テロ組織からの脱退を支援する日本発の平和構築NGOが啓発活動をラジオ放送で展開。
かつてテロ組織にいた当事者へのインタビューを通じて彼らの意外な実態と複雑な背景を発信。地域社会の理解を促進し、紛争地に平和を取り戻します。
日本発で紛争解決・平和構築を目指すNPO法人アクセプト・インターナショナル(東京都中央区、代表理事:永井陽右)は、世界最悪の紛争地とも言われるアフリカのソマリアにおいて、ラジオ放送で元戦闘員のインタビューを発信しました。インタビューで明らかになったのは、テロ組織に加入してからの過酷な現実や、一般市民を殺害する実態に幻滅して脱退を望む人がいるということです。こうした当事者からの声やテロ組織に加担する若者の現状を地域社会に発信することで、彼らに対する適切な理解を促し、彼らを「受け入れる」ための素地を創ることを目指します。
いわゆるテロ組織の元戦闘員へのインタビュー背景
NPO法人アクセプト・インターナショナルは、紛争が続くアフリカのソマリアにおいて、いわゆるテロ組織アル・シャバーブからの脱退支援に加え、戦闘員たちが社会復帰するための取り組みを続けています。
その中で、アメリカ国務省からの委託のもと、ラジオ放送を活用した地域社会に対する啓発活動や、アル・シャバーブにいる若者に対して脱退の呼びかけを行なってきました。
今回、アル・シャバーブに関わる若者たちの抱える複雑な背景について、地域社会の理解を促し、テロ組織の発信する思想に対抗することを目的に、当事者に対するインタビューを放送しました。
※いわゆるテロ組織アルシャバーブとは
世界で最もアクティブな武装勢力の一つとされており、ソマリアだけでなく、ケニア・ウガンダなど周辺諸国においてもテロ活動を行っており、甚大な犠牲が出ています。アフリカ大陸におけるテロによる犠牲者の4割ほどを占めているともされ「アフリカで最も危険なテロ組織」との異名を持ちます。
また、アル・シャバーブの支配領域であるソマリア南部では、脅迫や誘拐による強制的な加入が多数報告されており、現在も8,000人規模の構成員がいるとされ、状況は非常に深刻です。
アル・シャバーブに加入する若者の現状
激戦地であるソマリア南部では、紛争、干ばつ、飢餓、という絶望的な環境を生きる多くの若者たちには、スキルも、機会も、職もありません。そうした中で、アル・シャバーブは、過酷な状況下にある若者の怒りや不満に付け入り、組織へと勧誘しています。また、組織が支配する領域においては、脅迫や誘拐などの強制的な加入も課題となっています。
さらに、若者たちがアル・シャバーブに入ってからも過酷な状況が続き、暴力的な思想などを含む教育プログラムに加えて軍事訓練を受けさせらさせられたり、戦いに慣れさせるために戦闘の映像を繰り返し見させられたりなどの実態が報告されています。それでも戦いへの恐怖心が消えないときには、指揮官からタブレット状の薬物を渡され、無理にでも戦闘へ駆り出される現状が今でも続いています。
アル・シャバーブにいる若者は自由に話すこともできずにこき使われ、上官の命令のもと、強制的に死のリスクがある前線へ送られ、多くの若者が命を落としています。そのため「テロ組織から逃れたい」と考えている若者は実は数多く存在しています。
アル・シャバーブからの脱退を促す取り組み
そのような若者が実際にテロ組織から離脱するために、私たちは、紛争の最前線で投降に関する情報を広めるリーフレットの配布や、広範囲へのラジオ放送、そして電話相談窓口の運営を行っています。
これらの取り組みを通じて、テロ組織を抜け出したい若者に情報を届け、これまで500名以上の脱退を実現するなど、現地でも高く評価をいただいております。
しかし実は、組織を脱退することは危険かつ過酷です。だからこそ、命がけで組織を脱退した彼らを保護するためのセンターを運営し、1年間、平和の担い手となるための社会復帰プログラムを提供しています。
アルシャバーブに加入した元戦闘員の声
私は、一見すると理想的に聞こえるアル・シャバーブの思想や、支配領域に住む人々が自由に暮らしている話を友達から聞き、それを信じてアル・シャバーブに加入しました。
しかし、戦闘の訓練を受けた後は、家族や友だちとの連絡は一切許されず、携帯も没収されました。そして、家族や友だちのいるソマリア南西部から遠く離れたソマリア中部まで送られて戦闘に参加することになりました。そこでは、理由もなく市民や仲間が殺されたり拷問されたりする現実を目の当たりにし、組織に対する疑念が生まれ、次第に大きくなっていきました。そんな中、私自身が連れ去られてしまい拷問を受けることになってしまいました。
組織への疑念が深くなっていたことに加え、拷問は肉体的にも精神的にも本当に辛かったことから、アル・シャバーブからの脱退を決意しました。
