「放置竹林」対策で地下茎を根絶やしに~薬剤を利用した昨秋の実験 安芸高田市で3月4日に公開評価,5か月の成果を確認

【日時】令和2年3月4日(水)14:00-15:00 【場所】広島県安芸高田市美土里町横田川撫地区(高田インターチェンジから車で5分)

 1:概要
 広島県内では,繁殖力の強い孟宗竹(もうそうちく)が放置されている「放置竹林問題」が周囲の環境に深刻な影響をもたらしています。その解決に向け令和元年10月1日,県立広島大学が中心となり,公益財団法人の安芸高田市地域振興事業団と,住友化学の100%子会社である住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社(大阪市)が協力して,薬剤「クロレートS」を利用して,地下茎から根絶やしにする新しい手法による実験を行いました。それから5か月が経ったところでの成果を確認する実証展示試験について,地下茎の掘り上げによる公開評価を次のとおり行います。この評価により,新手法の効果を明らかにし,本県から「放置竹林問題」の有力な解決策を広く発信したいと考えています。
2:これまでの経緯
(1)農薬を利用した新手法の実証展示試験の進捗について
1:まず竹林の全伐を行い,続いて薬剤「クロレートS」*1を全面土壌散布しました(令和元年10月1日)。この手法によれば,薬剤を地下部に集中的に散布することで,短期間に且つ広範囲に処理することができます。地下茎を枯らすことで,その再生能力を強力かつ確実に抑制する効果が期待されます。
2:試験開始後,1か月以内の段階では,未処理の区域に比べて,薬剤処理区において伐採した竹稈の表面,および発生している小竹の表面に褐色になる変化が観察されました(図1、2)。その後下草など竹以外の植生回復も認められています。2か月後および4か月後の段階で竹稈の横断面を観察すると,未処理区の健全な組織に比べて,薬剤処理によって組織の明らかな劣化が認められ(図3),竹稈や地下茎の分解を促進する微生物の組織内への進入も確認できました(図4)。さらに地下茎のTTC活性評価*2によって効果を検証しています(10,11,12,1,2月に実施)。

(2)3月4日に実施する公開評価~地下茎を掘り上げてダメージを検証
1:「クロレートS」を全面土壌散布した薬剤処理区と未処理区の土壌を広範囲に除去し,地下茎を掘り上げて,通常は見ることのできない竹林の地下茎の枯損状況と伸長状況を比較します。
*1薬剤:塩素酸ナトリウム50%粒剤(製品名:クロレートS) 根への接触により吸収されて作用する非選択性除草剤です。周辺土壌への移行性はほとんど無く,散布後1-2か月以内にほぼ消失することが想定されています。
*2TTC活性評価:TTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)は,酸化還元指示薬であり,生物活性のある組織内では脱水素酵素によって還元されて不溶性で赤色を呈するTPE(トリフェニルフォルマザン)を生成します。活性がない組織では呈色しません。

図1 クロレートS粒剤全面土壌散布の有無と見かけ上の効果。上部が薬剤処理区、下部が未処理区(11月)図1 クロレートS粒剤全面土壌散布の有無と見かけ上の効果。上部が薬剤処理区、下部が未処理区(11月)

図2-1 薬剤未処理区の様子(11月)。図2-1 薬剤未処理区の様子(11月)。

 

図2-2 薬剤処理区の様子(11月)。図2-2 薬剤処理区の様子(11月)。

 

図3-1 薬剤未処理区の竹稈。断面が瑞々しい(2月)図3-1 薬剤未処理区の竹稈。断面が瑞々しい(2月)

 

図3-2 薬剤処理区の竹稈。灰褐色,一部が黒変しており,組織の劣化も認められます(2月)。図3-2 薬剤処理区の竹稈。灰褐色,一部が黒変しており,組織の劣化も認められます(2月)。

 

 

 

 

図4 未処理区の竹稈(上)と薬剤処理区の竹稈(下)の横断組織を25℃,24時間培養した結果の比較。薬剤処理した組織の表面には多くの微生物増殖が認められます。図4 未処理区の竹稈(上)と薬剤処理区の竹稈(下)の横断組織を25℃,24時間培養した結果の比較。薬剤処理した組織の表面には多くの微生物増殖が認められます。



3.今後の展開
 引き続き実証展示試験の経過を追い,対象となる竹林を増やしながら新手法の有効性を示すことで放置竹林防除に寄与していきます。並行して伐採した竹の再利用を含めた検証も行います。
 こうした問題を検証する全国の研究者らで構成する組織「竹林景観ネットワーク」(http://balanet.bambusaceae.net/sample-page/)の研究集会が6月下旬に広島市で開かれる予定で,今回の実証実験に関する報告も予定しています。
*取材,視察等、ご希望の際はお問い合わせください。

 

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