廃小型家電の無人選別プラントの実証を開始しました。
安全な電池解体から選別回収までを自律制御で行い、貴金属・銅・レアメタルなどのリサイクルを高度化

【概要】
近年、資源循環の促進が期待される中、2013年に小型家電リサイクル法が施行され、そこに含まれる貴金属・銅・レアメタルなどの再資源化が期待されています。一方、収集される廃製品の種類が増え、さらにモバイル機器に搭載されるリチウムイオン電池によるリサイクル工場の火災が多発するなどにともない、リサイクル工場における手作業の負担が大きくなり、効率的な資源循環を阻む要因となっています。
このような背景のもと、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクト「高度循環型システム構築に向けた廃電気・電子機器処理プロセス基盤技術開発(2023年度~2027年度、プロジェクトリーダー:大木 達也)(以下、「本プロジェクト」)」では、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、「産総研」)が中心となり、大栄環境株式会社、佐藤鉄工株式会社、株式会社リーテムなどの企業や、大学とともに、低コストで高効率なリサイクルを可能とする革新的な基盤技術の開発をしています。
CEDESTシステムは、NEDOプロジェクト「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業(2017年度~2022年度、プロジェクトリーダー:大木 達也)」の成果を元に、企業の協力を得て、産総研が本プロジェクト内で新たに開発したリサイクル向けの総合選別システムです。2018年に開設した産総研の集中研究施設「CEDEST」において、システムのコアとなる6装置(製品ソーター、電池解体装置、筐体(きょうたい)解体装置、モジュールソーター、基板剥離装置、マルチ供給搬送装置を核とするトランスフォーマブル選別システム)を開発しました(2018年6月20日プレス発表 都市鉱山活用に向けた集中研究施設「分離技術開発センター(CEDEST)」を開設)。開発した6装置は、2024年度に大栄環境グループ・DINS関西株式会社(大阪府堺市)に移設し、今般、搬送コンベヤーなどの設備を加えて連続運転が可能な実証システムとして整備が完了しました。今後、CEDESTシステムの連続運転試験を実施し、さらに対象製品や回収素材種を拡張させ、より汎用性の高い無人選別システムを目指した開発を実施していきます。
【システムの概要】
CEDESTシステムは、高品位な廃小型家電6品目を対象に、貴金属・銅・レアメタルなどを選別する機能を有し、下図に示す新規に開発した6機の装置と、システム全体の運転を自律制御する機構から構成されます。各装置を開発後、本プロジェクトでは、装置間をつなぐ搬送コンベヤーなどの新規設備を加えることで、連続的かつ無人で処理できる構成としました。

製品ソーター:メーカー、年式、型式がさまざまな廃小型家電6品目(スマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、小型ゲーム機:約2000機種)を対象に、これらが混在したものを原料として投入。個々の廃製品の2D/3D画像を検出し、あらかじめ構築した廃製品の外観・構造データベースに基づき、AIにより品目および機種を判定する。品目ごとに選別後、スマートフォン、タブレットは、内蔵する電池が発火しやすいことから「電池解体システム」へ送られ、フィーチャーフォン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、小型ゲーム機は、「CFS(クロスフローシュレッダー)型筐体解体機」に送られる。
(実証機の処理能力:最大7200台/時、開発担当:産総研/大栄環境)
電池解体システム:スマートフォン、タブレットは透過X線による構造解析と製品ソーターの機種判定に基づき、電池格納部と筐体端部との隙間を判定し、電池を傷つけない位置で両端あるいは四方を切断する。切断された製品は各モジュール(大型部品)が緩く結合した積層状態となる。電池を接着している機種では、機種ごとに接着剤の脆化条件が異なることから、適切な温度で冷却後、製品全体に一度の衝撃を付与し、解砕してモジュール単位でバラバラにする。
