【半数以上が想定外の影響に直面】ISO認証返上後に現れた“見えないリスク”―継続か返上か?判断する前に必要な視点を探る
返上後、半数近くの企業が「価格」や「入札面」で思わぬ影響を受ける結果に
NSSスマートコンサルティング株式会社(所在地:東京都新宿区、代表取締役:安藤 栄祐)は、ISO認証を取得して返上したことがある企業のISO担当者・経営幹部・経営者を対象に、「ISO認証の返上の理由と影響」に関する調査を実施しました。
5月に配信した前回調査*では、ISO認証を継続運用している企業の多くが「業務の標準化」や「社外からの信頼性向上」といった効果を実感している一方で、返上した企業では、効果の実感が相対的に少ないことが明らかになりました。
*「ISO認証の取得・返上」に関する調査:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000055385.html
では、ISO認証を返上した企業はどのような理由で返上したのでしょうか。
そして、返上したことで何か影響はあったのでしょうか。
そこで今回、各種ISOの新規取得・運用サポートサイト『ISOプロ』(https://activation-service.jp/iso/)を運営するNSSスマートコンサルティング株式会社は、ISO認証を取得して返上したことがある企業のISO担当者・経営幹部・経営者を対象に、「ISO認証の返上の理由と影響」に関する調査を実施しました。
調査概要:「ISO認証の返上の理由と影響」に関する調査
【調査期間】2025年6月6日(金)~2025年6月10日(火)
【調査方法】PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
【調査人数】301人
【調査対象】調査回答時にISO認証を取得して返上したことがある企業のISO担当者・経営幹部・経営者であると回答したモニター
【調査元】NSSスマートコンサルティング株式会社(https://activation-service.jp/iso/)
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ
返上の背景とは…8割以上が3年以上の運用も、返上理由はコスト負担が最多に
はじめに、「ISO認証の運用期間」について尋ねたところ、以下のような結果になりました。

『取得から3年未満(10.3%)』
『取得から3年以上~6年未満(1回目の更新を完了)(32.6%)』
『取得から6年以上~9年未満(2回目の更新を完了)(24.3%)』
『取得から9年以上(3回以上の更新を完了)(27.9%)』
『わからない/把握していない(5.0%)』
ISO認証は一定の期間を経て運用していたケースが多く、全体の8割以上が3年以上認証を維持していたことがわかりました。
こうした運用を経て、返上を決断した背景にはどのような理由があったのでしょうか。
そこで「ISO認証を返上した理由」について尋ねたところ、『認証維持にかかるコストが高かった(47.2%)』が最も多く、『効果が得られなかった(46.8%)』『取引先・顧客からの要請がなくなった(30.9%)』と続きました。
返上理由としては、認証維持にかかるコスト負担が最も大きく、次いで期待した効果が得られなかったことが挙げられました。
前回調査でも、返上企業においては継続運用の課題として「審査費用のコスト」が最も多い結果となっており、コスト面での負担感が返上判断に一貫して影響していることがわかります。
さらに、取引先や顧客からの要請が減少したことも、返上を後押しする要因となっているようです。
そこで、返上理由について詳しくうかがいました。
■ISO認証を返上した理由は?
・ISOを取得する本来の意味が社内でもズレが発生して、問題になった。社内での話し合いの結果、コスト面も大きいこと、他の事を重視するきまりになり、返上することにした(30代男性/佐賀県/取得から6年以上~9年未満運用して返上)
・入札条件から任意になり、維持する金額が合わないと感じた(40代男性/東京都/取得から6年以上~9年未満運用して返上)
・認証ではなく、独自でのEMSを運用することとしたため(50代男性/東京都/取得から9年以上運用して返上)
・準拠運用で事足りるから(50代男性/長野県/取得から3年以上~6年未満運用して返上)
・対取引先用に取得したが顧客からの評判はさほど変わらずコストばかりかかるから(50代男性/東京都/取得から3年未満運用して返上)
・ISO維持のための管理であり、実効性がほとんどなかった。意味がないと感じられた(50代男性/山形県/取得から6年以上~9年未満運用して返上)
・認証取得後の定期審査への対応が人的にもコスト的にも負担となった。費用対効果が期待したほどでなく、業務の煩雑さだけが目立った(60代男性/東京都/取得から6年以上~9年未満運用して返上)
・ノウハウが蓄積され、コストや業務面からあえて認証を受ける必要がないと判断した(60代男性/高知県/取得から9年以上運用して返上)
返上の背景には、コスト負担に加え、認証制度そのものの実効性が感じられないことや、社内での意義が希薄化していた点があると読み取れます。
また、外部環境の変化を受けて認証の必要性を見直した企業や、ISO運用によって社内にノウハウが蓄積されたことで返上した企業、準拠運用や独自マネジメントシステムへの切り替えといった柔軟な運用に変更した企業も見受けられました。
前回調査では、ISO認証を継続している企業の多くが、「業務の効率化」「品質向上」「リスク低減」といった実務面での効果を実感しており、社員の意識改革や人事体制の見直しにもつながるなど、マネジメントツールとしての有効性を評価する声が多く見られました。
一方、今回の返上企業への調査では、こうした効果が十分に得られなかった、もしくは以前は感じていた効果が薄れてきたとする見方が目立ちます。
では、ISO認証の返上を決める際、外部や専門家に相談はしたのでしょうか。

