医療機関の病理検査レポート等から約10万件のバイオマーカー情報の自動抽出と構造化に成功
京都大学医学部附属病院(所在地:京都市、病院長:髙折 晃史)と新医療リアルワールドデータ研究機構株式会社(本社:京都市、代表取締役社長:是川 幸士、以下『PRiME-R』)は、2023年より取り組んでいる「がん診療に関する院内リアルワールドデータの網羅的収集および利活用に関する多施設共同研究(CONNECT-2)UMIN ID: R000051605(研究代表者:武藤 学 京都大学医学部附属病院 腫瘍内科 教授、研究事務局:松本 繁巳 京都大学医学部附属病院 腫瘍内科(リアルワールドデータ研究開発講座) 特定教授)※1、以下『本プロジェクト』」の一環として、複数医療機関の病理検査レポート等からの病理検査結果やバイオマーカー情報の自動抽出およびデータの構造化に着手し、約10万件のデータの自動抽出と構造化に成功しました。
1.取り組みの背景・内容
近年、がん薬物療法は従来の臓器別治療から、患者様一人ひとりの遺伝子情報に基づくゲノム医療へと大きな変化を遂げています。しかしながら、医療現場において患者様のバイオマーカー情報は、電子カルテ上にフリーテキストやPDF、画像形式の検査結果レポートとして保存されていることが一般的であり、構造化されたデータとして活用されていない現状があります。このため、患者様ごとのバイオマーカー情報を確認する際には、一件一件の電子カルテを手作業で確認する必要があり、現場に多大な負担を与えています。
このような課題を解決するために、PRiME-Rでは電子カルテ内のバイオマーカー情報を効率的に抽出・構造化する新たなソリューションの開発に取り組んでおります。自然言語処理技術や画像処理技術を活用し、電子カルテから重要なバイオマーカー情報を自動的に抽出し構造化することを可能としました(図1参照)。本ソリューションは検査種別(院内/院外/パネル)を問わず幅広い検査を対象として構造化できることを特徴としており、2025年1月現在で6施設※2約10万件のデータの構造化を完了しています。
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<図1:データ構造化イメージ※3>
今回の取り組みにより、本プロジェクトで既に構築を進めている院内がん登録データに電子カルテ由来の情報(処方歴や検査値など)を統合した大規模リアルワールドデータ(以下、『RWD』)のレジストリに、新たにバイオマーカー情報も統合することで、レジストリの価値をより一層高めることができました。
2.自動抽出・構造化したデータの利活用
構造化されたバイオマーカー情報は、特定のがん種と特定の遺伝子変異を持つ患者様を効率的に絞り込むこと等が可能となり、治験候補者の迅速な特定や医師主導治験の効率化が期待されます。たとえば、新たな治療法の開発や臨床試験への参加が必要な患者様を早期に特定することで、より適切な治療機会の提供が可能となります。
また、本プロジェクトに参画する製薬企業には、構造化したデータの集計情報(図2参照)をご提供することにより、臨床研究等での施設選定の効率化や、実臨床におけるバイオマーカー情報を活用したアンメットメディカルニーズの探索、治療実態把握等を可能とします。
これらにより、個別化されたゲノム医療の発展に貢献してまいります。
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<図2:データ集計イメージ※3>
3.今後の取り組み
今後もデータの自動抽出と構造化の対象医療機関を更に拡大し、より一層のデータの蓄積と活用に努めてまいります。
また、特定の薬剤の効果をバイオマーカータイプで層別化した分析を実施するなど、実臨床でよりご活用いただける解析サービスの開発も進めて参ります。
これら取り組みを通じ、医療機関や製薬企業が活用できる大規模なRWDレジストリをより強固なものにするとともに、RWDからRWE(リアルワールドエビデンス)を創出し、効率的な医薬品・医療機器開発および次世代医療の発展に貢献してまいります。
※1 J-CONNECTの創設及び後向き大規模リアルワールドデータ収集(CONNECT-2)の開始についてhttps://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/press/20231024.html
※2 京都大学医学部附属病院、大阪赤十字病院、福井大学医学部附属病院、神戸市立医療センター中央市民病院、愛媛大学医学部附属病院、四国がんセンター、宮崎大学医学部附属病院
※3 イメージ内の数値はダミーデータです
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