障がい者雇用の「その先」へ —千葉のドットワークとANA成田エアポートサービスが実践する、小さな成功体験を職場での活躍につなぐ伴走支援—

千葉で医療・就労・福祉のワンストップサービスを展開するドットラインが運営する就労支援事業所「ドットワーク」。ANA成田エアポートサービスへの就職事例を通じ、就職前から職場定着までの支援を紹介します。

ドットライン

障がいのある方の就労では、就職活動だけでなく、通勤や情報整理、周囲への相談など、働くまでの過程にもさまざまな困りごとがあります。では、一人ひとりの課題をどのように整理し、「できること」を増やしながら就職へつなげていくのでしょうか。

今回は、公共交通機関の利用に大きな不安を抱え、電車に乗る練習をわずか2分ほどの区間から始めたSさんの歩みを取り上げます。現在はANA成田エアポートサービス株式会社の人事部人事課で、研修運営をはじめ幅広い業務に携わっています。Sさんご本人、採用担当の藤井さん、ドットワークの澤﨑さんに、小さな「できた」をどのように働く自信につなげていったのか、お話を伺いました。

今では、研修運営を支える一員に。少しずつ広がってきた仕事の幅

― 就労移行支援を経て就職され、就労定着支援をご利用いただいていますが、今ではどのような仕事を担当されていますか?

ANA成田エアポートサービス株式会社のSさん

  S :ANA成田エアポートサービス株式会社の人事部人事課の研修チームに所属し、データ入力や各種申請、研修資料の作成、備品の準備などを担当しています。任された仕事をやり遂げたり、職場の皆さんから感謝の言葉をいただいたりしたときに、「自分も役に立てている」と感じられることが、仕事のやりがいです。

ANA成田エアポートサービス株式会社の藤井さん

藤井:現在は若年層向け研修の副担当として、外部の研修会社との打ち合わせや受講者調整、当日の運営、請求書対応、アーカイブ動画の編集などにも携わっています。最初からこれだけの仕事をお願いしていたわけではありません。本人の成長を見ながら、少しずつ担当範囲を広げてきました。

― 入社当初と比べて、どのような変化を感じていますか?

藤井:最初は決められた手順に沿って仕事を進めることが中心でした。今では「次はここをやっておきますか」と確認したり、「こうしたほうが分かりやすいかもしれません」と提案したりしています。任された仕事をこなすだけでなく、自分で考えて動ける範囲が広がっています。

  S :働くようになって、社会人として、そして会社の一員として仕事をしているという自覚を持てるようになりました。以前より、自分の立場を考えながら責任を持って行動することを意識しています。

最初から「できた」わけではない。就職前の不安と小さな挑戦の積み重ね

― 就職前には、どのような困りごとを抱えていたのでしょうか?

  S :閉鎖空間への不安感があり、公共交通機関を利用することが非常に難しい状態でした。また、複数の情報を一度に理解することが難しく、焦ることでパニックになってしまうこともありました。「安定して働けるのだろうか」「自分の特性がありながら仕事を続けられるのだろうか」という不安に加え、障がいや特性を企業に伝えることへの不安もありました。

大学在学中にハローワークで相談する中でドットワークを紹介され、利用を始めました。

― その不安に対して、ドットワークではどのような支援を行ったのでしょうか?

ドットワークの澤﨑さん

澤﨑:まず週1回の面談で、「今できていること」「難しいこと」「就職に向けて身につけたいこと」を一緒に整理しました。やることを抱え込んでしまうこともあったため、ToDoリストを使って整理し、同時に「できたこと」も見えるようにしました。できなかったことだけではなく、「今日はここまでできた」と確認することを大切にしました。

  S :特に大きな課題だったのが、公共交通機関の利用です。

最初は家族に付き添ってもらい、自宅からドットワークまでバスに乗るところから始めました。30分間乗ることができたことが、自分にとって大きな経験でした。その次に挑戦したのが電車です。最初はほんの2分ほどの区間でした。「2分なら乗れた」と思えたことで、「次も乗れるかもしれない」と感じられるようになりました。

