日本の教育基盤は安定しているが保護者は現状に不満 ICTや生成AIの利活用に課題 11か国調査から
スプリックス教育財団 基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025
2026年3月12日
概要
公益財団法人スプリックス教育財団(本部:東京都渋谷区/代表理事:常石 博之)は、基礎学力に対する意識の現状を把握することを目的に、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施しました。本報告では、A) 基礎学力調査(計算テスト)、B) 保護者の意識調査、C) 子どもの意識調査をそれぞれ総括します。そして、世界と比較して明らかになった日本の教育環境の特徴を報告します。
調査結果のポイントは以下の通りです。
調査結果のポイント
A) 基礎学力調査(計算テスト):日本の計算力は比較的高いが、一部の単元は定着が不足
1. 小4・中2とも比較的高い成績だが、学年が上がると基礎の定着度が下がる
2. 分数・連立方程式に課題
B) 保護者の意識調査:「不満はあるが、変わりたくない」慎重な日本の保護者
1. 学校教育への満足度が低く、競争に否定的
2. 教育の情報源の不足
3. ICTや生成AIの導入に慎重
C) 子どもの意識調査:環境は安定している一方で、学習意欲とツール活用に課題
1. 家庭環境は安定しており学校の授業が丁寧
2. ロールモデルが不在で進路が未定
3. アプリの有用性を感じられず、生成AIの活用に遅れる
本リリースに掲載している調査結果は、こちらからダウンロードしていただけます。
なお、本リリースでは省略した設問と回答や、中学2年生の回答率も示した資料は弊財団HPで配布中です。詳細は弊財団HPまでお問い合わせください。
調査の背景
公益財団法人スプリックス教育財団では、教育の側面から諸問題に対する調査・研究を行い、これらの問題を社会で考える足掛かりを提供したいと考えています。
2025年に実施した本調査では、「基礎学力」、特に計算力と親子の意識に注目することで、基礎学力と子ども・保護者の意識の相関を探り、基礎学力の課題と改善方法を模索しています。
本報告では、計算力、保護者の意識、子どもの意識の結果から明らかになった世界と日本の意識の差異について報告し、日本の教育が直面する課題と今後の支援の方向性の示唆を得るものです。
調査方法

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調査テーマ |
基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025 |
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調査時期 |
2025年4月~8月 |
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調査対象国 |
パネル調査:アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国(計5か国) 学校調査:エクアドル、ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール、日本(計6か国) |
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調査対象者 |
11か国の小学4年生および中学2年生相当の子どもとその保護者 ※エクアドルは保護者の調査のみ実施 |
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調査内容 |
基礎学力調査(計算)、保護者の意識調査、子どもの意識調査 |
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調査方法 |
パネル調査:インターネットパネル調査 学校調査:調査参加校の教室および自宅での調査 |
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サンプル数 |
調査によって異なります。 学校調査: 小学4年生:770人、中学2年生:472人 保護者の意識調査ー日本以外 2038人、 日本 約300人 子どもの意識調査ー小学4年生 日本以外 1072人、 日本 約400人 中学2年生 日本以外 1025人、 日本 約100人 |
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調査主体 |
スプリックス教育財団が以下に委託して実施 (1) 株式会社クロス・マーケティング (2) 株式会社スプリックス |
・ 本リリースに関する内容をご掲載の際は、必ず「スプリックス教育財団調べ」と明記してください。
A) 基礎学力調査(計算テスト)
日本の計算力は比較的高いが、一部の単元は定着が不足
小学4年生では「43×2」、中学2年生では「(5x−9)−(−x−4)」といった基本的な計算力を問う計算テストを、10か国で実施しました。
日本の計算力の高さが示される一方で、中学2年生時点で計算力が十分に身についていない可能性も示唆されました。
インターネットパネル調査を実施したパネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)と、調査参加校の教室で実施した学校5か国(ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール、日本)の結果の概要をご報告します。
インターネットパネル調査と学校調査では計算テストの難易度は同等ですが、実施形式や解答形式が異なるため単純な比較ができないため、本レポートでは別途集計して報告いたします。
(1) 小4・中2とも比較的高い成績だが、学年が上がると基礎の定着度が下がる
パネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)で小学4年生・中学2年生での計算テスト全体の総合正答率を比較しました。いずれの学年でも、中国が比較的高い正答率を示しました。
出題範囲は既習分野の基本的な計算問題にも関わらず、中学2年生においては中国を除き総合正答率が50%に届かず、基礎的な計算力が不十分であることが示されました。


