共同研究「デジタルノマド&Tokyo~東京における最新のデータ分析と方策検討~」を実施
公益財団法人東京観光財団は観光産業ニュース会社のトラベルボイス株式会社と共同して「デジタルノマド」に関する研究を実施しました
研究の背景と目的
デジタルノマドの市場規模は世界で約3,500 万人、関連支出は約118兆円規模に達しており、都市の経済活性化に貢献する存在として注目されています。日本でも2024年4月に「デジタルノマドビザ」が解禁され、観光庁による環境整備が進められています。東京は、観光都市としての知名度、生活インフラの充実度から、デジタルノマド向けコミュニティサイト「Nomad List」でも常に上位にランクインするなど、高い関心を集めています。しかし、東京におけるデジタルノマドの実態や経済効果に関するデータは限られており、そのためか全体像が分かりづらくなってしまっています。
本研究は、調査文献や統計データ、デジタルノマドへのインタビュー調査を通じ、デジタルノマドの実態や東京における状況の可視化を行うことで、誘客を推進する上で必要な情報・項目をとりまとめ、今後の成長見込み等を明らかにしつつ、東京におけるデジタルノマド誘客につながる方策を検討することを目的としています。
研究概要
本研究は以下6つのステップで分析を行いました。
1.基本概念の整理(類似概念の整理)
2.デジタルノマドの実像(人物像・実態から導くペルソナ3類型の提示)
3.日本・東京でのデジタルノマドライフ(東京でのノマドライフ経験者5名へインタビュー調査)
4.取組先進事例(国内外の先進地域の取組事例紹介)
5.受入体制の実態把握(受入環境、ビザ、宿泊施設等の現状把握)
6.提言とまとめ(東京におけるデジタルノマド誘致の方策提案)
1.基本概念の整理
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「ワーケーション」と「デジタルノマド」は別の概念。デジタルノマドはデジタル技術を活用して場所に縛られずどこでも働くことができる国際的なリモートワーカーを指す
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更なるIT技術の発展、若年層を中心とした働き方や価値観の変化により、今後も増加が見込まれる
2.デジタルノマドの実像
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1回の旅は1-2か月、複数都市を周遊しながら、月予算30万円で生活
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日中は仕事をし、休日やオフタイムは積極的に外出し人と会う
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様々なタイプのデジタルノマドが存在することを理解し、区別して扱うことが重要
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本レポートにおいて、デジタルノマドの特徴的なタイプを以下3分類に整理。一般的に①をイメージするが、潜在ニーズとしては②③のポテンシャルも高い

3.日本・東京のデジタルノマドライフ
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東京は、安全性・快適性・文化的魅力の観点から評価されている
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実態との乖離を埋めるため、東京でのノマドライフ経験者5名(フランス・カナダ・メキシコ・ギリシャ・イタリア)にインタビューを実施し、東京における指摘事項が可視化された
①物価、とりわけ宿泊費が高く、長期滞在に向いていない
②コミュニティ形成ができる施設の選択肢が少なく、コミュニティリーダーが不在
③ノマド向けの情報を探しにくく、スタートアップ向けの環境が整っていない
4.取組先進事例
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多くの国が、ノマドビザを発給し誘客促進を図る。物価や気候などの環境要因に依存する反面、無料コワーキングスペースや、交流イベント開催に取り組む地域もある(チェンマイ・マデイラ諸島・バンスコ・スペイン・エストニア等が先進都市)
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一方で、日本国内の取り組みは、限定的。各地とも、観光客の質の重視やオーバーツーリズムへの一手として 「地域の特色×長期滞在」を掛け合わせた独自スタイルを模索段階で、今後拡大が見込まれる
5.受入体制の実態把握
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制度面・ハード面・ソフト面それぞれで、東京は一定レベルの受入環境が整っているものの、デジタルノマドビザの使いづらさが課題
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東京都内には、多数のコワーキングスペースがある一方で、活発な交流促進機能を持った施設が少ない
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コリビング施設(共同生活を送りながら仕事をするための、シェアハウスとコワーキングスペースを融合させたような、新しい形の住居スタイル)の拡充が求められる
6.提言とまとめ

本研究を通じて、東京が、他地域と連携しハブ機能を果たすことで、「目的地=日本」となり、日本中をホッピングすることでデジタルノマドの体験をより価値あるものにできると明らかになりました。ハブ機能を強化させるための3つのポイントは以下の通りです。
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東京がすでに持っているリソースの情報発信の最適化
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各地のコミュニティと積極的に連携を図り、関係性作りを支援する
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デジタルノマドワーカーに適した宿泊施設の更なる環境整備
本編では、考えられる施策や詳細な調査内容についてまとめています。ぜひご参照ください。
【「デジタルノマド&Tokyo~東京における最新のデータ分析と方策検討~」研究報告書本編】
【東京観光財団について】
東京の観光振興に関する各種事業を推進する東京都の政策連携団体。「世界から選ばれ続けるTOKYOへ。」を組織理念に掲げ、様々なパートナーと連携しながら、旅行者やビジネスイベンツを誘致するとともに、地域の観光振興や受入環境を向上するための取組を幅広く展開。
組織名:公益財団法人 東京観光財団
理事長:金子眞吾
所在地:東京都新宿区西新宿二丁目3番1号 新宿モノリス15階
設立: 2003年10月15日
URL:https://www.tcvb.or.jp/jp/
【本件に関する問合せ先】
公益財団法人東京観光財団 総務部総務課(企画調査)小峯・井上
電話:03-5579-2680 メールアドレス:sanjyokaiin@tcvb.or.jp
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