代表者:代表取締役社長 中村 慎吾、以下「VIS」と表記)は、筋萎縮性側索硬化症(以下、「ALS」と表記)の新規治療法の開発について共同研究(以下「本研究」と表記)を行っております。このたび、本研究の成果であるALS治療に向けた新たな核酸医薬品の物質特許が公開されました。このことと合わせて、本研究の概要について以下お知らせします。
⚫特許名:核酸医薬とその使用
⚫出願番号:特願2025-575964
⚫国際出願特許番号:PCT/JP2025/025230
⚫遺伝子名:TDP-43 MP13
⚫対象疾患:筋萎縮性側索硬化症(ALS)
⚫新規性:ファーストインクラス(既存薬無し)
⚫モダリティ:核酸医薬品
⚫患者数:世界で約30万人、日本国内で約1万人(2016年時点)
⚫国内売上予測:(試算中)
⚫想定開発期間:試算中(開発スケジュールは今後詳細決定予定)
VISは、mRNA標的創薬プラットフォームibVIS®を活用し、AI創薬によって、医薬品市場で最大のセグメントである低分子医薬品の創出をパートナー企業とともに取り組むと同時に、今後最も高い成長性が期待される核酸医薬品についても自社創薬による研究開発に取り組んでおります。これはmRNA標的低分子医薬を探求しつつ、アンメット・メディカル・ニーズが存在する希少疾患には、適切なモダリティである核酸医薬品で応えていこう、との当社の成長戦略に基づくものです。また当社の持つ技術が、低分子創薬、核酸医薬創薬のどちらにも適用可能という長所を活かし、他社との差別化を一層図っていこう、との事業戦略でもあります。 本研究の対象であるALSは、筋肉を動かすための脳や脊髄にある運動ニューロンが障害を受け、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々に動かなくなる病気です。一般的に症状の進行が速く、発症から2~5年で死に至る症例が多い難病です。ALSは40歳代以降での発症例が多く、60~70歳代の患者さまが一番多いとされますが、若年での発症例も報告されています。患者数は2016年時点で世界で約30万人、日本国内で約1万人、患者さまの男女比は、男性患者が女性患者の約1.3~1.5倍多い傾向にあります。多くの場合、ALSは遺伝しませんが、症例全体の約5%で家族内で遺伝性の発症がみられます。また、しばしばALSと合併する前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia; 以下「FTD」と表記) には、ALSと遺伝的、臨床的、病理的な共通性を持つ症例が存在し、ALSと病因・病態が共通する疾患スペクトラムを形成していると考えられています。
これまでの研究により多くのALS原因遺伝子が発見されており、ほとんどのALS症例で、細胞の核内に存在するRNA/DNA結合タンパク質TDP-43*1の病理学的異常が検出されています。近年の研究によりALSの病因・病態に、TDP-43が深く関与することが示され、ALS患者においてTDP-43の機能が低下して「異常RNA」が出現することが報告されています。
本研究では、TDP-43のスプライシングアイソフォームの一部(抑制性短縮型TDP-43)が、全長型TDP-43の機能を強く抑制することにより、ALSやFTDの脳・脊髄でのみ検出される「異常RNA」を誘導することを発見しました。これらの知見をもとに、脳や脊髄に発現する抑制性短縮型TDP-43を核酸医薬品により減少させることによって、TDP-43の機能を正常化することがALSの新たな治療戦略になりうるものと考えております。
● 今回の特許公開について
ALSの発症には、抑制性短縮型TDP-43が強くかかわっている可能性が示されたことから、抑制性短縮型TDP-43に対応するスプライシングアイソフォーム*2をノックダウンし、抑制性短縮型TDP-43を減少させる治療戦略が期待され、その詳細については2025年10月に論文発表しております(論文の詳細は次項ご参照)。VISはこの論文発表と並行して、mRNA標的創薬プラットフォームibVIS®を活用したAI創薬により、抑制性短縮型スプライシングアイソフォームをノックダウンする核酸医薬品を2種、設計・最適化するとともに、それぞれVISが東京慈恵会医科大学より権利の譲渡を受け、VISが単独で特許の出願人となりました。このたび審査手続が進捗し、2種のうち1つについて特許公開に至ったものです。
● 本研究に関連する論文のタイトル、著書