澤﨑:国土交通省の資料※では、精神障がいのある方の半数以上が、外出時に何らかの支援を必要としていることが示されています。一方で、こうした困りごとは外から見えにくく、支援ニーズが潜在しているケースもあると考えられます。Sさんの場合、いきなり一人で通勤することを目指したわけではありません。家族と一緒に乗る、短い距離に挑戦する、顔見知りの支援者と一緒に乗ってみる、と段階を一つずつ進めました。訓練の際には「今から駅まで行きます」と開始報告をもらい、終わった後にはその日の様子をメモに残しながら一緒に振り返ります。そこで「できたこと」を確認し、次の挑戦につなげていきました。

※国土交通省 令和2年度「知的・発達障害者等に対する公共交通機関の利用支援に関する検討会」資料

  ~ SさんのHistory ~

年齢 20代 / 診断名 全般性不安障害(GAD)

主なお困りごと

・複数の情報を同時に整理することが難しい

・閉鎖空間への不安から、公共交通機関の利用が難しい

・焦るとパニックになってしまうことがある

2018年頃  

高校在学中に、閉鎖空間への不安を抱くようになる 

2022年頃

大学在学中に、自分の特性とどう向き合えばいいか悩んでいた       ハローワークの就職相談でドットワークの紹介を受ける

2025年4月 

ドットワーク千葉駅前Ⅰに通所。自立訓練を利用

2025年7月 

ドットワーク千葉駅前Ⅱに変更。就労移行支援に切り替えて利用                 ・通所が厳しくなり、在宅支援に対応していた千葉駅前Ⅱに移籍               ・在宅支援により不安障がいを克服し、スキルを習得

2026年2月 

ANA成田エアポートサービスに障がい者雇用枠で就職

現在 

人事部人事課に勤務

就労定着支援を利用し、研修運営など幅広い業務を担当し、活躍中

「できるかもしれない」が「ここで働きたい」に変わった
成功体験が、就職への自信へ

ー 小さな「できた」の積み重ねは、Sさんをどのように変えていったのでしょうか?

  S :澤﨑さんと目標を整理しながら成功体験を積み重ねる中で、それが自分の力になっていることを実感できるようになりました。「本当に働けるのだろうか」という不安から、「自分にもできるかもしれない」と、就職を前向きに考えられるようになっていきました。ANA成田エアポートサービスを選んだのは、成田で育ち、成田空港が身近な存在だったことも大きかったです。会社見学では社員の皆さんが優しく接してくださり、職場の雰囲気にも安心感を持つことができました。そこで、「ここで働きたい」と思いました。

ー 企業は、Sさんのどこに可能性を感じたのでしょうか?

藤井:ご自身の特性を理解し、苦手なことにも素直に向き合っていたことです。

当社で働くために何が必要なのかを考え、努力されていました。会社見学でもメモを取り、納得できるまで質問されていた姿から、働きたいという強い意思を感じました。複数のことを同時に処理することについては不安もありましたが、実際には自分の中で情報を整理しながら、丁寧に仕事を進めることができています。

澤﨑:就職前には、ToDoリストを使って優先順位を整理する練習も行いました。

また、分からないことを一人で抱え込まず、「まず相談する」ことも大切にしました。こうした経験が、現在の仕事にも活かされていると思います。

就職して終わりではない
働き続ける中で、さらに「できること」を増やす

ー 就職後も安心して働き続けられているのは、なぜでしょうか?

  S :職場の皆さんが、自分の特性を理解した上で受け入れてくださっていることが大きいです。

仕事を依頼するときには「今、仕事はいっぱいありますか」と声をかけていただいたり、説明を受けた際にはメモを取る時間を待っていただいたりしています。そうした配慮があることで、必要以上に焦らず仕事に集中できています。

藤井:採用することだけでなく、その後も長く働き続けてもらうことが大切だと考えています。

障がい者雇用だからこの仕事だけ、と決めるのではなく、本人のスキルや成長に合わせて仕事の幅を広げていくことも重要です。

澤﨑:ドットワークの支援も、就職したところで終わりではありません。就職直後は月1回程度、企業とご本人を交えた定着面談を行っていました。現在は安定して働けているため、今後は3か月に1回程度を予定しています。面談では本人と企業の双方の話を聞き、「できたこと」「良かったこと」を確認した上で、次に取り組むことを一緒に考えています。

ー 働き続ける中で、Sさんはどのように成長していますか?

