「つくる」と「まわす」をつなぐ本格対話
「紙化」のその先を、包装設計と紙リサイクルの現場から考える

公益社団法人 日本包装技術協会(東京都中央区)と公益財団法人 古紙再生促進センター(東京都中央区)は、2026年5月26日、「紙リサイクルの未来、共に考えませんか?」~「動脈」と「静脈」の共創を目指して~をテーマとした共催セミナーを開催しました。
近年、包装分野では「脱プラ・紙化」が加速する一方、紙リサイクルの現場では、可燃ごみに残る「雑がみ」や、複合素材・品質問題など、新たな課題も顕在化しています。
こうした中、本セミナーでは、「つくる側(動脈)」と「まわす側(静脈)」が、それぞれの現場や制約条件を共有しながら、素材設計から回収・再資源化までを一体で捉える視点について議論しました。
紙リサイクルを巡って、包装設計側と回収・再生側が、業界や立場を越えて本格的に意見交換を行う機会はこれまで限定的であり、今回のセミナーは、相互理解を深めるための新たな試みとして開催されたものです。
セミナー冒頭、日本包装技術協会の井出室長からは、「本セミナーは特定の結論や評価、是非を求めるものではなく、業界や立場を超えた認識共有を重視するものである。今後の定期的な対話や検討につながる第一歩として位置づけたい」との説明がありました。
続いて、古紙再生促進センター専務理事の川上正智、および株式会社パックエール代表取締役の内村元一氏が、それぞれ静脈・動脈の立場から講演を行いました。
静脈側から見た紙リサイクルの現状と課題
― 「雑がみ問題」と循環参加モデル ―
古紙再生促進センターの川上専務理事は、「紙リサイクルの現場から考える循環社会―雑がみ問題と資源循環―」と題し、古紙を取り巻く環境変化や、可燃ごみに残る紙資源の現状、市民の分別意識などについて説明しました。
講演では、紙・板紙需要構造の変化や古紙発生量の減少が進む一方で、パッケージ用途中心に引き続き古紙需要が存在していること、特に「雑誌古紙の実質的な雑がみ化」や、「可燃ごみに残る雑がみ」の存在が中長期的な課題となっていることが共有されました。
また、家庭から排出される「雑がみ」は、分別すれば資源化可能なものが多い一方、「面倒」「分かりにくい」といった日常感覚が、分別行動の障壁になっている現状についても説明しました。
さらに川上専務理事は、包装の高機能化や紙化が進む中で、「つくる側」と「まわす側」の情報や課題認識が十分に共有されていないことが、リサイクル現場での誤解や、市民の分別の分かりにくさにつながる場合もあると指摘しました。
また、古紙センターが各地で進める「雑がみさまを探せ!」を活用した啓発実証や地域循環共生社会づくりモデルについても紹介し、制度論だけではなく、市民が「気づく」「試す」「参加する」ことのできる“循環参加モデル” “行動変容モデル”の重要性についても説明しました。
動脈側から見た包装設計と循環経済
― 「紙化」のその先に求められる視点 ―
続いて、株式会社パックエール代表取締役の内村元一氏は、「サーキュラーエコノミー時代の包装設計「脱プラ・紙化」のその先へ」と題し、包装設計・環境対応の最新動向について講演を行いました。
講演では、欧州を中心に進むPPWR(包装・包装廃棄物規則)やPFAS規制、グリーンウォッシュ規制などを背景に、環境対応が「推奨」から「市場参入の前提条件」へと変化していることが紹介されました。
また、「紙化」が進む一方で、リサイクル適性や分別表示、素材構成などを巡る課題も増えていることに触れ、「紙であればすべてリサイクルできるわけではない」という現実や、「分けられるように作る」設計思想の重要性が共有されました。
内村氏は、包装設計においては、単に紙素材へ置き換えるだけではなく、回収・選別・再資源化まで含めた「Design for Recycling(DfR)」の視点が不可欠であり、今後は“循環の仕組みに戻れる包装”が前提となる時代へ移行していくとの認識を示しました。
さらに、生活者への情報提供についても、「リサイクルできる」という表現自体が、地域インフラや回収実態と結びついて説明される必要があると指摘しました。

“対話の場”を継続する意義
本セミナーでは、動脈・静脈の双方が、それぞれ異なる立場や制約条件を抱えながらも、「循環」という共通テーマに向き合っていることが改めて共有されました。
紙リサイクルを巡る課題は、単一業界のみで完結するものではなく、設計、流通、回収、再生、行政、市民行動など、多様な主体が関わる複合的なテーマとなっています。
そのため、特定の結論を急ぐのではなく、まずは現状や課題、現場感覚を相互に理解し合うことが、今後の循環型社会づくりを考える上で重要な出発点になります。
日本包装技術協会と古紙再生促進センターでは、今後もこうした対話や情報共有の機会を継続的に設けながら、動脈・静脈双方の理解深化と、紙リサイクルを巡る持続可能な循環のあり方について、実務的な議論を積み重ねていく考えです。
公益社団法人 日本包装技術協会
株式会社パックエール




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