国連大学の最新報告書:持続可能な未来のために必要な「ディープチェンジ」を提示
国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)が旗艦報告書『相互に関連する災害リスク(Interconnected Disaster Risks)』の2025年版を発表しました。

2025年版では、問題の特定から解決策の立案へと焦点が移されました。環境課題への対処方法を知りながらなぜ人々は行動に移せないのか――その根本にある人間の行動の核心に迫るため、持続可能な未来を確実にするために必要なディープチェンジとその実現方法について、世界中で実現されてきたポジティブな変化の実例を用いながら総合的な分析を提供しています。
本年の報告書は前回の報告書で明らかにされた不可逆的なリスクの臨界点(tipping point)を踏まえ、これからの進路として5つのディープチェンジを提示しています。例えば、1つめの「廃棄物の見直し:ゴミから宝へ」では、耐久性、修理、再利用を優先する循環型経済への転換を呼びかけ、成功事例として日本の徳島県上勝町を取り上げています。また、「価値の再定義:経済的豊かさから地球の健康へ」では、これまでの金銭的価値に焦点を絞る慣行から、ブータンの国民総幸福量(GNH)のように、幸福と生態系の調和を重視する新たな価値観への転換を促しています。

「社会は岐路に立たされています」とシェン・シャオメンUNU-EHS所長は警鐘を鳴らします。「何年もの間、科学者たちは私たちが地球に与えているダメージと、それを止める方法について警告してきました。しかし、私たちは意味のある行動をとっていません。気候変動が悪化していることは分かっているのに、化石燃料の消費量は過去最高を更新し続けています。私たちは既に廃棄物処理の危機を迎えているのに、家庭ゴミは2050年までに倍増すると予測されています。何度も何度も、前途に危険が迫っていることを目の当たりにしながら、私たちは そのまま進み続けてきました。多くの場合、私たちは奈落の底が見えるところまで辿り着き、引き返す術を知っているにもかかわらず、自信満々でさらに底に向かって歩き続けるのです。なぜでしょうか?」
本報告書の共同筆頭著者であるジータ・セベスバリUNU-EHS副所長は次のように述べました。「変化は時として不快なものですが、後戻りしていては急速に進化する世界の課題を解決することはできません」と報告書の共同筆頭著者であるジータ・セベスバリは述べます。「この報告書は、単に災害を回避するためだけのものではなく、被害をただ軽減する、という考え方から脱却するためのものです。最善を目指すのではなく、最悪の事態を防ぐことだけに焦点を当てるのは、自分たちに制限をかけるだけです。問題の根本原因に取り組み、地球規模の協力を育み、私たちが力を合わせた時に発揮できる力を信じることで、将来の世代が生き残れるだけでなく、繁栄する世界を形作ることができます。今こそ、新たな考え方、ひいては再出発が求められる時です」
『相互に関連する災害リスク』は、一般市民が理解しやすいように作成された科学的根拠に基づく報告書です。2021年に初めて発表されて以来、毎回異なるテーマに焦点を当て、今日の世界的な課題の根底にある相互関連性とその解決策に光を当ててきました。
日本語での関連資料はこちらからご覧ください。
報告書(全文)はこちらのウェブサイト(英語)からダウンロードできます。
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