脱退したときは、周りの仲間たちやリハビリセンターのスタッフが温かく受け入れてくれたことに驚きました。以前は内向的だったように思いますが、リハビリセンターでの集団生活を通じて多くの人と関わる機会が増え、積極的にコミュニケーションをとるようになってきていると思います。
リハビリセンターで宗教再教育を受けているおかげで、改めて宗教観を見つめ直すことができ、平和とは何かを考えるようになりました。
私は、友だちからの偏った情報を信じてアル・シャバーブに加入してしまいましたが、同じような経験をする若者が少しでも減るように、自分にできることをしていきたいと思っています。
そして、これからは、今もアル・シャバーブに残っている友だちを助け出せるような平和の担い手になりたいと考えています。
ラジオ放送を通じて目指すもの
今回は、各地のラジオ局と連携し、私たちのリハビリセンターにいるアル・シャバーブの元戦闘員へのインタビューを放送しました。
当事者の生の声を届けることで、リスナーである地域社会の人々に、アル・シャバーブに所属する若者たちの困難な背景や、彼らを地域社会に受け入れることの重要性、そして組織からの脱退促進の取り組みへの協力の重要性などを、リアルに伝えることを狙いとしています。
仮に地域社会が非協力的で、テロ組織にいた若者に対して疑念を持っていると、そもそも投降が上手くいかなかったり、いざ若者が社会に復帰したとしても居場所がなく、若者が幻滅して再び組織に戻ってしまう可能性があります。彼らが平和の担い手として社会に復帰するうえでは、地域社会からの理解と協力が欠かせません。
また、ラジオ放送で広範囲に声を届けることで、アル・シャバーブへの新規の加入を未然に防ぐことや、アル・シャバーブにいる若者にも情報を届け、自発的な脱退を促すことも目的としています。
特に、アル・シャバーブの支配領域の外に住む人々は、組織への勧誘の手口の思想について十分な理解がない場合が多くあります。そのため、若者がテロ組織から勧誘を受けたとき、組織に加入しやすくなってしまうのです。また、アル・シャバーブにいる若者は、得られる情報が限定的になりがちです。
だからこそ、広範囲の人々に情報を届けることができるラジオ放送は、一石三鳥の目的を果たすことができる有効な手段となります。
今後も、世界の関心が集まらない、究極的に取り残されたソマリアなどの最前線において、若者たちが武器を置き、平和の担い手として社会に復帰する支援を通じて、日本発で、テロ・紛争解決の前例を創るべく活動してまいります。
当法人への取材について
私たちは、ソマリアやイエメン、パレスチナなど、世界のテロ・紛争の現状などについて、日本の報道機関向けの取材に加え、メディアの方を含む一般の方々に対して国内で定期的にオンライン・オフラインのイベント(直近のイベント一覧はこちら)を開催しております。また、現場での活動の画像・動画のご提供、スタッフへのインタビューなどもご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。
ご寄付のお願い
私たち独自の取り組みは、皆様からの温かいご寄付で成り立っています。毎月1,500円からのご寄付をいただくアクセプト・アンバサダー(詳細はこちら)はもちろん、単発でのご寄付(詳細はこちら)も受け付けております。日本発で前例を創るため、ぜひ皆様のご協力をお願いいたします。
NPO法人アクセプト・インターナショナル
国内外で憎しみの連鎖といった負の連鎖をほどくことを目指して、2011年の創設以来、ニーズが非常に高いにも関わらず見捨てられてきた地域・分野・対象者に対して取り組みを実施してきました。海外では、紛争に加担した若者が平和の担い手となるための支援や、世界中の紛争当事者が暴力から離脱するための国際規範の制定に向けた働きかけを行なっています。また、日本国内においては特に取り残されがちなイスラム教徒を中心とした在日外国人への相談支援や、犯罪に巻き込まれた特に深刻な少年・少女への包括的な支援を展開しています。
組織概要
名称:NPO法人アクセプト・インターナショナル(NGO Accept International)
住所: 東京都中央区日本橋堀留町1丁目11-5 日本橋吉泉ビル3階
設立:2017年4月(前身団体・日本ソマリア青年機構は2011年9月設立)
代表理事:永井 陽右
主な活動国:ソマリア、イエメン、ケニア、インドネシア、コロンビア、パレスチナ、日本
公式サイト:https://accept-int.org/
代表メールアドレス:info@accept-int.org
代表電話:03-4500-8161
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像