emolと兵庫医科大学、日本医療研究開発機構(AMED)採択事業の強迫症の治療を目的とした認知行動療法アプリの臨床研究をスタート
■強迫症とは
強迫症はきわめて強い不安感や不快感(強迫観念)をもち、それを打ち消すための行為(強迫行為)を主な症状とする精神疾患であり、有病率は一般人口で2-3%と言われています。 よくある不潔恐怖・洗浄強迫の症状の例として「菌がついていないか。病気に感染するのではないか。」という不安感から、過剰に手洗いや除菌、入浴を行うというような行為を繰り返すなどの症状があります。
重症化すると汚れることへの恐怖などから家から出れなくなるといった状態まで発展するケースがあり、経済的損失あるいはQOLの低下という面で最も障害度の大きい10大疾患の一つであるとされています。 また、コロナ禍で病気に対する不安感が高まり、強迫症状の悪化や強迫症患者の増加など、重症化する前に早期の治療が必要とされ、強迫症治療の需要が増えてきています。
■背景と目的
治療は薬物療法、認知行動療法(cognitive behavioral therapy: CBT)、併用療法が推奨されており、CBTは薬物治療がしにくい妊婦や未成年患者ではより推奨度が高いとされています。 CBTを継続的に実施すれば治療効果が持続し、寛解状態を目指すうえでも重要な治療法です。しかしながら、CBT実施可能な医療機関や医療者が限られているなどの背景から、CBTの普及率は非常に低く、強迫症を含む精神疾患を含めたCBTの全体実施率においても日本全国で6.2%と低いという大きな課題があります。(高橋史ら.日本の精神科診療所における認知行動療法の提供体制に関する実態調査.2018)
そこで、認知行動療法による治療へのアクセシビリティ向上を目指し、emolがもつ一般向け、企業向け、自治体向けなど非医療領域へ展開している認知行動療法プログラム(emolアプリ内名称:デジタルプログラム)のプラットフォームを発展させ、2022年春より医療領域を対象とし、兵庫医科大学 精神科神経科学講座との共同研究により強迫症患者の治療を目的とした認知行動療法アプリの開発を進めておりました。 本研究にて開発を進めている強迫症向け認知行動療法アプリは、これまで健常者にて性能評価などを行い、2023年8月より強迫症の患者を対象とした臨床研究を開始いたしました。
■AMED事業について
本研究は「強迫症の新規認知行動療法アプリ開発」という課題名で、令和5年度 「医療機器等研究成果展開事業(チャレンジタイプ【男性の若手研究者・女性研究者(年齢制限なし)対象】)」に採択されています。
【研究開発課題名】
強迫症を対象とした新規認知行動療法アプリ開発
【研究開発代表者】
兵庫医科大学 精神科神経科学講座 助教 向井 馨一郎
【研究開発分担者】
emol株式会社 代表取締役 千頭沙織
本研究では、日本の強迫性障害治療の専門施設で実施している標準的な対面診療でのCBTと同等の治療効果をもつアプリケーションの完成と、研究による性能評価等を予定しています。本研究を通じて、専門施設の有無に関わらず、どの地域からでもCBTを提供できる社会の実現を目指しています。
<emol株式会社>
会社名: emol株式会社
代表者: 代表取締役 千頭沙織
設立日: 2019年3月18日
ホームページ: https://emol.jp/
事業内容: メンタルヘルス関連サービス・精神疾患治療用アプリの開発
お問い合わせ: support@emol.jp
<兵庫医科大学 精神科神経科学講座>
兵庫医科大学は、甲子園球場がある兵庫県西宮市に位置しており、大阪梅田から15分、神戸三宮から20分の都市型大学病院を有する医系総合大学です。精神科神経科学講座では松永 寿人 主任教授を中心とし、現代社会において誰もが罹患する可能性があるうつ病や不安症をはじめとして、統合失調症、躁うつ病、認知症に代表される老年期の精神疾患、摂食障害など、精神疾患全般にわたり幅広い診療と臨床研究や基礎研究を積極的に行っています。特に強迫関連障害の臨床や研究に関しては、国際的にも高く評価され、国内ではリーダー的な存在です。
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