子どもの不登校に「介護休業」条件に適合で活用可能

知らない親8割、人事も7割に届かず 案内があれば親の71%が「使いたい」

サイボウズ株式会社

企業で働く子育て中の親1,000人・人事担当者500人への調査

サイボウズ ソーシャルデザインラボは、多様な価値観を持つ人々が安心して暮らせる社会を目指し、サイボウズ流のチームワークに基づく社会実験(育苗実験)を行っています。
2026年7月8日には、企業で正社員として働く子育て中の親1,000人と人事担当者500人への調査から、「孤立する親が存在しているが、企業人事は認識が低く、相談しやすい環境へと動いている企業はごくわずか」という認識ギャップを公表しました。

今回は、同じ調査の中から「介護休業」という制度に焦点を当てて分析しました。調査からは、この選択肢そのものが親にも人事にもほとんど知られておらず、知らないまま活用されていない実態が見えてきました。

[調査概要](2026.7.8リリースと同一調査)

◆調査対象:企業で正社員として働く子育て中の親 計1,000人
      【内訳】男性500人/女性500人

      うち、過去または現在、不登校や行き渋りのある小中学生の保護者男女は、500人

      *割付条件:地域・年齢・男女・小学生・中学生別・

            在籍する企業規模(従業員数)で割付 

      人事担当者 計500人  *割付条件:従業員数 ・業種・人事経験年数で割付 

◆調査期間:2026年6月2日(火)〜6月9日(火) 
◆調査方法:パネルを活用したインターネット調査

介護休業は、勤務先の判断によっては子どもの不登校・行き渋りへの対応にも活用できる場合がある制度です(本調査の設問文における定義)。

実際に、国もこの点について言及し始めています。
厚生労働省が公表した「介護休業制度等における『常時介護を必要とする状態に関する判断基準』の見直しに関する研究会報告書」(令和7年1月)には、「いわゆるひきこもり、不登校の状態にある対象家族が『常時介護を必要とする状態』に該当するか否かの判断に当たっては、(中略)基準に照らして判断すべきものであり、個々の事情に応じた適切な制度運用がなされるよう留意すべきである」との記載があります[出典:厚生労働省 令和7年1月報告書]。

また、2025年11月には文部科学省および厚生労働省が発行の事業主向けリーフレット「不登校の現状をご存じですか? 事業主・労働者の皆さまへ」を公表し、「不登校児童生徒が育児・介護休業法における『常時介護を必要とする状態』に該当し、保護者の『対象家族』である場合には、介護休業・休暇制度等が利用可能です」と明記して、企業への周知を呼びかけています[出典:文部科学省リーフレット/日本商工会議所 2025年11月28日付周知ページ]。

ただし、これは「不登校であれば自動的に利用できる」という意味ではなく、「項目①〜⑫の基準に照らして該当する場合に利用できる」という条件付きの制度です。
※誤解を招かないよう、本レポートにおいても「該当すれば使える場合がある」という認識・表現をいたします

こうした国の動きがある一方で、調査からは、この選択肢そのものが親にも人事にもほとんど知られておらず、知らないまま活用されていない実態が見えてきました。

《調査結果のサマリ》 

  • 働く親の34.5%しか「介護休業」の内容を知らない。認知度は在宅勤務やフレックスなど他制度より低い水準 

  • 「不登校対応に使える場合がある」ことを親の63.3%が「知らなかった」。実際の活用はわずか3.0%にとどまる 

  • 案内さえあれば71.6%が「活用したい」と回答。企業に求めることの1位は「使える制度(介護休業を含む)の積極的な周知」53.6%(前回リリース既出) 

  • 人事担当者の34.2%も「知らなかった」。現場の58.6%は「使いにくい雰囲気がある」と自ら回答 

  • 「積極的に周知している」企業はわずか19.4%。周知しない理由の最多は「相談があれば案内で十分」30.0% 

1.親の34.5%しか「介護休業」の内容を知らない/認知度は他制度より低い水準 

働く親(全体 N=1,000)に、内容まで知っている制度・働き方を尋ねたところ、「介護休業」を挙げたのは34.5%でした。「在宅勤務・テレワーク」54.1%、「フレックスタイム」50.8%、「時短勤務」48.8%と比べると、介護休業の認知度は相対的に低い水準にとどまっています。「介護休暇(短期)」も25.1%と低く、「介護」を冠する制度全体が他の働き方に比べて知られていない傾向がうかがえます。【図表1】 