掲載誌名|Journal of Cell Biology 論文タイトル|Dominant-negative isoform of TDP-43 is regulated by ALS-linked RNA-binding proteins 著者|Minami Hasegawa-Ogawa, Asako Onda-Ohto, Takumasa Nakajo, Arisa Funabashi, Ayane Ohya, Ryota Yazaki, and Hirotaka James Okano 著者 (日本語表記) 長谷川 (小川) 実奈美、恩田 (大戸) 亜沙子、中條拓政、船橋ありさ、大屋絢音、矢﨑亮太、岡野ジェイムス洋尚 (責任著者)
● 本研究の概要、役割分担等
ALSは、患者数が多いものの治療方法が見つからない難病一つで、その治療法を開発することは医療界の永年の課題となっています。
東京慈恵会医科大学は、長年にわたりALSの研究に取り組んでおり、特にヒトiPS細胞モデルの解析、病理切片を用いた解析などの医学的視点よりALSの病態メカニズムや原因遺伝子に関する多くの知見を有しています。VISは、2017年よりALS治療法の開発に貢献すべく東京慈恵会医科大学と連携協力し、病態に関与すると予測される遺伝子に対する核酸医薬品を設計いたしました。
本研究は、東京慈恵会医科大学側の研究初期段階より、バイオテク企業が伴走する形で進められました。これは、疾患の病態メカニズム解明と医薬品創出に向けた研究を志向するアカデミアと、その治療に用いる医薬品の性能を十分高め最適化したいというバイオテクのシナジーによって、効果的・効率的に医薬品創出が期待できる手法です。
本研究において、東京慈恵会医科大学は、当該評価系を用いた医薬品の薬効評価および、ヒトiPS細胞あるいは当該動物モデルを用いた治療コンセプトの検証を分担します。VISは、治療コンセプトの概念実証に用いる医薬品候補物質のデザインと合成ならびにin vitro評価*3を分担します。
● 東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 再生医学研究部教授
岡野ジェイムス洋尚 コメント
本学の強みは、臨床研究ができること、病理切片を用いた解析が可能なこと、ヒトで特異的に起こる疾患についてヒトiPS細胞を用いた研究開発が可能であることにあります。本研究では、これらの強みとVISの創薬技術・能力を融合し、疾患メカニズムの解析と並行して医薬品の研究を進められたことを大変意義深く考えています。このシナジーを最大化して、一日でも早く難病に苦しむ患者さまに治療の可能性を提供できるよう研究を加速させてまいります。
● VIS執行役員 研究戦略部長 笹川 達也 コメント
本件研究において、私たちVISの技術が、岡野ジェイムス洋尚先生のもとで難病に対する研究に応用されることは大変意義深く、また研究成果が着実に上がりつつあることを大変うれしく思っております。
本研究は、東京慈恵会医科大学様の臨床現場に対する知見の深さ、本件共同研究を担当される岡野ジェイムス洋尚先生による先進的なご研究、VISの想起した手法ならびにmRNA創薬プラットフォームibVIS®を活用したAI創薬の相乗効果により、疾患メカニズムの研究と並行して核酸医薬品の迅速な創出を目指す画期的な取り組みとなります。
今後も東京慈恵会医科大学様と弊社のメンバーとの連携により、核酸医薬品の真の実用化に向けて邁進したいと考えております。
● 本研究の実施にともなうVISの業績への影響
本研究にともなう研究費用は、東京慈恵会医科大学、VISそれぞれが自己負担し、金銭等の授受は行わない予定です。VISの2026年12月期の年度予算では、本研究に要する研究費用は織り込み済で、今後の業績に特筆すべき影響は生じないものと見込んでおります。
今後、開示すべき事項が生じた場合には、速やかにお知らせいたします。
(ご参考)用 語 解 説
*1 TDP-43: TAR DNA-binding protein 43;正常時には細胞の核内に存在するRNA/DNA結合タンパク質ですが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)などの神経変性疾患で異常化し、細胞質に漏れ出して凝集体を形成することがわかっています。この異常な凝集体形成が神経細胞の機能障害や死を引き起こし、病気の原因となると考えられています。
*2 スプライシングアイソフォーム:1つの遺伝子から「選択的スプライシング」という仕組みによって作られる、構造や機能が異なる複数のmRNA(メッセンジャーRNA)やタンパク質のバリエーション(多様体)のことです。
*3 in vitro評価:生体由来の細胞や組織を用いて、培養器や試験管内などの人工的な環境で行う評価方法です。動物体内で行う試験(in vivo試験)の代替法として、動物愛護の観点や、短期間かつ低コストで特定の作用機序の解明や候補化合物のスクリーニングを行う際に用いられます。
以 上
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