「入れたはずなのに、続けられなかった」── 行き場をなくす子どもたちと、いるかきょうしつの水泳。NHK「まるっと!」で紹介
障がいの有無にかかわらず水泳を楽しめる場をつくる「いるかきょうしつ」(運営:一般社団法人miraii/名古屋市)の活動が、NHK名古屋放送局の夕方の情報番組「まるっと!」で取材・紹介されました。
テレビ放送をきっかけに、障がいのある子どもが習い事を「続けていく」ときに直面する現実を、あらためてお伝えします。

「せっかく好きになれたのに、続けさせてあげられなかった」
──そんな声に向き合いつづけてきた水泳教室「いるかきょうしつ」(運営:一般社団法人miraii/名古屋市)の活動が、このたびNHK名古屋放送局の夕方の情報番組「まるっと!」で取材・紹介されました。
放送では、いるかきょうしつで水泳に取り組む子どもたちの様子と、障がいの有無や特性にかかわらず水泳に挑戦できる場をつくろうとする取り組みが取り上げられました。
私たちがこの放送を通してお伝えしたかったのは、「テレビで紹介されました」という活動報告そのものではありません。
障がいのある子どもが習い事を続けていこうとしたときに、いまもなお多くの家庭がぶつかっている現実と、それでも「その子に合った環境があれば、続けて挑戦できる」という事実です。

◾️ 入れたとしても、「やっぱり難しい」と言われてしまう
子どもが水遊びやプールを好きになり、「スイミングに通わせてあげたい」と思う。
それはごく自然な、どこの家庭にもある願いです。
問い合わせの段階で「うちでは難しいかもしれません」と断られてしまうことも、もちろんあります。
けれど、より多くの家庭がぶつかるのは、その先の現実です。
いったん入会できても、しばらく通ううちに「ほかのお子さんもいるので」「うちでは、これ以上お預かりするのは難しくて」と、継続が難しいと告げられてしまう。
集団のなかで指示がうまく伝わらず、活動についていけない。
安全を見きるのが難しい。
そうした理由から、レッスンを続けられなくなってしまうことがあります。
これは、入口で断られることとは、また違う重さを持っています。
子どもは一度、その場所を「自分の居場所」にしかけていました。
少し水を好きになり、通うことを楽しみにし始めていたかもしれません。
その芽生えたばかりの「好き」を、本人の意思とは関係のないところで、途中で手放さざるをえない。
うまくいかなかったのではなく、続けさせてあげられなかった。
本当はもっとできたかもしれないのに、その続きを見せてあげられなかった。
その事実が、保護者の心に静かに積もっていきます。
そして、こうした経験は一度では終わらないことが少なくありません。
別のスクールを探し、また入り、また「難しい」と言われる。
それを何度か繰り返すうちに、保護者は少しずつすり減っていきます。
「ほかの子に迷惑をかけているのではないか」
「先生に負担をかけているのではないか」
──申し込むときに感じていた不安が、現実の言葉として返ってくる。
だからこそ、次の一歩を踏み出すのが、いっそう怖くなります。
「この子に、好きなことをさせてあげたい」というだけの願いが、誰かに迷惑をかけてまで叶えていいものなのだろうか
──そんなふうに、自分の願いそのものを責めてしまう保護者もいます。
何度か続けられずに終わるうちに、「うちの子に習い事は高望みなのかもしれない」と、探すこと自体を諦めてしまう。
子どもに色々な経験をさせてあげたい。
ただそれだけのことなのに、続けられる場所は一つ、また一つと静かに消えていきます。
挑戦して、できなかったのなら、まだいい。
本当につらいのは、せっかく芽生えた「好き」を、続けて挑戦させてあげられないことなのだと、私たちは多くの保護者の声から教わってきました。
◾️ 「では、私が見ます」── ひとりの子から始まった
いるかきょうしつが生まれたのは、2022年の夏のことです。
通っていた場所で続けることが難しくなった、障がいのある一人の子ども。
その子を、一人のコーチが「では、私が見ます」と受け止めたのが、すべての始まりでした。
大きな構想があったわけではありません。
目の前の一人を、放っておけなかった。
ただそれだけのことでした。
ところが、その出来事は保護者のあいだで静かに伝わっていきます。
「実は、うちの子も同じように悩んでいて」
そんな相談が、ひとつ、またひとつと届くようになりました。
知的障がいのある子、自閉症の子、体に麻痺のある子、小児慢性特定疾患とともに生きる子、そしてそのきょうだい児。
集まってきたのは、これまで「続けられる場所」を見つけられずにいた子どもたちでした。
やがて、一人のコーチの善意だけでは支えきれない規模になります。
子どもたちを途中で手放すわけにはいかない
──そうして2025年4月、一般社団法人miraiiの事業として「いるかきょうしつ」を正式に立ち上げました。
いまでは数十名の子どもたちが、毎週この場所に帰ってきます。
一度通い始めた子が途中で行き場を失わないこと。
その「続けられること」を、私たちは何よりの土台に置いています。

