【緊急声明】衆議院解散方針に関する学術的見解と、真の「パブリックリレーションズ」確立への提言
一般社団法人日本パブリックリレーションズ学会会長 井之上 喬
高市早苗内閣総理大臣による衆議院解散の方針を受け、日本パブリックリレーションズ学会は、日本の議会制民主主義におけるコミュニケーションのあり方と、憲法上のガバナンスの観点から、以下の通り緊急声明を発表いたします。
現在、高市内閣は最新の世論調査(JNN調べで78.1%、FNN調べで75.9%等)において極めて高い支持率を記録しています。しかし、この「数字」を政治的有利に転換するための恣意的な解散権の行使は、国民に対する説明責任(アカウンタビリティ)と、公共の利益に資する情報公開の観点から重大な懸念を禁じ得ません。
1. 首相の解散権に関する憲法上の問題と国際比較
日本の首相の解散権は、主要国の中で突出して「自由度」が高すぎます。日本では「英国の首相には自由な解散権がある」という説が長年信じられてきましたが、オックスフォード大学客員研究フェロー・藤田幸久氏らの研究によれば、これは現在の政治学では否定されています。
英国では与党内の支持基盤や憲法慣習が首相の独断を実質的に抑制しており、日本のように憲法7条を根拠に「いつでも解散できる」という解釈は一般的ではありません。
政策論争を尽くさぬまま「支持率」という流動的な指標のみを根拠に解散を強行することは、三権分立を形骸化させ、国会を単なる政権維持の追認機関へと変質させる恐れがあります。
2. 国民生活の視点と「雪国」を無視した選挙実施への疑義
今回の方針で取り沙汰されている「二月実施」は、日本の国土の半分を占める豪雪地帯の生活実態と参政権の平等を完全に無視したものです。
物理的障壁と投票率への影響: 酷寒と豪雪は、有権者、特に高齢者や障がい者の移動を困難にし、物理的に投票行動を妨げます。これは民主主義の質を損なうものです。
莫大な選挙コスト: 一回の衆院選には約700億円もの国費が投じられます。物価高に苦しむ国民生活を横目に、政治的野心のためにこの巨額のコストを費やす正当性があるのか、厳しく問われなければなりません。
3. 「情報の透明性」と「双方向の対話」の欠如
日本の政治は、法案が国会提出前に与党内で完成する「与党事前審査制度」により、実質的な政策形成プロセスがブラックボックス化しています。
英国や欧州諸国のような、議場での議論を通じて法案を練り上げる「形成型」のプロセスこそ、情報の透明性を重んじるパブリックリレーションズの理念に合致するものです。
支持率という一方的な「情報の受信」のみで解散を判断するのではなく、国会という公の場での「双方向の対話」を通じて、解散の大義を国民に明示すべきです。
パブリックリレーションズの本質は、組織と社会との間の良好な関係構築にあります。政権が国民の支持を「消費」するのではなく、誠実な情報公開と対話を通じて「信頼」を醸成する、成熟した民主主義社会の実現を強く求めます。
以上
【本声明に関するお問い合わせ先】
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