クリエイティブは「環境」からはじまる。氏家物産がAI時代の働き方を“実証インタビュー”として公開
──環境をデザインに取り込む氏家物産のCCO・高原弘樹が語る新しい働き方

AIが働き方を変える時代。
必要とされているのは、創造力を育てる「環境」だ。
在宅やリモートが一般化し、クリエイティブの現場にも大きな転換が起きている今。
様々なブランド開発を行う氏家物産株式会社(以下、氏家物産)は、働く“環境”そのものも既にデザインと捉え、デザイン思考に配慮した働き方を実践している。
その中核を担うCCO兼アートディレクター・高原弘樹が語る、AI時代の創造性の源泉とは——。
■「環境」からはじまる、氏家物産の働き方
男子校の部室のような空気。
笑いが飛び交い、リラックスして、自然と自発性が立ち上がっていく。
「好きって、努力を超えるエネルギーなんですよ。興味のなかったものでも、興味を持てる断片や視点を探すことで、その断片が見えたり聞こえたりすると興味に変わる」と高原は語る。
たとえ今は関心がなくても、どこかに接点がある。
その接点さえ見つかれば、人の中で新しい興味が芽生える。
「僕自身の中でも、“興味ない視点”に対してどうしたら興味を持てるのかを探す作業が始まるんです」
みんながみんな、最初からそのブランドやプロダクトや物事に興味を持つわけではない。だからこそ、興味が生まれる入口を見出すことがクリエイティブの本質につながる。
そこから初めて、世界との接続が始まるのだという。

「デザイン思考を育むには、その物事を考える“環境”に在る、と思うんです。氏家物産のデザイン会議は、まさにそんな環境の“状態”から始まる。準備運動というか、普段からその準備が仕上がっている」と高原は語る。
高原にとって、アイデアの出発点はいつも「興味」と「環境」にある。
■ 在宅で分かったクリエイティブの「静寂」
在宅ワークになって、高原は「自分にとって最適な環境」を知った。
満員電車のストレスもなく、横には愛犬がいて癒やされる。
煮詰まったら、「ちょっと走ってくる」と外へ出て頭をリセットできる。
「生活そのものが、仕事の環境になった」と高原は語る。
心地よい状態で机に向かえるからこそ、静かに深く課題に向き合える。
「“個”の主張を磨き込むんです。それがデザインに映るし、自分の日常の視座がデザインロジックと重なっていく」
街に出れば、喧騒すら「ノイズ」ではなく人々の叫びや心の信号として聴こえてくる。
クリエイターに求められるのは、固定概念に縛られず、どこに自分の土俵を置くかを選ぶこと。
「個と社会、その差分が距離で、その距離を埋めていく作業がデザインに宿る。それが、僕のスタイルなんです」
固定概念に縛られない環境選択が、氏家物産のクリエイティビティを支えている。
数々の大手アウトドアブランドのデザインに加え、行政や大手企業など多様な領域のブランドの可視化にも携わってきた高原。自然環境と都市の両方を舞台に、環境が創造性を育む瞬間を見てきた。

■ 生成AIの時代に、技術とともに生きるデザインへ
これからの時代は、AIといかに上手く付き合っていくかが重要になってくる。
彼らのスピードや論理に、人間ならではの「遊び心」や「ノイズ」をどう混ぜていけるか。
「AI任せにするのではなく、対話をしながら新しい価値を共創するスタンス。
それも楽しめなきゃ意味がない」
と高原は語る。

AIという新参の天才社員と、面白く楽しく壁打ちしながら、氏家物産というブランドのフィルターを通す。「この視点があったか」という発見や、「この気持ちから動線を踏めば共感できる」という余白。
そこにデザイナーとしての役割がある。
任せること自体を楽しみつつ、ズレないよう管理し見届ける「技術」が必要だ。
「何が出てこようとも、僕らには僕らの特性がある。
男子校の部室で戯れあう技術に、新たな部員(技術)を迎えて飲み込んでいくこと」
それが、AI時代のクリエイティブだと高原は言う。
■ 渇望が自発性を磨く
海と街が会議室になる働き方。
氏家物産にはレクがある。強制でもなく、「今週やる?」から始まる。
サーフィンは波のコンディションにも左右されるし、打合せが詰まっていれば即スキップ。
だからこそ、「そろそろやりたい」という渇望が生まれる。
自発的に向かわないと楽しめない。この心身のバランスこそが、仕事のスタンスをつくっていく。
「クリエイティブの教育は環境である。そう思います」

■ 体験を共にすることが、企画を動かす
サーフィンやスケートボードは、高原にとって、ただの趣味ではない。
ボスとの大切なコミュニケーションツールだ。
かしこまった会議室よりも海の上の方が未来の話ができる。
「楽しさがないとクリエイティブではない」
体験を共にすれば、連携や意識の疎通は、雑談や海の上でも起こる。
会議室に閉じたコミュニケーションでは生まれないものがある。
■AIが量産できないものを、人はどう育てていくのか
机上の情報はいくらでも手に入る時代。
だからこそ、体験を重ね、男子校の部室みたいなくだらない会話を大人になっても無邪気に続けられる環境が氏家物産の文化となっている。
アイデアの厚みは、自分が楽しんでその場にいるかどうかで決まる。
人生観や、生き方や、見立て方。
感性の隅々に宿るものが、クリエイティブを前進させる。
AIは専門分野でも迷わず答えをくれる。
だけど、悩んで、迷って、試行錯誤して生まれたものは、人の感性や共感に触れる。
それは「人だからこそのマイナス」ではなく、人だからこその特異性から生まれる洗練さだと思う。
もう一歩、厚みのある状態で整えることができる。
それが、AIと生きるクリエイターの一歩秀でていかなきゃいけないスタンスなんです。
と高原は言う。

■ 最後に
創造性は環境から生まれる。
私たちは、その環境をつくり続ける。
海でも、街でも、日常でも。
どこにいても、どんな時代でも、
面白さを原動力に、未来をデザインしていく。
私たちは、発想が自然と立ち上がる“場”を育てる会社です。
育てながら、未来の発想が生まれる舞台をひらいていく。
そんなブランドカンパニーであり続けます。

氏家物産株式会社(UJIIE BUSSAN CO.LTD.)
代表取締役社長 氏家 聡史
ブランディング全般、コミュニケーション施策のプランニングおよび実施
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