図表1

介護休業は名称から「高齢家族の介護のための制度」という印象が先行し、子どもの不登校対応との結びつきが想起されにくい可能性があります。 

なお、文部科学省・厚生労働省のリーフレットでは、独自の休業制度で対応している企業も一部にあります。

ただしこれは法定の介護休業そのものではなく、各企業が独自に設けている休業制度である点に留意が必要です。 

2. 「不登校対応に使える場合がある」ことを親の63.3%が知らない/実際に使えたのはわずか3.0% 

介護休業が「企業によっては子どもの不登校・行き渋りへの対応にも活用できる場合がある」という事実そのものを知っていたかを尋ねたところ、「知らなかった」が63.3%と過半数を占めました。「聞いたことはあるが詳しくは知らなかった」17.0%を合わせると、正確に理解していなかった親は合わせて80.3%にのぼります。「知っていた」は9.6%、「活用したことがある」は10.1%にとどまりました。【図表2】 

図表2

実際に、不登校・行き渋りを経験した親(N=500)が対応に使った休暇を見ると、最も多かったのは年次有給休暇で44.2%。一方、介護休業を使えたと回答した親は3.0%にとどまりました。

もっとも、この2つは同じ土俵にある制度ではありません。有給がほぼ誰でも無条件に使えるのに対し、介護休業は「常時介護を必要とする状態」という基準に該当する場合に限られる条件付きの制度です。今回の調査では、そもそもこの基準に該当し得た人数までは把握していないため、単純に「使われていない」と断じることはできません。

ここからうかがえるのは、多くの親が、子どものケアという場面でありながら、汎用的な有給でしのいでいるという実態です。ケアのための制度が選択肢に入らないまま、手持ちの休暇でやりくりしている——その背景に制度の認知や周知の課題がないか、検討する必要があります。【図表3】 

図表3

なお、図表2の「活用したことがある」は10.1%(101人)でしたが、図表3で不登校・行き渋り経験者500人に直接「実際に使った制度」を尋ねると介護休業は15人(3.0%)にとどまり、両者は概ね同数となるべきところに原因不明の開きがあります。本レポートではより直接的に不登校・行き渋りを経験した親向けに聞いた「実際の活用」の数値として図表3(3.0%)を採用して検討を進め、図表2の「活用したことがある」10.1%は参考情報として扱います。
 

3. 知らされていれば71.6%が「活用したい」/知らないことが利用のハードルになっている 

「勤務先から介護休業の活用方法について案内されていたら、活用したい(していた)と思うか」を尋ねたところ(「活用したことがある」と回答した101人を除く N=899が対象)、「ぜひ活用したい」18.6%、「状況によっては活用したい」53.0%でした。「あまり/まったく活用したくない」は合わせて15.8%にとどまります。【図表4】 

図表4

また、子どもの不登校対応で働く親が仕事を続けやすくするために企業に求めることを尋ねた設問(図表5)でも、最多の回答は「使える制度(介護休業を含む)の積極的な周知」53.6%でした。「上司・同僚が理解を示す文化」45.8%、「在宅勤務・時差出勤など柔軟な働き方」38.2%を上回り、1位となっています。【図表5】 

図表5

4. 人事担当者も34.2%が「知らなかった」/現場の58.6%は「使いにくい雰囲気」を実感 

人事担当者(全体 N=500)に図表2と同じ問いを尋ねたところ、「知らなかった」34.2%、「聞いたことはあるが詳しくは知らなかった」36.2%で、合わせて70.4%が正確に理解していませんでした。「知っていた」は29.6%です。【図表6】 

図表6

この認知度の低さの背景には、制度自体の周知がまだ広がっていない時期的な事情もあると考えられます。国(文部科学省・厚生労働省)が事業主向けにこの点を明記したリーフレットを公表したのは2025年11月であり、本調査の実施(2026年6月)からはわずか半年余り前です。周知が社会全体に行き渡るには一定の時間を要するため、人事担当者の認知度がまだ道半ばであること自体は、想定の範囲内とも言えます。 

さらに、「家庭事情で利用できる制度・休暇(介護休業を含む)はあっても、実際の現場では使いにくい雰囲気があると感じることはあるか」という問いには(全体 N=500)、「よく感じる」17.0%、「たまに感じる」41.6%で、合わせて58.6%の人事担当者が現場の使いにくさを認識していました。制度は用意されていても、人事自身がその活用実態や心理的ハードルを十分に把握できていない可能性があります。【図表7】 