(実証機の処理能力:最大600台/時、開発担当:産総研/佐藤鉄工/大栄環境)
CFS型筐体解体機:スマートフォン、タブレット以外の4品目は、CFS型筐体解体機にて解体する。原型となるCFSは、ドラム内でチェーンが回転することで破砕する佐藤鉄工の製品機である。本開発機では、ドラム内の滞留時間を極端に短縮する機構を備え、過破砕を防止することで、これら4品目について電池を発火させることなく解体ができる。その後、2段篩(ふるい)によってサイズ選別することで、モジュールと小破砕物を選別する。
(実証機の処理能力:最大3600台/時、開発担当:産総研/佐藤鉄工)
モジュールソーター:「電池解体システム」「CFS型筐体解体機」で解体されたものは、各種のモジュール(筐体、電池、基板、その他)が混在したものとなる。ここでは製品ソーターと同様に、個々のモジュールの2D/3D画像を検出し、AIによりモジュール種を判定して選別する。選別された筐体、電池、その他部品は、既存の処理工程に供給(電池は専門処理業者に移送)されるが、プリント基板は、いまだ貴金属・銅・レアメタルなどが混在した状態であるため、次工程の「CFS型基板剥離機」に送られる。
(実証機の処理能力:最大600台/時、開発担当:産総研)
CFS型基板剥離機:通常の破砕では、破砕物のサイズ・形状は無秩序な分布を持ち、素材種と無関係な物性となるばかりか、単体分離を達成するには微粉砕が必要となって、高度な選別を図ることが困難となる。本開発機は、基板サイズによって、破砕条件の異なる2基のチャンバーに振り分け、過粉砕を防止しつつ、プリント基板から電子素子の原型をとどめたまま剥離する。これにより、電子素子単位の単体分離がなされるとともに、サイズ・形状が電子素子種に固有の物性となり、サイズ選別が素子種選別の一助をなすため高度な選別が可能となる。剥離物は、「トランスフォーマブル選別システム」に供給される。
(実証機の処理能力:最大3600台/時、開発担当:産総研/佐藤鉄工)
トランスフォーマブル選別システム:磁選機、比重選別機、渦電流選別機など、バルク選別装置の組み合わせからなる従来の選別ラインは、固定された順に選別機に送られ、各装置は人が制御している。本開発機は、35恒河沙(ごうがしゃ、3.5✕1053)通りに及ぶ電子素子ごとの選別装置順と各選別の運転条件から最適条件を計算で抽出し、中央のマルチ供給搬送システムを囲む各選別機群へ、計算された最適条件の順で供給して、各選別機を最適条件で運転する機能を有する。各装置への供給・搬送は、電子素子用に気流搬送システムを採用した。本システムにより、利用選別機や選別機の順序が自在に組み替え可能となり、銅を含むベースボードと、金を含むIC・メモリや、タンタルコンデンサーなどを個別に回収可能。選別工程が異なるプリント基板を3種同時並行に処理することも可能。
(実証機の処理能力:600kg/時、小家電基板2.6万台/時相当、開発担当:産総研)
【今後の予定】
大栄環境グループ・DINS関西に設置したCEDESTシステムの実証プラントでは、今後、種々の6品目サンプルで連続稼働試験を実施します。ここで、各装置およびシステム全体の性能評価をするとともに、詰まりなどの発生を検証するなど無人運転の実用性についてさまざまな検討を実施します。CEDESTシステムは、世界初となる、高度なリサイクルに向けた無人の総合選別システムであり、本開発機をプロトタイプとして、ここで得られた検討結果を元に、今後、対象製品や回収素材の拡張、メンテナンスなどを含めた完全無人化など、未来のリサイクル工場に向けた研究開発を継続して実施していきます。
なお、本プロジェクトの展開については、9月29日、イイノカンファレンス(東京・内幸町)でハイブリッド開催される「モノづくり日本会議 第59回新産業技術促進検討会シンポジウム「NEDO『高度循環型システム構築に向けた廃電気・電子機器処理プロセス基盤技術開発』プロジェクト報告会」にて、研究の経過を報告致します。
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