日清製粉グループ カギは“多様な発酵性食物繊維” 高食物繊維小麦粉の新たな可能性
腸内細菌を介した短鎖脂肪酸産生メカニズムの一端を解明
日清製粉グループ(株式会社日清製粉グループ本社 取締役社長:瀧原 賢二、日清製粉株式会社 取締役社長:横山 敏明)は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(理事長:中村 祐輔)との共同研究により、高食物繊維小麦粉に含まれる多様な「発酵性食物繊維」を利用する腸内細菌を特定し、短鎖脂肪酸※1(酪酸)が産生されるメカニズムの一端を明らかにしました。
本研究により、腸内環境の改善のために多様な発酵性食物繊維を摂取することの重要性と、その摂取方法として高食物繊維小麦粉を用いることが有効である可能性を確認しました。今後も、科学的根拠に基づいた価値の創出及び主食として摂れる発酵性食物繊維による健康の維持・増進の啓発を推進し、健康で豊かな生活づくりに貢献してまいります。
《研究成果のポイント》
①「短鎖脂肪酸(酪酸)」を作るカギとなる腸内細菌Agathobacter rectalis
高食物繊維小麦粉に含まれる発酵性食物繊維を利用した酪酸の産生には、Agathobacter rectalis(アガソバクター レクタリス)という腸内細菌が重要な役割を持つ可能性が確認されました。
②発酵性食物繊維 × ビタミンB5により酪酸産生を促進
Agathobacter rectalisは、高食物繊維小麦粉に含まれるレジスタントスターチ※2を利用して増殖すること、またアラビノキシラン※3を利用して酪酸を産生することを確認しました。さらに、ビタミンB5を添加することで、酪酸の産生がより促進されることが示唆されました。
*高食物繊維小麦粉で作ったパンには「発酵性食物繊維」が豊富
胚乳部に食物繊維を豊富に含む高食物繊維小麦から作られる高食物繊維小麦粉は、一般的な小麦粉の約5倍量※4の食物繊維を含みながらも加工しやすく、通常の調理にも使用しやすい小麦粉です。高食物繊維小麦粉で作ったパンは、レジスタントスターチやアラビノキシランなど、腸内細菌に利用される「発酵性食物繊維」を豊富に含んでいる点が特徴です。


発酵性食物繊維とは?
発酵性食物繊維は、消化・吸収されずに腸まで届き、腸内細菌のエサとなる食物繊維です。腸内細菌が発酵性食物繊維を利用することで、有益な成分である短鎖脂肪酸(酢酸や酪酸など)が産生され、腸内環境の改善に役立つことが知られています。なお、毎年5月18日は、発酵性食物繊維の普及と摂取量の増加を実現するため、一般社団法人発酵性食物繊維普及プロジェクトにより、「発酵性食物繊維普及の日」 と制定されています。
■ 研究内容の詳細
今回の研究では、高食物繊維小麦粉に含まれる複数の発酵性食物繊維が、腸内細菌によってどのように利用され、短鎖脂肪酸(酪酸)が産生されるのか、そのメカニズムの解明を目的としました。
●ヒト試験:酪酸と腸内細菌の関係を解析
高食物繊維小麦粉を用いて製造したパンを摂取した方の便を分析したところ、摂取前の腸内細菌Agathobacter rectalis の占有率が高い方ほど、摂取後の便中酪酸濃度も高いという相関関係が認められました。また、パンを摂取する前のAgathobacter rectalisの占有率が1%以上の方を対象に解析すると、一般的な小麦粉を用いて製造したパンを摂取した群と比較し、高食物繊維小麦粉を用いて製造したパンを摂取した群は、便中酪酸濃度が有意に高いことが確認されました(図1)。
これらの結果から、高食物繊維小麦粉を用いて製造したパンに含まれる、多様な発酵性食物繊維の摂取による酪酸産生は、Agathobacter rectalisが重要な役割を担うことが示唆されました。
●培養試験:発酵性食物繊維の利用と酪酸産生メカニズムの解明
Agathobacter rectalisを用いた培養試験の結果、①レジスタントスターチを利用して、Agathobacter rectalisが増殖すること、②アラビノキシランを利用して酪酸の産生が増加すること、③ビタミンB5の添加により酪酸産生がさらに促進されることが明らかになりました(図2)。
これらの結果から、高食物繊維小麦粉に含まれる複数の発酵性食物繊維が活用されることで、腸内環境の改善に寄与する短鎖脂肪酸(酪酸)が産生されることが分かり、多様な発酵性食物繊維を摂取することの重要性が示唆されました。


■ 今後の展開
当社グループは、本研究で解明した作用メカニズムを手がかりに、今後も研究をさらに深め、高食物繊維小麦粉に含まれる発酵性食物繊維が持つ健康効果の解明を進めてまいります。また、精密栄養学※5の考え方に基づいた個人の腸内環境に応じた高食物繊維小麦粉のより良い活用方法の検討・提案や、腸内細菌による発酵性食物繊維の利用を介した短鎖脂肪酸産生をはじめとする健康機能を有する商品づくりに取り組んでまいります。
当社グループは、主食としての「おいしさ」を大切にし、「“おいしい”の先に健康がある世界」の実現を目指してまいります。
《研究者の声》
① 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 副所長 國澤 純 氏(写真:右)
本研究は、食物繊維の捉え方に新たな視点を提示し、特定の腸内細菌が機能発現に関与する可能性を示したものです。今後、腸内細菌を指標に、発酵性食物繊維を中心とした適切な食材を選択できる時代の到来が期待されます。
② 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 研究員 池田 祐香 氏(写真:左)
本研究のように同じ食品を摂取しても個々の栄養状態や腸内細菌叢などの要因により、その健康効果には個人差が生じます。今後もそのメカニズム解明を通じて精密栄養学の基盤構築を図り、人々の健康維持・増進への貢献を目指します。
③ 株式会社日清製粉グループ本社 R&D・品質保証本部 基礎研究所 研究員 豊田 一希(写真:中央)
本研究成果は、精密栄養学の観点から個々人の特性に応じた発酵性食物繊維の最適な活用に繋がるものと考えています。今後も、高食物繊維小麦粉を通じて、科学的根拠に基づく健康価値の提供に取り組んでまいります。

《関連する学会発表情報》
① 学会名:日本農芸化学会2026年度京都大会(開催日:2026年3月9日~12日)
発表演題:高アミロース小麦粉由来発酵性食物繊維による酪酸産生メカニズムの解明
② 学会名:第80回日本栄養・食糧学会大会(開催日:2026年5月15日~17日)
発表演題:Agathobacter rectalisによる高アミロース小麦粉由来発酵性食物繊維を利用した酪酸産生量を向上させる手法の検討
《用語説明・注釈》
※1 短鎖脂肪酸…人の腸に存在する腸内細菌が食物繊維を食べて産生する成分であり、腸の働きを整えるほか、全身の健康維持に関わることが知られている。
※2 レジスタントスターチ…小腸で消化されず、大腸まで届くでんぷん
※3 アラビノキシラン…主にイネ科植物に多く含まれる発酵性食物繊維の1種
※4 一般的な小麦粉の約5倍量の食物繊維を含む…当社分析(AOAC2011.25法)による高食物繊維小麦粉、一般的な小麦粉の食物繊維量から算出
※5 精密栄養学…遺伝的な要因や生活習慣、腸内細菌叢(腸内フローラ)を含む腸内環境などの影響を踏まえ、健康の維持に必要な栄養を各個人に提供するもので、次世代の栄養学として着目されている。
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