【難病シンポジウム開催レポート】Innovation for NEW HOPEシンポジウム ~難病の診断と治療の今と未来 みんなで支え合える社会を目指して~
「診断ラグ」と「ドラッグラグ・ロス」の解消に向けた新たなステップ:患・産官学で共に描く未来への議論
アレクシオンファーマ合同会社(本社:東京都港区、社長:笠茂 公弘、以下アレクシオンファーマ)が開催協力する、「Innovation for NEW HOPE シンポジウム~難病の診断と治療の今と未来 みんなで支え合える社会を目指して~」が、2024年11月20日(水)日本橋ライフサイエンスハブにて開催されました。
本シンポジウムでは、難病治療の最前線で活躍する医療従事者や難病の患者さんに、難病診断・治療の現状や実体験について講演いただきました。また、市民主体の医療政策を目指す政策研究機関から、現状の政策を踏まえた難病対策のあるべき未来について講演いただきました。
パネルディスカッションではアレクシオンファーマ社長の笠茂も加わり、「診断ラグ」や「ドラッグラグ・ロス」について理解を深め、自分事化できるよう、当事者の皆様とともにより身近な事例や調査データ等を活用した意見交換や、今後の展望等を議論いただきました。
【後列左から】日本医療政策機構 栗田 駿一郎、日本難病・疾病団体協議会 辻󠄀 邦夫、日本マルファン協会 大柄 嘉宏、国立精神・神経医療研究センター 水澤 英洋
【前列左から】アレクシオンファーマ 笠茂 公弘、CSRプロジェクト 桜井 なおみ(役職・敬称略)
●開会挨拶
開会挨拶では、日本難病・疾病団体協議会 常務理事で、Innovation for NEW HOPE発起人の一人である辻󠄀 邦夫氏より、「本日のシンポジウムでは、適切な診断により、最先端の治療法が速やかに届く社会をみんなで考えていきたい。本日お集まりの皆さまが、それぞれの立場で、これからの医療や社会について何かを考えたり、あるいはヒントを持ち帰っていただければありがたい」とのお言葉をいただきました。
●講演
講演1では、「難病治療における問題点と今後の展望」をテーマに、国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐・名誉理事長の水澤 英洋氏にご登壇いただきました。
難病の定義や難病対策の歴史を解説したうえで、現在も診断がつかなくて困っている患者さんが多くいることに対し、未診断疾患イニシアチブ Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases(IRUD)で、7,318にも及ぶ家族のゲノム解析が行われ、その48.1%で原因遺伝子が同定されたことを説明。
希少疾患の原因解明が進むことで、それに関係したコモンな疾患の病態解明・治療法開発につながることもあると言及し、難病研究の重要性を述べられました。難病医療の今後について、難病研究に加え、患者さんの活動や、医師会、学会、企業等の全ステークホルダーが参加する会議の必要性を提言されました。
講演2では、「私が難病患者になった日。」をテーマに、日本マルファン協会 副代表理事、日本難病・疾病団体協議会 副代表理事で、ご自身もマルファン症候群の患者さんである大柄 嘉宏氏に登壇いただきました。
マルファン症候群のデータや症状を解説のうえ、ご自身が35歳の時に突然の胸づまりと背中の激痛に襲われ、4つの病院を回り、合併症である大動脈解離と診断された時には「絶対安静、すぐに手術」と言われたことを述懐されました。
日本マルファン協会は「情報は命を救う」「情報は生きる支え」という理念のもと、遺伝子検査や患者さん同士のネットワークによって、情報を知ることが、健康リスクを理解し、将来を考える上で病気と向き合うことが出来ると述べられました。
講演3では、「患者・市民の視点から考えるこれからの難病対策」をテーマに、日本医療政策機構 シニアマネージャーの栗田 駿一郎氏に登壇いただきました。
日本医療政策機構は今年度から難病・希少疾患に取組んでおり、年度末に向けて政策に対する論点整理を行い、今後の政策提言につなげていきたいと表明。
創薬を含めたイノベーションを推進し、患者さん視点でイノベーションや政策を評価することが重要であるとともに、その取り組みが社会全体にとっていかに大切であるかを広く伝え、社会の構成員である市民の参画を促すことが共生社会の実現につながると強調されました。
●パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、CSRプロジェクト 代表理事で、Innovation for NEW HOPE発起人の一人である桜井 なおみ氏をモデレーターに、「診断ラグ」と「ドラッグラグ・ロス」を中心に議論が行われました。
<発症から確定診断までの期間をどう短縮するか>
最初に、桜井氏から、発症から確定診断まで4.8年かかるというデータが示され、どう短縮していくか問題提起がなされました。
アレクシオンシオンファーマ社長の笠茂は、医師が専門医にすぐに相談できる体制を整えることや、AIなどを利用した診断補助の重要性を指摘するとともに、製薬企業としても、啓発活動を通じて市民の皆さんに「診断ラグ」を知ってもらい、より良い制度や政策が行われるきっかけにしたいと表明。
