M3総研 調査結果「帯状疱疹ワクチンの接種状況」を公表

定期接種制度開始から半年、接種者数は前年比20倍超の一方、都道府県間では接種率に最大2.5倍の差、地域格差が明らかに

エムスリー株式会社

 エムスリー総合研究所は、当所が保有する医療データをもとに、帯状疱疹ワクチンの接種状況に関する調査を実施しましたのでお知らせいたします。

■帯状疱疹とは

 日本人成人の9割以上の体内に潜む帯状疱疹ウイルス※1は、80歳までに3人に1人が発症※2するとされる非常に身近な疾患です。帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によって発症し、初期症状として皮膚の痛みや違和感、かゆみなどが現れ、免疫機能が低下している場合には皮膚症状が全身に広がることもあります。重症化すると、数週間から数か月にわたり強い痛みが続き、日常生活や睡眠に深刻な影響を及ぼします。また、顔や鼻周囲に症状が出た場合には、角膜炎・結膜炎・ぶどう膜炎などの目の合併症を伴い、視力低下や失明に至る場合もあります。

※1国立感染症研究所:帯状疱疹ワクチンファクトシート 第2版 令和6(2024)年6月20日改訂

※2 Shiraki K., Toyama N.et al.: Open Forum Infect Dis.4(1), ofx007, 2017

■帯状疱疹ワクチンと定期接種化について

 帯状疱疹は、ワクチンを接種することで発症や重症化のリスクを大幅に低減できるとされており、厚生労働省は60~64歳の一部の方、65歳の方に加え、経過措置として70歳以上100歳まで5歳刻みの年齢層を対象に定期接種制度を2025年4月から開始しました。

 定期接種のワクチンは生ワクチンと組み替えワクチンの2種類があり、それぞれ予防効果と費用が異なるため、どちらを接種するか対象者が選択する必要があります。

■帯状疱疹ワクチンの接種率と地域格差について

 今回の調査の結果、定期接種化から半年となる今年9月末時点の全国接種率は15.2%であることが分かりました。2024年度の月平均接種者数8,927人に対し、定期接種化以降の2025年度は月平均接種者数182,186人と、一か月あたりの平均接種者数は前年の約20倍に増加しています。

 接種率が大幅に向上する一方、自治体間では接種率に大きな格差が生じており、帯状疱疹の罹患率を抑制する上での課題となっています。都道府県別※3に見ると、長野県(25.4%)など上位では接種率が20%を超える一方、下位の愛媛県(10.1%)などでは約1割にとどまり、都道府県間で接種率に最大2.5倍のギャップがあることが明らかになっています。

※3 単年度接種率であり、2025年3月までの累積の接種者はカウントしておりません

 この地域格差の背景には、自治体ごとの助成額と接種勧奨体制の違いが影響していると考えられます。接種費用の高い組み替えワクチンの助成額を市区町村別でみると、最大値19,990円、最小値0円、2回接種※4で最大39,980円の差が存在します。こうした助成内容の差が接種率の地域格差として表れており、全国的な接種率向上に向け、自治体によるワクチン接種に対する取り組み強化の重要性が示唆されています。

※4 組み替えワクチンは2回の接種が必要

 さらに、同程度の助成額であっても接種率に差があり、上位10%と全体平均では9.6ポイントの差が確認されています。このことから定期接種対象者へのさらなる情報提供や接種促進に向けた啓発活動の充実も不可欠であり、各自治体での今後の施策強化が重要と考えられます。

■愛知医科大学 渡辺 大輔先生からのコメント

 帯状疱疹は80歳までに約1/3の日本人が発症する疾患で,長く続く神経痛や様々な合併症を伴うことがあります。帯状疱疹ワクチンは、その帯状疱疹を予防するためのワクチンです。ワクチンは日本を含む世界各国で承認されており、数多くの臨床試験でその有効性と安全性が確認されています。特に、近年登場した不活化ワクチンは、50歳以上の方において接種後10年時点でも7割という高い発症予防効果が示されています。

 また、帯状疱疹の最もつらい合併症である帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行するリスクを大幅に減らすことも期待できます。年齢とともに高まる帯状疱疹のリスクに備えるため、正しい情報に基づいてワクチン接種を検討することが大切です。

また,今年度から原則65歳の方に対して帯状疱疹ワクチンが定期接種化されました。ご自身の状況に合わせた接種について、不安や疑問があれば、かかりつけ医やお近くの医療機関に相談してみましょう。

■渡辺 大輔先生 プロフィール

渡辺 大輔(わたなべ だいすけ)

名古屋大学医学部を卒業後、同大学院で医学博士号を取得。同大学助手、ハーバード大学医学部への留学を経て、2004年に愛知医科大学皮膚科助教授に着任。2010年より同大学教授を務める。専門はヘルペスウイルス感染症、悪性腫瘍(腫瘍溶解性ウイルス療法)、難治性疣贅の治療など。日本皮膚科学会「尋常性疣贅診療ガイドライン」の策定委員長を務めるなど、当該分野の第一人者として知られる。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本性感染症学会(元副理事長)をはじめ、数多くの学会で理事や評議員を歴任し、皮膚科学の発展に貢献している。

■M3総研とは

 これまで日本の医療においては、地域・自治体によって医療連携、健康促進の取り組み、診断・治療に格差があることが分かっています。M3 総研は、エムスリーの有する日本最大級の医療従事者パネル、医療ビッグデータなど広範なデータを活用して、日本の医療実態を中立的な立場で調査・研究し、その結果を広く発信することを目的に設立されたシンクタンクです。具体的には、地域における各種疾患の流行情報、疾病の診断・治療の地域差、人口動態に応じたワクチンの接種率、疾患・治療に対する医師の認知など、M3総研でしか捉えることのできない医療の改善機会について、調査・提言を行ってまいります。

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東京都港区赤坂1-11-44 赤坂インターシティ
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