「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」出版記念特別セミナー 聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話~人事は「やり方」よりも「考え方」~ 実施報告リポート

フォー・ノーツ株式会社

 総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社(所在地:東京都港区)は、代表取締役社長・西尾太の著書『この一冊ですべてわかる 人事制度の基本』(日本実業出版社)出版記念特別セミナーを2022年11月17日(木)、TKP東京駅日本橋 カンファレンスセンターにて開催いたしました。
本セミナーでは、すべての人事担当が今一度初心に立ち返り、自社の人事のあるべき姿について改めて考える機会を得られるよう、著者の西尾 太が「人事のいちばん大切なこと」についてまとめ、お伝えしました。
この特別セミナーの模様を、一部抜粋してお伝えします。
  • 書籍概要

 『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』は、人事書籍のロングセラーである「評価基準」「人事の赤本・青本」の著者である西尾が、企業人事と400社以上の人事コンサルティングを行うなかで培った、人事制度の設計・運用に関するノウハウを、自身の集大成として余すところなく書き記した一冊です。


タイトル:「この1冊ですべてわかる 人事制度の基本」
著  者:西尾 太
定  価:本体2200円(税込)
発  行:日本実業出版社
ページ数:294ページ発売日:2022年10月13日
ISBN-10:4534059531
ISBN-13:978-4534059536

 
  • プロフィール フォー・ノーツ株式会社 代表取締役社長 西尾 太(にしお ふとし)

人事コンサルタント。「人事の学校」主宰。
いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエーター・エージェンシー業務を行う。クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。2008年フォー・ノーツ株式会社設立。以来400社以上の人事制度に携わり、「人事の学校® 」においては企業人事を体系化したプログラムによって5000人以上の人事担当者教育を行う。またパーソナリティと職務行動発揮予見を可視化する適性検査B-CAV testを開発し、人事制度と個人のパーソナリティとの関連性を科学的にフィードバックする体制を確立する。

2015年に自身4冊目となる「評価基準(三笠書房)」を出版しベストセラーとなる。また、2017年12月に「働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー(方丈社)」を出版。2019年3月に「プロの人事力(労務行政)」を出版。2021年1月に「人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準」(アルファポリス)と2021年3月に「超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない」(日経BP)を出版。2022年3月に「人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略(PHPビジネス新書)」を出版。
 
  • セミナー内容(一部抜粋)

■人事は「やり方」よりも「考え方」

 本日は、お忙しい中、皆さまにお集まりいただきまして、ありがとうございます。西尾と申します。
 今日は「人事制度の基本」出版記念講演としまして、「地味な人事の話」をさせていただきたいと思います。今回、この本に関しましては、遺言のつもりで書きました。書けるものは全部書いてしまおうと、今まで我々のノウハウと言いますか、想いや考えのようなものをすべて書いています。
 今日お話しさせていただきたいことは、「人事って、やり方よりも考え方だぞ」ということです。
 このことだけ、今日は持って帰っていただければありがたいなと思っています。

■なぜ、あなたの会社の「ジョブ型」は、うまくいかないのか
 例えば「ジョブ型の職務給」。これはやり方でしょうか、考え方でしょうか。
 ジョブ型自体は悪いものではありません。ただし、やり方としては、です。
 こういう記事が、9月に出ました。
 「『うちの会社のジョブ型、機能していない』と悲鳴…失敗には理由がある」(ビジネス インサイダー ジャパン 2022年9月28日)(https://www.businessinsider.jp/post-259834)。
 こちらの記事にあった例です。海外ポストに空きが発生したが、適当な人が見つからない。そこでグレード7の部長をそこに異動させようとします。しかし、前任者の部長はグレード6でした。ジョブグレードが一つ小さい仕事をやっていた。だとしたら、ジョブグレード7の仕事をやっていた人を6の仕事に持っていったのですから、6の処遇にすべきですよね。それがジョブ型でしょう。
 ところが、そこでどうするかといえば、前任者と全く同じ6の仕事なのにジョブグレードを7に上げてしまいます。
 どうですか?これではジョブグレードが何の意味も持たなくなってしまいますよね。
 こういうときにどう考えるのかということをしっかりやらないと、制度はすぐに崩壊します。
 このジョブ型というやり方も一つの優れた方法ではありますが、考え方をしっかりしないとすぐに崩壊します。
 ジョブ型がうまくいくかどうかは、「こういう時はどうする」「こういう考え方をする」といった考え方をしっかりと持っているかどうか次第ですので、「ジョブ型にすれば、年功的要素を排除できるのか」と言われれば、「(運用する側の)考え方が変わってない限りできません」ということになります。
 この事例は、そのことを言っていると思います。つまり、「やり方」より「考え方」が重要ということです。

■はたして「年功序列」が悪いのか

 さきほど年功序列というワードが出ましたが、年功序列は果たして駄目なのでしょうか。私の会社で、「年功序列をはじめとする人事評価基準に関する意識調査」という調査をやりました。
 アンケートでは、7割以上が「年功序列である」か「やや年功序列である」という答えでした。実態として、多分そうなのではないかと思います。
 この「年功序列である」と「やや年功序列である」という部分ですが、これに関して、私は「ただの年功序列」と「結果として年功序列的になっている」というのは、違うと思っています。ですので、「結果として年功序列的になっている」というのは、そんなに悪いことなのかどうかを考えたいと思います。

