尿路上皮癌を疑う病変を検出する病理AIの開発に成功 ~ Cancersに論文が掲載(Cancers /特集号:Artificial Intelligence in Cancer Screening)〜
本研究成果のポイントは、バーチャルスライドレベルで標本内に存在する尿路上皮癌を疑う領域の推論を可能としたことで、スクリーニング用途などでデジタル化された大量の標本をシームレスに深層学習型人工知能で解析できるようになった点です。
本研究に関する論文をMDPI(https://www.mdpi.com)が発行するCancersに投稿し、Artificial Intelligence in Cancer Screeningの特集号にて掲載されたことをお知らせします。(掲載箇所:https://www.mdpi.com/2072-6694/15/1/226)
■本研究成果の概要
尿細胞診で使用される液状化細胞診デジタル標本における、尿路上皮癌を疑う病変の存在をスクリーニングする人工知能の開発に成功しました。
■本研究の背景
本研究は、2022年に弊社で研究開発した子宮頸部液状化細胞診デジタル標本における子宮頸部腫瘍性病変のスクリーニングを可能にする病理AI開発の知見を応用し、研究開発を行いました(文献:Cancers, 14: 1159, 2022)。
尿路上皮癌は、尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)に発生する腫瘍としては圧倒的に多く、中でも、発生頻度が最も高いのは膀胱癌で、泌尿器科系悪性腫瘍の中では前立腺癌の次に多い腫瘍です。尿路上皮癌が疑われるときには、尿検査や超音波検査で癌の有無を確認し、詳細な検査が必要になった場合は、膀胱や尿路を内視鏡で観察した上で組織を採取し病理組織検査を行います。
本研究で対象とした尿の液状化細胞診は、尿路上皮癌が疑われた場合に行われるスクリーニング検査に位置づけられます。日本臨床細胞学会の2021年度統計によれば、尿細胞診検体数は全細胞診検体数の約28.5%を占め、細胞診検査において尿細胞診は婦人科細胞診についで検体数が多く、泌尿器科診療において重要な役割を果たしています。尿細胞診標本の作製に関して、従来より行われている二回遠心法は標本の作製費用は安価である一方、標本作製の過程において多くの細胞が剥離してしまうという欠点があり、標本の判定の際に感度の低下を招き不利でした。そこで、子宮頸部細胞診に広く応用されている液状化細胞診を用いることで、尿細胞診においても効率的な細胞収集が可能となり、現在では尿路上皮癌の検出率・診断精度の向上に有用な方法として広く認知されています。
以上の臨床的背景を踏まえ、本研究では、尿液状化細胞診デジタル標本において、尿路上皮癌を疑う病変の存在をスクリーニングできる人工知能を深層学習を用いて開発することにいたしました。
■本研究の内容
国内の施設から提供を受け作製された尿液状化細胞診標本をデジタル化し、細胞検査士および病理医によるアノテーションデータを含む教師データを作成しました。学習は、弊社で2022年に開発した子宮頸部腫瘍性病変のスクリーニングモデル(文献:Cancers, 14: 1159, 2022)からのpartial fine tuning法による転移学習(文献:Proceedings of Machine Learning Research, 143: 338-353, 2021)に加え、複数の既存アーキテクチャを使用し、尿路上皮癌を疑う病変の存在をバーチャルスライド(Whole-slide image:WSI)レベルでスクリーニング可能な人工知能を開発しました。開発した人工知能は、教師データとは異なる検証データを用いて精度の検証を行いました。
■本研究の成果
開発した複数のモデルを比較検討したところ、ヒートマップ法による評価の結果、子宮頸部腫瘍性病変のスクリーニングモデル(文献:Cancers, 14: 1159, 2022)を転移学習させた人工知能において最も腫瘍細胞を疑う領域の分別能が高くなりました。具体的には、バーチャルスライドレベルでのROC-AUCが0.984~0.990、感度が0.940~0.960、特異度が0.929~0.946という極めて高い精度が得られました。また、ヒートマップにより表示された人工知能が識別した尿路上皮癌を疑う細胞については、複数の細胞検査士及び病理医による検証の結果、妥当であることが確認されました。以上のことから、尿液状化細胞診デジタル標本において、尿路上皮癌を疑う病変の存在を高精度にスクリーニングすることができる人工知能の開発に成功しました。
今後は、今回開発した深層学習型人工知能モデルの検証試験を複数施設ならびに大規模症例にて進めてまいります。
■原著論文
▼論文タイトル: Deep Learning-Based Screening of Urothelial Carcinoma in Whole Slide Images of Liquid-Based Cytology Urine Specimens
▼日本語訳: 液状化細胞診デジタル標本における「尿細胞診検体から尿路上皮癌を疑う病変」のスクリーニングを可能にする深層学習を用いた人工知能の開発
▼DOI: https://doi.org/10.3390/cancers15010226
■著者・所属
<栃木県立がんセンター 病理診断科>
阿部 信
<メドメイン株式会社>
常木 雅之、Fahdi Kanavati
※この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたものです。
■会社概要
【会社名】メドメイン株式会社 (Medmain Inc.)
※経済産業省 J-START UP 選出企業 https://www.j-startup.go.jp/startups
【設立日】2018年1月11日
【事業内容】医療ソフトウェア・クラウドサービスの企画・開発・運営および販売
【代表取締役/CEO】飯塚 統
【所在地】[東京オフィス] 東京都港区南青山2-10-11 A青山ビル2F / [福岡オフィス] 福岡県福岡市中央区赤坂2-4−5 シャトレサクシーズ104
■各種関連サイト
【コーポレートサイト】https://medmain.com
【プロダクトサイト】https://service.medmain.com
■お問い合わせ先
メドメイン株式会社 広報担当: pr-m@medmain.com
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