【水産業関係者必見】水産加工業者と地域で取り組む先進的な事例(報告会レポート)
水産物安定供給推進機構は、水産加工業者等による取組事例の報告会を開催しました。

第3回 水産加工業者等による取組事例の報告会を開催
公益財団法人水産物安定供給推進機構は、2025年11月27日(木)、水産加工事業者を中心に、幅広い関係者と連携してサプライチェーンの新たな可能性に挑戦する水産加工連携プラン支援事業をはじめとする水産庁による補助事業を活用した取組事例を紹介する『第3回 水産加工業者等による取組事例の報告会』を開催しました。本報告会には、会場来場者・オンライン併せて170名を超える参加がありました。
本報告会は、水産庁の補助事業「令和7年度水産加工連携プラン支援事業」の一環として、補助金を活用した水産加工業者等の取り組みの横展開、そして情報交換を目的として開催しました。本稿では、報告された5つの取り組み内容について紹介します。
○報告内容
①【地域連携による地魚の活用促進】
徳島水産物販路推進協議会 徳島魚市場株式会社 社⾧室
マーケティング担当 麻野紀子
②【MEL認証を活用した養殖マダイの流通促進】
愛南サスティナブルフィッシュ加工連携協議会 愛南漁業協同組合
販売促進部 部⾧ 岡田孝洋
③【CVS(コンビニエンスストア)に向けた多様な魚種活用による商品展開】
多魚種展開促進協議会 株式会社ジョッキ
代表取締役社⾧ 工藤昭英
④【地域一体となった低利用資源の活用促進】
旬の地魚がおいしいまち・萩推進協議会 萩市 農林水産部 水産課
水産振興係⾧ 白井暢
⑤【インド向け日本産水産物の輸出促進】
インド向け水産物輸出加速化協議会 遠山貿易株式会社
代表取締役社⾧ 遠山一記 顧問 網谷繁彦
株式会社ディスカバリーワン 代表取締役 田窪三紀夫
報告会の詳細な内容および説明資料は、水産物安定供給推進機構のホーページから閲覧・ダウンロードができますので、ぜひご覧ください。
徳島県産水産物の付加価値向上に向けた市場再編の成果 ―ハモ・小型魚の加工推進―
徳島魚市場の麻野氏より、仲卸業者と連携した「地魚の加工・流通促進」に関する事業報告がありました。県内水産業の衰退と職人不足を背景に、同社は骨切機や液体凍結機を導入し、産地の加工体制を刷新。職人技に頼っていたハモの骨切りを機械化し、通年供給を可能にしたことで、加工量は前年比約150%、売上は約146%と大幅な増加を記録しました。また、下処理済みの小型地魚(ボウゼ等)の冷凍商品を展開したことで、人手不足に悩むスーパーやホテルのニーズを捉え、都内の高級市場への販路拡大にも成功しています。
今後は加工工程のさらなる効率化や、EC販売や海外輸出に向けた商品開発等を進めることで、徳島の儲かる水産業化や水産加工業の発展に寄与して行きたいとのことです。

愛南養殖マダイの付加価値向上に向けた国際認証取得の成果 ―輸出拡大と加工体制の構築―
愛南漁協の岡田氏より、日本一の生産量を誇る養殖マダイを核とした、水産エコラベル認証による差別化戦略の報告がありました。同漁協は産地の優位性確立に向け、国内版のAEL認証に加え、国際的なMEL認証や世界初となるマダイのBAP認証を順次取得。本事業では真空包装機やスライサー等の設備を導入し、養殖魚の生産、加工、販売を漁協が一体的に担う体制を構築しました。この取組により、国内では外資系ホテルや関西の大手スーパーへ認証品が採用されたほか、米国市場の高級スーパーでも高い評価を得るなど、輸出拡大に直結しています。
今後はASC認証の取得を進めるとともに、海外市場の顧客ニーズに合わせた冷凍加工品の商品開発を加速させる方針です。愛南町の特徴である産官学の連携を基盤に、国内外の市場へ高品質な養殖魚を安定供給していく展望が示されました。

CVS(コンビニエンスストア)向け水産珍味の多魚種展開に向けた製造工程標準化の成果
株式会社ジョッキの工藤氏より、特定魚種に依存しない「製造工程の標準化」に関する報告がありました。同社は売上の7割をイカ製品が占めていますが、不漁による原料不足、製品や魚種毎の専用ライン、CVSならではの多岐にわたる包装形態の存在が多魚種展開の障壁となっていました。また売場では供給が安定する畜肉系商品にシェアを奪われており、競争力の回復が急務となっていました。
この課題に対し、同社は包装工程の中で共通化が可能な「計量」に着目し、自動計量機の導入による標準化を推進。原料供給元と連携して品質を安定させた原料を調達することで、魚種を問わず活用できる製造プラットフォームを構築しました。結果、計量工程で約40%の省人化、日産量も約2割向上する見込みです。
今後は、この標準化された仕組みを強みとして、原料リスクに対応した持続可能な商品展開を進める方針です。おつまみの用途を広げ、水産物の消費拡大を目指すとのことです。

萩市産水産物の付加価値向上と観光誘客に向けた多角的な取組成果 ―低利用魚の活用と高鮮度出荷体制の構築―
萩市水産課の白井氏より、水産業振興と観光誘客を図る「旬の地魚がおいしいまち・萩」推進事業の報告がありました。同市では、値のつかないシマフグの有効活用や、需要が集中するアマダイの供給安定化、魚のアラといった未利用部位の活用が課題となっていました。
本事業では、シマフグやマフグのブランド化に加え、独自の「活〆ラベル」鮮魚としてアマダイ等を高鮮度出荷することを目指し体制を構築。あわせて冷凍加工の導入により通年での安定供給を可能にし、首都圏ホテル等への販路を拡大しました。また、アラを活用した「フィッシュカレー」をご当地グルメとして開発し、魚食普及と誘客の両面で施策を展開しています。
成果として、都内ホテルでの採用や市場での高い評価を獲得。今後は活〆認定者の拡充や海外展開、学校給食への導入を進め、萩の魚の認知度向上と漁業所得の増大を目指す方針です。

インド市場における日本産水産物の販路開拓に向けた取組報告 ―正規輸出ルートの確立と高品質冷凍技術の導入―
株式会社ディスカバリーワンの田窪氏らより、将来性の高いインド市場への販路開拓に向けた取組報告がありました。日本の水産物輸出が中国に偏る中、同協議会は人口増や日本食需要が急増するインドに着目。しかし、厳格な通関制度やライセンス取得の難しさに加え、低品質な「密輸品」の横行が正規ルート拡大の大きな障壁となっています。
この課題に対し、本事業では遠山貿易が他仲卸、在インド日本大使館などと連携し、差別化に向けた「高品質な冷凍品」の供給体制を構築。鮮度保持水(プロトナ水)の活用や急速凍結、マイナス50度での保管を徹底することで、本当においしい日本の水産物の提供を推進しています。また、大使館のイベント等を通じて日本の水産物を提供し、現地で高い評価を得るなど着実な一歩を踏み出しました。
今後は輸送コストの最適化や継続的なプロモーションを行い、密輸品に頼らない正規市場の拡大を推進する方針で、将来の巨大マーケットを見据え、長期的な供給基盤の構築を目指したいとのことでした。

お問い合わせ先
電話番号:03-3254-7044
送付先アドレス:m-project★fishfund.or.jp(★を@に置き換えてください)
公益財団法人水産物安定供給推進機構 担当 向井(むかい)、橋本(はしもと)
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