図表7

5. 積極的に周知している企業はわずか19.4%/周知しない理由の最多は「相談があれば案内で十分」 

家庭事情で利用できる制度・休暇(介護休業を含む)の活用方法を「積極的に周知している」人事担当者は19.4%にとどまり(全体 N=500)、「入社時・制度説明時に案内」28.8%、「申請があれば案内」27.4%という受け身の周知が過半数を占めています(前回リリース既出データ)。「あまり周知できていない」14.4%、「周知していない」10.0%と合わせて24.4%は、周知がまだ十分に行き渡っているとは言えない状況にあります。【図表8】

図表8

「周知していない」と回答した人事担当者(N=50、複数選択可)にその理由を尋ねると、最も多かったのは「個別に相談があった際に案内すれば十分だと思っている」30.0%でした。次いで「従業員から特に要望がなく、必要性を感じていない」18.0%、「経営・上層部が制度活用の促進に積極的でない」10.0%と続きます。【図表9】 

図表9

「相談があれば案内で十分」という考え方自体は、従業員一人ひとりの事情に配慮しようとする、人事担当者にとって自然な姿勢だと考えられます。
しかし、そこには一つのすれ違いが潜んでいる可能性があります。
同じ調査で、人事担当者の58.6%が「現場では制度が使いにくい雰囲気がある」と自ら回答していました(図表7)。現場に言い出しにくさがあると人事自身が感じているのであれば、「相談を待つ」運用は、結果として声を上げにくい親を素通りしてしまう構造になっている可能性があります。
また、前回リリースでは、親が職場に相談しなかった理由として「言い出せない雰囲気だった」(22.0%)「相談しても変わらないと思った」(29.6%)「評価に悪影響があると思った」(12.2%)の合計63.8%が挙げられていました。
この3つの理由の合計(63.8%)とも表裏の関係にあると考えられます。

◾️識者コメント  (特定非営利活動法人キーデザイン 土橋優平 代表理事)

不登校の渦中にいる保護者は、情報を取りに行く余力そのものを失っていることが多くあります。

「知っていれば71.6%が活用したい」のに実際の活用は3.0%という結果は、制度の有無の問題ではなく、「困ったら相談してください」という受け身の設計が、声を上げる力を失った家庭ほど素通りしてしまう構造の問題だと捉えています。

  

「不登校離職」も同様で、制度に気づかないまま、あるいは「自分には使えない」と一人で判断し静かに離職していくケースを数多く見てきました。

「介護休業」の名称のままでは結びつく人は少なく、「不登校対応にも使える場合がある」と具体的な言葉に翻訳して届けておくことが重要です。 

  

制度を整えることは大前提ですが、それだけでは機能しません。

前回調査でも相談しなかった理由に「言い出せない雰囲気だった」が22.0%挙がっていました。「うちの子が不登校で」と打ち明けられる社内風土がなければ、制度の対象と気づいても申請にはつながりません。周知と合わせて、不利益にならないという空気を社内に発信することも企業の役割だと思います。 

もう一点、休業取得後の「使い方」も重要です。親が一人で子どもと向き合い続ける時間と捉えると、かえって親子とも孤立が深まりかねません。公的機関やフリースクールなど第三者の視点を取り入れ、子どもに合った居場所や学び場を探す時間として位置づけていただきたいです。

家庭で抱え込まないことが、離職防止にも子どもにとってもよい選択肢につながると考えています。

なお、私たちのアンケート調査でも、子どもが不登校をする母親のうち5人に1人が離職を経験していることがわかりましたので参考にご確認ください。 

◾️まとめ 

今回の調査から見えてきたのは、以下の2点です。 

1つ目:知らないから、使われていない 

親の63.3%(N=1,000)は「介護休業が不登校対応にも使える場合がある」ことを知りませんでした。不登校・行き渋りを実際に経験した親(N=500)のうち、対応で介護休業を使ったのはわずか3.0%です。
もっとも介護休業は基準に該当する場合に限られる条件付きの制度であり、経験した親のうち何人が実際に該当し得たかは今回の調査ではわかりません。
それでも、案内されていれば71.6%(N=899)が「活用したい」と回答している点を踏まえると、「使いたくない、合わない」という声よりも「そもそも選択肢として認識されていない」ことが、活用の少なさに関係している可能性がうかがえます。 

