北海道初のZEB Ready認証、義務教育学校に、内田洋行が中央監視システムを構築
~エネルギーの最適管理と先進的な学びを支える子どもファーストな学習環境の両立を実現~
株式会社内田洋行(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大久保 昇)は、北海道中富良野町に2025年8月に開校予定の義務教育学校「ラベンダーの杜中富良野町立 なかふらの学園」(※1)において、最新の省エネルギー環境制御に対応した校舎全体の建物設備を管理、運用する中央監視システムの構築を行いました。併せて北海道産木材を使用した学校用の机椅子の導入、図書館システムの導入など学校空間全体の総合的な構築支援を実施いたしました。
学校は、優れた環境性能を備えた建物に与えられる「ZEB Ready」認証(※2)を北海道の義務教育段階の学校として初めて取得しました。中央監視システムはクラウド上に構築し、空調や照明、太陽光発電といったエネルギー設備を高効率で管理しながら、スマートフォンなどから一元的に操作することができ、教職員の業務負担軽減や、学習環境の快適性向上にも貢献していきます。

教職員はスマートフォンから空調・照明を遠隔操作可能。
(※1)義務教育学校としての開校は2026年4月
(※2)ZEB Readyとは:年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロまたはマイナスの建築物(ZEB:Net Zero Energy Building)の実現を目指す先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物(環境省ゼブ・ポータルより)北海道の義務教育段階の学校において初取得(2023年取得)
「創る人」を育む学びの拠点、新校舎の設計背景について
中富良野町教育委員会では、小学校3校と中学校1校の老朽化を受け、平成27年頃より学校施設の今後のあり方を検討するなかで、これからの学びのあり方を根本から問い直す長期構想として、9年制の義務教育学校という形で「なかふらの学園」の構想が本格化しました。中富良野町が掲げる教育理念として、「心豊かに学び 明日のふるさとをともに創る人を育む」があり、郷土に誇りを持ち、人とつながりながら心を育み成長していく姿を描いています。この理念を体現する新校舎には「創る人」というコンセプトが込められています。「創る人」とは自らの可能性に挑み、他者と協働しながら新たな価値を生み出せる力を持った子どもたちを育てることを目指すものです。その力を育むため、新校舎では9年間の一貫教育のもと、異年齢での学び合いや教科横断型の探究活動など多様な価値観に触れる教育が展開されます。この理念を体現する学びの場として整備された新校舎は、今後の人口変動や学びの多様化にも対応できる、高い可変性と拡張性を備えた構造が特長です。さらに、中富良野町は令和4年に「ゼロカーボンシティなかふらの」(※3)を宣言し、今回の校舎整備も持続可能なまちづくりの一環として、「学びと環境との共生」を重要なテーマとして位置づけています。エネルギー効率や自然との調和を重視した設計を通じ、学びの場そのものが、子どもたちに未来を考える力を育む環境となっています。
(※3)2022年6月、中富良野町と中富良野町議会は「ゼロカーボンシティなかふらの」を宣言し、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする目標を掲げました。
ZEB Readyを支える基盤となる内田洋行の「中央監視システム」


内田洋行の「Smart Building Integration」は、オープンシステム技術を用いて、中央監視システムを核に、空調・照明・太陽光発電などの設備を一元管理し、建物全体のエネルギーを最適に制御する仕組みです。収集したデータは環境教育にも活用できるため、建物そのものが学びの教材になります。新校舎には環境教育・省エネルギー化・光熱費をはじめとしたランニングコストの低減を大きなテーマとして、下記の多面的な整備を行いました。2023年には「ZEB Ready」、文部科学省が推進する「エコスクール」、「BELS」の3つの認定を受けました。
■新校舎のZEB Readyの主な整備内容
①外壁・屋根・窓の断熱強化②躯体蓄熱③全熱交換④太陽光・地中熱等自然エネルギーの活用⑤高効率照明⑥蓄電池⑦BEMS(※4)
北海道特有の寒冷地でありながら、快適な学習環境をつくるために全館に冷暖房を導入し一部には地中熱を利用、夏涼しく冬暖かい高断熱の実現など徹底したエネルギー効率向上に取り組みます。これらの先進的な取り組みの成果として、「なかふらの学園」の新校舎は、北海道内の小中学校で初となる「ZEB Ready」認証を取得しました。当社の中央監視システムのBEMSを利用することで、基準一次エネルギー消費量から60%以上の一次エネルギー消費量削減の省エネを運用していきます。
(※4)BEMSとは:Building Energy Management Systemの略、建物内で使用する電力の使用量などを計測して可視化を行う
■オープンテクノロジーを利用した中央監視システムによる「統合制御」と「データ活用」
内田洋行が導入した中央監視システムは、空調・照明・太陽光発電などの校舎内の複数のエネルギー設備をオープンシステム技術により連携させ、校舎全体の建物設備を一元監視しています。その機能を活かし、ZEB Readyの取得および運用に必要となるエネルギーの計測を行い、規定データの自動作成機能を開発することで補助金にかかる報告業務にも貢献しました。さらにクラウド環境に構築することで、システムの保守も遠隔から行うことができ、運用上の利点もあります。さらにIT系のAPIやモジュールも利用して連携できるため、段階的な機能拡張も行え、今後の新校舎の運用状況に柔軟に対応できることが採用の決め手となりました。今後、教育委員会などの管理者が将来的に複数の施設をまとめて把握・統合的に運用できる体制の構築も可能になります。
①教職員がスマートフォンから教室設備や体育館の遠隔操作が可能