藤井:入社後は、本人の得意なことや苦手なことを確認しながら、少しずつ仕事の幅を広げてきました。

現在では、研修運営に関わるさまざまな業務を任せられるようになり、チームの一員として安定して役割を担っています。今では、「任された仕事をする」だけでなく、「自分で考えて動く」ところまで成長しています。

澤﨑:就職前からSさんを見てきましたが、就職後の定着支援や企業との伴走を重ねる中で、大きく変わったのは、苦手なことがあっても「できない」で終わらず、「どうすればできるか」を考えられるようになったことだと思います。自分の特性を理解しながら、必要なときには周囲に相談し、自分に合った方法で仕事を続けていく力が身についてきています。

  S :うまくいかないことがあると、自信をなくしてしまうことがあります。そんなとき、澤﨑さんは自分の軸を戻してくれる存在です。できなかったことだけではなく、できていることを一緒に確認してもらえることが、自信につながっています。以前は難しいと感じていた請求書の申請も、今では少しずつできるようになりました。これからも、自分の特性と向き合いながら、一つずつ挑戦して、できることを増やしていきたいです。

インタビュー協力者プロフィール

Sさん(ANA成田エアポートサービス株式会社 人事部人事課)

ドットワークの就労移行支援を経て就職。研修チームで幅広い業務を担い、活躍の幅を広げる。

藤井 美希さん(ANA成田エアポートサービス株式会社 人事部人事課)

新卒採用・障がい者採用を担当。採用から入社後の定着、職場での活躍までを支える。

澤﨑 瑞穂さん(ドットワーク千葉駅前Ⅱ 就労移行支援)

就職前の準備から就職後の定着まで継続して支援。本人と企業をつなぐ役割も担う。

関連事業

ドットワーク(就労移行支援・自立訓練・就労選択支援)

公式HP :https://pj.dotline-jp.com/hajimari/

ドットワーク(就労継続支援A型)

公式HP :https://pj.dotline-jp.com/dotwork-a/

ドットワーク(就労継続支援B型)

公式HP :https://pj.dotline-jp.com/yuuki/

電話:0120-181-160(ドットライン地域連携室)

会社概要

社名:株式会社ドットラインホールディングス

所在地:〒261-7135 千葉県千葉市美浜区中瀬2-6-1ワールドビジネスガーデンマリブウエスト35階

公式サイト:https://www.dotline-jp.com/

事業内容:訪問診療、訪問看護、訪問介護、就労支援施設(B型・A型・就労移行支援・自立訓練)、ナーシングホーム、医療対応型グループホーム、障がい者グループホーム、児童発達支援・放課後等デイサービス等を運営。千葉県の医療・福祉拠点数ナンバー1※。千葉を基盤に、首都圏エリアで239拠点を運営。症状の変化や年齢を重ねることによる拠点探しの負担や心配がない、地域完結型のサービス体制を構築。

※東京商工リサーチ調べ(2021年9月時点)調査対象:千葉県に本社を有する社会福祉法人以外の株式会社

本件に関するお問い合わせ先

ドットライン地域連携室

電話:0120-181-160(受付 平日9:30~18:00)

メール:h.niigawa.4452@dotline-jp.com(担当:新川)

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ビジネスカテゴリ
福祉・介護・リハビリ
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会社概要

URL
https://www.dotline-jp.com/
業種
医療・福祉
本社所在地
千葉県千葉市美浜区中瀬2-6-1 ワールドビジネスガーデンマリブウエスト35階
電話番号
0120-181-160
代表者名
垣本祐作
上場
未上場
資本金
1億3700万円
設立
2011年11月