2つ目:人事も「知らない」まま、「相談待ち」の周知にとどまっている 

人事担当者の70.4%(N=500)も「介護休業が不登校対応に使える」ことをまだ認識しておらず、積極的に周知しているのは19.4%にとどまります。周知しない理由の最多は「相談があれば案内すれば十分」という受け身の姿勢でした。 

この2点を踏まえると、「人事が悪い」「親がわがまま」という話ではなく、既存のセーフティネットの存在が、受け身の運用のために当事者へ届いていない、という運用上のボトルネックとして整理できます。この整理はデータからの示唆であり、周知施策の効果そのものを検証したものではありません。 

なお、国(文部科学省・厚生労働省)も2025年11月以降、事業主向けに同様の呼びかけを始めています。「不登校児童生徒が『常時介護を必要とする状態』に該当し、対象家族である場合には介護休業・休暇制度等が利用可能」と明記した文部科学省リーフレット(厚生労働省の制度情報とあわせて公表)があり、企業に周知への協力を求めています[出典:文部科学省リーフレット/厚生労働省 令和7年1月報告書]。この動きは、今回の調査結果と方向性が一致するものです。 

以上を踏まえ、以下のような対応の方向性が考えられます(データそのものではなく、編集上の提案です)。 

  1. 社内ルールの明文化:「不登校・行き渋りに伴う子どものケア・見守りについても、国の判断基準に該当すれば介護休業・介護休暇を利用できる場合がある」ことを、社内規程やFAQに明記する。 

  2. 相談を待たない事前周知:「申請があれば案内」ではなく、小中学生を育てる社員向けの資料や社内報などを通じて、直面する前に選択肢を知らせておく。 

  3. 企業間でのノウハウ共有:不登校離職は一社だけの課題ではないため、周知の工夫や運用事例を企業同士で共有する。 

私たちはこの夏、新プロジェクトである企業連携「つづけるPROJECT」を始動しました。
「子どもの居場所づくり」と「働く親の不本意な離職防止」を目的として掲げ、勉強会の実施や介護休業など制度の周知、企業のリソースを活かした子どもの居場所の提供などを行います。
すでにベネッセ高等学院・株式会社モルテンが参画しており、今後、さらなる賛同企業を募ってまいります。

サイボウズ ソーシャルデザインラボとしても、今後も本テーマについて調査・発信を続けてまいります。 

■ サイボウズの楽校について

サイボウズの楽校は、チームワークを大切にし、「仲間と一緒にしあわせに生きる力」を育むフリースクール(オルタナティブスクール)です。東京・吉祥寺で、小学2年生〜6年生を対象に授業を行っています。学習指導要領を元に作成したカリキュラムとサイボウズの楽校独自の内容を組み合わせ、子どもたちの個性に合わせた学びを実践しています。サイボウズのクラウドサービスkintone(キントーン)を活用し、保護者や子どもとスタッフが密にコミュニケーションをとれる環境づくりにも取り組んでいます。
サイボウズの楽校(公式サイト)

https://cybozu.co.jp/gakkou/

企業ではじめる "子どもの居場所"--最初の一歩ガイドを無料ダウンロード。
立ち上げの理由、フリースクール運営、企業が居場所をつくる理由の3部作を公開!

https://cybozu.co.jp/sodelab/news/2026/04/02-132.html

■ サイボウズ ソーシャルデザインラボについて

私たちソーシャルデザインラボは「チームワークあふれる社会づくり」という目的のもと、サイボウズ流のチームワークによって多様な価値観の人が安心して暮らすための社会実験(育苗実験)を行っています。災害時の支援や地方創生、虐待防止や子どもの不登校など、多様な社会問題をチームで解決するモデル創りに取り組んでいます。育苗実験を多くの人々に共感をしてもらい、政府や行政機関に政策のエビデンスとして利用してもらうことで社会課題の解決を目指していきます。

https://cybozu.co.jp/sodelab/


※引用について:

本調査の結果を引用いただく際には、出所の明示をお願いいたします。

例)サイボウズ ソーシャルデザインラボ「企業で働く子育て中の親1,000人・人事担当者500人への調査」

※記載された商品名、各製品名は各社の登録商標または商標です。また、当社製品には他社の著作物が含まれていることがあります。個別の商標・著作物に関する注記については、こちらをご参照ください。

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6億1300万円
設立
1997年08月