学校5か国(ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール、日本)でも小学4年生・中学2年生で計算テスト全体の総合正答率を比較しました。
いずれの学年でも、日本は比較的高い正答率を示しました。しかし、中学2年生のほうが正答率が高い国も存在する一方で、日本は学年が上がると総合正答率が低下しました。
また、小学4年生でも総合正答率が50%に届かない国もあり、小学生の時点で計算力が不十分な国が存在することがわかりました。

**エジプトは異なるレベルを受験した人も存在し、N数が少ないため参考値

(2) 小4は分数、中2は連立方程式に課題
次に、分野別正答率の比較結果を示します。図内の数字は国別分野別の正答率(%)を示し、分野別正答率が80%以上が濃紺、40%未満は濃いピンクです。
まず、パネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)で小学4年生・中学2年生での分野別正答率を示します。総合正答率の高い中国は、いずれの分野でも比較的高い正答率を示しました。
中国以外では、小学4年生では分数が、中学2年生ではすべての分野で正答率が60%未満であり、習ったことの半分ほどを理解していないまま新しい分野に進んでいることが示されました。


同様に、学校5か国(ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール、日本)で小学4年生・中学2年生での分野別正答率を示します。
総合正答率の高い日本は、ほとんどの分野で比較的高い正答率を示しましたが、小4では分数で正答率80%を切り、中2では連立方程式で正答率40%を切り大きな課題であることがわかりました。
日本以外では、小学4年生ではわり算、中学2年生では文字式で正答率が下がり、以降の分野で正答率が上がらない傾向にあります。

**エジプトは異なるレベルを受験した人も存在し、N数が少ないため参考値

今回の国際調査により、計算力という基礎的な学力の時点で国による差が存在することが明らかになりました。特に、小学4年生の時点でわり算や分数に課題を抱えた国は、中学2年生の正答率も低い傾向にあります。日本は全体的な正答率は比較的高いものの、連立方程式に課題があります。
既習分野の復習といった振り返り学習の必要性を示唆する結果となりました。
B) 保護者の意識調査
「不満はあるが、変わりたくない」慎重な日本の保護者の意識
小学4年生と中学2年生の保護者を対象に、基礎学力や学校教育、ICTの利活用状況などを世界11か国で調査しました。本調査により、日本の保護者は、学校教育や子の学力に不満を感じる一方で、学力競争やICTツールの導入には慎重であるという傾向が明らかになりました。
インターネットパネル調査を実施したパネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)と、調査参加校の教室で実施した学校6か国(エクアドル、ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール、日本)の結果の概要を、日本以外と日本の結果を中心にご報告します。
なお、本リリースでは、保護者の意識調査は小学4年生相当・中学2年生相当の合計を基に報告しています。学校調査の保護者の回答は任意のため、国や学年によりサンプル数が異なりますが、本リリースでは単純に合計したものを示します。
(1) 学校教育への満足度が低く、競争に否定的
学校の授業に関して、日本以外の保護者は、80%以上が学校の授業で十分な学力がつくと考えています。また、半数の保護者は子どもの学力にも満足しています。
対して日本の保護者は、学校の授業だけで十分と考える親は半数を下回っています。さらに、子どもの現在の学力に対する満足度も10%と非常に低いことがわかりました。その一方で、競争には日本以外の保護者よりも慎重な姿勢が見られます。

(2) 教育の情報源の不足
教育情報の入手先として、日本以外の保護者は「学校の先生」といった「人」への相談が多く、さらに書籍や雑誌といった媒体も活用しています。
対照的に日本の保護者は、学校の先生に相談する割合が相対的に少なく、また「情報を得る媒体が特にない」と回答する層が日本以外に比べると多いのが特徴です。

(3) ICTや生成AIの導入に慎重
学習でのアプリ利用について、日本以外の保護者の72%は、小学校入学前からスマホ・タブレットを学習に利用しています。また、「効率的に学習する」ことを73%が重要視しています。
対照的に、日本の保護者が小学校入学前にデジタル学習を取り入れている家庭は33%と少数派です。「効率的な学習」を重視する割合も日本以外に比べて低い傾向がうかがえます。