「ISO認証を返上する前に、外部に相談をしましたか?」と尋ねたところ、『社内で判断したのみで外部相談はしなかった(31.9%)』が最も多く、次いで『ISOコンサルタントなど外部の専門家に相談した(22.9%)』『取引先に相談した(18.3%)』となりました。
返上にあたっては、ISOコンサルタントなど外部の専門家や取引先に相談して意思決定を行ったケースも一定数見られましたが、社内のみで判断した企業が最も多く、効果的な運用方法や返上後の影響についてなど、十分に相談しないまま判断に至った可能性もうかがえます。
運用負担は大きい一方で、4割は外部サポートを利用せず対応
ここからは、返上した企業の運用実態について詳しく見ていきます。
前回の調査で、「継続運用の課題」について全体に尋ねたところ、返上した企業では「コスト負担」が最も多く挙げられたほか、「ISO維持のためだけの業務増加」や「書類・記録などの管理負担」の回答も多く集まりました。
今回はその傾向を踏まえ、ISO認証の運用における業務上の負担内容について詳しくうかがいました。

「ISO認証の運用における負担業務」について尋ねたところ、『審査前準備・審査対応(45.9%)』が最も多く、次いで『文書管理・記録管理(43.5%)』『内部監査(33.9%)』となりました。
審査前準備・審査対応が最も多く挙げられ、日常的な文書管理・記録管理も継続的な負担となっているようです。
さらに、内部監査の実施も一定の工数がかかり、準備が必要となるので、多くの企業にとって負担要因となっていることがわかります。
では、継続的に運用をするために、社内でどのような対策が講じられていたのでしょうか。

「ISO認証の運用における社内での対策」について尋ねたところ、『社内マニュアルやルールの定期的な見直し(37.2%)』が最も多く、次いで『担当者の固定・専任化(33.9%)』『社内業務とISO規格要求事項を紐づけての運用(33.9%)』『担当者向けの教育・研修の実施(29.9%)』となりました。
社内マニュアルやルールの定期的な見直しが最も多く行われており、担当者の固定・専任化や、ISO要求事項と日常業務の紐づけによる運用効率化も進められていたようです。
なお、前回調査でISO認証を現在取得中の企業に対して社内対策を尋ねた際には、『担当者向けの教育・研修の実施』の回答が4割以上と最も多く挙げられました。
ISO認証の効果を持続的に発揮し、継続運用していくためには、マニュアルや制度の整備だけでなく、それを実行する現場の従業員への理解・教育を通じて、社内全体に定着させていく取り組みを強化していく必要性があると言えるでしょう。
では、ISO認証の運用において、どの程度が外部サポート(コンサルタントなど)を活用していたのでしょうか。
「ISO認証の維持に外部サポートを活用してましたか?」と尋ねたところ、以下のような結果となりました。
『活用していた(59.8%)』
『活用していなかった(40.2%)』
約6割が外部サポートを活用しており、専門的な支援を受けながら運用を行っていた企業が多い一方で、4割は社内対応のみで運用していた状況も見受けられます。
前回調査では認証を継続中の企業で外部サポートを活用している割合は62.5%と、今回よりやや高い結果となっており、継続運用には外部支援の活用が一定の役割を果たしている可能性も示されました。
ISO認証返上後、半数近くが価格や入札面で思わぬ影響を受ける結果に
ISOの返上理由や運用中の実態が明らかになりましたが、実際に返上後にどのような影響があったのでしょうか。

