独自開発の化粧品原料『CELLAMENT(セラメント)*1』の主成分「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液」に、若齢個体特有の遺伝子発現パターンへの回復による若返りが期待される研究結果を確認
インテグリカルチャー株式会社(本店:東京都文京区、代表取締役CEO:羽生雄毅、以下、「インテグリカルチャー」)は、独自開発の化粧品原料『CELLAMENT(セラメント)』の主成分である鶏卵由来の「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液」に、若齢個体特有の遺伝子発現パターンへの回復による若返りが期待される研究結果が確認されたことをお知らせいたします。
■『CELLAMENT(セラメント)』および「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液*2」について
インテグリカルチャーでは培養肉製造におけるコストの大きな部分を占める成長因子や血清様成分を作出するCulNet (カルネット) システムを開発しており、このシステムから得られる培養上清には対象となる細胞(例:筋肉細胞や肝臓細胞など)を培養するために必要な種々の有用成分が含まれます。
このCulNet システムの開発段階で得られた鶏卵の胚体外膜順化細胞培養上清は、当社での培養肉製造のための技術開発の過程で多様な細胞に対して顕著な増殖促進効果を有することが確認されました。また化粧品原料としての機能性を検証したところ、ヒト皮膚にも有用であることが確認*3できたため、化粧品原料としての安定性を考慮したものを当社独自の化粧品原料『CELLAMENT(セラメント)』として2021年4月に上市しました。
■研究の目的
『CELLAMENT(セラメント)』の化粧品機能性原料としてのさらなる有用性を探索すべく、従来の研究結果*3で見られた遺伝子発現量への影響を詳細に検証することを目的として、「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液」を添加した細胞の遺伝子解析(RNA-seq、qPCR)を実施し、遺伝子発現パターンの変化を観察することとしました。
■研究の内容と結果
遺伝子発現の解析によって、『CELLAMENT(セラメント)』の主成分である「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液」がヒト線維芽細胞の遺伝子発現パターンを成人期のパターンから新生児期のパターンに近づけることがわかりました。研究の内容は以下のとおりです。
新生児ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF:Neonatal Human Dermal Fibroblasts)と成人ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa|Human Dermal Fibroblasts adult)の遺伝子発現を、NGS(次世代シーケンサー)を用い網羅的に解析した結果、新生児ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)と成人ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa)では1,967の遺伝子に発現量の変化*4が確認されました。
成人ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa)に、それぞれ「鶏卵胚体外膜培養上清」、もしくはFGF2(線維芽細胞成長因子|FibroblastGrowth Factor2)を添加したところ、「鶏卵胚体外膜培養上清」添加細胞では359、FGF2添加細胞では68の遺伝子について、新生児ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)での遺伝子発現と近いパターンを示していることがわかりました。このことから、FGF2添加に対して「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液」添加の方が約5倍の数の遺伝子を新生児期の遺伝子発現パターンに近づけ、肌状態をより新生児期の状態に近づける可能性が示されました(図1)。