 「あなたの会社には、やりがいを持って働ける環境があると思いますか」という質問を、このアンケートでしています。
 「やや年功序列」と「年功序列でない」、結果はそんなに違わないですよね。どちらも「やりがいを持って働ける環境がある」と言っています。しかし明確に「年功序列である」と答えた会社は、ネガティブな答えが多数になっています。

 「あなたは、現在勤めている会社で、将来のキャリアビジョンを描けていますか」、「あなたは、新しいスキルや知識を身に付けるために行動していますか」、「あなたは、現在勤めている会社でいつまで働きたいですか」、「あなたが現在勤めている会社の人事評価に納得していますか」という質問に対しても、最もネガティブな答えだったのは「年功序列である」と答えた会社でした。しかし「やや年功序列」と「年功序列でない」ではそんなに違いがない、質問によっては「やや年功序列」の方がポジティブな結果でした。
 このことを踏まえ、私は、単なる年功序列は駄目ですが、適正に評価を行った結果として年功序列的になるのは問題ないのではないかと思っています。
 適正に評価を行えば年功序列的にはなるでしょう。普通、経験が長い人のほうが、よい仕事ができる確率は高いわけですから、普通にちゃんと評価し、評価の結果を受けて社員が成長してれば、結果は年功序列的になると思います。結果として年功序列的ということです。
 つまり、「年功序列」というやり方そのものがいけないというわけではない、というのが結論でございます。

■ちゃんと評価して、ちゃんと処遇する

 一番望ましいのは、年収とパフォーマンスが比例している状態です。この状態をつくりたいわけです。
 問題なのは、この左上。パフォーマンスに比べて年収が高いという人たちです。ここを放置しておくと、右下の、パフォーマンスは高いけど年功序列で年収は抑えられているという人が辞めます。ですから、左上を放置してはならないということは、一つ必ず言えることだと思います。
 そしてこれは普遍的なことだと思いますが、望ましい比例状態をつくるためには、結局ちゃんと評価して、ちゃんと処遇するしかありません。
 これはずっと一貫してお伝えしているメッセージでして、皆さまにも是非、念頭に置いて実践していただきたいと思います。

■「ウチは特殊だから」に、逃げない
 さて、本日のお願いです。「ウチは特殊だから」という言い訳に、逃げないでいただきたいと思います。「うちは特殊だからできないんだよ」というふうに、ならないようにお願いしたい。
 私達のクライアントには、いろいろな業種があります。ITもあればメーカーも商社もイベントの会社もあります。物流の会社もあれば、ギフトの会社もブライダルの会社もマーケティングの会社も、社会福祉法人とも、もう長くお付き合いしています。それから国立の研究開発法人とか、国立大学病院の次世代医療センターとか、病院とか、それから神社もあります。

 しかし、基本的に入れていただいている人事制度の形は、ほぼ一緒です。
 いずれも人の組織ですし、何らかの価値を提供して顧客や社会から報酬を得ているという意味でも、同じでしょう。あなたの会社だけが特殊ということは、ほぼありません。ですが、個性はあります。個性はありますが、特殊ではありません。
 神社にも等級制度はあるのです。宮司、禰宜、権禰宜、出仕とあるのです。それをちゃんとコンピテンシーで定義してやっていただいています。「コンピテンシー」とは言いません。「社務遂行行動」とおっしゃいますが、いわゆるコンピテンシーです。
 どのような業種でも、運営されている人事制度のハード面は、ほぼ同じ形をしています。
 ですから、「うちは特殊だからできないんだよ」とならないようにお願いしたいと思います。

■人事で大事なのは「一貫性」

 では、共通の形としての人事制度について、お話をさせていただきます。
 こちらのゴルフクラブ。道具です。道具は、大事ですよね。道具は大事ですが、それよりも大事なことがあるのではないかと思います。
 道具よりも打つひとです。誰が使うのか、どう使うのか、どう考えて使うのかです。
 今日のテーマは「やり方」より「考え方」です。
 考え方の整理をしていただきたい。
 この「考え方」とは、すなわち人事ポリシーということでして、私がプロジェクトに入りますと、必ずここから話を伺います。
 まず、うちの会社は「人に対してこう考える」という考え方を、整理していただきます。
 人事の目的とはそもそも何かと考えますと、会社のベクトルと社員のベクトルを同じ方向に向けることだと思います。
 一緒に同じ方向に向いて頑張っていこうという人たちが集まって、一緒にそっちに向かっていく組織をつくるのが人事の目的です。制度を整えることも、そのうちの一つになります。
 企業理念とは、あなたの会社がどのような価値を提供したいのかを述べており、人事ポリシーは「それをやるために、私の会社は人に対してこういうふうに考えているよ」というものになります。
 人事制度は、人事管理、給与計算、労働時間管理や採用、配置などに関わってきますし、社員の教育にも関係します。ただし、これらは全部つながっています。