「ISO認証返上後の影響」について尋ねたところ、『特に影響はなかった(42.2%)』が最も多く、『リスクへの危機感低下(20.9%)』『競合比較・差別化困難(18.3%)』と続きました。
返上後は特に大きな影響はなかったとする企業が4割以上を占めましたが、これは前回調査の返上済み企業において、効果実感の割合が全体的に低かった傾向と重なる結果となりました。
ISOの効果を感じられていなかったため、返上後も大きな影響がなかったと認識されている可能性が考えられます。
一方で、リスクへの危機感の低下や競合他社との差別化が難しくなったと感じる企業も一定数存在していることがわかりました。
次に、返上後にあった影響について、具体的にうかがいました。
■実際にどのような影響があったのか教えてください
・ISOの取得がないことで受注をくれる企業から単価の30パーセントほどの引き下げ要求があり自社としても関係が切れないので単価引き下げに応じた(30代男性/佐賀県/取得から6年以上~9年未満運用して返上)
・顧客からの当社の信用が少し薄れた(30代男性/京都府/取得から3年以上~6年未満運用して返上)
・リスク管理がおろそかになった(40代男性/兵庫県/取得から9年以上運用して返上)
・入札に参加できなかった(50代男性/広島県/取得から6年以上~9年未満運用して返上)
・総合評価方式の入札案件では 他社に負ける事がふえた(50代男性/和歌山県/取得から3年以上~6年未満運用して返上)
価格交渉での不利や信用低下、リスク管理の低下などが具体的な影響として挙げられました。
さらに、入札参加の制限や評価面で競合に後れを取るケースも見られ、ISO認証が商談や公共事業などの取引機会に一定の影響を及ぼしている様子がうかがえます。
こうした影響が、事前にどの程度想定されていたのか尋ねたところ、以下のような結果になりました。

『影響はすべて想定内だった(46.0%)』
『一部想定内だが想定外もあった(47.1%)』
『ほとんど想定できていなかった(6.9%)』
おおむね想定内だったとする企業が一定数を占める一方で、実際には半数以上が何らかの想定外の影響に直面していることから、返上を検討する段階での影響予測や事前シミュレーションの重要性が浮き彫りになりました。
返上の判断を下す際には、業務や取引先への影響を多角的に検討し、必要に応じて専門家の知見を取り入れることで、思わぬリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
まとめ:継続か返上か?ISO認証を返上する前に──リスクと影響を多面的に捉える重要性
今回の調査で、ISO認証を返上した企業の返上理由や運用の実態、そして返上後の影響について明らかになりました。
まず、8割以上の企業が3年以上運用していたことから、多くは一定の効果を模索しながら継続運用していたものの、コストや実効性の課題を理由に返上を決断したようです。
返上の判断は「社内のみで決定」が最多となり、外部からの助言を得ずに踏み切った企業が多い可能性も示されました。
運用中にあった課題としては、審査対応や文書管理、内部監査などが多く挙がり、その対策として社内でのマニュアル整備や担当者の専任化などを中心に行っていたようです。
しかし、前回調査では運用中の企業の4割以上が継続運用の対策として「従業員への理解と教育」を挙げていたことからもわかる通り、社内の制度整備だけでなく、それを実行する「従業員への教育を通じた全社的な定着」が、継続的な効果につながる重要な要素であることが、今回の調査で改めて浮き彫りになりました。
そして、返上後の影響については「特に影響なし」の回答も一定数あったものの、全体の半数以上が想定外の影響に直面していました。
影響がなかった企業については、前回調査結果からもわかる通り、返上企業ではISOの効果実感が相対的に低かったことから、返上前後で変化を感じなかった可能性があります。
しかし、価格交渉での不利や信用低下、入札面での競合劣位など、具体的な影響を受けた企業も一定数存在することが今回の調査を通じてわかり、返上後のリスクを事前に想定しておく必要性があることが示されました。
ISO認証を返上する際には、業務面・取引面の影響を多面的に見極めたうえで、必要に応じて外部の知見を取り入れながら判断することが、リスクを抑え、持続可能な経営を実現する上で重要になってくるでしょう。
「ISO」の新規取得・運用サポートなら『ISOプロ』

今回、「ISO認証の返上の理由と影響」に関する調査を実施したNSSスマートコンサルティング株式会社では、ISO・HACCPの新規取得・運用サポートサイト『ISOプロ』(https://activation-service.jp/iso/)を運営しています。
ISOプロは、ISO審査員資格保有者やISO構築コンサルタント経験者が多く所属するISOの専門家集団です。
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・ISOプロについて:https://activation-service.jp/iso/philosophy
・コラム「ISOは時代遅れ?返上の理由や改善方法を解説」:https://activation-service.jp/iso/column/8055
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ISOプロについて:https://activation-service.jp/iso/philosophy
お問い合わせフォーム:https://activation-service.jp/iso/lp/form-collabo-entry/
【会社概要】
会社名:NSSスマートコンサルティング株式会社
所在地:東京都新宿区西新宿6-8-1 住友不動産新宿オークタワー21階
代表者:安藤栄祐
URL:https://nss-smart-consulting.co.jp/
事業内容:ISOコンサルティング事業、労務コンサルティング事業、オフィスサポート事業
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