経済産業省の物流改善に向けた実証実験 需要予測活用で配送トラック年間300台削減などの可能性を示唆
■ 背景
物流業界には、人口減少に伴う労働力不足の深刻化や、トラックドライバーの時間外労働が960時間に規制されることによる「2024年問題」など、さまざまな課題が存在しています。それらの問題を解決するには、物流業者だけではなく、消費財のサプライチェーンの起点となる小売業との連携、中でも小売業の在庫管理と発注業務の最適化が不可欠です。小売業への需要予測サービス「sinops‐CLOUD」を提供するシノプスは、2023年10月よりトーマツからの再委託により、需要予測を活用した物流改善に向けた実証実験を実施しています。実証実験では、物流を圧迫する一因と考えられる「新商品・販促商品に係る発注適正化(リードタイムの延長等)」に加え、「店舗配送量の曜日平準化」「気象予報情報の活用によるレジリエンス向上」をテーマに、生活協同組合コープさっぽろ(理事長:大見 英明、以下「コープさっぽろ」)、株式会社ウオロク(代表取締役社長:本多 伸一、以下「ウオロク」)とその物流センターとの検証を実施しています。
■ 実証実験と経過について
【実証1】新商品・販促商品に係る発注適正化(リードタイムの延長等)
コープさっぽろの店舗、および物流センターにて、新商品と販促商品の小売りから仕入先への発注確定日を前倒しする「納品リードタイム(以下、「納品LT」)長期化」の実証実験を実施しました。小売業において、通常の商品は需要予測ツールが広く利用されていますが、新商品や販促商品においては販売予測がむずかしく、それが過剰在庫や不足分の追加発注といった問題を引き起こしています。本実験では、従来3~7日程度であった納品LTを2週間程度まで長期化することで、卸売業の販促期間中の追加発注の対応に向けた在庫調整業務の負荷軽減、物流センターの過剰在庫や欠品の防止、物流の効率化が期待できます。
需要予測データを活用して、従来の追加発注分も考慮した上で初回の発注量を2週間程度まで延長した場合、販促期間中の発注回数や在庫数にどのような影響を及ぼすかシミュレーションを実施しました。シミュレーションと特定の販促期間に店舗での実績を比較した結果、店舗での実績と同程度の在庫日数を保ちながら、対象の販促商品61SKU *1の追加発注を79%削減、また過剰な追加発注を抑制したことで対象商品のセンター在庫を42.9%削減可能、という効果が推計されました。また小売側でも、本部で各店舗に対して掲示している発注参考値の準備業務の所要時間が大幅に削減されるなどの効果が推計されています。
なお、本実証実験は現在も実施中であり、今後は実際に店舗で需要予測システムの提示する発注値を採用した場合の実績値も検証予定です。
* 1:商品を管理する際の最小単位
【実証2】店舗配送量の曜日平準化
コープさっぽろの店舗、および物流センターにて、仕入先から小売への配送量を曜日に限らず一定にコントロールする「配送量の曜日平準化」の実証実験を実施しました。多くの小売業では、販促前や客数が増加する週末に備えて特定の曜日に配送が集中するため、一週間の中でも配送量にバラつきが発生します。そのため、物流センター、店舗共に曜日によって作業量が安定せず人員配置が困難に、また納品量が少ない曜日にはトラックの積載率を活かしきれない、といった課題がありました。
本実験では、店舗への配送量やトラック積載効率を考慮した需要予測を実施。需要予測に基づき店舗の発注量を調整することで、曜日による配送量のバラつきを平準化。納品に関わる物流・店舗作業の負荷分散しつつ、トラック積載率を向上させることで配送トラック台数削減などの効果が期待できます。
従来コープさっぽろの店舗では、来客が増える週末や販促開始前に納品量が増加する傾向にありました。今回の実証実験では、需要予測データを活用し、納品が特定の曜日に偏らないよう店舗発注をコントロールしました。結果、配送量の平準化を実施しても、店舗の欠品率は増加せず、通常通り運営出来ることが分かりました。またその際、店舗の陳列業務の工数も削減されるなどの効果も確認されています。また平準化する際に、1度に配送するアイテム数の削減することで、トラックの計画的手配が可能になり、1地区/1月あたりの配送トラックを64台から39台、年間にすると300台/地区の配送トラックが削減できる見込みです。
