北海道名寄市における外来抗菌薬使用の実態調査

優先的に使うべき薬剤の使用割合が27%、国際目標60%に届かず

株式会社ファルモ

株式会社ファルモ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 広井嘉栄、以下「当社」)は、薬剤耐性(AMR)問題が世界的に深刻化するなか、北海道名寄市の地域薬局から得られる調剤データを活用し、名寄市薬剤師会・名寄市立総合病院の協力のもと、外来抗菌薬使用の実態調査を行いました。本研究では、地域における抗菌薬の処方傾向を明らかにし、供給不足時には「最後の手段」とされる抗菌薬に処方がシフトするなど、安定供給と適正使用の両立が課題であることが示されました。これらの成果は、地域から始まるAMR対策の重要性を示すものであり、国際学術誌「Journal of Infection and Chemotherapy」(2025年10月号に収載)に掲載されました。

■ 研究概要

北海道名寄市における外来患者の抗菌薬使用実態を明らかにするため、地域薬局の処方データを対象に解析を行いました。2022年7月から2025年3月までに収集された約3万件の外来処方をWHOが提唱するAWaRe分類(Access=優先的に使うべき薬、Watch=注意して使うべき薬、Reserve=最後の手段となる薬)に基づき評価した結果、優先的に使うべき薬であるAccess群の使用割合はわずか27%程度と国で推奨される“Access群の高い使用比率(60%)”と比べても乖離がみられました。また、薬剤供給不足が発生した際には、通常は最後の手段として使用されるReserve群抗菌薬の処方が増加する傾向も確認されました。

■ 研究背景

抗菌薬は、私たちの生活に欠かせない医薬品である一方、過剰使用や不適切な使用は「薬が効かなくなる」薬剤耐性菌(AMR)の拡大を招き、世界的な公衆衛生上の脅威とされています。WHOは抗菌薬をAccess/Watch/Reserveの3つに分類し、Access群を60%以上使用することを推奨しています。しかし、日本においても地域ごとの外来抗菌薬の使用実態を明らかにした研究は限られており、特に地方都市におけるデータは不足しています。今回の名寄市での調査は、地域の薬局データを用いた実証研究として、今後の抗菌薬適正使用(Antimicrobial Stewardship)や安定供給体制の整備につながる重要な知見となります。

■ 研究方法

研究場所:北海道名寄市内の7つの地域薬局
対象:2022年7月~2025年3月に外来で処方され、薬局で実際に受け取られた約3万件の抗菌薬処方

 評価指標:

  • WHOが推奨するAWaRe分類(Access, Watch, Reserve)

  • DDD(Defined Daily Dose/定義日用量)およびDOT(Days of Therapy/治療日数)

  • 抗菌薬の種類別使用量

  • 処方日数ごとの使用割合

  • 薬剤供給不足時の処方変化

■ 研究結果

  • 全処方のうち 81.1%が短期処方(14日以内) であった

  • Access群(優先的に使うべき薬)の割合は27%程度にとどまり、国で推奨される“Access群の高い使用比率(60%)”と比べて乖離がみられた

  • 短期処方では特に Watch群(注意して使うべき抗菌薬、第2・第3世代セフェムやニューキノロン)が多用されていた

  • 抗菌薬の使用日数や用量における偏りも確認された

  • Watch群(注意して使うべき抗菌薬)のセファクロル(全処方の22.5%を占める)の供給不足後、Reserve群(最後の手段)のファロペネム使用が増加

  • 地域や処方傾向に改善余地が示唆され、抗菌薬供給体制や適正使用の重要性が浮き彫りになった

この結果より、名寄市における抗菌薬使用状況の実態が明らかになりました。但し、単にデータを収集・解析するだけでは、AMR対策の実効性にはつながらないため、引き続き、地域の薬剤師会や基幹病院、行政を主体として、使用状況を可視化し、改善を試みていくことが重要だと考えます。今回の研究は、地域の薬局から得られる調剤データを活用した取り組みが、AMR対策の推進につながる可能性を示すものとなりました。

■ 論文情報

  • 掲載誌:Journal of Infection and Chemotherapy

  • 論文タイトル:Evaluation of outpatient antibiotic use using AWaRe and DDD/DOT indicators: A community pharmacy-based study in Nayoro City, Japan

  • 著者名:岸野 友紀、鈴木 高弘、氣賀 澤郁、山端 孝司、深井 康邦、清川 真也、広井 嘉栄

  • DOI:10.1016/j.jiac.2025.102810

<株式会社ファルモについて>

当社は「薬局をつなぐ。地域をつなぐ。未来の医療をつなぐ。」をミッションに、薬局をはじめとする医療機関や医療を取り巻く様々な主体を「つなぐ」ことで、すべての当事者にとって幸せで持続可能な医療の実現を目指します。

会社概要

会社名:株式会社ファルモ / PHARUMO, Inc.

代表者:代表取締役社長 広井 嘉栄

所在地:〒163-1452 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティータワー 52F

 URL:https://pharumo.jp/

<本件に関する問い合わせ先>

株式会社ファルモ 広報担当宛
メール:info@pharumo.jp




会社概要

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URL
-
業種
医療・福祉
本社所在地
新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティ52階
電話番号
03-5333-0553
代表者名
広井嘉栄
上場
未上場
資本金
-
設立
2012年05月