「鶏卵胚体外膜培養上清」の添加により発現が変化した359の遺伝子の中には、老化に伴い発現量が減少することが知られている線維芽細胞の増殖促進因子(FGF5)や、Collagen合成を促進する遺伝子(COL15A1、COL7A1)が含まれました。そこで、qPCR(定量PCR)を用いてFDF5、COL15A1、COL7A1の遺伝子発現に関して詳細に検証を行ったところ、いずれも2)成人ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa)に何も添加せずに培養したものと比較して、3)成人ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa)に「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液」を添加し培養したもので、FGF5、COL15A1、COL7A1などの発現が高くなることが明らかとなりました。特にFGF5では成人ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa)に「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液(3mixCM)」を加えることでが2倍以上発現が増加し、新生児ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の発現量を上回る結果を得ました。また、COL15A1では2.5倍以上、COL7A1では1.7倍以上の発現量が「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液(3mixCM)」を加える事で増加することがわかりました。図2)。
以上のことから独自開発の化粧品原料『CELLAMENT(セラメント)』は、肌を形作る細胞を遺伝子発現レベルから若さの方向へ導くことが期待され、従来の研究成果である線維芽細胞の増殖促進効果、バリア機能向上(セラミド合成促進と分解抑制、フィラグリン産生促進、ヒアルロン酸合成促進に関する遺伝子発現量の上昇による)、紫外線ダメージに対する角化細胞の保護・抗炎症作用、細胞外マトリクス(ECM)合成促進・分解抑制作用、抗酸化作用、皮脂合成抑制作用、美白(メラニン産生抑制)などの機能にも影響を及ぼしている可能性が示唆されました。今後も、私たちは独自の細胞培養技術により、体験したことのない「美と健康」に資するプロダクトを生み出すべく研究を進めてまいります。
*1 『CELLAMENT(セラメント)』:(化粧品表示名称)鶏卵胚体外膜細胞順化培養液、BG、ペンチレングリコール
*2 鶏卵胚体外膜細胞順化培養液:鶏卵(受精卵)の中の胎盤様組織細胞を培養し、そこから得られた細胞培養上清液
*3 『CELLAMENT(セラメント)』の主成分である「鶏卵胚体外膜細胞順化培養液」が、線維芽細胞の増殖促進効果、バリア機能向上(セラミド合成促進と分解抑制、フィラグリン産生促進、ヒアルロン酸合成促進に関する遺伝子発現量の上昇による)、紫外線ダメージに対する角化細胞の保護・抗炎症作用、細胞外マトリクス(ECM)合成促進・分解抑制作用、抗酸化作用、皮脂合成抑制作用、美白(メラニン産生抑制)などの機能を有することを各種試験で確認。(フレグランスジャーナル社『FRAGRANCE JOURNAL』2021年6月号 p74~p79)
*4 a.とb.の合計値:a.成人期のヒト線維芽細胞には発現量が多いが新生児期には少ない遺伝子数 b.新生児期のヒト線維芽細胞には発現量が多いが成人期には少ない遺伝子数
■インテグリカルチャーについて
独自開発の低コスト細胞培養技術CulNet システムをバイオ領域の新たなプラットフォームとし、動物細胞で構成される食品、皮革をはじめ、様々な分野でご活用頂けることを目指しています。
CulNet システムは、汎用性の高い細胞培養生産プラットフォーム技術で、動物体内の臓器間相互作用を模した環境を擬似的に構築する装置です(特許取得済み)。本技術は、動物細胞を大規模かつ安価に培養可能で、培養肉をはじめ、様々な用途での活用を想定しております。すでにラボスケールでは、高コストの一因であった血清様成分の作出を実現しています。血清様成分作出の実現により、原料調達・管理で課題となる牛胎児血清(FBS)や高価な成長因子が必要なくなり、細胞培養生産の大幅なコストダウンとより高度なサプライチェーン管理を実現します。
WEB:https://integriculture.com/
用語解説
成長因子:細胞が増殖するために必要な成分(タンパク質など)。グロースファクターとも呼ばれる。
培養上清:細胞培養を行った際に得られる培養液の上澄み液。細胞から分泌された各種有用成分が溶け込んでいる。
NGS(次世代シーケンサー):DNA配列を高速・網羅的に解析する装置。全ゲノム解析やRNAの網羅的解析に使用される。
qPCR(定量PCR):微量のDNAやRNAを増幅することで検出可能とするPCR(Polymerase Chain Reaction)を拡張し、DNAやRNAの量を計測する手法。
参考文献
・フレグランスジャーナル社『FRAGRANCE JOURNAL』2021年6月号 p74~p79
※ CELLAMENTはインテグリカルチャー株式会社の登録商標です。
※ CulNetはインテグリカルチャー株式会社の登録商標です。
※ FRAGRANCE JOURNALは有限会社フレグランスジャ―ナル社の登録商標です。
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