【東京・南青山根津美術館】企画展「綾錦－近代西陣が認めた染織の美－」を2025年12月20日（土）－2026年2月1日（日）に開催

大正時代の京都・西陣で行われた「織物に関連する名品秘宝」の展覧会の名品図録「綾錦（あやにしき）」を紐解きながら、初代根津嘉一郎（1860-1940）の華やかな染織コレクションの粋をご覧ください。

根津美術館

2025年12月2日 11時30分

メインビジュアルは、「縫箔　紅浅黄段枝垂桜尾長鳥模様」より。刺繍の針目が美しい。

【展示室1－2】綾錦－近代西陣が認めた染織の美－

　大正天皇即位の記念事業の一環として新築された西陣織物館（現・京都市考古資料館）では、大正4年（1915）より約10年間にわたり、古今東西の「織物に関係ある名品秘宝」を借用し陳列する展覧会が開催されました。京都周辺の名刹のほか、当時の染織コレクターから借り受けられた染織品は、4か月ごとにテーマを変えて陳列され、好評を博したといいます。

　そうした中、主催者の間でこれらの貴重な染織品をどうにかして記録したいとの考えが起こり、特に優れた作品を選定し、版画とコロタイプで意匠を再現した染織図案集が企図・発刊されました。それが『綾錦（あやにしき）』です。

　本書を紐解くと、能装束や古更紗の巻には、出品者として当館コレクションの基礎を築いた実業家・初代根津嘉一郎（1860～1940）の名を数多く見出すことができます。このことは、大正期に初代嘉一郎が染織品のコレクターとして知られた人物であったことを示すだけでなく、掲載図案により、どのような染織品を所蔵していたかも判明するのです。

　本展覧会では、『綾錦』に掲載された初代嘉一郎の所蔵品のうち、現在確認できる20点を展観します。茶道具他の蒐集品の陰に隠れ、染織コレクターとしてはそれほど著名と言えない初代嘉一郎の新たな一面をご覧いただくとともに、近代の西陣で認められた初代嘉一郎の染織コレクションの粋をお楽しみください。

染織図案集「綾錦」

『綾錦』第6巻　表紙　　　　　　　　　　　　　　　　　西陣織物館編　日本・大正8年（1919）根津美術館蔵

大正5年から14年にかけて、京都の美術書肆（しょし）・芸艸堂（うんそうどう）から刊行された全11冊の染織図案集 (内1冊は古鏡号)。画家や図案家による模写を下絵とする細密な版画に加え、その装幀のためだけに織り出された表紙も見どころ。

当時注目の作品

縫箔　白地青海波に扇面散模様　1領　絹　日本・江戸時代　17〜18世紀　根津美術館蔵

とりどりの色糸で縫いあらわした植物模様を収めた扇面を全体に散し、その間を摺箔の青海波模様で充填した縫箔。上掲の『綾錦』第6巻には5ページにわたって本作の全体・部分図が取り上げられ、注目度の高さがうかがわれる。

『綾錦』第6巻の表紙に採用

唐織　薄茶地石畳団花に三扇散模様　1領　絹　日本・江戸時代　19世紀　根津美術館蔵

石畳模様の地の上に桐、椿、橘、竜胆（りんどう）、三扇などの模様を散らした唐織。能装束の意匠を収めた『綾錦』第6巻の表紙（上掲）は本作の模様を再構成したものである。

桃山時代の能装束

豪壮な雪持松が桃山時代の雰囲気を伝える子方の縫箔。大正2年（1913）発行の「西本願寺大谷家売立目録」に同作と思しき作品名が掲載されている。『綾錦』第6巻に掲載。

憧れの舶来品

更紗はインド発祥の模様染で、本作はその断片を貼り付けて折帖にまとめたもの。古更紗の意匠を収めた『綾錦』第8巻に掲載。貞明皇后（大正天皇の后）が台覧した記録が残る。

当館所蔵品のほかにも、染織コレクターとして知られた野村正治郎旧蔵の「振袖　綸子地御簾檜扇模様」（2領　江戸時代　19世紀　国立歴史民俗博物館蔵）も展示。染織図案集『綾錦』からは一部の展示作品の掲載ページをご覧いただく貴重な機会です。図柄だけでなく、織の質感、刺繍糸の運びまで再現された様子をぜひお楽しみください。

同時開催展

展示室５　「呉州手（ごすで）ー吉祥の器ー」

民窯ならではののびやかな絵付けで、吉祥文様が描かれた磁器「呉州手」。日本人がこよなく愛した中国のうつわをご堪能いただきます。

中央に胸を張って座る麒麟、その周囲は花鳥文や赤玉文で埋め尽くす。明るい赤を基調に描かれた呉州手の赤絵は、この賑やかさが魅力である。

展示室６　「初釜－新春を寿ぐ－」

「初釜」は、正月に初めて釜を掛けて催す茶会のこと。新年を寿ぎ、おめでたい道具や、その年の干支にちなんだ道具を取り合わせます。

元気な仔馬を意味する「躍駒」を銘として持つ茶入。胴の正面に大胆に入れられた篦目を跳ね上がる仔馬に見立てたか。

肩衝茶入　銘踊駒（おどりこま）　瀬戸または美濃　1口　江戸時代　17世紀　根津美術館蔵

開催概要

主催	根津美術館
開催日時	2025年12月20日（土）〜2026年2月1日（日）（ただし12月27日（土）－1月5日（月）は年末年始休館）午前10時〜午後5時（入館は閉館30分前まで）
休館日	毎週月曜日　ただし1/12の祝日は開館し、翌火曜休館年末年始休館：2025年12月27日（土）－2026年1月5日（月）＊休館日は、庭園、NEZUCAFEを含む全館休館です。
入館料	オンライン日時指定予約制一般 1300円（1100円）学生 1000円（800円） ※（）内は障害者手帳提示者及び同伴者１名の料金。中学生以下は無料。・当日券（一般1400円、学生1100円）も販売しております。（ご予約の方を優先してご案内いたします。当日券の方はお待ちいただくことがあります。混雑状況によっては当日券を販売しないことがあります。）・2025年12月9日（火）午後１時より当館ホームページで予約を受け付けます。・ご予約は1グループ10名までとさせていただきます。・上記入館料で館内すべての展示の観覧ができます。
住所・アクセス	〒107‐0062 東京都港区南青山 6‐5‐1 地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線〈表参道〉駅下車A5出口（階段）より徒歩8分、B4出口（階段とエスカレータ）より徒歩10分、B3出口（エレベータまたはエスカレータ）より徒歩10分
お問い合わせ先	根津美術館　広報課：所 , 村岡　　TEL：03-3400-2538（直）