「RESEARCH Conference Lightning Talk 2025」開催報告 supported by STUDIO ZERO
「RESEARCH Conference Lightning Talk 2025」がリサーチカンファレンス事務局主催、株式会社プレイドの社内起業組織STUDIO ZERO(スタジオゼロ)協賛のもと開催
デザインリサーチやUXリサーチの実践知を共有し、リサーチの価値と可能性を伝えることを目的とし、2025年2月19日に開催された本イベントは、GINZA SIXにある株式会社プレイドのオフィスおよびYouTube Liveでのオンライン配信によるハイブリッド形式で行われ、150名以上の方が参加しました。

クライアントワーク、事業会社でのリサーチ、自治体における街づくりといった多様な視点からのライトニングトークが行われ、参加者はそれぞれの実践事例から多くの学びを得られる場となりました。
RESEARCH Conferenceとは
RESEARCH Conferenceは、「デザインリサーチの教科書」「はじめてのUXリサーチ」の著者がデザインリサーチ、UXリサーチの発展を目指して立ち上げた、日本発のカンファレンスです。より良いサービスづくりの土壌を育むために、デザインリサーチやUXリサーチの実践知を共有し、リサーチの価値や可能性を広く伝えることを目的としています。行政、大企業、スタートアップといった異なる立場の人々が学び合い、対話できる場となることを目指しています。
本イベントでは、各登壇者が5分程度の短い時間でテーマに沿ったプレゼンテーションを行う「ライトニングトーク(LT)」形式で発表が行われました。
オープニングトークを含め、計7セッションが行われました。
オープニングトーク
株式会社プレイド STUDIO ZERO 難波 佳代子

まず、自身が所属する株式会社プレイド及び、スタジオゼロの紹介を行いました。そして、ユーザーリサーチ内製化支援についても紹介しました。スタジオゼロでは、新規・既存事業に関わらず、ユーザーリサーチ内製化の伴走支援を行っており、顧客理解を深め、サービスの改善や事業の伸びしろを顧客視点で理解することを目指していることにも触れました。具体的な取り組みとして、行動ログ解析からインタビュー調査、インサイト発見から施策案導出までを伴走支援し、社内にノウハウを蓄積させていると述べました。
LT1「クライアントワークにおけるUXリサーチの実践」
株式会社アイスリーデザイン 平 光蔵 氏

リサーチの機会がない状況から、知識が蓄積されない「鶏と卵」のような状況を乗り越えるため、「まずできるところからやってみる」マインドの重要性を強調しました。B2Cサービスでのユーザーインタビューや、B2B業務システムでの現場観察といった自発的な実践を通じて、「やるとやらないとでは解像度が全然違う」ことを実感した経験を共有し、外部インタビューへの参加や数をこなすことで慣れていったと述べました。リサーチはあくまで手段であり、価値提供ができているかが大事である点を強調しました。
LT2「プラットフォームプロダクトのリサーチ実践」
セーフィー株式会社 佐藤 文愛 氏

10年間続いているプロダクトにリサーチを導入した事例を紹介しました。業界ごとの要望による優先順位付けの難しさ、開発メンバーの会社への貢献実感の不足、ユーザー解像度のばらつきといった課題を提示し、まず課題を可視化・構造化することから始め、ステークホルダーと相談した経緯を説明しました。リサーチを事業戦略からブレークダウンして進め、その意義(優先順位付け、開発貢献の明確化、ユーザー解像度の向上)を説明することで、社内での納得感を得られたと述べました。
LT3「自治体の総合計画策定におけるデザイン・リサーチの可能性〜鹿児島県日置市を実践事例として〜」
株式会社リ・パブリック 清水 淳史 氏

自治体の総合計画が市民にとって馴染みが薄い現状を踏まえ、「市民の市民による市民のための総合計画」を目指した鹿児島県日置市での実践事例を共有しました。政策分野の分類ではなく、市民が自分ごととして考えられる「問い」を設定し、フィールドワークやワークショップを通じて市民が計画策定プロセスに関わる取り組みを紹介しました。 対話と未来からの逆算という3つの軸で進めていることを述べました。また、街づくりにおけるリサーチ・デザインの可能性にも言及しました。
LT4「リサーチの価値の伝え方 〜 実践的な自主調査の取り組みとステークホルダーとの対話 〜」
トヨタコネクティッド株式会社 大塚 小容子 氏

モビリティ体験全体をデザインする部署(XD)におけるリサーチ活動を紹介しました。業務外のテーマや新しい手法にも挑戦する「自主調査活動」を積極的に推進し、これにより社内でのリサーチ価値向上とグループ成長に繋がっていると述べました。韓国と中国でのOEM調査事例を挙げ、調査成果をプロジェクトパートナーに広く共有し、どのようにプロダクトやサービスに活かすかを示すことに注力していると語りました。ステークホルダーに合わせて共有内容をカスタマイズする工夫も紹介しました。
LT5「リサーチの社内流通を加速させる小さな工夫」
株式会社スマートバンク 園田 麻綾 氏

家計簿アプリを提供するスタートアップでの、リサーチの社内浸透・流通を加速させる取り組みを共有しました。チームの視点を揃えるための調査結果の可視化、エンジニアと連携したユーザビリティテスト、リサーチKPTによる継続的な振り返り、新入社員向けのリサーチオンボーディング、インタビュー動画の共有方法アップデートといった具体的な「小さな工夫」を5つ紹介しました。また、リサーチは事業貢献のためであり、会社のミッションに繋がることを強調しました。
LT6「分散したリサーチを価値につなげるための地図を作る話」
株式会社プレイド 鈴木 健一

社内の各部署で分散して行われているリサーチ活動が抱える課題(重複、データ管理の分散、活用困難)を提起し、これらの活動を横断的に捉え直し、価値に繋げるための「地図」を作るという考え方を提案しました。対象者と目的、定量・定性の連携、アクションへの接続、共有と説得という4つの軸で調査全体を整理・可視化し、相互補完や対話を通じて組織全体でリサーチの価値を最大化することを目指していると説明しました。
ライトニングトークセッション終了後、現地会場では懇親会が開催されました。参加者は軽食やドリンクを楽しみながら、登壇者や他の参加者との活発な交流を通じて、リサーチの実践に関するさらなる情報交換やネットワーキングを行いました。

閉会の挨拶では、主催者より、クライアントワーク、事業会社、街づくりといった多岐にわたる視点からのリサーチ実践が共有されたことの意義が語られました。特に、街づくりの事例が示した、単なるサービス提供者とユーザーという関係に留まらない、生活者としての参加型リサーチの可能性に触れ、大変興味深かったと述べました。

また、どの登壇者も単に言われたことをこなすのではなく、本質的な理解を深め、継続的な改善(KPTのような振り返り)に取り組む姿勢を持っている点が共通しており、素晴らしい実践であると称賛しました。このような実践知の共有が、参加者それぞれの今後のリサーチやデザイン活動をより豊かなものにすることに繋がることを期待すると述べ、来場者へ感謝を伝えると同時に、今後のイベントへの参加(発表者やスタッフとしても)を呼びかけました。次回、メインのRESEARCH Conferenceは2025年9月7日に開催決定であることも告知されました。

第4回となる本年は「POTENTIAL」がテーマです。5月7日より、スポンサープランが募集開始されており、締め切り間近となっております。スポンサーをご検討されている企業の皆様はお早めにお申し込みください。
なお、6月中に参加者申し込み、公募開始となります。
最新の情報はリサーチカンファレンスのXアカウントで発信するとのことです。
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