世界初、米国で10階建て木造ビルの振動台実験開始
「NHERI TallWood Project(ナーリ トールウッド プロジェクト)」参画で当社独自実験も
※1 当社調べ(2023年5月12日時点)。10階建て木造ビルに振動を加える実験は世界で初めてです。
「NHERI TallWood Project」は、コロラド鉱山大学を中心とする米国科学財団(NSF)※2および米国森林局(USFS)の助成プロジェクトです。ポストテンション耐震技術※3を用いた試験体を建築し、中高層木造建築の耐震性能と建築技術を検証します。当社は、本プロジェクトに2020年6月から戦略的パートナーとして参画しており、本検証で得た知見を国内外で推進する中大規模木造建築に活かしていきます。
※2 NSF(National Science Foundation)
アメリカ合衆国の科学・技術を振興する目的で1950年に設立された連邦機関で160個以上のノーベル賞を受賞するなど、多くの革新的な研究成果が生み出されている。
※3 ポストテンション耐震技術
耐力部材に通した高強度の鋼棒やワイヤーロープに引張力を与えることで部材間の固定度を高める技術。
■実験概要
<第1フェーズ>
米国では各州の建築基準の規範となるIBC(米国の建築基準)が2020年に改正され、18階建てまでの木造建築が可能となりました。この改正に伴い、第1フェーズの実験は米国研究者によりポストテンション構造という中大規模木造建築の新たな構法の耐震性検証を目的として、10階建て木造ビル試験体の実大振動台実験を実施します。米国西海岸の災害レベルに基づいた地震波などを使用し、部材の破損状況、建物への影響等を検証します。当社はこの実験を通じポストテンション構造の耐震性能と建築技術に関する知見を得ます。
・実験:「NHERI TallWood Project」 10階建て木造ビルの振動台実験
・場所:カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD) 屋外振動台
・期間:2023年4月20日~6月6日
・構造:木造軸組工法+ポストテンション耐震技術耐力壁構造
(当社筑波研究所耐火検証棟と同じ構造)
・階数:10階建て
(平面)9.7m×10m、(高さ)34.14m、(階高)[1F] 3.96m、[その他] 3.35m
・材料:(柱梁) LVL※4、(耐力壁) CLT※5、MPP※6
NHERI TallWood Project : http://nheritallwood.mines.edu/
UCSD屋外振動台 : http://nheri.ucsd.edu/
※4 LVL(Laminated Veneer Lumber)
丸太を桂剥きにした単板を、繊維方向を平行にして積層・接着した木質材料
※5 CLT(Cross Laminated Timber)
ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質材料
※6 MPP(Mass Plywood Panel)
合板を二次接着により積層した大断面木質材料。米国で開発された木質材料で日本にはまだ規格がない材料
<第2フェーズ>
米国の実験終了後は第2フェーズとして、当社独自の実験を行います。第1フェーズの試験体建物を日本の耐震基準の地震力に耐えるよう、当社オリジナルのポストテンション仕様に改修。この第2フェーズは米国研究者と京都大学生存圏研究所五十田研究室協力のもと計画を進めてきました。日本国内で発生した地震波や建築基準法で性能確認が求められている地震波で耐震性能を検証します。両フェーズを通じて建物の安全性を検証し、中大規模木造建築の技術の確立を図ります。
一連の実験で知見を蓄積し、より正確に地震による挙動の予測方法を検討します。米国中大規模木造関連企業との繋がりの強化を図り、当社が国内外で展開する中大規模木造建築にこの実験結果を活用していきます。
当社は中大規模木造建築の技術のひとつとして、ポストテンション耐震技術を2014年から研究しています。2015年竣工の当社筑波研究所の耐火検証棟に初めて本技術を採用。2019年竣工の同研究所の新研究棟でも採用しました。民間の事例としては2022年上智大学四谷キャンパス15号館にも活用しています。実験で得た知見を注力する中大規模木造建築の推進、建築物の木造化・木質化、脱炭素社会の実現に寄与できるよう検証を重ね、木の価値を高める研究開発を加速します。
住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅、中大規模木造建築の請負、不動産開発、木質バイオマス発電など「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2022年2月にSDGsの目標年である2030年を見据え、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を発表しました。住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及により炭素を長期にわたり固定し、自社のみならず社会全体への脱炭素に貢献します。
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