大柄氏は、医師だけに任せるのではなく、例えば、遺伝性の疾患が疑われるのであれば、遺伝子検査を受けたり、自分で情報を得ることの大切さを語られました。
水澤氏は、網羅的ゲノム解析という手法を使うと、かつて何年もかかった診断が2、3日で終わること、新生児スクリーニングも着実に進んできていることに言及。また、医療機関の連携を進めていくことで良い方向に向かうだろうとの期待を示されました。
<治療時の「ドラッグラグ・ロス」問題について>
続いて、桜井氏から、適切な診断がついた後、その先の治療における「ドラッグラグ・ロス」について問題提起。
大柄氏は、難病患者さんは今のこの苦しみを少しでも改善して欲しいと切に願っており、海外で認可が下りているものであれば、日本でもその認可を早くして欲しいといった声が多いことを紹介。
水澤氏は、薬事承認にあたって、通常は病気ごとに薬の効果を評価する指標があるが、希少疾患ではその指標がないことが多いと指摘。例えば、評価指標の確立のために患者さんご自身に参加してもらうのは良い方向だろうと述べられました。
笠茂は、希少疾患の領域でも多くの企業が国際共同治験を行っていて、世界同時承認を目指していることに言及。当局が薬事規制の見直しを進めていることで、本格的に「ドラッグラグ・ロス」を解消しようとしているとの見解を示しました。
<患者さんのウェルビーイングについて>
最後に、桜井氏から、患者さんがウェルビーイングを感じられるような世界に向けて何ができるかの問題提起がなされました。
水澤氏は、研究してシーズを探し出すことが重要なので、基礎研究に資本投入することと、多様なステークホルダーが連携する場を作ることの大切さを強く訴えられました。
大柄氏は、親御さんがマルファン症候群の患者さんであることを隠して子供に学校に通わせている事例について言及。教育分野での病気に関する認知を広げたいと述べられました。そして、寿命を全うできるようなマルファン症候群の患者さんが増えることを望みながら、活動を続けたいと表明。
笠茂は、これからの希少疾患の治療は、「患・産官学」のネットワークを作って共同でやっていくと、より良い世界にできるとの考えを示しました。
ディスカッションの締めくくりには、開会挨拶をされた辻󠄀氏より、難病の治療や研究が、医療の発展や市民の安全に繋がっていることをもっと伝えていって、みんなでより良い世界にしていきたいと呼びかけました。
●イベント開催概要
【名称】Innovation for NEW HOPE シンポジウム
~難病の診断と治療の今と未来 みんなで支え合える社会を目指して~
【日時】2024年11月 20日(水)14時30分~16 時10分
【会場】日本橋ライフサイエンスハブA会議室(東京都中央区日本橋室町1-5-5)、
およびオンラインによる配信
【主催】Innovation for NEW HOPE(運営:アステラス製薬株式会社)
【協力】アレクシオンファーマ合同会社、株式会社 Blue Lab、特定非営利活動法人 日本医療政策機構
【登壇者プロフィール】(敬称略)
辻󠄀 邦夫
Innovation for NEW HOPE発起人
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会 常務理事
早稲田大学法学部卒業。1982年 サントリー株式会社入社(2016年退社)。44歳の時に国の指定難病の一つである慢性炎症性脱髄性多発性神経炎(CIDP)を発症。2008年 全国CIDPサポートグループ理事、2010年 一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会理事、2014年 同監事、2018年より常務理事。患者申出療養評価会構成員、順天堂大学臨床研究審査委員会委員、聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会委員等を務めている。
水澤 英洋
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐・名誉理事長
1976年 東京大学医学部医学科卒業。筑波大学臨床医学系神経内科を経て、1986年 アメリカ合衆国のアルバート・アインシュタイン医科大学モンテフィオーレ病院に留学。1996年より東京医科歯科大学にて教授、副病院長、医学科長等の要職を務めた後、2014年に独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 理事・院長となる。2016年 国立研究開発法人となった国立精神・神経医療研究センター 理事長などを歴任。脳、脊髄、末梢神経、筋肉、自律神経など広汎な神経系を冒す多数の疾患について診療・教育・研究を進め多くの成果を上げている。また、日本神経感染症学会理事長、2010〜2014年 日本神経学会代表理事、2013年 第54回日本神経学会学術大会長、2014年 日本神経病理学会学術研究会長、2016年 PRION 2016 TOKYO会長、2017年 第23回世界神経学会議大会長を務めるなど国内外の学会にも大きく貢献している。