 これらが、どういう考え方で企画され、運用されるのかを決めるのが、この人事ポリシーになります。人事は、これを無視できません。
 人事で大事なことは、一貫性です。自分の会社の考え方はこうだ、ということをしっかり整理して、同じ考え方で採用にしても、制度にしても、配置にしても、教育にしても、やっていただきたいと思います。



■人事ポリシーを固める 

 人事ポリシーのフレームはたくさんありまして、私達がプロジェクトに入る時はすべて確認しますが、今日は「何を評価して、何に対して給料を払いますか」ということだけ、確認していただきます。
 「能力を見るのですか」「行動を見るのですか」「成果を見るのですか」「それとも年齢ですか」「勤続ですか」「年功ですか」――それから、「生活保障、生活できるように住宅手当、家族手当は払うのですか」。
 これらはすべて、会社の考えです。これを整理してください。 
 

 皆様に伺います。AさんとBさんがいます。2人とも勤続10年です。パフォーマンスも同じです。Aさんは45歳。Bさんは35歳。この二人の処遇は同じでいいですか。
 年齢の高いAさんのほうを高くしたいのか、パフォーマンスが一緒なら、同じ処遇にしたいのか。伸びしろのあるBさんのほうを高くしたいのか。どうでしょう。これが、人事ポリシーの違いです。
 もうひとつ質問です。AさんとBさん、同じ40歳です。パフォーマンスは同じです。Aさんは勤続15年、Bさんは勤続5年。給与は同じでいいですか。
 勤続の長いAさんのほうを高く処遇したい。勤続主義ですね。
 勤続5年でここまできたBさんのほうを高く処遇したい、同じでいい。
 どれが正解ということはないと思います。問題は、ぶれずに一貫して、同じ考え方ができるかどうかです。そこをはっきりと経営陣と人事の皆さんで共通認識を作っておく。もし同じ処遇にするなら「ウチはこういう考え方だから、同じ処遇なんです」というふうにしてください。これが人事ポリシーです。
 

 しかし、皆様、いざ評価会議など、そういう時になると、いろいろな声が出てきます。
 「給料を下げるのは、しのびない。」
 「『B』つけたら給料下がるんでしょう。だから、Aつけるわ」
 「お子さんが、今度、高校生なんだよね」
 「だから、ちょっとBつけられないんだよね。高校生だからお金かかるしさあ」
 「もうすぐ定年だから記念昇格させたい」…
 これらは、実際にあった話です。
 別の例では「あと3年で定年だから、Aにしよう」。
 こういうことに対して、それは考え方が違います、ということをしっかりやらないと、結局、人事制度をつくっても、うまく回らないという話なのです。
 もし、これらを認めるのであれば、温情主義ということを、ちゃんと認識してやってください。
 「うちは温情主義だから、『しのびない』ってやるんだ」。これも一つだと思います。
 まず考え方をしっかりしてください、というメッセージでした。

■人事担当者に必要なこと
 さて最後に人事担当者の要件、どういう人が、人事担当者をやればいいのだろうかという話ですが、人事の知識があり、ビジネススキルがあり、ビジネススキルとは、例えばロジカルシンキングやプレゼンテーション力、コミュニケーション能力、そういうものですね。そして、さらに、思いや信条、熱意みたいなものが大事なのだろうと思っています。
 人事に関する知識に関しては、学べば身につきますが、ビジネススキルとこの熱い信条というものは教えられないので、こちらがある人を人事に置いていただくべきだと思います。
 うまくいっている会社は、真ん中にいる人が、ものすごい想いを持ってやっています。
 さっきあったような「しのびない」とか「子供が高校生だ」とか「昇格試験を記念受験」とか、そういうものに対して「いや、違うでしょう」ということをしっかりおっしゃっています。
 そういう方が中心にいると、制度もうまく回ると思っています。
 本日は、以上とさせていただきたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。
 
  • 会社概要
フォー・ノーツは、「会社の社員に対する考え方」を明らかにする人事ポリシー策定を起点に、あらゆる組織で普遍的・汎用的に活用できるコンピテンシーモデルを軸にした人事制度を構築するとともに、制度の運用までを伴走して支援。その他、教育研修や人事部づくりなど、人事の困りごとをトータルに支援します。

[社 名]フォー・ノーツ株式会社
[代表者]代表取締役社長 西尾 太(にしお ふとし)
[創 立]2008年4月
[所在地]〒107-0052 東京都港区赤坂8-5-40 ペガサス青山310
[ T E L ]03-6447-1321(代表)
[ U R L ]https://www.fournotes.co.jp/
[事業内容]
●人事コンストラクションサービス
・人事コンサルティング
・人事制度構築/運用支援
・教育研修企画/開発/実施
●人事担当者育成
・人事の学校
 
  • フォー・ノーツ 代表取締役社長 西尾太の主な著書

 

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会社概要

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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区赤坂8-5-40 ペガサス青山310
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代表者名
西尾 太
上場
未上場
資本金
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設立
2008年04月