「TOKYO白馬の騎士ファンド」の設立 及び 事業承継支援の本格始動について
NSFと東京都は共同で「TOKYO白馬の騎士ファンド」を設立し、きらぼし銀行、横浜銀行から出資を受けて、1号案件として電子部品卸の老舗企業を次世代経営者へ承継する取り組みを実行いたしました。
National Search Fund株式会社(代表取締役 山根 孝、以下「NSF」)は、東京都と共同でTOKYO白馬の騎士投資事業有限責任組合(以下「白馬の騎士ファンド」)を設立いたしました。
株式会社きらぼし銀行(代表取締役頭取 渡邊 壽信)、株式会社横浜銀行(代表取締役頭取 片岡 達也)が出資し、地域金融機関と自治体が連携する新たな事業承継支援のモデルを構築しています。
白馬の騎士ファンドは、NSFが運営する第2号ファンドとして、次世代の経営者候補(サーチャー)と中小企業の橋渡しを行い、事業承継の円滑化と成長支援を目的とするものです。
1号案件として、電子部品卸売業の老舗企業である富永電気株式会社及び有限会社福永電業への投資を実施しました。
本件は、サーチャー(次世代経営者候補)である中川将宏氏が設立するSPCを通じて実行されるもので、企業の理念や伝統を理解し、経営者や従業員と信頼関係を築いた後継者に事業を承継し、伝統ある企業のバトンを新しい世代へつなぐ取り組みです。
【背景】
日本では中小企業の多くが後継者不足に悩まされており、その数は全国で127万社にのぼるとも言われています。廃業により雇用や地域の技術が失われることは、日本経済にとって大きな損失となります。
こうした課題の解決策として注目されているのが「サーチファンド」です。これは志ある経営者候補(サーチャー)が投資家の支援を受け、事業承継を必要とする企業を探し出し、経営を引き継ぐ仕組みです。欧米ではすでに数百件以上の成功事例が積み重なり、日本でも近年導入が進みつつあります。
NSFは、日本におけるサーチファンドの普及と制度設計を推進しており、次世代経営者の輩出と地域企業の持続的発展に取り組んでいます。
【承継企業の概要】
富永電気株式会社
- 所在地:東京都千代田区外神田2丁目11番8号
- 設立:1972年
- 事業内容:電気器具および電気資材の卸売業
- 従業員数:24名
富永電気は、秋葉原電気街の黎明期から事業を展開してきた歴史ある企業です。電子部品の販売を通じて日本の産業発展を支えてきた老舗企業であり、創業から70年以上にわたり、研究開発機関や製造業者、流通業者といった幅広い顧客と強固な関係を築いてきました。
同社の強みは、長年培ってきた信頼関係と、豊富な商品知識、迅速な供給体制です。必要な部品を即時に提供できる体制を整えており、顧客の生産性や効率化に大きく貢献しています。電子部品の卸売という、社会の基盤を支える「縁の下の力持ち」として存在感を発揮しています。
有限会社福永電業
- 所在地:東京都千代田区外神田2丁目11番8号
- 設立:1975年 (前身は1950年創業の秋葉原ラジオストアー)
- 事業内容:コネクタ、ケーブルなど電子部品の販売(通販部門を主に担う)
福永電業は、富永電気の関連会社として設立され、主に通信販売による電子部品の供給を担っています。秋葉原の街から全国へと商流を広げる役割を果たし、法人顧客だけでなく、多様な需要に応える仕組みを整えてきました。現在は富永電気と一体的に事業を運営し、同社の事業を補完しています。
【現社長・知念利秀氏について】
- 年齢:71歳
- 学歴:早稲田大学理工学部卒業
- 経歴:創業家二代目として富永電気を牽引
知念氏は、父の代から続く家業を引き継ぎ、秋葉原電気街の発展とともに企業を成長させてきました。高度経済成長期から現代に至るまで、電子部品業界の変遷を肌で感じながら経営を続けてきた知念氏は、誠実な人柄で取引先や社員から厚い信頼を寄せられ、常に「顧客のため、社員のため」をモットーに経営を実践してきました。業界における安定した商流の確立は知念氏の大きな功績です。
近年はご自身の年齢を考え、親族内承継も含め幅広く選択肢を模索してきましたが、サーチャーの中川氏、そしてNSFと出会い、サーチファンドの仕組みを使って、外部から次世代経営者を迎え入れるという道を選びました。今回の承継は、知念氏の「会社を未来へ残したい」という強い思いが実を結んだものです。
【新経営者(サーチャー)について】
中川将宏氏(46歳)は神戸大学工学部を卒業後、株式会社リクルートスタッフィングに入社。
同社で史上最年少の部長、執行役員、子会社代表取締役を歴任し、数百名規模の組織マネジメントや新規事業開発、M&Aの経験を重ねてきました。
豊富な経営経験を持ちながらも「自らのオーナーシップを発揮する経営者として挑戦したい」と考え、サーチファンドに出会ったことを契機に今回の承継に臨みます。
【今後の展開】
中川氏のもと、富永電気・福永電業は、新規取引先の拡大、デジタル化の推進、海外販路の拡大などに取り組みます。
NSFとしても、70年以上続く秋葉原の老舗企業が次世代経営者の手で新たな発展を遂げるよう、そしてこれが事業承継の一つのベンチマークとなるようしっかりと支援をしてまいります。
【社会的意義 / 金融機関としての意義】
本件は、単なる企業承継ではなく、
- 老舗企業の伝統と技術を守ること
- 新しい経営者が挑戦する場を生み出すこと
- 地域社会や産業全体の持続的発展につなげること
という大きな社会的意義を持っています。
また、地域金融機関や投資家にとっても以下のような重要な意味を持ちます。
- 企業価値の維持・向上
- 新しい経営者との協業機会
- 地域経済の安定化
- 協調融資の推進
- 地域金融機関との連携強化
- サーチファンド市場拡大の先導事例
承継後の企業成長に向けては、地域金融機関と投資家が協力し合うことで、安定した資金供給と経営支援の両立が可能になります。「白馬の騎士ファンド」の1号案件である本件は、日本のサーチファンド市場において新たな一歩を示すものであるだけではなく、地域金融機関が主体的に事業承継支援の新たな仕組みに関与するモデルケースとも言えます。
【関連情報】
・日本金融通信社(ニッキン)が本件について深掘り記事を掲載予定です。金融機関や投資家の視点からの分析にもぜひご注目ください。
・東京都産業労働局のプレスリリース:
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/sangyo-rodo/2025-09-16-151757-043
・東京都知事 記者会見の動画:https://tokyodouga.metro.tokyo.lg.jp/playlist/kaiken/
(本件については動画の5:08前後から始まります)
【NSFについて】
National Search Fund株式会社は、日本初の独立系サーチファンド専門投資会社です。
「不忘先業と温故知新」を基盤に、中小企業の承継と次世代経営者の育成を通じ、地域社会と経済の持続的発展を目指しています。
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本件に関するお問い合わせ先
National Search Fund株式会社
担当:前田
E-mail:info@ns-fund.jp