生成AIについては、日本以外の保護者は、すでに76%が生成AIを利用した経験を持っており、実生活に浸透しつつある様子がうかがえます。
対照的に、日本の保護者は「名前は知っているが使ったことはない」が多く、利用経験者は半数を下回ります。
※本調査は2025年4月~8月に実施したものです。
また、子どもが生成AIを利用することについても、日本の保護者は勧めるかどうか「わからない」という回答が日本以外と比べて多い傾向にあります。

国際的には日本の小中学生の計算力は高いのですが(A節参照)、日本の保護者は子どもの学力に満足していない傾向にあります。学校教育に不満はあるものの、競争やデジタルツールの導入には慎重な姿勢を示します。
日本の保護者は「現状に不満はあるものの、大きな変化は避けたい」といった慎重な姿勢が子の教育において存在することが示唆されました。
C) 子どもの意識調査
環境は安定している一方で学習意欲とツール活用に課題
小学4年生と中学2年生の児童・生徒を対象に、家庭環境や勉強の意識、学校内外での学習経験やICTの利活用状況などを世界10か国で調査しました。本調査により、日本の小中学生の家庭や学校の環境は良好である一方で、ロールモデルの不在や、ICTの有用性の実感が薄い等、課題が明らかになりました。
インターネットパネル調査を実施したパネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)と、調査参加校の教室で実施した学校5か国(ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール、日本)の結果の概要を、日本以外と日本の結果を中心にご報告します。
本リリースでは、子どもの意識調査は小学4年生相当を中心に報告しています。学校調査の子どもの回答は任意のため、国によりサンプル数が異なりますが、本リリースでは単純に合計したものを示します。
(1) 家庭環境は安定しており学校の授業が丁寧
家庭環境に関して、日本の子どもは、家で事情があることにより勉強や生活を妨げられている家庭が少なく、比較的平穏で安定した環境にいます。
その一方で、親の最終学歴を「知らない」と答える割合が41%と圧倒的に高く、日本以外の子どもの大半が親の学歴を把握しているのとは対照的です。

学校の勉強については、日本でも日本以外でも、60%以上の子どもが「学校の授業は理解に役立っている」と感じています。
しかし、授業の進め方については、日本の子どもが「不明点を残さず進む」と評価する割合が日本以外を上回っており、授業の丁寧さに対する信頼の厚さが際立っています。

(2) ロールモデルが不在で進路が未定
将来の展望について、日本以外の子どもの30%が「大学院」までの進学を希望しています。
対照的に、日本の子どもは44%が「進路は決まっていない」と回答し、大学院進学を希望する割合は5%と極めて低くなっています。
また、日本の子どもは進路について参考になる人が日本以外と比べて少ない傾向にあります。

(3) アプリの有用性を感じられず、生成AIの活用に遅れる
勉強でのアプリ利用について、日本でも日本以外でも、オンライン学習や算数の演習などの学習アプリを8割程度の子どもが使用しています。
ただし日本の子どもは「役に立っているアプリはない」と回答する割合が日本以外と比べて高く、アプリ学習の有用性を感じている割合が小さいことが特徴です。

生成AIについては、日本以外の子どもは、70%が生成AIを利用した経験を持ち、学習の疑問解決やアイデア出しなど、多様な場面で活用しています。
一方、日本の子どもは、生成AIを「使ったことがある」割合が42%と半数を切っており、利用率が日本以外に比べて顕著に低くなっています。
※本調査は2025年4月~8月に実施したものです。