◾️ 障がい名ではなく、その子自身を見る
いるかきょうしつが大切にしているのは、障がい名だけで「できる・できない」を判断しないことです。
同じ診断名でも、一人ひとり特性も、泳力も、理解の仕方も、目指したいことも違います。
だからこそ、その子の今の姿に合わせて、関わり方を一緒に考えていきます。
子どもの障がい名だけで判断せず、特性・泳力・理解の仕方・目標に応じて指導する安心して挑戦できるよう、無理に活動を強要しない体罰や叱責に頼らず、子どもの気持ちや意思を尊重する。
「できないこと」ではなく、「どうすればできるか」を指導者が考える。
水泳技術だけでなく、着替えや移動などの身辺自立も大切にするその子の成長を、長期的な視点で見守る。
いるかきょうしつは、療育施設ではなく、あくまで一人ひとりに配慮しながら水泳指導を行うスイミングスクールです。
参加の方法やペースは、保護者の方と相談しながら、その子に合った形を一緒に探していきます。
だからこそ、ほかの場所では続けることが難しかった子どもも、いるかきょうしつでは通いつづけられています。
◾️ 「できた」は、続けた時間の先にある
その子のペースを大切にしながら関わりつづけると、時間をかけて、思いがけない変化が訪れます。
下肢に麻痺のある脳性麻痺の子は、水のなかで体を動かしつづけるうちに、やがて陸の上でも歩いたり跳んだりする姿を見せてくれるようになりました。
重い知的障がいと自閉症のある子は、プールに通うなかで排泄のコントロールが少しずつできるようになり、泳ぎの形も身につけていきました。
水がこわくて泣いていた子は、半年が過ぎたころ、バタ足をしながら笑っていました。
どれも、派手な出来事ではありません。
けれど、その子にとっては世界の見え方が少し変わる一歩であり、隣で見守る家族にとっては、長く待ちわびた「できた」の瞬間です。
水泳の技術だけではありません。
自分で着替えられるようになること、移動できるようになること、順番を待てるようになること、そして子ども自身が「次のレッスンが楽しみ」と思えるようになること。
その一つひとつが、本人と家族の自信になっていきます。
そして、これらはすべて、一度きりの体験では届かなかったものです。
途中で手放さず、続けられたからこそたどり着けた景色なのだと、私たちは感じています。

◾️ 受け入れたくても、関わり方を学ぶ機会が少ない
なぜ、いったん入会できても続けられないことが起きてしまうのか。
その背景には、障がいのある子どもへの関わり方や安全管理の方法を学ぶ機会が、社会にまだ十分に整っていないという課題があります。
「受け入れてあげたい」という気持ちがあっても、どう声をかければいいのか、どう介助すればいいのか、集団のなかで安全をどう守ればいいのかが分からなければ、現場として「これ以上は難しい」と判断せざるをえないことがあります。
これは、特定のスイミングスクールや指導者の問題ではありません。
学べる場そのものが少ないという、社会全体の課題です。
受け入れる場所が増えても、中で関わる人が「続けて支える方法」を学べていなければ、同じように途中で行き場を失う子どもが生まれてしまう。
だからこそ私たちは、「通える場所」と同じくらい、「続けて関われる人」を増やすことが必要だと考えています。
◾️ "続けて関われる人"を育てる、指導者育成事業
一般社団法人miraiiは2026年度より、障がいのある子どもに寄り添える水泳指導者を育てる指導者育成事業を本格的に始めました。
公益財団法人小林製薬青い鳥財団、および公益財団法人住友生命健康財団の助成を受け、複数年をかけて段階的に育てていく取り組みです。
学ぶのは、テキストの上の知識だけではありません。
子どもの特性や病気をどう理解するか、保護者とどう関係を築くか、水のなかでどう体を支え、いざというときにどう動くか。
そうしたことを、実際のいるかきょうしつの現場で、経験のある指導者とともに身につけていきます。
プールサイドに一緒に立ち、子どもと向き合い、その日に感じたことを一緒に振り返る。
うまくいかない日も、答えの分からない日もあって当たり前です。
誰もが最初は手探りから始まる
──そのことを前提にした学びの場を用意しています。
求めているのは、すでに「できる」ことではなく、「関わってみたい」「学びたい」という気持ちです。
水泳指導の経験者はもちろん、福祉・医療・教育・保育に携わる方、これから学びたい学生の方、自分の住む地域に通いつづけられるプールを増やしたいと願う方も歓迎します。

