「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2024」結果(受験編詳細)について
自らも大学で学んだ経験をもつ障害当事者の手によって編集・発行された、日本で唯一の障害のある受験生のための大学案内より、受験時の合理的配慮の詳細についての分析
今回は昨年実施した「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2024」(以下本調査)の結果から、受験時の配慮の詳細について分析します。なお、本調査の概要、大学種別ごとの回答状況、障害別在籍状況、および受験可否と受験時条件、配慮有無については、2025年5月15日配信のプレスリリースをご覧ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000112752.html
本調査の結果、調査対象数 821 校(大学 811 校・大学校 10 校)に対し、回答校数は 381 校で、回答率は46%でした。(なお、日本大学は学部ごとに調査し、2学部が回答しました)前回調査より5校減少しました。
本調査は大学の総意としての回答を求めていて、途中まで回答を入力していても大学の総意(決済)が取れず、最終的な回答に至らなかった大学もあります。このような大学や学生募集停止となった大学は、回答数には含まれていません。
受験時の合理的配慮の詳細
大学には受験生から希望があったときに対応可能な方法を、複数選択で回答いただいています。
前回比とは、前回と今回の回答率の差(ポイント)です。
回答率とは、ある項目の回答数を回答数382(日本大学2学部を含む)で割った数(%)です。
1 試験時間の配慮
試験時間の配慮では「1.3倍」「1.5倍」の延長はどの障害種別でもある程度の大学が実施しています。
ただし前回比でみると「1.5倍」は聴覚障害・精神障害・知的障害でそれぞれ2ポイント減っており、全体として減少傾向にあります。重複障害の学生など、十分な解答時間が確保できないことが懸念されます。「一般学生と同じ(時間延長なし)」とは大学がこの選択肢のみを選ぶことで、時間延長の合理的配慮を行わないというものです。すべての障害種別で増加しており、特に精神障害で132校 +4ポイント、知的障害で110校 +5ポイントと激増しており、この傾向は注意が必要です。
表1 試験時間の配慮

2 解答方法の配慮
多くの障害で「拡大文字」が解答方法の主流となっていますが、それ以外の方法は実施校が少なく、前回比でも大きな変化はありません。「一般学生と同じ」のみを選択し他の配慮を行わない大学が依然として多く、受験機会を制限する要因となっています。
視覚障害のある学生が、自分に合った受験方法を選べるようにするためには、機器の活用や人的支援などの配慮が広がることが期待されます。しかし現状では、「一般学生と同じ(配慮なし)」とする大学が、解答方法で72校あり、前回比も2ポイント増えています。視覚障害の特性上、解答方法に配慮がない場合、その大学を受験できないことに直結します。これは非常に重大な問題であり、改善が強く望まれます。
肢体障害のある学生が、自分の力を十分に発揮するためには、パソコンや意思伝達装置などの機器の使用、代筆や口述といった補助者の同席などが必要です。そのため、学生が自分に合った解答方法を選べるよう、多様な合理的配慮が、より多くの大学で可能になることが望まれます。
知的障害学生の受験者は年を追うごとに増加しており、受験時の配慮の広がりが望まれます。
表2 解答方法の配慮

2 面接試験での配慮
聴覚障害のある学生への面接試験での合理的配慮として、最も多いのは「筆談による面接」で117校に上り、主流として定着していることがうかがえます。ただし、前回比ではわずかに減少しています。
「手話通訳者」や「パソコン通訳者」の同席を実施する大学も一定数ありますが、どちらも「筆談」の半数以下にとどまっているのは残念です。さらに、「一般学生と同じ」のみを選択し他の配慮を行わない大学が129校あり、前回比で2ポイント増えています。面接試験では円滑なコミュニケーションが基本であり、そのための支援は大学が主体的に提供すべきです。
精神障害のある学生への面接試験での合理的配慮として、「質問内容を文字で確認」「質問を理解しやすいよう工夫」「個別面接の実施」「筆談で面接」などが一定数の大学で行われています。
しかし、「一般学生と同じ(他の配慮なし)」とする大学が118校に上っており、精神障害のある学生への支援の拡充は急務です。
表3 面接試験での配慮

このプレスリリースでは、調査結果の分析のうち特徴的なものを抜粋しています。分析の全体は当センター機関誌『情報誌・障害をもつ人々の現在』128号(2025年8月10日発行)に掲載しています。
https://www.nscsd.jp/Activities/Johoshi/Article/128/Survey.aspx
また、本調査の大学ごとの回答の詳細は『大学案内2026障害者版』に掲載しています。さらに大学案内障害者版 Web情報サービスではデータの検索をすることができます。
『情報誌・障害をもつ人々の現在』

毎年の調査結果につきましては当センター機関誌『情報誌・障害をもつ人々の現在』にて公表しています。今後の予定としましては、10月および12月に発行の機関誌にて授業での配慮等の調査分析を掲載する予定です。また、本年度より機関誌がオンラインにてどなたでもお読み頂けることになりました。
https://www.nscsd.jp/Activities/Johoshi/
『大学案内2026障害者版』

定価 6,300円(税込6,930円) 障害学生割引 3,150円(税込3,465円)
書籍販売サイト
書籍についての詳細は2025年2月20日配信のプレスリリースをご覧ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000112752.html
※当センターについての概要、過去の受賞歴なども掲載されています。
大学案内障害者版 Web情報サービス
BasicプランとStandardプランがあります。Basicプランでは調査の各質問の選択肢ごとに、回答数(校)、回答率(%)が表示されます。お客様アカウントサービスでアカウントを作っていただくとご利用いただけます。
大学案内障害者版 Web情報サービス
https://www.nscsd.jp/Activities/Johoteikyo/
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