日本の子どもの高い計算力は、安定した家庭環境や、丁寧な授業などに支えられている可能性があります。一方で、将来の進路に未定が多く参考になる人が少ない等、学習の目標が不明瞭な一面や、学習アプリや生成AIの学習への活用に遅れている面などの課題が明確になりました。
まとめ
本調査では、「安定した家庭環境」「学校教育の充実」が日本の高い計算力を支えている可能性が示唆されました。その一方で、今後の課題として「苦手分野の克服」「情報源やロールモデルの不足」「ICTや生成AIの活用」が浮き彫りとなりました。
計算力 日本の計算力は比較的高いが、中学生の連立方程式が懸案
保護者の意識 「不満はあるが、変わりたくない」慎重な日本の保護者
子どもの意識 日本の教育基盤は安定 学習意欲とツール活用に課題
調査結果には、その他のテーマの結果概要も掲載しています。ぜひご参照ください。
また、本リリースでは省略した設問と回答や、中学2年生の回答率も示した資料は弊財団HPで配布中です。詳細は弊財団HPまでお問い合わせください。
本報告は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」に基づく第10回目の報告です。今後もスプリックス教育財団では、子どもの基礎学力に関して様々な分析を進めてまいります。
備考:計算テストの実施概要
本調査で実施した計算テストの形式は、参加国によって内容が異なります。
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インターネットパネル調査のグループ:TOFASの問題を一部抜粋した短縮版(全32問)を実施しました。回答形式は4肢択一の選択式です。
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教室で参加したグループ:学校の教室において、国際基礎学力検定TOFASの計算テストを受験しました。回答形式は、選択式と記述式を併用しています。
そのため、両グループ間で正答率を直接比較することはできません。
出題される問題は、学年に応じた基礎的な計算問題です。例えば、小学4年生では「43×2」、中学2年生では「(5x−9)−(−x−4)」といった内容が含まれます。
なお、TOFAS(国際基礎学力検定)の詳細は下記よりご確認ください。
備考:意識調査の実施概要
本調査で実施した意識調査の主なテーマは、以下の通りです。
<保護者の意識調査>
以下のテーマについて、オンラインの多肢選択式で質問
子の学習活動 / 子の将来 / 子の教育 / ICTを用いた学習 / 生成AI
<子どもの意識調査>
以下のテーマについて、オンラインの多肢選択式で質問
家庭環境の把握 / 勉強の意識 / 将来の展望 / 学習での経験 / 学校での勉強 / 学外学習 / ICTを用いた学習 / 生成AI
留意事項
<全体>
・ 学校調査(エクアドル、ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール、日本)では、回答者はランダムに抽出されたものではありません。そのため、便宜上「国名」として記載していますが、特定の地域や学校の結果であることにご留意ください。
・ 学校調査のデータは匿名性保持のため、国別の調査対象者数を非公表としています。
・ パネル調査においては、学力調査・保護者の意識調査・子の意識調査を全て同一の親子に実施しています。
学校調査においては、学力調査・保護者の意識調査・子の意識調査のうち、一部のみ回答した人、全てに回答した人の両方を含みます。特にエクアドルは、保護者の意識調査のみに参加しており、学力調査と子の意識調査の結果はありません。
<計算問題>
・ 計算問題は、国によって同一学年で複数のレベルを受験している場合がありますが、本報告では横並び比較のため、小学4年生はレベル2、中学2年生はレベル5を受けた場合のみ集計対象としています。なお日本の小学4年生はレベル2に準ずる内容を受験していますが、一部の分野は受験内容に含みません。
・ インターネットパネル調査と学校調査では計算テストの難易度は同等ですが、実施形式や解答形式が異なるため単純な比較ができないため、本レポートでは別途集計して報告いたします。
<保護者の意識調査>
・ 本リリースでは、保護者の意識調査は小学4年生相当・中学2年生相当の合計を基に報告しています。
・ 学校調査の保護者の回答は任意のため、国や学年によりサンプル数が異なりますが、本リリースでは単純に合計したものを示します。国別、学年別の回答については弊財団HPより資料申請が可能ですのでお問い合わせください。
<子どもの意識調査>
・ 本リリースでは、子どもの意識調査は小学4年生相当を中心に報告しています。
・ 学校調査の子どもの回答は任意のため、国によりサンプル数が異なりますが、本リリースでは単純に合計したものを示します。国別、中学2年生相当の回答については弊財団HPより資料申請が可能ですのでお問い合わせください。
■公益財団法人スプリックス教育財団 概要
公益財団法人スプリックス教育財団は、社会的支援を必要とする学生に対して奨学金の支給を行うほか、教育に関する調査研究を行いその成果を広く一般に公表し、もって青少年の健全な育成に寄与することを目的としています。
名 称:公益財団法人スプリックス教育財団
設 立:2023年4月
代表理事:常石 博之
事業内容:奨学金の支給、調査研究
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