大柄 嘉宏
特定非営利活動法人 日本マルファン協会 副代表理事、
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会 副代表理事
1968年生まれ。2003年(35歳)の時に急性大動脈解離を起こした際、マルファン症候群との診断を受ける。2005年より日本マルファン協会の活動に参加し、2008年より同団体の理事に就任し、2022年より副代表理事を務める。また2014年の新難病法の制定及びマルファン症候群の指定難病選定という重要な時期に協会の一員として携わる。2021年より一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会理事、副代表理事となり、ヒト受精胚を用いる生殖補助医療研究等に関する専門委員会委員。
栗田 駿一郎
特定非営利活動法人 日本医療政策機構 シニアマネージャー
早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、東京海上日動火災保険株式会社に入社。その後、2016年に日本医療政策機構(HGPI)に参画。2018年 早稲田大学大学院政治研究科公共経営専攻専門職学位課程を修了(公共経営修士(専門職))。専門は公共政策学。現在、東海大学健康学部非常勤講師。
桜井 なおみ
Innovation for NEW HOPE発起人、一般社団法人 CSRプロジェクト 代表理事
大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にてまちづくりや環境学習などの仕事に従事。2004年、がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がんを含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、精神保健福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。キャンサーソリューションズ株式会社 代表。
笠茂 公弘
アレクシオンファーマ合同会社 社長
1984年 旭川医科大学を卒業後、日本大学医学部精神神経科、McGill大学精神科(カナダ)にて診療、研究、教育に従事。この間、1988年に日本大学大学院医学科博士課程を修了。2000年 万有製薬(現MSD)に入社し、研究開発及びファーマコビジランスの要職を歴任。2008年よりユーシービージャパン株式会社のメディカルアフェアーズ本部長を務めたあと、2014年 アレクシオンファーマ合同会社に入社。代謝性疾患事業本部長を経て2019年社長就任。
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Innovation for NEW HOPEについて
2023年8月に、患者団体や医療関連専門家など同じ志をもつ6名が発起人となり、「日本で最先端の治療法が1日でも早く、継続して届く社会の実現」を目指すプロジェクトとして発足しました。
https://www.innovation-for-newhope.com/
アレクシオンファーマ合同会社について
アレクシオンファーマ合同会社は、アストラゼネカの希少疾病部門アレクシオン・アストラゼネカ・レア・ディジーズ(本社:米国ボストン)の日本法人として、患者さんの人生を一変させるような治療薬の発見、開発、提供を通じて、希少疾患ならびに深刻な病状の患者さんとそのご家族への貢献に注力しています。30年以上にわたり希少疾患領域の先駆的なリーダーであるアレクシオンは、補体系の複雑な仕組みを活用して革新的な治療薬を創製した最初の企業であり、現在も多くのアンメットニーズを有する疾患領域において、様々なイノベーションのもと多様なパイプラインを構築しています。アストラゼネカの一員として、より多くの世界中の希少疾患をもつ患者さんに治療薬をお届けできるよう、グローバル展開を拡大し続けています。
アレクシオンファーマ合同会社に関する詳細については https://www.alexionpharma.jp/ を、日本にお けるサステナビリティ活動は https://alexionpharma.jp/sustainability をご覧ください。YouTube は https://www.youtube.com/@alexionpharma_japan をご覧ください。
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ医薬品企業であり、主にオンコロジー領域、希少疾患領域、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオファーマ領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細については https://www.astrazeneca.com または、ソーシャルメディア @AstraZeneca をフォローしてご覧ください。
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