◾️ 子どもたちの成長を、一緒に支えてくださる方へ
いるかきょうしつでは、活動を支えてくださるボランティア・指導スタッフも募集しています。
たとえば大学の水泳部に所属する学生の方にとっては、これまで磨いてきた泳力や指導経験を活かしながら、障がいのある子どもとの関わり方を現場で学べる場になります(週1回から、学業や部活と両立しながら、見学・体験からのスタートも可能です)。
はじめは、どう声をかけ、どこに手を添えればいいのか、迷うのが普通です。
それでも、その迷いを一緒に考えてくれる先輩がいて、毎週顔を合わせる子どもたちがいます。
関わりつづけるなかで、「この子とどう向き合うか」が、少しずつ自分のなかに育っていきます。
◾️ 障がいがあるから、ではなく
障がいがあるから習い事を続けられないのではありません。
その子に合った環境と、その子に向き合いつづけられる大人がいれば、子どもは水のなかで挑戦をつづけ、自信と選択肢を広げていけます。
「続けられなかった」という言葉から始まったこの教室が、いつか「どの地域でも、安心して通いつづけられる」に変わっていく未来を、私たちは本気で信じています。
今回のNHK「まるっと!」での放送が、同じように通いつづけられる場所を探している家庭へ、そして障がいのある子どもへの水泳指導に関心を寄せてくださる方へ、いるかきょうしつの存在を届けるきっかけになればと願っています。
◾️ ご関心のある方へ(お問い合わせ・参加のご案内)
お子さまの参加を検討されている保護者の方へいるかきょうしつでは、体験レッスン(事前申込制)を実施しています。
体験後、お子さまの様子を踏まえて、参加クラスや今後の方針をご案内します。
ほかの場所で続けることが難しかったお子さまも、まずはご相談ください。
障がいや特性、健康状態を踏まえ、無理のない参加方法を一緒に考えます。
▼体験レッスンのお申し込み・ご相談:https://lin.ee/U6Yn5Am
▼公式ホームページ:https://iruka.miraii.org
◾️ 指導方法を学びたい方へ(指導者育成事業)
障がいのある子どもへの水泳指導や支援の方法を、現場で実践的に学べます。
指導経験のない方、教育・福祉・スポーツ・医療・保育分野に関心のある方も対象です。
▼指導者・ボランティア専用LINE:https://lin.ee/QVUnuk2
■ 活動に関わりたい方へ(ボランティア・指導スタッフ)
子どもたちの成長を支えてくださるボランティア・指導スタッフを募集しています。
週1回からの参加、見学・体験からのスタートも可能です。
▼指導者・ボランティア専用LINE:https://lin.ee/QVUnuk2
プールサイドで、みなさんとお会いできる日を心待ちにしています。
◾️ 助成団体紹介
公益財団法人 小林製薬青い鳥財団
5年間の継続支援プログラムとして採択いただきました。
https://www.kobayashi-foundation.or.jp/index.html

公益財団法人 住友生命健康財団
2年間継続のアドバンスコース(地域を超えたコミュニティスポーツの展開や、特定の地域におけるコミュニティスポーツの深化をめざすもの)として採択いただきました。
https://skzaidan.or.jp/

◾️ 団体概要
団体名:一般社団法人miraii いるかきょうしつ
代表:髙橋 良彰
所在地:愛知県名古屋市
事業内容:障がい児・難病児・きょうだい児を含むすべての子どもを対象としたスイミングスクール「いるかきょうしつ」の運営、指導者育成事業ほか
活動地域:愛知県内・オンライン
助成:公益財団法人小林製薬青い鳥財団/公益財団法人住友生命健康財団
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