なお、本実証実験は現在も実施中であり、他店舗・他カテゴリーでも納品量を平準化した場合の実績値を検証予定です。
【実証3】気象予報情報の活用によるレジリエンス向上の実証
ウオロクの店舗、および物流センターにて、気象災害時の物流圧迫を緩和する「気象予報情報の活用によるレジリエンス向上」の実証実験を行いました。大雪などの気象災害時には、災害前の買いだめにより店舗の欠品が多く発生します。店舗も買いだめに対応すべく、物流センターへ大量発注を行いますが、災害発生中には高速道路の通行止めなど通常通り配送が行えない、店舗からの発注が物流センターの取扱可能量を超えて行われるなど、物流を圧迫させる問題が発生しています。
本実験では、気象情報などを加味した需要予測データを活用することで、大雪予報発令前に即席めんやレトルトカレー、カイロなどといった大雪時の売れ筋カテゴリの発注値を自動で引き上げ、災害発生中は発注値に上限を設定することで過剰な発注を抑制します。事前に災害時の需要を見越した納品が店舗に行われることで、店舗は欠品の防止、売上の向上、物流面でも作業生産性の向上、路面状況が悪化する前に運送・出荷が可能になる、などの効果が期待できます。
新潟県での大雪災害を対象に、大雪予報発令前に大雪時の売れ筋カテゴリ(即席めん、レトルトカレー、パスタ、カイロ等)の発注値を需要予測システム上で引き上げました。その結果、実証対象店舗では、対象外店舗よりも大雪時の欠品数が19%抑制され、売上も増加しました。また、大雪による災害発生中には発注値に上限(平常時の1.3倍)を設定する机上検証を実施。災害発生中の物流が混乱する状況下でも、店舗の欠品を抑制しながらも、物流センターの作業人時を13%に抑制可能であることが推計されました。
なお、本実証実験は現在も実施中であり、発注値の上限設定は、実際に大雪によって高速道路が通行止めとなるような物流の混乱が起きる可能性のあるタイミングに再度実施予定です。
■ 今後の展開
現在、机上検証中である検証内容を、今後は実店舗、センターにて実地検証、効果測定を行います。
本実証実験の途中経過はトーマツより、2024年2月20日に経済産業省が開催予定の第2回北海道地域フィジカルインターネット懇談会内で発表し、最終報告は2024年4月以降に経済産業省のホームページ内にて掲載される予定です。
■ 生活協同組合コープさっぽろについて
1965年創立。北海道内に108店舗の運営や宅配システムトドックを通して、200万人の組合員さんに安全・安心な商品を提供しています。少子高齢化や過疎化など北海道が抱える課題に対して、「つなぐ」を合言葉に子育て、環境や福祉など、組合員さんのための多彩な事業や活動を行っています。
■ 株式会社ウオロクについて
ウオロクは江戸時代から鮮魚商を営み、商いの基本は「真心」と「感謝のこころ」を大切にすることと考え昭和37年にはスーパーマーケットを開業しました。現在は新潟県内で40店舗を超えるまでに至り、単に物を商うという考えだけではなく、お客様に「おいしく楽しい食卓と豊かな生活を提供すること」を自らの使命ととらえています。
■株式会社シノプスについて
株式会社シノプスは、「世界中の無駄を10%削減する」をビジョンに掲げ、需要予測型自動発注サービス「sinops」(シノプス)を開発・販売しているソフトウェアメーカーです。日配食品や惣菜といった賞味期限が短く需要予測がむずかしいとされるカテゴリのシステム化に成功。多くの食品小売企業に採用いただいております。在庫に関わる人、もの、金、時間、情報を最適化するITソリューションを提供し、限りある資源を有効活用することで、広く社会に貢献していきます。東証グロース上場(証券コード:4428)。
■ 参考資料
2024年1月12日プレスリリース「経済産業省の物流改善に向けた小売業の在庫管理・発注業務DXの実証実験」:https://www.sinops.jp/news/20240112/
「sinops-CLOUD」製品サイト:https://www.cloud.sinops.jp
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像