教職員は校内の様々な設備をスマホで簡単に操作できます。授業前に冷暖房や照明、体育館の防球ネットなどを遠隔で起動したり、授業後に教室を離れたまま、設備をオフにしたりといった操作が可能なため、教職員の授業準備の負担が大幅に軽減します。必要なタイミングで必要な設備を操作できる「柔軟な学習環境づくり」を支援します。
②見て、触れて、考えるなど、校舎全体を環境学習教材として活用

リアルタイムでエネルギー消費状況を表示する「エネルギーサイネージ」を設置し、子どもたちが日常の中でエネルギーの仕組みを“見て学ぶ”環境教育の教材として授業で活用を予定しています。校舎全体を「循環型教材」とすることで、子どもたちは日常の中で環境に目を向け、持続可能な社会について主体的に考え、行動する力を養っていきます。環境と学びを結びつける空間設計として、「創る人」を育てる校舎のあり方を体現していきます。
③データ活用で校舎の教室ごとの稼働状況や運用に基づいた改善検討
中央監視では、エネルギー使用量の計測に加え、空調や照明の操作履歴をもとに、教室など空間の稼働状況や利用傾向をグラフや帳票として可視化することができます。今後はさらに、子どもたちが集まりやすい場所などのデータ計測を行い、設備の稼働状況のデータと合わせて分析し、校舎の運用改善や用途変更にも繋げていきます。こうしたデータ活用で教育環境の質を継続的に高めていく“進化し続ける学校空間”の実現をめざします。

50年先を見据えた、用途変更可能でフレキシブルな学びの場づくり

新校舎は、将来的な人口変動や学びの多様化に対応するため、校舎全体に高い可変性と拡張性を備えて設計されています。教室の一部には可動式の間仕切りや家具が採用され、学年構成や教育活動の変化に応じて、教室空間の使い方を柔軟に変更できる構造となっています。理科室や家庭科室などの特別教室も、授業数を考慮し、特定科目以外での活用も可能です。さらに職員室はフリーアドレス形式にも対応しており、教職員がより柔軟に働く環境が整えられています。
校舎は年齢や学びの段階に応じた空間移動が可能です。自然光や風を取り込む吹き抜け、学びと居場所を兼ねるホームベース、ICTツールなども全教室に充実しており、学びを深める環境が実現し
ています。
■“自分らしくいられる”校内の居場所 ― 多様な子どもたちに寄り添う教育支援センターの設置

学校内に、不登校の児童生徒が通う教育支援センターを設置しました。設置にあたり、不登校担当の専門職員や教員を含めて協議を重ね、学校内であっても“自分らしくいられる”ことを大切にした、特別な空間設計が行われました。動線設計や目線には細心の配慮がなされており、登校に不安を抱える子どもたちが他の児童生徒と自然に距離を取りながらも、学校内でありながら安心して通うことができます。センター内にはリラックスして過ごせる畳の小上がりや、気持ちを和らげる漫画コーナーなど、家庭的で飽きのこない要素も取り入れられており、心身をほぐしながら自分のペースで過ごすことができる空間が実現しています。この教育支援センターは、「誰一人取り残さない学びの場」をつくるという、中富良野町が目指す“創る人”の育成ビジョンを、空間から支える象徴的な取り組みとなっています。


■最新の実験機器が導入された理科室
新校舎の理科室は、内田洋行の「デジタル顕微鏡」や「水たまグラス」を使って水の中の微生物を観察し、その映像をモニターやタブレットで全員がリアルタイムに共有が可能です。例えば「サイエンスWebセンサー」を使った授業では、校舎の各階を移動しながら気温や気圧の変化を測定し、気象のしくみを体感的に学ぶことができます。実験データを一人一台端末で記録し、簡単にグラフ表示するなど考察やクラスでの共有をより深める授業が可能です。
■北海道産木材を活用した木目調の校舎に溶け込む空間構築
新校舎では、温かみのある北海道産木材を積極的に活用しています。木材は、視覚や触覚を通じて心を落ち着かせる効果をもたらすため、ホームベースや広い廊下、多目的スペースなど、子どもたちが自然と集まり交流できる場に、木製のテーブルや椅子を配置しています。これらの整備には森林環境譲与税を活用し、地元経済の循環や環境保全にも貢献。地域と教育、環境がつながる象徴として、木材が校舎全体を包んでいます。
■学校と地域をつなぐ最新の図書館、蔵書の一元管理とデータ連携
中富良野町では、4校の統合で増えた蔵書の管理課題に対応し、図書サービスの充実を図るため、学校図書館と隣接した公共図書館「中富良野町図書館」との連携を進めました。共通の図書館システムを導入し、学校と公共図書館の蔵書を一元管理し、横断検索・利用が可能な環境を整えています。
また、学校図書館の蔵書約25,000冊にはICタグを貼付。児童生徒が複数冊をセルフで簡単に貸し借りできる仕組みを整え、読書活動の促進に加え、蔵書点検の効率化や司書(教職員)の負担軽減にもつながっています。学校と地域の蔵書を一体的に捉え、図書利用データを活用することで、読書環境の質を高める先進的な取り組みが進められています。
※本事業は、令和5年度補正予算「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプTYPE1)」を活用し、「中富良野町立義務教育学校図書館システム導入及び町図書館連携事業」として実施されました。
中富良野町教育委員会様からのメッセージ

「明日も学校に行くのが楽しみ」。そんな思いを子どもたちに抱いてもらえる学校を目指し、中富良野町は、40年ぶりに次世代の教育環境づくりに挑戦しました。
本校では、先進的な環境データの活用をはじめ、子どもたちの心身の健やかな成長を支える空間づくりにも注力。特に道内の義務教育学校として初めて「ZEB Ready」認定を取得し、エネルギーの見える化と最適化を図るために中央監視システムを導入しました。省エネ性能と教育活動を結びつけた設計は、今後の学校建築の新しい方向性を示すものです。
また、校舎には北海道産の木材を随所に活用し、温もりある空間と先進設備を両立。リラックスや交流を促す居場所づくりも徹底することで、子どもたちだけでなく教職員にとっても心地よい学校環境を構築しました。中富良野町教育委員会は、教育施設を“子どもファースト”の視点で、地域の未来を支える社会装置と捉えています。これからも地域とともに歩み、子どもたちの豊かな学びを支えていきます。
■施設概要 中富良野町立なかふらの学園
所在地:北海道空知郡中富良野町南町9番19号
建築面積3988.07㎡、延床面積(校舎) 9579.20㎡、構造:鉄筋コンクリート造、階数:地上3階
設計:㈱柴滝建築設計事務所
建築工事:軽米・北菱・那知特定建設工事共同企業体、電気工事:東邦・藤下特定建設工事共同企業体、設備工事:木本・東洋・後田特定建設工事共同企業体
内田洋行の学校づくりや働く場づくり
内田洋行は、1998年に教育総合研究所を設立、大学や経済産業省、総務省や文部科学省での様々な受託事業、全国学力・学習状況調査の委託事業も行い、そこから得た知見の普及活動をしています。タブレットやクラウドコンピューティングの普及を背景に、次世代の学習環境のあり方を提案する未来の教室「フューチャークラスルーム®」のコンセプトを開発し、2010年より現在では全国の小中高大で約1,000校以上に導入されています。
また、2025年の国際的な学力調査PISAや、日本の文部科学省のCBTシステム「MEXCBT」で使われるプラットフォーム「TAO」の開発元であるルクセンブルクのOAT社を子会社化するなど、教育データの活用も進めています。
さらに、ICT・IoTを活用した空間制御技術により、学校やオフィスの照明・空調・換気を自動制御し、省エネルギーと快適性を両立。エネルギーや人の行動、環境など多様なデータを収集・可視化して、新たな価値を与えて施設運営や空間設計に活かす先進的な取り組みを行っています。2004年からは国産木材の活用にも注力し、宮崎県・北海道・栃木県など全国の産地と連携して原木の調達から加工・流通までをマネジメント。未利用材の積極的な活用も進めながら、教育施設や企業向けに木製家具や内装の提案を行い、温もりある空間づくりを支えています。
「Smart Building Integration」ホームページ
https://office.uchida.co.jp/solution/iot/central_monitoring/
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